キシリア・ザビ

登録日:2021/11/25 Thu 11:44:54
更新日:2024/04/07 Sun 22:07:51
所要時間:約 6 分で読めます





「男子のメンツ! 軍の権威! それが傷付けられてもジオンが勝利すればよろしい!
その上であなたのメンツも立ててあげましょう……」


キシリア・ザビとは、『機動戦士ガンダム』の登場人物である。
CV:小山茉美渡辺明乃(THE ORIGIN)、広橋涼(ガンダムさん)
この項目では注釈が無い限りアニメ本編での動きを説明する。


◆概要

作中の敵役、ジオン公国側の主要人物で、ジオン公国を支配するザビ家の長女である。
ジオン公国軍突撃機動軍司令*1で階級は少将。
冷静かつ冷酷な性格でかなりの野心家であり、既に圧倒的カリスマを持つギレンに成り変わろうと暗躍する、いわゆる「敵の敵」のようなポジションである。
容姿は彫りの深い顔と狐のような鋭い瞳を持ち、怪しい魅力を持つ美淑女…のように見えてまだ24歳というのはネタにされている。 ORIGINで35歳にされちゃったけど。
常に紫色のマスクをしているが、その理由はメディアによってまちまち
公式では「放射能焼けを防ぐため」、小説版では「外している時に限って周囲で血生臭い事件が起きる為験担ぎでつけている」
他にも戦場の血の臭いを嫌悪している為、女を捨てたため等の理由も挙げられている。


◆人物

「これまでのようですね。機密保持のため基地を爆破しなさい」
マ・クベ「はっ。しかし、あそこにはまだ兵士共がおりますが…」
「構いません。何よりも国家機密が優先します」

前述の通り冷酷な性格であり、歯向かうものには例え民間人にも容赦はしない。
その辺りは兄ギレンと同じであるが、彼は歯向かうもの全てを虐殺する一方、忠実な国民に対しては圧倒的カリスマ力で指導をする*2というパワー全振りなやり方をするのに対し、立場の弱いキシリアは諜報等の搦手を好む傾向にある。
キシリアは政治的野心が強めであり、作中の行動はほとんど自己の政治勢力を拡大することに終始している。

兄に対抗するために、モビルスーツやニュータイプなど、ギレンの持っていない新しいものが大好き。
兄か弟かイマイチ不明のドズルが幅を利かせている宇宙で動きにくい事から彼女は地球方面の動きを担当。
地上でのジオンの動きはほとんど彼女の意向によるものである。
特に腹心マ・クベ大佐の活躍は大きく、地球に派遣して鉱物資源を発掘させたり、彼から「新MAが出来た」と聞いてわざわざ地球にやってきてそれに同乗した事もあるぐらいフットワークが軽い。
また地球連邦軍が開発した新兵器ガンダムの性能を目の当たりにしドムの配備を急がせる等、相手を見くびる事はなく戦いには全力を尽くしていた。
ニュータイプに対してもフラナガン機関を創設するなど興味があり、実際に発展させていった。
ニュータイプは非常にややこしい上に皮肉屋なシャアも認めていたため、結局半ば気まぐれ的に殺害されたものの殺意が収まっていた原動力になっていた。
(NTの認識が間違っているようにも見えるが、そもそもNT論自体に問題があるややこしい話なので割愛)


半面、前述の通り兄ギレンと比べて政治力、軍事知識に欠けるきらいがある。
とはいえギレンの能力、智謀が高すぎるだけで決して彼女が劣っているわけではない。
キシリア本人はどちらかというと直接的、短絡的な性格の様にも見えるが、
既に政治権力の大半を掌握していると思わしき兄への対抗もあくまで搦手などを用いて自滅しないように気を付けており、短気は損気にならないように気を付けている。逆にそんな状況でも短気さを隠さないの例がきょうだいのドズルさん。
また物事が思い通りにいかなくとも表面上は冷静さを保っている等、意外と胆力も座っている。
…が、指揮能力に欠けると思わしき描写は多少あり、特に小説版ではその辺が強調されている。
ただ原作の描写が少ないことと人格はともかく才能に秀でた設定のギレン持ち上げなどのためか、外部作品ではいいとこ無しの完全な悪女だったり、最悪妖怪扱いであることが多い。
なお外伝作品「機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy」ではキシリアが独断で作った若者部隊にスパイを送り込み彼らの情報を流させる一方、ギレンは(表向きは)「女子供は守られるべき存在であり戦力にしない」というスタンスを取っていた。
だがノイジーフェアリー隊らの誕生によりそれらの犠牲を美談にし、国民感情を煽り国家総動員を狙っていると言われており、そういう意味でも兄のほうが一枚上手と言えるだろう。


