ぼくのなつやすみ

登録日:2020/07/28 Tue 15:23:51
更新日:2024/03/31 Sun 23:19:32
所要時間:約 16 分で読めます





『ぼくのなつやすみ』は、ミレニアムキッチンが開発。ソニー・コンピュータ・エンターテインメント(SCE)から00年6月22日に発売された初代PS用アドベンチャーゲーム。

【概要】

ミレニアムキッチンが設立された年でもある、97年の暮れ頃から開発が進められ、当初は99年秋頃の発売が専門誌やPVでも予告されていたのだが、後に「夏休み商戦に合わせた方がいい」との判断から、初代PS用のソフトながら発売を間近としていた次世代プラットホームであるPS2の発売後となる、00年の初夏まで延期されることになった。(PS2がPSの互換機だったことも安心させたのかもしれない)
そんな訳で、世間ではPS2の話題で持ちきりであったが口コミにより話題を集め、13万本を売り上げるヒット作となった。

キャッチコピーは「なくしたもの思い出しゲーム」。

第5回日本ゲーム大賞ニューウェーブ賞、パッケージデザイン賞受賞。
第3回文化庁メディア芸術祭展示作品。

夏休み体験アドベンチャーと銘打たれており、3Dで再現された田舎町を舞台に、都会からやって来たボクくんを動かし、過ぎし日の夏休みを追体験することを目的としている。
……ただそれだけのゲームなのだが、プレイするだけで涙腺崩壊する大人が続出した罪深い作品である。
勿論「夏休み」を題材とするだけあって、子供がやっても楽しめる。ボクくんよろしく意味がわからない話も多いだろうが。

【その後の展開】

本作の好評からシリーズ化され、現在までにナンバリングでは『4』まで、初代と『2』のリメイクを含めると全6タイトルが発売されたが、シリーズ10周年を記念して発売されたリメイク版『2』以降は新作のリリースが途絶えてしまっている。
しかし、現在でも“大人もはまったゲーム”や“忘れ得ぬ名作”として、本シリーズを挙げる声は止んでおらず、毎年夏になると新作を望む声が聞かれる。
エロ界隈にも大きな影響を及ぼしており、特にエロ同人ゲーム界隈だとぼくなつパロは一つのジャンルと化しているほどである

シリーズ累計で120万本以上を売り上げており、特に『2』は初代のヒットから宣伝にも力を入れられていたことや、新プラットホームとなったPS2の好調もあってか、シリーズ累計の過半数となる70万本以上を売り上げている。

基本的には子供の視点で自由に夏休みを満喫することを目的としているのだが、挑める“遊び”には諸々の達成要素もあり、ゲームとしてやり込める要素もある。

また、特に初代と『2』に顕著なのだが、お世話になる親戚の家や、関わりを持つことになる大人にもバックボーンとなる物語が用意されているのが特徴。
それらは、ゲーム中ではさらりと流されている部分ではあるし、ゲーム中のボクくんには幼すぎて理解しきれていないという描写となっているが、ボクくんを通してゲームに入り込んでいるプレイヤーの心を打つ程の重さを持つものも少なくなく、大人になってから改めてプレイしてみて衝撃を受けたなんて話も聞かれる程。
こうした要素については賛否もあったのか、特に大人の登場人物が多かった『2』を頂点として『3』以降は重くなり過ぎないようにされていると分析されるが、反対に物語が軽くなってしまったとの意見も出た。

シリーズを通して、原作と監督、シナリオはミレニアムキッチンの代表でもあるゲームデザイナーの綾部和が手掛けている。

また、キャラクターデザインをシリーズ通してイラストレーターの上田三根子が担当しており、彼女の描くポップなキャラクター達が見事に3Dで表現されてイキイキと動いているのも大きな売りの一つ。
この為、本作の代表的な通称(略称)としては“ぼくなつ”が無難で正統派と言えるが、上田三根子のキャラクターと言えば…ということで“キレイキレイ”なんてのもある。*1


【ゲームの進め方】

1975年(昭和50年)8月。
お母さんが臨月を迎えたことから、田舎に住むおば夫婦の元へと預けられたボクくんを操り、様々な田舎の夏を追体験する。

無印の舞台となるのは北関東にあると説明される“月夜野”で、群馬県みなかみ町(旧月夜野町)に同名の地名が存在しているものの、実際のモデルとなっているのは山梨県の道志村である。
ゲーム内の環境音も、デザイナーの綾部和が自ら道志村に赴き現地の音を録音したものを使用している。


