パンデミック
(原題:Pandemic)
発売年 |
2008年 |
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プレイ人数 |
2~4人 |
プレイ時間 |
60分 |
対象年齢 |
10歳以上 |
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デザイナー |
マット・リーコック |
備考 |
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ゲーム概要
プレイヤーはウイルス対策チームの一員となり、自分の職業スキルを駆使して新型ウイルス感染症の脅威に立ち向かう。
ウイルスは恐るべきスピードで増殖し、近隣諸国に次々と蔓延していく。これに対し、世界各地の除菌活動をしながらワクチン作りを進めていくのが当面の仕事となる。
全てのウイルスを地上から駆逐し、伝染病の世界的流行を食い止めたらプレイヤーの勝利。人類滅亡の危機を救え。
ルール(概略)
コンポーネントの特徴
- 世界地図を模したメインボードには、4色に分類された48都市と、それぞれをつなぐ線で構成されたマップが描かれている。
- 各都市の名前が書かれた「プレイヤーカード」(白枠)と「感染カード」(黒枠)があり、プレイヤーの手番が回るごとに少しずつめくられる。前者はワクチン作り用のプレイヤー手札、後者はウイルス増殖処理に使用する。
- 「役割カード」には、各プレイヤーの担当する専門職と、固有の特殊能力について書かれている。
- 「エピデミックカード」は、感染拡大イベントを示すカード。プレイヤーカードの山に忍ばされ、一定間隔をおいて現れてはボード上にウイルスをばらまく。
- 赤・青・黄・黒の4色に各20個ずつ用意されたウイルスキューブ。これはゲームオーバー条件に直結している個数なので、無くさないように。
セットアップ
- 各プレイヤーの役割を決める
- プレイ人数に応じ、各プレイヤーにプレイヤーカードを配る
- 難易度を決め、残りのプレイヤーカードを使った山を1つ作ってメインボード下部に置く
- プレイヤーカードを複数の山(導入用「4」、標準「5」、英雄級「6」)に等分
- 各山の上にエピデミックカードを置く
- それぞれをシャッフルし、それを重ね合わせて1つの山に統合する
- 感染カードをシャッフルしてメインボード上部に置く
- 初期ウイルス配置
- 感染カードの山から3枚引いて、その都市にウイルスキューブを3個置く
- 感染カードの山から3枚引いて、その都市にウイルスキューブを2個置く
- 感染カードの山から3枚引いて、その都市にウイルスキューブを1個置く
- 今引かれた9枚のカードをシャッフルし、
感染カード山のトップ
に積む
- ワクチンチップ・アウトブレイクマーカー・感染率マーカーをメインボード各所に配置
- 拠点コマを「アトランタ」に置き、プレイヤーコマを配置
- 以下のコンポーネントは、盤の外で待機
- 残りのウイルスキューブ
- 拠点コマ5個
エピデミックは「一定範囲内でのランダム」で適度にバラける
プレイ上のポイント
- セットアップの時点で、感染爆発一歩手前の都市が3つ、危険な状態の都市が3つ、比較的マシだが予断を許さない都市が3つ、合わせて9箇所の感染地域が設定されている。
- スタートプレイヤーから1人ずつ順に手番を行なう。流れは以下の通り。
- 1. アクションの実行
- プレイヤーは1手番に4回のアクションを行なう。
種類をざっくり分けると「移動」「ウイルス除去」「ワクチン開発関連」。詳細は後述する。
- 2. 手札補充
- プレイヤーカードの山から2枚引いて手札に加える。
- エピデミックカードを引いたら、エピデミック処理を行なうこと。
- 3. 感染処理
- 感染カードを引き、ウイルスキューブを1個ずつ増やす。
- 感染処理について
- 手番の最後に、感染率マーカーに示された数字だけ感染カードを山から開示し、カードで示された各都市にウイルスキューブを1個ずつ置く。
- ウイルスキューブは1都市に最大3個まで乗る。3個のキューブがある都市に新しく同じ色のキューブを置く場合は、感染爆発(
アウトブレイク
)が発生する。
- アウトブレイクを起こした都市に隣接する全ての都市に、超過した色のウイルスキューブを1個ずつ置く。その後、ボード上のアウトブレイクマーカーを1つ進める。
いずれの処理も、ゲームオーバー条件に直結する危険な状況。迅速な対応が求められる。
- セットアップの事を思い出してほしい。山の上部には、最初に感染が確認された危険度1~3の9都市に対応するカードが置かれている。人類はゲーム開始直後から早速アウトブレイクの危機に晒されている。
- 2つ以上の都市でアウトブレイクが連鎖した場合は、1つずつ処理する。アウトブレイク判定(キューブの拡散とマーカー進行)は、1ターン内に1つの都市で1回まで。
- カード補充でエピデミックカードがめくられた場合は、即時で以下の処理を行なう。
