ドズル・ザビ

登録日:2021/11/28 Sun 12:01:06
更新日:2024/01/28 Sun 18:28:39
所要時間:約 6 分で読めます





ジオンの栄光!! この俺のプライド!!

やらせはせん!! やらせはせん!! やらせはせんぞぉおおおおお!!!


ドズル・ザビとは、『機動戦士ガンダム』の登場人物である。
CV:郷里大輔(TV版)、玄田哲章(劇場版)、 辻親八(SSゲーム版)、三宅健太(THE ORIGIN)
この項目では注釈が無い限りアニメ本編での動きを説明する。


◆概要

作中の敵役、ジオン公国軍側の主要人物で、ジオン公国を支配するザビ家の三男である。
ジオン公国軍宇宙攻撃軍司令で階級は中将。
国立ぢをん体育大学理事長。
端麗な顔立ちの兄姉ギレンキシリアと違い傷だらけの強面顔に加え、身長210cmで筋肉質の体、謎の肩のトゲや低重音の声質等が相まって粗暴な印象を与える。
ちなみに28歳ランバ・ラル(35歳)といいキシリア(24歳)といいブライトさん(19歳)といいガンダムのキャラは老け顔が多すぎである。
なおシャリア・ブルとは同い年。ありえん。どっちも。
実際その外見通り短気で直情的な人間なのだが、同時に不器用ながらも優しい気質であり、部下、家族思いな一面ももつ。
軍事に明るいものの政治には興味が無いらしく、そういう意味では「わかりやすい」キャラと言えよう。

妻のゼナの立場に合わせてキシリアを「姉上」呼ばわりしたため、ファンからはキシリアの弟だと思われていることも*1
というかTV版本編中ではキシリアが姉と表現されているため少なくとも初期設定ではそうなのだろう。
また、ファーストでは設定のみの存在だった兄弟であるサスロとも、ORIGINでサスロが次兄として登場するまでどちらが年上かはっきりしていなかった。

部下にはラコックのほか、シャア・アズナブルランバ・ラル、コンスコン、アナベル・ガトーシン・マツナガ、など、まぁ見事に漢臭いメンツが揃っている
性別、年齢層共にバラけているキシリアの部下とは真逆と言えよう。


◆来歴

登場したのは一族では一番早く、サイド7から脱出された木馬(ホワイトベース)の追撃をしようとするシャアから、援軍要請を受ける場面で初登場。
この補給については「資源が枯渇してるから前のようには戦えん」「今となっては旧式輸送船もザク三機も貴重な戦力」と釘を刺している。そんなジオンがスポンサーの都合で山のように使わないMS開発を繰り返してたことになるなんて。
その後、弟ガルマを守れなかったとして、直属の配下であったシャアを左遷させた際に、やっと本人が登場する。
設定ではV作戦の情報を得ており、それを阻止するためにシャアを派遣した事になっている。そこまで信頼していた男が弟を守れなかった為彼の怒りは尤もであろう。
この時はシャアを処刑するとまで事を要求していたが、後々の事を考えると彼の主張は正しかったと言えるだろう。
視聴率とか後々のバンダイの事を考えると処刑しなかった事が正しかった。
もっとも、シャアの正体(ジオン・ダイクンの息子)という真実には最後まで気づかなかったようだ。

その後はガルマの仇討ちと称してランバ・ラル隊、左遷させていたのにキシリアの配下となり何故か昇進までしたシャアへの当てつけとしてコンスコン隊を派遣しホワイトベース隊を苦しめるも、いずれもガンダムの活躍により討死。

物語も後半に差し掛かった頃に、ジオン軍の重要拠点「ソロモン」に登場。
政治に興味が無かったが故に兄妹からも孤立しており*2、ギレンからたった一機のMA「ビグ・ザム」を与えられる程度。
更に相手は名将ティアンム提督。
それでも彼が率いる連邦軍をソロモンで迎え撃つ事となる。ちなみに指揮の際はコーヒーを飲みながらという意外な一面も判明する。
的確な指示で善戦するものの、連邦軍の決戦兵器「ソーラ・システム」によってソロモンは大打撃を受けてしまう。