しくじり少将 ~私みたいになるな!!~ 機動戦士ガンダム THE ORIGIN

パラレル扱いのTHE ORIGINにおいてはこの人の謀略の殆どが裏目に出てしまい、赤い彗星のシャアの誕生を許すことになる。
  • 残されたダイクン家をみすみすラル家に奪われる…というか見逃す
  • ラル邸にて会談したキャスバルに言い負かされる
  • ジンバ・ラルに刺客を送ったがエドワゥ、アルテイシアは無事生き残ってしまう
  • (エドワゥ視点で)バレバレの監視を多数送り込んでしまったがために謀略に気付かれる
  • 人違いで本物のシャアを暗殺してしまったため、エドワウが士官学校に入学する隙を作ってしまう
と、物語の結果だけを見れば割とシャレにならないレベルでやらかしている。
ダイクンの遺児であるキャスバルが何故士官学校に入学してジオン軍に入れたのか、という疑問に対する辻褄合わせに利用されたと言っていい。
そもそもやるだけやった後はやる気が見られないデギンはともかく、ギレンですら残ったダイクン家の人間に全く興味を示していなかったことの方がかなり不自然である。*3
もっとも、THE ORIGINではザビ家がジオン・ダイクンを暗殺したというのはジンバ・ラル一人の主張であり、真実とは確定されておらず、そもそもダイクン家をザビ家は敵視していない。
ギレンは成り行きで死んでも特に気にも留めず、サスロはラル家との勢力争いに利用しようとした程度で、ドズルに至ってはむしろ保護しようとしていた傾向もあるほどで、デギンも権力の禅譲さえ終わればそれ以上気に留めることもなく、強硬手段で排除しようとしていたのはキシリアだけ。
下手に藪をつついた結果、シャア・アズナブルという蛇を出す羽目になったとも言えよう。

◆人間関係

「ギレン総帥をあたしは好かぬ……それだけは覚えておいてくれ」

同じザビ家の兄ギレンとは政治的に、ドズルとは軍事的に対立しており、基本的に仲はよろしくない。
とはいえそれは権力争いの範疇であって、ギレンに対して内心までは不明だが表向きの付き合いは普通。
末弟のガルマの事は可愛がっていて本人の希望に配慮して地球方面軍に組み込んではいるが安全な後方に配置していたり、
父親デキンの事もデギンからの態度はそっけないがキシリア自身は気には掛けている。
ガルマの葬儀を静謐な家族葬にするか派手な国葬にするかで父兄の意見が割れた際には、父の意向は理解しつつも兄の意見に賛同しており、協調性もある程度見せる。

ドズルとの関係は少しややこしく、軍事的には対立しており、互いにプライドを優先させて言い争いする事も多かった模様。なお階級的にはドズルの方が上である。
派閥争いが目に見えて激しかったのもこのラインである。実はキシリアは他のきょうだいとの政治部分の争いはあまり描写されていない為なおの事目立つ。
だがガルマが死んだときには共にその死を悲しんだり、
ドズル救援のためにソロモンに部隊を急行させたり(一方のギレンは戦闘前にビグ・ザム1機だけは送ったが、数の不満を実際に訴えたドズルに対してそれ以上の動きはなかった*4*5
当のドズルも今際の際の妻子への指示が「キシリアの元に行け」という旨であったことから、個人間ではそれなりの関係を構築していたものと思われる。
もしかしたら派閥等というものがなければそれなりに仲良しきょうだいとなっていたかもしれない。*6

TV版や劇場版で描かれている人間関係はマ・クベとシャアを除くと上記が大体全てである。
以下の人間関係は後付けであることはともかく、媒体によって描写が異なり公式設定だとは限らないため注意。


生まれと身分だけで現在の地位に立った何も出来ない女と軍の男連中には思われており、彼女の態度はそういった男達への彼女なりの制裁でもある。
幼馴染に「真紅の稲妻」の異名を取るジョニー・ライデンがいる。作品によっては相思相愛の仲だが、いずれも互いの立場や理想、身分の違いから別れざるを得ない結末となる。
幼馴染の立場から彼に言わせれば、以前の彼女は「国を憂い民を想い理想に燃える誰にでもわけ隔てなく優しく美しい理想の姫君」だった。実際、こうなる以前は本当に清純かつ清楚としか言いようが無いほどの姫君だった。
それだけに以前の彼女を知る将校や兵士達からの反発は大きかったと言う。


