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麗らかな朝、ホームルームが始まる前の、幾分か賑やかさが生まれてきた教室で、静かに自席に座ったままで、物憂げな瞳で外を眺めている貴女の横顔を盗み見ている。 俺こと茂木ケンイチの高校生活が始まって早数ヶ月、入学以来ほぼ欠かしたことのないこの日課が、貴女に気取られたことも一度もない。 ああ、今貴女は何を考えているのだろうか。周りの一般的な見解においてはぼーっとしていると評されていることも多いが、否、俺はそうとは思わない。 俺は知っているぞ、彼女が好んで読んでいる小説を、物語好きな貴女は今空想の世界で冒険でもしているのではあるまいか。どうなんだろうか。ぼーっとしているのかもしれない。 長い睫毛の奥、黒目がちで、優しそうな大きな瞳、この角度からでも吸い込まれてしまいそうだ。マトモに正面から見たことはないが、俺はおそらく本人よりもその横顔を見る頻度は多いのではないだろうか。どうなんだろうか。まあ自分で横顔見る機会なんてそうないのかもしれない。 「「はぁ…萩野さん超かわいい。」」 マジ天使…おっと心の声が漏れてしまった。 と思ったら何やらユニゾンしてしまったような気がする。 「うわびっくりしたァ!俺心読まれちゃったかと思ったぁ!」 「概ね同意!ロリだしね!」 そう語るは俺の友人。痩身・刈り上げ・眼鏡という典型的キモオタルックをしてはいるが、その実正真正銘本物のキモオタ。ロリコン趣味まで合わさって満貫手までイーシャンテンといったところだ。俺は親愛を込めて彼のことは「メガネ」と呼び表している。 そして何を隠そう彼もまた、俺と同じく、目線の先に萩野さんを見据える、いわば親衛隊の一人なのだ。 非常に口が達者で演説上手なメガネは我々の旗頭としてもよく働いてくれるが当の萩野さんの前では急激にキモオタ化するので俺がその恩恵に預かったことはない。 そしてその彼も、またもや俺と同じく朝の日課に勤しんでいたというわけだ。 「やれやれ。フフフ、今日も今日とて幻想にトリップか…。」 と、そんなところに低く落ち着いた、それでいて聞き捨てならない台詞が耳に飛び込んできた。 「なんだとテメェが萩野さんの何を知ってる??」 言うが早いかメガネが席を立ち、声の主に食ってかかろうとする。 ここで事を荒立てる必要はない、俺はガタッと立ち上がるメガネに「よせ」と静止をかける。 声の主はこれも我が友人。彼もまた、俺とメガネと共に萩野さん親衛隊を構成するメンバーの一人であり、ずんぐりむっくりの体系と本人の顔の造形から「ジャイアン」と呼ばれている。 寡黙で力持ち、といった印象を受けるが中々に繊細な仕事人気質であり、エロアイテムを作らせたらその完成度はまさにドラえもん級。かなりのMでもある。 その彼が、不敵な笑みを浮かべながらこちらに近づいてきたかと思うと、思いもよらぬことを口にした。 「だってあの娘大学生の彼氏いるみたいよ!」 「「マジで!?」」 俺は一瞬言葉の意味が理解できず、「マジで!?」とは言ったもののもう一度口の中でジャイアンの言葉を反芻した。そして再度小さく「マジで…?」と漏らす。 いやはや待ってくれよジャイアン朝から聞かされるにはあまりにもショッキングすぎる内容だよだってまさかまさかだよあの萩野さんに限ってそんなことがありえる筈がないじゃないか、だいたいそういうのはクラスの中でもイケイケの、それこそ「B組の水谷って、交渉次第で誰でもヤらせてくれるらしいぜ。」なんて噂がたっちゃうような擦れた女の子か、あるいはやけに金回りよくブランド物の小物やバッグなんてもって学校に来て休憩時間でもコンパクトパカッと開けながら椅子に立て膝で化粧とかカマしてるタイプの遊んでる系女子高生でしょうよ!? そういった意味では萩野さんは真逆!