最早ソロモンの陥落は決定的となった彼は、妻子を含めた非戦闘員を戦場から脱出させ、ソロモンの放棄を命令。
残存兵力を一人でも引上げさせるため、兄から送られてきたビグ・ザムに搭乗し暴れまわる。
圧倒的なビグ・ザムの性能を見て「ビグ・ザムが量産の暁には、連邦などあっという間に叩いてくれるわー!」と叫んでいた
一見すると「この状況で何という妄言を吐いているのか」と思われそうだが、それが妄言なのは当の本人も恐らくわかっているだろう。
ティアンム提督やスレッガー中尉等の名将、名パイロットを含めた多数の被害を出すものの、一瞬の隙を突かれてガンダムに接近を許し、ビグ・ザムは撃破される。
それでもドズルは「たかがモビルスーツ一機にこの大戦の趨勢を決められてたまるか!やらせはせん!やらせはせんぞぉ!!」と叫びながら単身外に出て、ライフル一本でガンダムに向けて最後まで戦いを挑み続けた。
その際アムロはドズルの背後に悪鬼のようなオーラを感じ恐怖するが、その直後にドズルは死亡…。
多大な犠牲は生まれたが重要拠点であるソロモンを取ったこと、そして相手軍の中心人物を仕留めた事実は大きく、連邦軍は最終決戦へと向かう事となる…。


◆人間関係

特に原作アニメでは踏み込んだ描写が少ないものの、父・デギンやギレン、キシリアとの仲は良くない。

主戦派のドズルと穏健派のデギンとの間の折り合いは悪く、ギレンと同等以上に親子関係は冷えていた。
実際ガルマの死にはかなりショックを受けていたデギンも、ドズルに対しては一言で片づけている。
兄弟の中で最もデギンに性格が似ていたのがドズルであり、ある種の同族嫌悪もあった模様。
『THE ORIGIN』ではこの点が強調され、ドズルの死も重く受け止めた描写になっている。

ギレンからは何気に「手のかかる弟」として気に入られていた節があり、ドズルが相変わらずの猪突さを見せて暴れていると聞いた際には苦笑を浮かべた話もある。
そしてピンチのソロモンにビグ・ザムを送ったのもギレンである。ドズルはその補給に不機嫌だったが。
また、ギレンはソーラレイについて「他にも転用できる、無駄にはなるまい」と独り言を漏らしたり、ドズルが求める「ア・バオア・クーからの援軍」について「出撃準備が終われば振り向ける」と答えるなど、使用可能でさえあれば残る手札を切るつもりではあった模様。
(ソーラレイは当時未完成、ア・バオア・クーの戦力はほぼ学徒動員兵ばかりで訓練中だったため、いずれも使えなかった*3
前線のドズルが危ういというのに、援軍も出さずソーラレイの開発そのものに反対し続ける父*4よりかは幾分かマシであろう。
結局ドズルは戦死したが、デギンが彼の死に対して冷徹にふるまっていた際にギレンは割とキレている。
兄として弟への情はあったのだろうが、惜しむべきはギレンのいる場所はそういった「情」が最も邪魔な場所だったというべきか。

キシリアからは「自分の上にいる男」という事で敵意を持たれており、ドズルの側もあまり好意的ではなかった模様。
ソロモンのピンチの際にも、部下がキシリアへの援軍を頼んではどうかと提案したときも「国中の笑いものになる」というよくわからない理由で断っていた。*5
一方でドズルが覚悟を決めた時に妻子に「グラナダ(キシリアの本拠地)へ行くように」と指示しており、一定の信頼は置いていたようだ。
またキシリアも配下のバロムをソロモンに向かわせており、結果間に合わなかったがドズルの妻子を回収し、彼女たちに危害を加えた様子はないどころか、
作品によってはシャア、マ・クベらキシリア派閥の将兵が文字通り命懸けでア・バオア・クーからアクシズまで護衛している。
この事から分かる通り家族としての仲は悪いが、互いに憎み合ったり殺し合ったりするほどではなく家族を任せるほどの信頼はある…という、派閥争いを除いたら比較的良好…と、ある意味ではリアルな家族の関係と言えるか。
SDガンダムバトルアライアンスでも最後の断末魔が「姉上」であるキシリアに家族の事を任せるというものであり、2人の間柄には複雑なものが見え隠れしている。

シャアもソロモンの危機に対し「キシリアからの命令が下ったから」とはいえ素直に増援に向かっており、出向時も特別の感慨は見せていない(劇場版で「間に合うとは思えんが…」と呟いた程度)。
この事から左遷されたとは言え嫌悪感は持っていないようだ。
またシャアはキシリアからの命令まで、ソロモン戦開始を知らなかったようである。
マ・クベもまたドズルとの関係は最悪で地球に送り込まれたドズルの部下達に嫌がらせをするほどであったが、さすがにドズルの妻子を(バロム忠言ありきではあるが)見捨てることはせず、その後も特に危害を加えた様子はない。