THE ORIGINで登場した「サスロ」からはその慢心を見抜かれており、失敗を咎める為に平手打ちされる事もあった。
後にサスロは暗殺されるが、手を下したのはこの事を恨みに持ったキシリアではないかと言われているが*7真相は明らかになっていない。
しかし良くも悪くも「平均的な人物」である彼がいなくなった事により、ザビ家きょうだいの不和は更に増大していったという説もある。
ただ一つだけ言えることは、サスロはサスロなりにキシリアの事は気遣っていた事だろう。

家族に対しては複雑な思いを抱く半面、自分の指揮する師団は信頼している。
「自分が発案する事は多いが、その後は他人や部下に任せる」という事が非常に多く、簡単な指示を出した後は全部現場任せにする事がほとんど。
悪く言えば放任主義だが、ジオン公国の重鎮が地球全土の前線指揮なんて無理だし、政治的にも軍事的にも当然のことである。
「全ての物を一から十まで支配し管理したい」と考える独裁者のイメージとしてはかけ離れるが、そういう意味ではザビ家、ないしキシリアも理想と現実の折り合いをつける事ができる意外な一面と言えるだろうか。
とはいえ味方に対しても諜報を繰り返したりと、根元のところでは完全に信用はしていないようだが…。

また失敗を重ねたマ・クベを相変わらず重宝し続けたり、自らに恨みを持つはずのシャア・アズナブルを「幼い頃に遊んでやった」と言い同じく重宝したりと、直属の部下には甘い傾向が見られる。
その一方、ガンダムに資源基地を発見された際には兵の生命を気遣って諫めようとするマ・クベを押し切って基地を爆破しており、下級兵士に対する気遣いはドズルやガルマは無論、マ・クベ未満である。
彼女が言うように綺麗事だけではやっていけないのだろうが、小説版等では、そんな彼女にジョニーは「理想に燃えていて優しかったあなたは、どこへ消えてしまった!」と激怒していた。
だがしかしそんな彼に返した答えは、「私を見捨てたのはお前で、いつまでも居てくれると思っていた。女1人が理想を果たすには綺麗事だけではやっていけない」とのこと。
つまり彼に去られてからああなったらしく、それまでは下級兵士にも分隔て無く優しかったとのこと。
腹心に対する一種の甘さも、そうした生来の気質が影響していると言えるかもしれない。

小説版によると彼女もニュータイプの素質があったらしい。

◆来歴

「あたしは四歳頃のキャスバル坊やと、遊んであげたこともあるんだよ。お忘れかぃ?」

18話でマ・クベと一緒になんか悪役コンビみたいな絵面でアッザムに搭乗し、脱走したアムロ&ガンダムをいじめたのがホワイトベース隊との初邂逅。
…以降は特にアムロ達と絡むことはなかった。
彼女の出番は基本的に兄ギレンや部下のシャアなど、ジオン軍同士でのやりとりの場面ばかりである。

そんな中でもキシリア達ジオンは連邦と決死の戦いを続けていたのだが、戦況はじわじわと不利になる。
そしてほぼ占拠間近だった地球にて大反撃を食らい撤退。戦場が宇宙に移るや否や、軍事的に対立していたドズルも死亡した。
いよいよ追い詰められたジオンはア・バオア・クーでの決戦となる。
勿論キシリアもそれに参加。
旗艦グワジンに乗り込み、グラナダからの艦隊を率いてソロモン(コンペイトウ)から出撃する連邦艦隊へ反復攻撃を行う。
自分が丹精込めて開発・編成させたニュータイプ部隊が壊滅した事に愚痴をこぼしながらも戦いの流れを見ていたが、父デキンが独断で連邦軍の総司令官レビル将軍と接触。
この時ギレンにより、ソーラレイでレビル共々デキンも焼き払われた。
キシリアはこれを「ギレンが父を謀殺した」と判断
(付け加えるとソーラレイは見事に秘匿されていて、デギンの呼びかけがあったとはいえ連邦は射程内に入っても完全に無警戒だったなど、デギンの行動の是非はともかく彼を囮にしなければいけない事情は特になかった)
元々兄に成り変わろうとチャンスをうかがっていたキシリアではあったが、これにより明確に叛意と殺意を抱く。

ギレンの思惑はともかくレビル将軍の死と連邦艦隊の漸減で、開戦前の戦力比の不利を覆して膠着状態に持っていくことに成功。
(この段階でも戦力比は連邦の方が上回るとする説が多く、いわば攻城戦なので攻めあぐねていた模様)
この戦いのさなかキシリアはギレンに軽い感じで言葉をかけ、ギレンが父殺しを図ったと十分とれる発言をした。
このギレンの「隙」をキシリアは見逃さず、銃を向ける。