本作では『昆虫採集』『魚釣り』『凧あげ』に挑むことが可能。
特に『凧あげ』は無印のみのオリジナル要素となっており、おじさんに作ってもらった凧を規定の高度まで上げることで次の凧を作ってもらえるのだが、作成には必ず2日かかるので、全種をコンプリートしてフラグを達成するまでには相応の時間を擁する。

当初は親戚の家の周辺にしか行けないのだが、プレイ次第で活動範囲を広げられ、フラグを成立させることで地元の子供達や住人達との交流も可能となる。
特に、地元の子供達の仲間となることで遊べるようになる『虫相撲』は熱く、続編以降にも引き継がれると共に、シリーズを通しての売りの一つとなっていった。
そうした数々のイベントをこなすことにより、絵日記の内容も変化する。

勿論、アグレッシブな夏休みを過ごさずに親戚の家に引きこもったままで1ヶ月を過ごすアニヲタ的なことも可能であり、そんな毎日を送っても必ずエンディングは見られる。
どんな過ごし方をしようとそれは紛れもなく夏休みであり、そして終わりがある。

エンディングは全5種類。
ゲーム中に用意された15種類の達成要素(イベント)を幾つこなせたか(クリア)によって内容が変化する訳だが、そのどれもが、その時のプレイによる“正解”である。(一応、現在(将来)のボクくん(語り部)の境遇が達成が多い程に良くなっているのだが、5種のエンディングの何れもが味わい深く、明確に甲乙は付けられないとの意見も根強い。)

本作では6時の起床(ホタルイベント除く)と22時の就寝は固定であり、一日の終わりに絵日記が書かれて翌日に進む。
続編以降では時間の進みかたを変えられるようになったが無印の時点では不可能で、しかもマップ切り替えによって20分も時間が進んでしまうので、シリーズでは最もフラグ管理が厳しい。
無印では手持ちの時計も持てないため、夕方にもなると、おじさんがいつ夕食(その日のタイムオーバー)を告げに来るのかとビクビクしたボクくんも少なくなかった筈である。


主題歌は大藤史が歌う『この広い野原いっぱい』(オリジナルは森山良子)のカヴァーで、この路線は続編以降も恒例となった。


【リメイク版】

リメイク版となる『ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とテッペン山の秘密!!』は、06年6月29日に発売。
対応ハードはPSP

イベントが追加され、PS版よりも登場人物が増やされている。
ボクくんの声優である進藤一宏も新キャラクターの声で参加しているが、当時のボクくんの声は出せなくなっていたため、ボクくんの新規の台詞は以前に収録された未使用のものが使用されている。
この為、リメイクではボクくんの声優は進藤一宏(子役時代)となっている。

昆虫採集で捕まえられる虫の数が64種類から128種類に。
まだ採ったことのない虫が出た場合には画面中に“NEW”の文字が出るようになって解りやすくなった。(『3』からの新要素を取り入れたもの。)

『虫相撲』では“お気に入り”の虫を周回プレイで引き継ぐことが可能に。
また、アドホック通信で“お気に入り”の虫を交換可能になった。

PSPでは振動機能が無いため、釣りで魚がかかった時には“HIT”マークが出る。


【登場人物】


  • ボクくん
声:進藤一宏/進藤一宏(子役時代)
初代ボクくん
お母さんが臨月を迎えたことから8月をおば夫婦の下で過ごすことになった小学3年生。9歳。
都会生まれの都会育ちながら、好奇心旺盛で田舎の自然にも物怖じせずに挑んでいく。
「絵日記」がとても子供離れした上手さ。
中の人の進藤一宏は、無印の収録当時は本当に子役(小学4年生)だった。
優しい心根の持ち主ながら、子供らしい無邪気さで空気を凍りつかせる発言をしたり、思わぬ事態を引き起こしたりといった場面もある。
本作でのキャラ造形は、続編以降のボクくんにも引き継がれていく。しかし、この頃は斧で木を斬り倒すのにも日数がかかったりとリアリティーがあって普通。
後に綾部和のTwitterにより名字が“久保田”であることが示唆されている。(クボタボクで回文となる)