なおもうひとりの兄であるサスロの事をドズルはどう思っていたかは不明である。
『THE ORIGIN』ではキシリアを平手打ちしたサスロに対して「やりすぎではないか」と咎めるシーンもある。
向こうからは不器用ながらも優しさを向けられているが「甘い弟」とも評価されていた。

他方、弟であるガルマに関しては「母親に似ている」「いずれ自分を部下にする男」とめっちゃ気に入っており、ガルマからも「兄」として慕われている。
ギレン達がガルマの葬儀を国威高揚に使おうとした際は「それよりもシャアの処分」を主張。国葬に反対とは言っていないが乗り気ではなかったようだ。
あのお坊ちゃんは基本的に家族全員から気に入られているが、ドズルのそれは特に格別と言えよう。


部下であるランバ・ラルとは政敵であるものの、ドズル側は好感を持っていたようで、ガルマの仇討ち部隊に真っ先に指名した。
とはいえそのラルからは内心で「仇討ちなど私怨に過ぎない」とバッサリ言い切られていたが…。
『THE ORIGIN』で描かれた「政敵でこそあれ個人としては友とも言える間柄だったが、無為の民を虐殺するブリティッシュ作戦を巡って対立。それでも彼のことは「武人」として評価しており、のちの再抜擢に繋がる」という場面が有名。
ただしこれは『THE ORIGIN』のみの設定で、正史の世界観ではラル自身も青いザクⅠでブリティッシュ作戦からルウム戦役、初期の地球降下作戦まで参戦し、コロニー占領にもかかわっている*6ため、「ブリティッシュ作戦を巡っての対立」はなかった模様。

ちなみに設定段階では「女好き」という特徴が成されていた。
そのせいか「女性には優しい」一面もあり、ザビ家の中では唯一の妻子持ち(後付けで妾*7もいる)であり、彼が子供を残していた事で、ザビ家の血はつながれる事となった。

兄妹や父からはご覧のあり様だが、自分より目下の存在に対しては慈愛を向ける。
宇宙用のドムである「リック・ドム」はドズルが主体となって開発されたが「新兵は推進剤を使いすぎる為、推進剤に余裕のあるMSを作成して欲しい」という思いもあったという。
現場主義かつ部下には優しい彼らしいエピソードと言えよう。
またその情の深さは敵国の人間にも変わりなく、『THE ORIGIN』では娘ミネバに大量虐殺の犠牲となった子供たちの姿を重ね「何億人ものミネバを殺した」と狼狽するシーンもある。
しかしそれを「愛する者のために人は戦わねばならん」「弱かった奴らが悪い」として割り切ってしまい、戦いの鬼となることを決意するのだった。


◆能力

有能な指揮官であると同時に現場第一主義。
「戦いは数だよ」と発言する等、見た目とは裏腹に単なる力推し一辺倒を取るだけの脳筋ではないクレバーな一面を持つ。
自らの軍事力に絶対的な自信を持ちながらも、連邦軍の戦力や兵器を過小評価することも少ない。
尤もホワイトベース隊に対してはその実力を見誤っていたが、それも普通の一個隊なら十分につぶせる戦力を送っていたのは事実のため、この場合は向こうが規格外だったと言えるだろう。シャアが散々苦戦したのに「普通の一個隊」ではないことに気付くのが遅すぎたともいえるが。
更に負けが決定したら早々に本拠地の放棄を決定し多くの将兵を逃がす等、機を見るに敏といった感性も備わっている。
何より部下達に慕われるその人格が彼の一番の武器とも言えるが、あくまでそれを向けるのは仲間にのみ。
ひとたび戦場に出れば「軍人」となり、敵兵士…それどころか必要であればそれこそ「敵国の子供達(ミネバ)」をも無慈悲に殺戮していく。
忘れがちだが、あの虐殺の代名詞であるブリティッシュ作戦やルウム戦役を統括したのはこのドズルその人なのだ。
後に中の人はドズルの暴虐に邪悪な狂気を上乗せしたデカブツとして絶大なインパクトを発揮することになるわけだが。*8