「意外と……兄上も甘いようで」

その言葉を手向けに兄の頭を銃で打ち抜き暗殺。
直前のギレンは銃口を向けられながら、「冗談はよせ…」とせせら笑うほどの余裕を見せていたが、
これは脅されようが裁判にかけられようが自分の権力でどうにでもやりこめると判断したためと思われる。
それに対してキシリアの目的は既にギレンの暗殺だったという食い違いであり、上記の父殺しの発言も合わせて「兄上も甘いようで」という発言である。
また事前に言質を取ったことでギレンが死んでいればその後の裁判もどうにかできると判断(これも実際に劇中で言及している上、ギレンがソーラレイで父ごと狙ったのも事実である)。

遂に兄に代わって総司令となる…のだが、総司令を消すタイミングとしては最悪だった…と言われることも多いが。
ここがギレンを後の憂いもなく殺すことができる唯一の場面であり、そして、キシリアはその絶好の機会を逃すつもりはなかった。
またギレンは優位と見ていたが(実際にどうかは色々な説があるが)、少なくともキシリアはこのままでは危ういと判断していたことがうかがえるため、キシリア視点ではおかしくない行動である。
作中でもギレンが余裕を見せる一方でキシリアが悪いニュースに反応しているシーンもある。

キシリアはついに兄から、その命ごと実権を奪うことに成功したが、総司令が突然消されたことによりジオン軍は混乱に陥り、
ドロス等の基幹部隊の壊滅や、ギレン派のデラーズ艦隊の戦線離脱(※ただしデラーズ視点でギレンが暗殺されたと判断する根拠はない)などが相まって戦線は崩壊した。
ジオン軍の混乱そのものは、実際のところキシリアの指示もあって3分程度で落ち着いたとされるが、戦場においてその3分は非常に大きかった。
また3分ほどで収まったのも傍にいたトワニング准将が機転を利かせたからであり、彼がいなければ更に長引いた可能性もある。
ただし混乱はあくまで司令部だけの範囲で、そもそもギレンが暗殺されたということは士官を含む大半の兵士達には伝わっておらず目の前の敵に手いっぱいであることと、司令室も全兵士に1から10まで指示する場所ではないので、現実的に考えるとギレン暗殺が敗北の全要因とするのは無茶がある論だったりする。
キシリアが期待していた新鋭機リック・ドムゲルググも、学徒兵が多く乗っていたことで活躍できなかった。実はキシリアは指揮権掌握からしばらく後にトワニング准将に質問・確認するまで学徒動員兵のことを知らず、知らないままMS隊を前面に押し出したことも問題だった模様。

また、あくまでもこれはア・バオア・クー戦のみの話であり、仮にこの戦いでギレンが指揮を続けて更に連邦軍を退けられたところで、地球から追い出され、ソロモンも奪われ、喉元まで迫られている状態で頼みの戦力が月と本国、地球(それも、僅か)にしかなく、兵士も兵器も消耗しきっているという状態なので、結局ジリ貧でしかないのだが。
つまりこの時点で「ジオン軍は首の皮一枚でつながっている状態」だったのだ。そしてその皮を引き裂いてしまったのはキシリア本人と言えるだろう。

その後も少しの間キシリアは戦いの推移を見守るが、腹心だったシャアの乗るジオングがガンダムと相打ちになってやられてしまう。
「赤い彗星も地に落ちたな…」と一瞬失望するものの、すぐに冷静になりあのシャアを戦死させた(ようにしか見えなかった)ガンダムの力を警戒する。
またジオング撃墜に前後して、ア・バオア・クーの二つの主戦場はいずれも連邦軍に制圧され、劣勢が明確となる。
トワニング准将すら「今や脱出すら至難の業」と嘆くほどの情勢だったが、彼女は再起に向けて戦艦ザンジバル(ORIGINではチベ級パープルウィドウ)に乗って脱出を目論む。

しかし、シャアはジオングを墜とされはしたものの戦死は免れて脱出しており、ブリッジの前にバズーカを持って登場した
キシリアはそれでも「シャアか?」と身を乗り出して確認しており、彼の生存自体にはさほど驚いてはいなかったが、直後彼がバズーカの砲口を向けたのを見て驚愕する

彼女はそのまま狙撃され、首がぶっ飛んでなんか妙にグロい状態になって死亡。ブリッジにいた部下たちも直後に爆炎に飲まれ、司令部は壊滅。
さらに乗っていたザンジバルもすでに制空権を抑えていた連邦艦隊の砲撃によって轟沈した*8
こうしてシャアの「ザビ家」への復讐は完遂され、一人の女の野望は潰える事となった。