- 感染率マーカーが1つ進む。
感染カードの枚数が、最初の2枚から次第に3枚、4枚と増えていく。
- 感染カードの一番下からカードを1枚引き、そこにキューブを3個乗せる。
- 今めくられた感染カードと今までめくられていた感染カードをすべてまとめてシャッフルし、感染カード山の上に載せる。
- つまり、
直近でウイルス感染のあった都市が次の感染候補
となる。その後間髪入れずに感染処理がくるので、たった今3個乗ったばかりの都市も含めて窮地に追い込まれる格好。
- 改めて、手番プレイヤーはエピデミックの分のプレイヤーカード1枚を補充する。
めくったカードが山に戻る。次のドローは当然、エピデミック処理直後のその都市。
- プレイヤーのアクションや役割の特殊能力は以下の通り。
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詳細 |
- プレイヤーアクションについて
- 移動
- 「隣の都市へ移動する」「プレイヤーカードを1枚捨て、その都市へ移動する」「現在の都市のプレイヤーカードを捨て、ボード上の好きな都市へ移動する」のいずれかを選択。各1アクション消費。
- 現在の都市と同じプレイヤーカードを1枚捨て札にすると、拠点を作成する。
拠点は後述するワクチン作りの他、プレイヤーが拠点間を1アクションで移動できるようになる。
- ウイルス除去
- 現在の都市のウイルスキューブを1個取り除く。1アクション消費。
- ワクチン開発関連
- プレイヤーカードは、現在の都市の名前のカードであれば、同じくその都市にいる別のプレイヤーとの間で受け渡す事ができる。「研究情報を共有している」という設定。1アクション消費。
- 拠点コマのある都市で、同じ色の都市カードを5枚捨て札にすると、ワクチンを発見する。1アクション消費。
その後、その色に対応したワクチンマーカーを「発見」の位置へ置く。
- 各プレイヤーはゲーム中に、割り当てられた職業に応じた特殊能力を発揮する。
職業と主な効果は以下の通り。- 研究員……同じ都市にいるプレイヤーに、どの都市のカードでも自由に受け渡せる。グローバルに活躍する研究員。
- 作戦エキスパート……自分がいる都市にタダで拠点を作る。
- 衛生兵……ウイルスを除去する時、その都市にあるキューブのうち1色を全て取り除く。また、自分がいる都市にワクチンが発見されたウイルスキューブがあった場合、アクションを消費せずに除去する。
- 通信司令員……自分の手番に自分のアクションを使って、他人を動かす事ができる。パッシブで能力を発揮する衛生兵とのコンボあり。
- 科学者……プレイヤーカード4枚でワクチンを発見できる。
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- プレイヤーの手札は7枚まで。オーバーした分は、カードを補充した後速やかに任意で7枚になるまで捨て札をする。
- ちなみに、移動やワクチン作りで用いるプレイヤーカードは、1都市あたり1枚きり。一度捨てたカードは基本的に再登場しないものと思って捨て札を選ぶと良い。
- スペシャルカードの使用にはアクションを消費しない。他人のターンでも使用可能。
- 手札情報は非公開でプレイする。ただし、他のプレイヤーから自分の手札に関する情報を問われたらいくらでも口にして良いし、作戦の相談も禁止されてはいない。
- 要は「基本的には
ちゃんと自分で考えて行動しろよ
」という事。
- ワクチンについて
- ワクチンを発見した状態でその色のウイルスを除去すると、全てのキューブを取り除ける。
また、その状態でボード上から全てのウイルスキューブが除かれると、ウイルスが撲滅される。撲滅したウイルスは、その色の感染カードが開かれても増殖しない。
終了条件・得点計算
- 全てのワクチン発見に成功したらプレイヤーの勝利。ウイルスの脅威は去る。
- 以下の条件を満たした場合はゲームオーバー。人類はウイルスの前に敗れ去る。
- アウトブレイクマーカーが8カウントまで進む
- 新たに置くべきウイルスキューブの数が足りなくなる(ピッタリはセーフ)
- 手札補充でプレイヤーカードの山札が足りなくなる(ピッタリはセーフ)
ゲームの流れ
- セットアップと初期配置
- プレイヤーが手番(4アクション)を行なう
- ワクチンが全種類発見されたらプレイヤー側の勝利
- カードを補充
- エピデミックカードが開かれた場合はエピデミック処理
- ゲームオーバー条件が満たされなければ感染処理へ進む
- 感染処理
- 感染カードを引き、ウイルスキューブを配置する
- ゲームオーバー条件が満たされなければ2へ戻る
プレイヤーのアクション→カード補充(エピデミックタイミングはここ)→感染処理(さらに状況悪化)。手順が細かいため長くなるが、難解な流れではない。
「手番の最初にカードを引けない」事と「プレイヤーのアクションはエピデミック判定よりも前」のメリット・デメリットが表裏一体で面白い。