他方、前述の通り政治に関しては非常に疎い
政治的に立ち回っている兄や妹と違い彼がそのような策略をする事はなく、その為か貧乏くじを引きがち。
そしてその事を自覚はしているものの治そうともせず、ただ二人に対して文句を言うばかりと協調性に欠けるきらいがある。
直接文句を言いに行くだけマシかもしれないが、盗聴の危険性しかないギレンへ通信をし大声で怒鳴りこむ、仲が悪いとはいえキシリアの勢力圏の地球に部隊をぶち込む*9
「物笑いの種になる」と言い援軍要請を拒む等、色々とデリケートな戦線において「自分」「情」を優先しがちであり、逆に自らも持っているであろう「派閥」の事は軽視しがち。
仇討ちや当てつけのために部隊を無造作にホワイトベースに送り込み壊滅させることも多々あった。
壊滅の理由は前述の通りホワイトベース隊が強すぎるのも原因であるが、結果的に愚策の代表格である「戦力の随時投入」を行った形となった。
更に、ランバ・ラル隊の投入の際には雷雲を知らない将兵を採用したせいで『連邦軍の謎の新兵器』だと集団パニックを起こしかけると*10、教育不足の人選も見受けられる。近隣に駐屯している友軍の協力を取り付けたシャアの方がこの点ではまだマシと言える。

また外部作品や裏設定などでは、開戦初期に考案されていた「統合整備計画」に反対して大戦末期まで整備面などに禍根を残す、
キシリアとの対立で軍組織を割る、キシリアの考案する潜水艦発想に反対し、ドロス級ドロワの譲渡でやっと譲歩する、といった具合に、
ジオンの政争・内紛に悪い形で多く関わっている。
政治に疎いというなら(そして自覚もしているなら)黙って前線司令官として収まってくれればいいものを、
大した知識も協調性もないのに後方や政界にまで口を挟み、かき回しては放置する、という悪癖がある。
……まあ、派閥間での足の引っ張り合いはジオンでは各所で見られており、ドズルに限ったことでもないが。
また自分の意見を強硬するわけではなく、理屈を解いたり物を渡したら(渋々ながら、であるが)認める潔い一面も持っている。
キシリアの管轄下では「キシリア自身が見出した精鋭部隊間ですら足の引っ張り合いは日常茶飯事、酷い時には連邦軍に討ち取らせる様に工作したり直接手にかける事さえ起こり得る」、
「条約にモロに違反する兵器を独断で奪取&使用しようとする」と言う様に最早内ゲバでは済まされない事態も見られており、
水面下で不祥事乱発&「最後には実の兄すら手にかけてジオンに止めを刺してしまった」キシリアと比べれば、
表でしっかりと意見を出し譲歩案も受け入れるドズルはまだ協調性があった方であろう。

人間としては有能、だが戦乱と策略の中で生きるには、彼は人間であり過ぎた。
戦争の最中、独裁者「ザビ家」の兄弟として生まれ、軍事面に才能があった事が彼の不幸と言えるだろうか…。

なお今際の際にアムロを恐怖させた「オーラ」であるが、その正体は「ドズル程の人格を持った人間でも軍人という虐殺者に変えてしまう、戦場と言う名の悪魔」が具現化したものらしい。
厳密には平時のドズルの思念ではない。だがそれがドズルを狂わせた悪魔なのか、狂って悪魔になったドズルそのものなのかは、歴史は語らない。


◆外伝作品での扱い

一年戦争外伝は多数あり、それらでギレン、キシリアや、早々に戦死したガルマらが目立つことはあれど、このドズルに関しては意外にも少ない。
元々彼の管轄は宇宙であるが、ガンダム作中においては「ジオン軍が有利で連邦は手出しが出来ない領域」
そして地上のオデッサの陥落からは一転して「連邦軍の大反撃に負け続けのジオン軍」という、ジオンが勝って当たり前→ジオンが負ければ終わる戦いという両極端なものしか残されていない。
送り込んだ地上部隊も戦う相手はガンダム達死神部隊なので死亡フラグなのである。これならキシリア配下にして地上で激戦させたほうがドラマ的に面白い。
更に政治に疎い事からもギレン、キシリア、ガルマのような総司令役になる事も少なく、良くも悪くも後々の争乱の種をまいていたことにもなったりしない。
様々な設定のリアリティを高めた「THE ORIGIN」でも彼は年齢が38歳に引き上げられた事以外はほぼ変わらず、
追加された描写も「テレビ版でもドズルだとするだろーなぁ」といった言動ばかり。
彼は「ガンダム放映時点」で既に完成されてしまい、逆に後付けが難しいキャラとも言えよう。
それと生きてたら娘との兼ね合いも難しいんで長生きifも作られにくく、成長した娘とはなかなか再会させてくれない。ドズルいたらミネバが出張る理由も無くなるし…。
独裁者ギレンや策略大好きキシリアのように「悪役」として登場する事も少ない。
ザビ家がこき下ろされるシーンでも実質的な指導者のギレンや現場に厄介ごとを持ち込むキシリアがこき下ろされても、ドズルの事を言及される事は稀。
なまじ人格者な為、憎まれ役になりにくい…だが「ザビ家」の一員なのには変わりないので、結果的に話題にしにくいのだろう。