その後は兄共々「地球に戦争を仕掛け大量虐殺をした悪のザビ家」として、死人に口なしとばかりに戦争の責任を押し付けられてしまった。
確かにキシリア本人にも責任は多いにあるだろうが、しかし実際に責任を覆いかぶさるのは死んだキシリアではなく今も生きている元配下達である。
「戦犯部隊」として扱われた彼らは連邦は愚か、味方であるはずのジオンにすら忌み嫌われた。
キシリアの仲間達が「人として生きるための戦い」は長きに渡り続くのであった…。


◆その他の媒体での活躍

小説版ではギレンがソーラ・レイで焼き払おうとしたのは父デキンではなく自分(とドズル)であり、ランバ・ラルとハモンから受けた警告が無ければ自分もそこで暗殺されるところであった。
その事でギレンと完全に敵対することとなり、なんとシャアやペガサスクルーらと協力体制となり、ズムシティを強襲。
最終的にシャアの駆るリック・ドムの手のひらの上からギレンを射殺する。
…直後、そのシャアが「掌を返した」事により彼女も死ぬこととなった。
なお小説版では「女」である部分が強調されており、シャアのような息子を産みたいとまで思っていたようだ。
後のスパロボで味方ポジションになることがあるのはこの小説版が元ネタだろうか。

トミノメモではギレンを暗殺せずに宇宙用アッザムに乗り連邦と戦い敗北。
その後はやはりシャアに殺されるのだが、彼の正体を既に知っていたために覚悟して討たれた。


◆配下部隊

その事とMS大好きな思考が組み合わさった結果、配下や私兵のMS隊がめっちゃ多い
現在確認されているだけでも…

黒い三連星
マッド・アングラー隊
キマイラ隊
サイクロプス隊
海兵隊
マッチモニード
屍食鬼隊
闇夜のフェンリル隊
ブラウアー隊
サザンクロス隊
グラナダ特戦隊
マルコシアス隊
ノイジー・フェアリー隊

と13部隊もある。
調べたらまだまだありそうなので見つけたり増えた場合は追記願います。
彼らには最新MSを積極的に提供されており、一年戦争のMS史をややこしくしながら多種多様な運用がなされ成果を上げている。
ドズルに左遷させられた後のシャアや、ジオン軍の地球侵攻作戦の実質的な指揮官である「マ・クベ」らも実質的に彼女の私兵と言えるだろう。
キシリアは少なくとも師団を7つも持ってるため、探せばまだまだまだまだ増えるいるだろう。
なお現実でいう「師団」の人員は6,000人から20,000人という大規模な物。
ジオンの師団が現実のそれと同じとは限らないが、桁外れの人員を持つことに間違いはないだろう。


メタ的な話を言えば「冷酷無慈悲ながら新しい人材やMS大好きだけど放任主義おばさんお姉さんの配下」となれば、既存機体を改造した新型MSや試作機が非常に出しやすかったり、
「妖怪」の配下だから妖怪染みた悪役部隊を出したい場合でも彼女の下というだけで無駄に説得力が生まれるので、とにかく使いやすい為にこうなっている。
第一次ガンダムブーム全盛期にはMSVのキマイラ隊、宇宙世紀を舞台としたOVA展開では0080のサイクロプス隊、0083では海兵隊と、
一年戦争外伝のブームが本格化する直前の1990年前後には映像媒体でそれらを満たす部隊が複数揃っていた事も大きい。

そうでなくても激戦区かつ話が作りやすい地球に関しては彼女の管轄で、地上軍=キシリア軍となるほうが自然。
更に他の派閥の部隊はマ・クベのせいで作品の華であるMSが出しにくいとか、
現場に出たがりアクの強いリーダーが頭に設定されている為に話を広げにくい(例:ランバ・ラル)とか、活動期間が短い(例:ガルマ)とかいろいろ問題がある。
更に言うならラル隊は白兵戦によるゲリラが中心かつ「ラルとハモン、そしてそんな2人に付き従う気のいい配下達」という形状が既に出来上がっている、ドズルは実はMSに対して懐疑的。
ガルマはMSの事は「所詮陸戦兵器」とし、実質的にはドップ等の通常兵器を重視していた事もある。
彼らの配下の物語もそれはそれで面白そうではあるが、ガンダムシリーズはMSが出てきてなんぼの物語。
「一年戦争のジオン軍のとあるMS部隊の物語」を作るには、キシリアの私兵や配下で多くは地球方面の部隊というのが一番作りやすいのだ。