コメント
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プレイ感と感想について |
- テーマ
- 主なテーマの「ウイルス感染症と人間たちの戦い」は、ゲーム的な解釈の元、見事に再現できている。神出鬼没なウイルスによる感染拡大、時間経過に伴う事態の深刻化、後手後手ではあるが懸命に進められる対策、そして絶望一歩手前での特効薬開発。あるいは人類の敗北。実にドラマチックである。
その再現性の高さからすると、システムやコンポーネントがすっきりと洗練されているのも好印象。
- 難易度
- その場その場の有効打を的確に見つけていけないと簡単に詰む。特に英雄級は、常に最適解に近い処置をしていても、運次第ではあっさりと8回爆発するほど難しい。取っ付き易い導入レベルから、ゲームの基礎を身につけてステップアップするのが結局は早道だろう。
なお、このゲームは人数が増えるほど難しくなる。使える特殊能力の種類は増えるが、機会と状況が上手く一致するとは限らず、各人の行動の有効性をまんべんなく高めていかなければならないため。
- ゲーム性
- ただ1つの勝利条件であるワクチン開発を常に視野に入れて一歩ずつ着実に事を進めたら、その先はある程度運頼み。運ゲー云々ではなく、悪い流れを堅実な立ち回りで断ち切りつつ機を待ち、いざ巡ってきたらしっかりと掴む……そんな感じ。
致命傷さえ回避すれば巻き返す可能性につながる、という方向で調整されているので、急所を押さえる危機管理意識が必要になるだろう。そして難易度が上がるにつれて、各1枚しかないプレイヤーカードを無駄にせず、アウトブレイク連鎖も水際で食い止めろ、と無茶を要求される。1手1手をじっくり煮詰めていくゲームである。
欠点
- 難しい協力ゲーの宿命として、「ゲーム奉行」「仕切り厨」が出現しやすい。プレイヤーが自分で考えてこそのゲームの魅力を潰してしまう大問題だが、それなりに時間のかかるゲームなだけに、つい口を出してしまうプレイヤーは後を絶たない。
プレイ人数が増える(難易度が上がる)ほど顕著になり、各人のゲーム観にも左右される、デリケートな問題。
お勧めタイプ
わりと長所の尖ったゲームなのだが、そもそものコンセプトである協力要素が好評を博してか「このゲームが嫌い」という人はあまりいない。最終目標を見据えつつ臨機応変に頭を捻るゲームが好きな人なら、高確率で釣れる。
テーマと難度の両方に一本筋が通っているため、勝てば大きな達成感を得られるし、どう転んでもプレイ後の感想戦は盛り上がる。アナログゲームかくあるべし。
お勧めする際の難点となるのは、大人数で遊ぶ前提であればあるほど、要求されるプレイヤースキルの水準が上がってしまう事か。リードする経験者側の手腕と人間性が試されるシチュエーションである。
【お勧め度:★★★★★★★★☆-】
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【このゲームのイメージ図】 ウイルスVSプレイヤー。 人類側の対抗手段の1つが そのまま勝利条件で、構図はきれい。 |
関連商品
- 拡張セット「絶体絶命」が発売されている。
- プレイヤー側にも敵が現れる「バイオテロリスト」ルール、ウイルスが突然変異して新たな問題を巻き起こす「変異種」ルールなど、新要素の導入で難易度もアップ。これに対抗して、強力な特殊能力を持った新ロール・新スペシャルカードが追加されている。
また、拡張セットを導入すると、5~6人でのプレイが可能になる。
FAQ
- Q:英雄級が無理ゲーです。
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A:
そこはさすがの高難度モード。普通にやっていたら負けるのが当たり前のバランスと考えましょう。
実際ネット上の評判も、運巡りも味方しないとそうそう勝てないのが定説のようです。早め早めのワクチン開発と1色の撲滅を想定しながら動くと、幸運が舞い込んだ時のリターンが大きくなると思いますが、はてさて。
- Q:拠点コマが足りなくなりました。
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A:
メンバーに作戦エキスパートがいるとそんな事もありますよね。
足りない分は他から持って来ればOKです。任意の拠点を選んで移動させてください。
- Q:エピデミックが2ターン連続で来たんですけど?
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A:
シャッフルの結果「今の節の最後」と「次の節の頭」にそれぞれエピデミックがきた場合に起こります。
高確率でアウトブレイク連鎖に見舞われる悪夢ですが、当分の間エピデミックが来ない事もまた確実。この間にワクチン開発を進められるかどうかでその後の展開は大きく変わるでしょう。早まって捨てゲーしなくても、わずかながら希望はあります。
最終更新:2013年05月07日 00:11