一方、生き残りである娘の似てなくて本当に助かったミネバは比較的出番に恵まれている。
のだがどちらかというと「ザビ家、ないしジオン全体の遺児」としての扱いが中心で「父親がドズル」という部分は余り触れられない。
一応父親譲りの胆力はあるのだが、本当にそれくらいである。
そういうことも相まって一部ゲームなどでは『Z』や『UC』のキャラから擦られることも。


小説版では

ストーリーがまったく異なることで知られる小説版FGでも、その人格はあまり変わっていない。猪突猛進で協調性に欠けるところや、ガルマ戦死の八つ当たりでシャアを左遷に追い込むあたりも共通である。

ただし中盤からの行動と死後の影響は異なる。
連邦軍は最初にソロモンではなくグラナダを攻略するのだが、ドズルはグラナダ攻撃の一報に「陽動だ」と判断し、援軍を送らなかった。テレビ版とは逆である*11
グラナダ陥落後は「連邦は次こそ我がソロモンに来るはずだ!」と意気込むが、レビルは何とソロモンを無視してア・バオア・クーに向かってしまう。
これでドズルは「よくも無視しやがったな!」と激怒し、独断でソロモン駐留の艦艇を総動員してレビル艦隊を追撃。
しかも急な発進だったため、ドズルが直卒する艦隊と、ドロス級空母ミドロを中核とする艦隊が別々に発進してしまう。

とここまでなら「また頭に血が上ったドズルの愚行か」と見えた*12が、この慎重さとはかけ離れた決断力と実行力が最高のタイミングをもたらす。
当時レビルはソーラレイの情報を手にしており、「一刻も早くア・バオア・クーを抜き、ジオン本国に攻め込まねばならない」と焦っていた。その焦りのあまり背後への備えを怠っており、ドズルはその無防備な背後を奇襲。
しかも、ドズル直卒艦隊とミドロ艦隊が別々に出撃したことと、ドズル艦隊が追い付いた時点でレビル艦隊はすでにア・バオア・クーに攻め込んでいたことから、正面のア・バオア・クー守備隊、背後のドズル艦隊・ミドロ艦隊と三方向からレビル艦隊を包囲、連邦軍に大打撃を与えた。

しかし、ドズルの命脈は急に立ち消える。ドズル直卒艦隊が攻撃した連邦軍右翼には、ペガサスJr.隊がいたのだ。
アムロ・レイG-3ガンダムが切り込み、カイ・シデンハヤト・コバヤシガンキャノンが支援、三人が取りこぼした敵をキリア・マハ少尉*13のジムが狙撃、という完璧なチームワークによって、ドズル麾下のMS隊は一方的に切り崩される。
ドズルも旗艦ガンドワに曳航させていたビグ・ザムに乗り込んで迎撃するが、映像版で連邦艦隊を血祭りにあげた全方位メガ粒子ビームの乱射もアムロ隊はあっさりと避け、さらにキリアのジムの狙撃がビグ・ザムの片足を吹き飛ばす。
そのドズルの窮地に旗艦ガンドワが突撃を掛け、ビグ・ザムとガンドワのメガ粒子砲乱射に飲み込まれてキリアのジムが撃墜、少尉は死亡となるが、直後にガンドワはガンキャノン二機の砲撃で沈み、ビグ・ザムもG-3のビームライフルでハチの巣になり機能停止。
ドズルはコックピットから這い出し、映像版と同じくマシンガンでガンダムを撃ち続け、さらに現れる悪意の化身でアムロを慄かせるも、直後ビグ・ザムが爆発し、戦死。

残るミドロ隊はまだレビル艦隊に痛撃を与え続けていたが、レビル旗艦でのトラブルもあり、連邦軍全軍が正面のア・バオア・クー守備隊から手を引き、背後のミドロ艦隊を先に攻撃する、と方針転換。
既にドズル艦隊は消滅し、ア・バオア・クー守備隊は「なぜこんな早く退却!?」と連邦の真意を測りかねて追撃しなかったため、孤立したミドロ艦隊は連邦全軍に包囲攻撃されて壊滅した。