  • おじちゃん(空野優作)
声:佐々木勝彦
ボクくんがお世話になる空野家の家長で陶芸家。
陶芸の仕事の為に月夜野に移住したのだろう。
家の敷地内に工房(月夜野窯)があり、昼はそこで仕事をしている。
空野邸は一見すると単なる田舎の民家なのだが、元は明治時代に建てられた金沢の民家がそっくりと移築されたもので、そこに空野家が引っ越してきたらしい。
眼鏡をかけたインテリ風だが、優しくも逞しいお父さんである。
手先が器用で家の目の前の川にかかった橋もお手製らしいが、工房の棚だけは何度修理しても落ちてしまう(フラグ)らしい。
ボクくんにも凧や毛鉤を作ってくれたり、夕食時になると遊びに出ていたボクくんを文字通り遠くまで迎えに来る
空野家でもスイカ等を育てているが出荷はしていない。……が、スイカ泥棒に悩まされている上に巷で味が子供達の評判になっていると聞いて困惑している場面も。


  • おばちゃん(空野薫)
声:一城みゆ希
ボクの父親の妹にあたり、空野家を切り盛りする才色兼備で料理上手な溌剌としたお母さん。
溌剌すぎてオリジナルの歌が飛び出すことも。大事な大事なてが~み~♪
以前はカメラマン志望だったのか、東京でプロの助手をしていたこともあるらしく、現在でもカメラを持っては月夜野に撮影に繰り出しており、ボクくんの写真も撮ってくれる。
おじちゃんよりも若々しい印象だが、実は姉さん女房である。
夕飯前に話しかけるとメニュー当てクイズを出してくる。


声:坂本真綾
空野家の長女で中学3年生。
高校受験を目前に控え、毎夜の様にクラリネットの練習に励む。
練習曲は「マイ・ボニー」だが、あるタイミングでは「ハッピーバースデートゥーユー」を演奏してくれる。
当初は姉妹の部屋に立ち入ることは出来ないのだが、あるタイミングで入ることが出来た後は勉強してたら邪魔しないことを条件に、いつでも遊びにくることを許してもらえる。
説明書では“しゅしんき(思春期)”と注意されているが、割と毒舌なボクくんのことも笑って許してくれる優しく前向きなお姉ちゃん。
だが、大事な手紙を出した後に少ししてから……。最終的にはボクくんがうらやまけしからん体験をするだけか。


  • 詩(しらべ)
声:最上莉奈
空野家の次女で小学2年生。
ちょっと名前が難しい。
小生意気な性格で、いつも家の近くで一人で遊んでいる。
一応は年上のボクくんにも上から目線でズケズケとした物言いをするが、徐々に打ち解けてゆくことに。
夕食後はたった3つしかチャンネルのないTVにかじりついている。
体が小さいのか“チビ娘”というあだ名で呼ばれることを嫌っていて激しく怒るが、ボクくんは慣れてからは普通に使っていた。やめたれよ。
この年齢にして複雑な乙女心の持ち主でボクくんとの別れが迫った時には…。
ひまわりが好き。
ボクくんと同じく、無印の収録時には演じている最上莉奈は子役(小学2年生)であった。


  • ケン坊
空野家の愛犬。
ある事情からボクくんに毛をむしられることも。

  • ノラ
空野家で飼われている乳牛。
元は野良牛だったからノラ。


  • ガッツ
声:高山みなみ
小学5年生で地元のガキ大将。
空野家の畑からスイカを盗んでは秘密基地に持ち帰って食うような悪ガキだが、話の解るボクくんを気に入って即座に仲間に入れたり、皆の紹介の際にはボクくんに年下の手下(メガネ)をいじめないように釘を刺す等、根は優しい。


  • ファット
声:伊倉一恵
小学4年生で太っている。
みんな知っているが密かに萠ねえちゃんに憧れている。
あだ名の由来は英語を教えに来た外人の先生に「オーファット」と言われたかららしい。(?)
尚、続編にはファットに相当するキャラのみ存在しない。


  • メガネ
声:大谷育江
小学2年生で、悪ガキグループでは最年少ながら頭がいいと評される程。
本が好きで、周りが本を読まない為に少々肩身が狭かったが、一目でボクくんはそっち方面でも話が通じる相手だと見抜いた。


  • 沙織/オオカミ娘
声:田中敦子
毎年、ニホンオオカミの調査の為に月夜野の森にキャンプを張りにやって来ては空野家のお風呂を借りにくる、育ちのいい美人風だけど男前な大学生。
細腕にもかかわらず、立派な機材ばかりか大量の蔵書までも山奥のテントに持ち込んでいる不思議。
オープンで気さくな性格であり、それを解っているおじちゃんやおばちゃんはボクくんにも会うように薦めてき、実際に会った後はいつでもテントに来ていいとの許しを貰える。絵日記によればお母さんには秘密にするがお父さんには自慢出来ると踏んだらしい。
『2』や『ぼくらのかぞく』にも彼女と同じ姿と性格と声をした別の人物が登場してくるが関係は不明である。