ちなみに各隊には「局地戦戦技研究特別部隊」だの「地球方面軍第2地上機動師団第11MS大隊司令部付き特務小隊」だの長ったらしい正式名称がついているが、誰も覚えられない不都合が多いのか通称を名乗っている方が多い。
あの黒い三連星も正式名称は「突撃機動軍第7師団第1MS大隊司令部付特務小隊」である。
その通称は基本的に伝説の魔物の名前で統一されている。
スーパーロボット大戦シリーズでもオリジナルの配下部隊が「オルトロス隊」とこの辺りは徹底されている。

だがキシリアの影響力は本人が思っているより強く、こういった息のかかった部隊が現場に現れ、更には介入までしてくる為、
地球方面の現地ジオン軍から当該部隊、ひいてはキシリア、ザビ家の印象は最悪に近い
中には明らかにキシリアの威を借りて動いている部隊もいる。
特にオーストラリア方面軍には徹底的に嫌われており「妖怪」とまで陰口を叩かれている。
部隊も問題が無いわけではなく、前述のクベさんも個人的な考えで地上の味方にMSや物資を回さないでパクるのは序の口。
とはいえこれは送り込んだドズルにも問題がある上、WB隊と直接やりあうだけ被害が大きくなる。補給線を叩いたり罠を仕掛けるべしと考えていたこともあるが、連携という部分では疑問が残る。
それでもマさんは結果が伴わなかっただけで少なくともジオンの勝利のために動いていたのだが、反面マッチモニードやグール隊のように自分の楽しみで味方や人類すら抹殺する輩すら存在している。
そうでなくてもなまじ腕が良いため戦果を上げ続けたり欠員などが発生しなかったりする部隊もあり、そういった彼らは仲間を失った他の部隊とのわだかまりを感じることもあったという。
実際ジャブロー攻略戦を戦死者0で乗り切った闇夜のフェンリル隊は、撤退したキャリフォルニア・ベース内で仲間を失った部隊ばかりでがらんどうになった基地内にて居心地の悪さを感じていた。

前述の通りキシリアはほぼ全部を現場に任せているが、成果を上げた時にはねぎらいの言葉を掛けたり、やらかした際には責任を感じ謝罪する姿も見られる。
…悪く言うのならそれだけしかせず、その後のケアや支援を全くせず実際のところ実働部隊は現地にて物資不足になっている事が多い。
例えばノイジー・フェアリー隊は元々の物資や偶然落ちてきたり落ちてたものを現地改修しながら頑張っている。その落とし物がヒルドルブだのケンプファーだのやたら豪華なのは秘密。*9
闇夜のフェンリル隊に至っては初期のMSすら足りておらずパイロットが一人宙ぶらりんの状態でスタート。
後に補充されたが、今度は予備のMSがほとんどないという非常にきつい状態となっていた。
忠誠心溢れるマッチモニートに関しては高性能のドムを5機も用意したが、本来いるはずの整備兵がおらず現地の整備隊の力を無理矢理借りて補給をしている始末。*10
屍食鬼隊なんかは敵、ないし味方から物資を奪って使用していたが、やはり整備能力が無い為にMSは基本使い捨てある。*11
それでも初期にMSを配備する際は高性能な物をしっかりと渡しているが、基本的に補充要請が通っている気配はない。
…とここまで書いてはいるが、数も資源も多い地球連邦を相手にするのにはジオン軍全体が物資、MS共に深刻に不足しているためキシリアとマ・クベの責任とも言えない状況である。
むしろマ・クベは物資や補給線を非常に重要視しているため、他派閥はまだしも自分たちの配下の補給に不理解なわけがない。
この事に関しては、ジオン軍は戦争初動で等で和平まで持ち込めずジリ貧になってしまった結果とも言えるが、そんな状況でギリギリながらも部隊としての体を成していた事に関してはキシリアの手腕と言えるだろうか?
それに補給がカツカツな方が物語的に盛り上がるメタ的な事情もある。

実際、若者も実力者であるのなら容赦なく軍事登用するキシリアに才能を見出された事を喜ぶ兵士も存在している。
事実ノイジーフェアリー隊は「バトルオペレーション Code Fairy」の漫画版にて「キシリア様だけが国の事を思い、女子供でも才能をあるものを正当に評価している」と称している。

またこの関係でキシリアの名前が出る事は多いのだが、本人が直接登場することは意外と少ない。
酷いときにはコロニーが落ちた地で…の小説版のように台詞が「奪取せよ」*12の4文字しかない事も…。なおその命令を受けたマッチモニートは破滅と死に向かってDASHした。