一方、ドズルの「オーラ」を見たアムロは、「あれほどの強烈なオーラを発する人間は、ドズルのほかはもうギレン・ザビしかいない」「逆に、あのオーラをニュータイプとしての能力で探せば、ギレンを見つけ出して直接討ち、最少の犠牲で戦争を終わらせられる」と思いいたる。
残念ながらアムロはギレンを見付けることはできなかったが、その推論は別の人物が実践した。
ドズルのオーラは映像版ではその後言及されることなく終わったが、小説版では「戦争の核芯を掴む」という意味で重要な要素となった。


冒険王版では

実質的な最終回に登場。
キシリア配下のマ・クベがゾックで出撃したのを見て「MSにはMSだ!」と息巻いてズゴックをばら撒いて援護した。なお戦場は宇宙である
地味に珍しいドズルとキシリアの協力プレイ…であるが、マ・クベのゾックがガンダムに突撃した際に切り裂かれ、その残骸が乗っているムサイに直撃し轟沈した
…がその後「めぐりあい宇宙編」では(色々あって)何事も無かったかのように再登場し、原作通りビグザムに乗って大暴れしたが、力及ばず今度こそ死亡した。


◆ゲーム作品では

外部出演においても、一年戦争が扱われない限り出てこないのが常。
一応、スーパーロボット大戦Fでは(クローンではあるが)Z時代のミネバと再会。
最初は厳密には本人でない為に拒絶されるものの、最後には和解。彼女を守るために悲しき出撃をすることとなる…。
その散りざまはロンド・ベルは愚か、ハマーンですら敢えて本人とは違うことを知りながら「閣下」と呼び忠誠を誓う程であった。
なお前述の通り人格者ではあるが、同時にジオン軍(旧シリーズではDC)というものに忠誠を誓っている為かスパロボシリーズでも仲間になる事はない。
それどころかOEではギレン、キシリア、ガルマが生き残る結末を迎えた中、一人だけ原作通りに戦死した

ガンダム無双3ではUC時代のミネバと感動の再会をする。
成長した我が子を一目でミネバと確信し、大きくなったと感涙……するもののよくわからない男と一緒にいたことからブチ切れて攻撃を開始。*14
オードリーも乗ってるというバナージの言葉に耳を貸さずに*15ビグ・ザムで暴れまわる上に、自らを「父」と呼ぶ謎の男まで加勢するというギャグ展開であるが、
実際に生存し、ミネバが男を連れてきた場合でも「娘はやらん!」と同じような事をするのは明白だろう。

Gジェネレーションシリーズでは指揮や射撃の高さから艦長向きのザビ家の中にあって格闘も高めなのでMSやMAに乗ってリーダーもこなせる。
Gジェネレーションワールドではスレッガーの支援を受けたアムロに撃破されてのジェネレーションブレイク発生後に「まだまだだぁ!この程度でやらせはせん!!」と本来なら43年後の機体であるグランザムに乗り換えて再出撃し、プレイヤーの度肝を抜いた。

ギレンの野望』系にも当然登場。
高い能力、高い階級、何でも乗りこなす高い対応力を兼ね備える頼れる兄貴である。
惜しむらくはシナリオの都合上、基本的に一年戦争が終わった時点で戦死してしまい、後年のシナリオでは出番がないこと。
格闘値が高め。そして異様に高い耐久が特徴的。接近戦が強いMSだけでなく、Iフィールドを装備し耐久値の高いビグザムとも何気に相性が良い。
専用機のザクは彼のステータスを活かしやすい性能であり
特に大型ヒートホークの一振りは序盤MSの中では破格の威力を持っている。
そんな兄貴が輝くのは「新生ジオン」シナリオ。
これは戦乱を憂いたガルマが立ち上がるルートであり、ここでは弟の覚悟に応えるため、ギレンやキシリアを捨てて新生ジオンに馳せ参じてくれる。
「ジオンの系譜」のムービーで弟を見守る兄貴の姿は必見。
ちなみにこのルートは「アクシズの脅威」の攻略wikiで「他勢力との最大のアドバンテージは最初からビグ・ザムを生産できること。」と書かれ、兄貴が手土産に持ってきたみたいに言われている。

SDガンダムバトルアライアンス』では、イラストや設定は1st版だが声優はORIGIN版というハイブリッドなドズルがビグ・ザムに乗ったボスキャラとして参戦。
同作の巨大敵枠の特徴であるやたらアグレッシブな動きで攻めかかってくる上、全方位ビームや追尾型のクローミサイルなど避けにくい攻撃もポンポン放ってくる強敵となっている。
また、騎士ガンダムをメインに据えたDLCミッション「ラクロアの勇者」では呪術士ビグザムの代役として登場。
騎士ガンダムの事は、相入れない敵でありながらも「武人」と「騎士」としてどこか通じ合うところがあったらしく「良いやつ」「敵でなければ味方にしたいところ」(要約)と極めて好意的に評し、まるで正統派のライバルキャラのような存在感を見せていた。