およそ見た目には化粧っけも遊び慣れも見られず、加えて当人も引っ込み思案で大人しい性格ときている、この辺りは入学以来のたゆまぬプロファイリングで実証済みだから間違いない!だって勇気を出して話しかけた時なんてどうだ、萩野さんが風邪で欠席した時に、科学の授業で配布されたプリントを、たまたまその週同じ班だった俺が次週の授業時に手渡すという大命、見事我が物にすることが出来たその千載一遇のチャンス、その様子がこれだ! 俺「あ、あ、プリント。(イケボ)」 萩野さん「あっ、ごめんなさい。ありがとうございます。(困った感じの笑顔)」 俺「いや…あ、風邪、大丈夫ですか?(自分史上最高のイケボ)」 萩野さん「あ、はい。ありがとうございます。(困った感じの笑顔)」 はいパーフェクトコミュニケーション!!! この感じだよこの感じ!どう考えても学校外にしかも大学生の彼氏を作っているようなたまではないし、失礼ながらどちらかというと人付き合いの苦手な雰囲気すら感じるくらいだまあそんなところが可愛らしくていいと思うんですけどね!主張が少なくて押しに弱そうな感じとかね!!ん?押しに弱そうな…? 「コノヤロァ!!滅多なこと言ってんじゃねーぞオラァ!!」 メガネがジャイアンの胸ぐらを掴み、激昂している。 「あの娘天使やぞ!マジで穢れを知らんねんぞ!」 血涙を流しつつ力説するメガネ。その通りだとは思う。その評価については両手を上げて同意しよう。 しかしだ。 「いや…なあ、メガネ。」 「あぁ!?」 「どうしよう!!考えても見ろ、純朴そうなクラスの女子にも見知らぬ男の手練手管に絆されて、為すすべもなく乱れる夜があるって事を想像しただけですっげえ興奮してきた!!!」 俺はあまりにもままならざる身の上から、有り体に言えばモテなさすぎる身の上から、一周回ってNTRでも存分に反応できる身体になっていた。 リアクションに窮し、生唾を飲む友人二人。 見るがいい、人は環境によって、強くなるのだ。 「あんな感じだけど、ボクらよりもずっと大人なんだよね、女の子は…。」 世の中の真理を垣間見た充足感から、憑き物が落ちたようになっている俺とメガネを見ながら、ジャイアンは「うむ」と頷く。 言い忘れたがジャイアンは萩野さん親衛隊でありながら、彼の興味の対象はもっぱら彼女のビジュアルのみにあり、究極的には身体目的であるからして本人の純潔性については関知しないという立ち位置を表明している。 我々としては看過できない不逞の輩ではあるが、彼の話す萩野さんの日常(想像)はあまりにもリアルで正鵠を射ているように思えるし、萩野さんにさせたいコスプレ、やってほしい事など、魅力的にも程があるお話を山ほど持ってくるので、やむなくお世話になっている。結局我々も煩悩の前では忠実な奴隷にならざるを得ないのだ。 すると突然、軽々とジャイアンを飛び越えて、我々の輪の中にふわりと加わる人影があった。 「よう、今日もいいかんじにわずらってるな。」 長いポニーテールを揺らしながら、平坦なイントネーションの、少しハスキーな声。 「桂さん!!」 彼女の名前は桂つかさ。俺たちが唯一クラスで、いや学年で気軽に話せる女子だ。というのも彼女の趣味趣向は非常にボーイッシュで、ロボットアニメや戦隊ヒーロー、何故か今期のアニメも大体チェックしているといった感じに、クラスのギーク集団である俺たちと話がやけに合うのだ。また、イントネーションに負けず劣らず平坦なプロポーションに相応しく、本人の性格もボーイッシュ、中学生男子然としているのも大きい。 ついでに言えば彼女は萩野さんと親友レベルに仲が良い。我々は何故かその恩恵に預かったことはないが、萩野さんのことなら彼女に聞くのが早いだろう。 「はぎのの話?」 