ちなみに「屍食鬼隊」はガンダム戦記の小説版に置いて、「権力者というものは部隊を自分の趣味で美男美女で固める」と説明されている。
実際に彼らはそうなのだが他に該当する部隊は特に無く、この小説独自の設定である。
一応、女性だけのノイジー・フェアリー隊は該当するかもしれないが、整備兵などのモブキャラは整った顔つきであるが多少野暮ったい容姿で…要するにモブ顔である。
女性の所属率が結構高いのもキシリア軍団の特徴だが、男性はベテランパイロットや荒くれ者の比率が妙に高い。
どちらかというと実力さえあれば容姿、性格、性別、年齢を気にしない部隊構成となっている。
また(一部を除いて)部隊間での仲は良く、部隊員はMSの操縦技術以外にもそういった点を重視しているのだろう。少なくとも指揮官は部下達を統率する能力に長けている者が多い。(方法はカリスマや人格、もしくは脅迫と様々であるが)



◆ゲームにおいて

スーパーロボット大戦シリーズ
『1st』で死亡したキャラの上、『1st』の参戦が少ない事もあり、宇宙世紀ガンダムの参戦回数は多くても彼女の出番は少なめ。
が、ギレンと敵対したキャラという事もあり、登場する際はジオンにありながら主人公側と和解する展開も何度かある。

キシリアが特に目立っていたスパロボ。
外宇宙からの謎の生命体ミューカスの侵攻やその他勢力の暗躍もあり、「このような状況でジオンと連邦で戦争をしている場合ではない」と判断し、表向きはジオンに従いながらも独自組織のオルトロス隊を結成。
(部隊にはシャア、ゼクス、ブシドーらが所属している)
シャアにはクワトロ名義で連邦へ二重スパイをさせる等、裏で主人公の所属するコネクト・フォースへの協力を取り付けようと頑張っている。
最終的には某野望シリーズよろしく「正統ジオン」を結成してギレンとは袂を分かつが、ギレンも生き残る形でジオンとの戦争が終わった為、ギレン、キシリア、ガルマが生き残るかなり平和的な結末を迎えた。
なおドズルだけは原作通り戦死した。

●ギレンの野望シリーズ
一年戦争が主な舞台なため皆勤賞。ギレンでプレイするジオン本編の場合そして父親のデギンをソーラ・レイで消し飛ばさなければ一年戦争以降も取り扱うナンバリングなら意外にも最後まで尽くしてくれる。寧ろガルマやミネバにつられて新生ジオンやアクシズ*13に行ってしまうドズルの方が敵対しやすいまである
一方で彼女独自のシナリオとしてマスクを取っ払っい覚悟を決めた正統ジオンもあり、そちらでは総大将も務める。ちなみにこのシナリオでは裏切ったり逆襲することに定評のあるシャアが何故か最後まで味方として尽くしてくれる。

能力的には基本的な戦闘力は艦長としては可もなく不可もなくといったところだが、少将というかなりの地位に加えて指揮も魅力もかなりの値を持つため司令塔としては申し分ない。更にはMSは裏技を使わないと乗れないがMAには無条件で乗れる(原作でアッザムに乗っていた為か)。上記の通りソーラ・レイでデギンを殺さなければ最後まで尽くしてくれるので積極的に前線に出して部隊の底上げをしよう。
一方でランバ・ラル隊にドムを補給しようとすると妨害しようとしたり、マ・クベにオデッサの指揮をさせて核を使わせその後何故か彼の処置を穏便に済ませようとするなど、重要なイベントでの提案には首をかしげたくなることもしばしば。

彼女率いる正統ジオンは赤い彗星やブラナガン機関のNT、マ・クベ、黒い三連星、紅い稲妻、サイクロプス隊などなど人材が豊富な上に、既に少佐以上で即部隊を任せられる司令塔や、初期階級が大尉で少佐まであと少しの司令塔候補が結構いるのも強み。
更には初期では生産はできないがすでに配置されてる機体にエルメスが数体あるため、それらにNTを乗せてしまえば宇宙での制圧にはほとんど苦労しない。
イベントで強力なユニットであるサイコガンダムとバウンド・ドックの開発プランも確定で入手出来るので、外伝シナリオでは屈指の難易度の低さを誇る。

◆余談

  • 死亡シーンについて
シャアにバズーカで撃ち殺されるシーンは銃弾が頭を跳ね飛ばし引っ張るように体を引きちぎり、後ろで爆発した際に肋骨の見えている上半身が帰ってくるという非常にグロテスクなシーンとなっている。
その際周りのジオン兵も巻き込まれて死亡しただけでなく若干モツが見えている
この気合の入ったシーンを書いたのは板野サーカスで有名な板野一郎氏だが、さすがの富野監督もこれはアカンと思い、TV版ではエフェクトで見えにくくしている。なのだが劇場版では立派な人体サーカスが拝める事に。