◆SD作品では

SDガンダム外伝では円卓の騎士編に「城主ドズル」として登場。
ゼ・ダン要塞を築き上げ周りに圧制を強いている。
一応、人間ながらMS族に匹敵する力を持つとされるが、特にイベントも無く討伐される、もしくは逃亡する。
何故か侍女にナナイ・ミゲル、部下に未熟な黒魔術師クェスを従えている事以外は特に目立たないボスである。
漫画版ではザビロニアの魔法で岩の巨人に変身し、皇騎士ガンダムを苦しめたが、流星の騎士団の加勢を受けた事で石の体があだとなり粉々に砕け散った。

武者・騎士・コマンド SDガンダム緊急出撃のOVAおまけアニメ「パパルの暁-冒険少女アルテシア-」にも登場するが、出て来て3秒くらいで死亡する。台詞もほぼ呻き声のみなのにCVは富田耕生氏と豪華。
こちらでは娘がアルテシアとなっており、彼女は突如殺された父親のかたき討ちをする為に旅をする事となる。

…以上のようにSDガンダムではシャアに関係する女性にやたら縁がある
なおシャア本人とは全く絡みがない。代わりにジョニー専用ゲルググをモデルにしたキャラを側近にしている。




◆ドズルは有能?無能?

前述の通り、基本的に有能で部下思いの軍人ではあるが、自分の感情を優先してヘマを打つことが多いから無能という声もある。
しかし宇宙世紀史上でも有数の将軍であるレビル将軍をルウムの戦いで打ち破った時点で、少なくとも並の男では無い事がうかがえる。
「目的はコロニー落としであったのに結局果たせなかった」、「勝てたのはモビルスーツのアドバンテージのお陰で、それも有能なパイロットを多数失わせる結果になった」と言う面も否定できないが、
「レビル将軍を捕虜にする」、「圧倒的物量差の連邦の宇宙艦隊に大打撃を与えて連邦側の戦意を削ぐ」と言う戦果も果たしており、
少なくともジオン側が臨んだ「開戦直後に連邦に大打撃を与えて優勢を確保した後に交渉に持ち込む」と言う目的は果たしている。

その後も重要任務に赴く部隊には出来る限りの支援を行うなど配下に対しても配慮を怠らない周到さもあった。
…尤も「戦力が消耗している状況で急な補給要請の為に要求に満たない戦力しか送れなかった」、「可能な限りの補給を送ったが別派閥の指揮官に着服された」、「敵がこちらの予想をはるかに上回る」と言う様にドズルの裁量では覆せない部分もあった。
この辺りはキシリアも同じような悩みを抱えていたと言える。どれだけ優れたパイロットとMSがあっても、やはりドズル本人が言うように最後には「戦いは数」が物を決めるのだ。

ソロモンの戦いでは援軍を要請しなかった事が敗因とされるが
  • ジオン側はソーラーシステムを感知していなかった*16
  • 突撃艇によるビーム撹乱幕散布戦法によって長距離射撃は封じ込められてしまった。
と言った要因もあり「通常の戦いなら遅れはとらなかった」から援軍を要請しなかったともとれる。
ソーラーシステムを撃ち込まれた際も戦意は衰えず、ソロモンの放棄の際も自身の副官すらも離脱させて単身で殿を務めて連邦側の指揮官であるティアンムと
その周辺の護衛艦隊(おそらくは将軍直属の有能将校の部隊)を討ち取る等敗戦下において出来る限り連邦側の戦力を削ぎ落しつつ味方を逃がす事を考えている等、
ここ一番の胆力も持ち合わせていた事がうかがえる。

以上をふまえると有能であったのは間違いないと言えるだろう。
ただ、こうしたドズルの活躍や有能振りが確認できるのは現場レベル、戦術レベルにとどまっており、戦略レベル・政略レベルではよい影響を及ぼしたとはいいがたい*17
良くも悪くも「戦術家」としての能力が高かった、とも言える。
あるいはこうも言えるか。「粗暴に見えるが実際は人情を理解した将の器だった」とも…。
「ザビ家」として生まれず「単なる一部隊を率いる隊長」であったのならば、彼は更に飛躍し…そして不本意な虐殺をせずに済んだであろう。惜しいところである。