  • お坊さん
声:池田勝
空野家の法事の為にやって来る明るい性格のお坊さん。
“ダンケ(檀家)シェーン”という、持ちネタがある。


  • ボクの父
声:牛山茂
妻が臨月を迎えたため、息子(ボク)を妹(おばちゃん)の家に預ける。
エンディングでは、ボクを自動車で迎えに来る。


【リメイク版以降】

  • 教頭せんせ/与謝野先生
声:小島敏彦
萠の中学の教頭先生で、担当は英語。
PS版では萠の会話の中でぼやかれる言及されるのみだったが、PSP版では山の中でフィールドワークに出ている彼と会話をすることが出来るようになった。
地元の出身らしく、戦争から帰って来た時に復興の為とはいえ、付近の山々が裸になるまで草木が伐採されてしまって哀しかったと話す。
現在のフィールドワークは、自然が戻ったように見えて、昔とは変わってしまった月夜野の自然の調査であるらしい。
そして、その昔に山に大事な物を隠したらしいが……?


  • ヨシコちゃん
声:弓場沙織
萠のクラスメートで大親友。
しかし、現在はある事が気になって空野家の近くの川の橋あたりに出没しては、微妙に遠い位置から萠の様子を色んな意味で心配しており、それを機に遊びに出ていこうとしたボクくんと知り合いになる。
前向きで先走り気味で少し抜けていて落ち込みもするが、それでもへこたれない性格。損な役回りかと思いきや……。
都会に憧れており、都会出身のボクくんに様々な質問をぶつけてくる。
この時の返答はプレイヤーの自由である。


  • アニキくん
声:進藤一宏
中学1年位のお兄ちゃん。
空野家の近くを流れる川の先に出没し、ボクくんと顔見知りになる。
いつでも会える訳ではなく、出てこれる日が決まっているようだ。


【語り】

  • ナレーション/大人になったボク
声:ダンカン(たけし軍団)
OPやEDで流れるゲーム中のナレーションは“大人になったボクくんの回想”という体であり、イベント内でのボクくんの心中も、同じく大人になってからの回想という形で表現される。
声優ではなく、TVタレント、俳優として活躍するダンカンの起用による“リアリティのある大人の声”は本作のコンセプトを如実に現しているとして好評であった。



【8月32日バグ】

本作が発売された後からネット環境が急速に普及していった訳だが、その中で本作を有名にしたのが8月32日バグと呼ばれるものである。
これは、ソフトの発売から2年程して発見されたもので、本来は一日の終わりの就寝時のみに絵日記を書く画面にて電気の紐が出現し、これを選択すると消灯して次の日に進むという選択が出来るのだが、
クリア後のデータから絵日記を選択すると、画面からは見えなくなっているのに、ここでも電気の紐を選択していきなり日付を進めることが可能で、
この動作をすると、本来は最終日である筈の8月31日から更に先の日に進めてしまうというバグである。
なお実際はクリアデータでなく、絵日記に記録する時もこのバグは発生する為、RTA・TAS御用達のバグである。

本来ならば、8月31日の後は9月1日となる訳なのだが、ゲーム内に9月1日が存在しない(・・・・・・・・・・)ことから、日付が8月32日と表示されてしまうというシュールさで、しかも実際のゲーム画面の方もだれも居なくなった家にボクくんしか居ないという不自然な構図で、いざ動かしてみても外に出れなくなったり、入れない部屋が出現したりと異様さを感じるものとなっている。
しばらくすると自由に動けるようになる。

更に、この状態から同じ動作で日付を進めることが出来る訳なのだが、そうすると文字すらがまともなフォントでは無くなり絵日記も崩壊、翌朝からは他のキャラクターも出現してくれるようになるが、ボクくんも含めてグラフィックが崩壊した奇怪な姿で登場と、全くありがたくない再会となる。
そして、この崩壊は日付を進めるとやっぱり更に度合いを強めていくのであった。

……まぁ、これは単なるバグである訳なのだが、画面はバグっていてもある程度動かせることやグラフィックの崩壊の仕方が心霊現象を彷彿とさせるものであったことから、ゲーム内で示唆されている“過去の悲劇”とも併せて意図的に仕込んだんじゃないか?とか、実は主人公が既に死んでいた説等も出されていた。





追記修正はあの夏に帰ってお願いします。

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最終更新:2024年03月31日 23:19

*1 言わずとも上田のキャラクターが前面に押し出されたライオンのハンドソープ「キレイキレイ」から。