  • 声優ネタ
TV、劇場版でキシリアを演じた小山茉美氏はザビ家きょうだいを演じた声優では一番の若輩者であった。
またキシリアを演じるまでは高い声の少女らしい役柄が多く、そういう意味では「悪の女ボス役」というのは大抜擢と言えよう。
ちなみに「ギレンのような演説をしたい」と常日頃から思っていたらしいが、それは機動戦士ガンダム MS IGLOOにて叶うこととなる。

また彼女は後に『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』にてタリア・グラディス役を演じており、同作にはシャア役の池田秀一氏もギルバート・デュランダル役で出演している。
『ガンダム』とは方向性が違うが、こちらでも小山氏と池田氏のキャラは複雑な関係性にある。
それはそれとして、小山氏は「最終話はデュランダルにバズーカを撃ち込む」「デュランダルにバズーカを撃ち込みたい」とキシリアの最期を意識した冗談を飛ばしていた。

小山氏は他にも機動戦士ガンダム 第08MS小隊のカレン・ジョシュアを演じている。
…が何の因果か同じ小隊のテリー・サンダースJr.の声が玄田哲章氏、要するに派閥争いしたキシリアとドズルが同じ小隊なのであるそれと隊長は後のハヤト・コバヤシ
とはいえドズルは劇場版の時点で声優が変更されている為か、小山氏のキシリアめいたジョークは見受けられなかった。

  • フルカラー劇場にて
SDガンダムフルカラー劇場』ではジョニー専用ザクから、
「キシリア様はシンデレラの悪い継母のような、眠れる森の美女の悪い魔女のような、白雪姫の悪い女王のような素晴らしいお方なんだぞ」
と、全く褒め言葉になってない紹介を受け、背後から銃殺している。

  • SDガンダム外伝にて
円卓の騎士編に登場。しかしゲームや漫画でボスとなっているガルマやドズルと違いカードとして登場するのみ。HPは1000と人間にしては高めで妙に美人。
役割も妙にかっこよくブリティス城陥落の際に撤退する軍の殿を務めたという。真っ先に逃げ出そうとした原作とは大違いだ。




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最終更新:2024年04月07日 22:07

*1 が、「ガンダム」本編18話の冒頭では「ジオン軍宇宙攻撃軍総司令」とナレーションされていたり

*2 ※念のため補足するとカリスマ性があるのは確かだが、ギレン含むザビ家を嫌う者や、あくまでジオン公国に従っているだけでザビ家はどうでも良いという者も多い

*3 当時のキャスバル、アルテイシアは幼い子供であり、側室のアストライアが居たとしても政治的影響力は全く無い。その間に権力がザビ家に移ればダイクンの遺児が生きていたとして何ら問題はなく、むしろ積極的に排除するほうが不利益とも考えられる

*4 ギレンの場合、ビグザム以外の手札が「ア・バオア・クー守備隊」「ソーラレイ」しかなく、前者は訓練中・後者は建造中で動かせる状態ではなかった。確かにベテラン兵士もいくらかいたが、彼らも新兵の訓練をしなければならず、精鋭だけを引き抜くと言うこともできなかった。

*5 情勢からソロモン防衛は厳しいと十分判断できるので(当のドズルも強い危機感があったので訴えたのであって)ソロモンを放棄してア・バオア・クーなどに合流させる道もあったのでは?と思われる。ドズルが戦わずしてソロモンを放棄するとも考えにくいが。

*6 憶測であるがドズルは「女性に対して優しい一面」があるのだが、強い人間でありたいキシリアにとってそういう見方をされるのは抵抗があったのかもしれない

*7 サスロとドズルが乗っていた自動車に爆弾が放り込まれた際、デギンはおろかギレンですら冷や汗をかいて動揺しているのに対し、キシリアは驚くそぶりを見せず隣で慌てふためいていた幼少のガルマを叱責している

*8 ザンジバルの右側にサラミスが、左側にはテレビ版ではマゼラン・劇場版ではサラミスが陣取り砲撃をしていて、シャアがやらずとも脱出は困難だった模様(実際トワニング准将もその旨発言していた)。ただしザンジバル自体も非常に強力な戦艦なので不可能だったとまでは言えない

*9 一応ケンプファーは正式な補給だが、補給位置がかなりズレていたので苦労することになった

*10 挙げ句地元ジオン軍と揉めてオーストラリア内での補給が非常に困難になってしまった

*11 流石に基地の人間を皆殺しにしてまでMSを奪った際には現地の人間に処理されたが

*12 マッチモニートによって連邦軍トリントン基地にある核兵器の情報をもたらされた際の反応

*13 ジオンの系譜限定