◆余談

  • 担当声優
TV放映版は郷里大輔氏、映画版は玄田哲章氏が声を務めている。しかし玄田氏はTV版ではスレッガーを演じており、映画において攻守交替したとネタにされた。
THE ORIGIN版では三宅健太氏が声を務めている。スーパーロボット大戦シリーズなどでロボットアニメにおける郷里大輔氏担当キャラの後任をよくやっているので違和感が無い。

  • 「ビグ・ザムが量産の暁には」
この台詞はしょっちゅうネタにされており、本当に量産されたり、「量産型ビグ・ザム」がオリジナルユニットで登場したりしている。
余談ながら、ビグ・ザムは映像版ではギレンの開発だが、小説版ではドズル直々の開発となっている。
ちなみに前述では「ドズル本人も妄言と思っていた」と断じたが、実際のところ彼がなぜこの台詞を吐いたかはいまだわからない。もしかしたら既にアムロの見た「悪魔」となっていた結果なのかもしれない。





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最終更新:2024年01月28日 18:28

*1 ただし、富野監督による小説版では実際にキシリアが姉でドズルが弟である。

*2 とはいえその兄妹らもなんらかの救援を向かわせているため、どちらかというと状況、そして父親デキンに嫌われてたというべきか

*3 なお、「ア・バオア・クー駐留軍の主力は学徒動員兵」という内情はキシリアさえ知らなかったため、生前のドズルも知らなかった。一週間後の「ア・バオア・クー防衛戦」でも練度不足だったのに、訓練を一週間早く切り上げてソロモンに送っても、ソロモンの混乱を招くだけだったと思われる。その意味では連邦の速攻戦略は大当たりであった。

*4 あまり言及されないがデギンも一応権力や勢力を持っている。グワジン級グレートデギンとムサイ二隻のほか、アプサラス計画もデギン経由で予算と人員がおりた。

*5 とはいえ階級的にはドズルの方が上。なので軍隊としては目下の人間に頭を下げることとなるので、単なる意地の張り合い以外にも上下関係的な影響も多少はあったと思われる

*6 この「占領したコロニー」とはコロニー落とし用のものではない。ブリティッシュ作戦の戦勝パレードが行われた。

*7 ハマーンの姉であるマレーネ・カーン。カーン家は元々ザビ家の重臣であり家族ぐるみで付き合いがあった。

*8 ただし、ドズルが虐殺した人数はその男の虐殺した人数よりも一ケタ多かったりする。ドズル指揮によるブリティッシュ作戦やルウム戦役の死者は「人口の半分」すなわち55億以上。リンク先の人物はコロニーを複数破壊し、そのほか多くの虐殺も行っているが、それでも5億にはいかない。数の問題でないと言えばそうだが、人情の問題でもないと言えば、両名の差は無きに等しいと言える。

*9 尤も、これは自派閥の不祥事(ホワイトベース隊の取り逃がし&それに伴う地上軍への多大な損害)に対してのケジメと言う意味合いもあるのだが…

*10 唯一、雷雲を実見した経験のあるラルのお陰で収拾は出来たが

*11 この判断に対してはギレンも同じ考えでキシリアからの援軍要請を却下した。キシリアはこれでブチ切れ、やってられるかとばかりに撤退

*12 余談だが戦国時代には武田信玄により同じように無視された徳川家康が背後を突こうと出撃するも、それが罠であり大敗するというエピソードが有り、ドズルのこの状況はそれに似ている

*13 小説版のみに登場するホワイトベースの乗員。非常に優秀なパイロットでありアムロ達にも気に入られていた

*14 ミネバも父親とはわかったが、生きていた事に驚いたのか少し引いたような反応をしていた。

*15 まぁドズルからしたら偽名の事は知らないので「オードリーって誰なんだ」となること必至だが

*16 この点は「コンスコンを出さなければ警戒可能な空域が広がり、もっと早いうちに発見できたのではないか」とも言われるが、ホワイトベース隊の危険性を考えれば放置するわけにもいかなかったためやむを得ないところがある。これはドズルが無能というよりも、彼らの注目度に着目し囮に任命したゴップ提督が一枚上手だったというべきか

*17 「開戦序盤の敵艦隊への大打撃」「レビル捕縛の成功」「ソロモン防衛指揮」「殿としての奮闘」のいずれも戦術レベルの活躍。逆に、問題行動として挙げられる「他派閥への配慮の無さ」「統合整備計画などへの反対」は戦略・政略レベルの話。