桂さんが問いかける。 「なっ、何を不躾な…。」 誤魔化そうとするジャイアン。 「無駄だぞ。今までの話はすべてきかせてもらった。」 なーんだ、じゃあいいか。 「じゃあ聞くけど、萩野さんってもうオトナなの!?オトナになっちゃったの!?」 「すげぇよく聞いたモギ」 桂さんは意味をしばらく考えたあと、俺たちの顔を見て何かを察したかのようにヘラヘラと笑いながら答える。 「まさかぁ!ないわー。」 うーわ!うーわ!!よかったぁー!そうだよね!心のどこかではまだ信じたくない気持ちあったよねー!うーわ!よかったぁー!! そして安堵した僕らの感情のベクトルは発信源であるジャイアンへと向かった。 「だよなぁ!だと思ったぜ!あの様子で年上彼氏持ちとかメガネ君胃に穴があくわ!!」 「そうだそうだ!純真なボクらをたぶらかすのもいい加減にしろよブタゴリラ!!」 朝から勘弁してよねもう! 「いや目撃情報だってあるんだよ。」 反駁するジャイアン。いいやもういいお前はブタゴリラに格下げだ。 「コイツまだ言ってやすぜ!!誰あろう桂さんが言ってるダロォ!?往生際が悪いぞ、ねぇ桂さん!!」 右におなーじ!!ねぇ桂さん!! 「あー、でもはぎのは年上の友達多いよ。よくつるんでるっていうか、すごくなついてるよ。」 なる程そういうパターンね!!!OKOK、死ぬわ!!! 最悪の気分だ。 一旦乗り越えた感情でも、希望を与えられた後に叩き落とされたクレバスから這い登るほどのステータスは持ち合わせていない。 時間にしてほんの数分の間で揺れ動いた感情の波の乱高下に耐えられず、俺は机に突っ伏していた。 ああこんな気分では萩野さんのことなんて見ようとも思えないよ、あまりにも虚しすぎる、でもちょっとだけ見てみよう。うわぁまだぼーっとしてる可愛い…。 程なく始業のベルが鳴り、担任が教室に入ってきた。 担任の、体育教師ならではの太い首、見慣れたスキニージーズの横には、スラリと伸びた見慣れぬ制服。 「今日は、転校生を紹介する。」 驚いた。この時期に転校とは珍しい。 それにしても男かよ。 転校生転入のイベントに少しは期待してしまったものの、これには興ざめだ。前方の席にいるメガネと目配せし、肩をすくめる。 「自己紹介、してくれるか。」 担任の野太い声に促され、転校生が黒板に向き直る。 身長は自分と同じくらいか、しかしながらスラリと伸びた手足に、なによりその涼しげな顔立ち、シャープな輪郭に白い肌、しかも何故か銀髪ときているが、似合ってはいるのでグウの音も出ない。つまるところイケメンだ。クラスの女子生徒が色めき立つ声が耳に障る。ちらりと萩野さんに目をやると何やら別の場所を見ている。目線を追うとああ、担任のスキニージーンズが気になるのだろうか。何が気になっているのだろう。スキニージーンズだからかな? そうしていると転校生が振り返り、口を開いた。 艶かしい声色だった。 「初めまして。僕の名前は渚カヲル。淫乱の淫に、淫乱の乱と書いてカヲルだよ。よろしくね。」 黒板には大きく「淫乱」の二文字が書かれていた。 読まないよね!!!市役所通らないよね!!! クラスも先ほどとは別のベクトルでざわついている。 「おいおいお前ら静かにしろー、これから渚はこのクラスの一員になるわけだから、仲良くしてくれよなー。」 ジーンズはスキニーなのに器が広すぎる。 「じゃあ渚は、ああ、丁度茂木の隣空いてるな。そこに座ってくれ。」 「分かりました。」 俺の隣空いてなかったよね!?山本君どこいったの!?山本君消えたの?家帰ってアルバム探しても山本君どこにも乗ってないしみんなに聞いても「山本?誰…?」ってなるタイプのやつなの!?やだ!怖い!山本絶対居たって!! そうこうしているうちに転校生はかつて多分山本の席だった(俺の中では)場所に腰を下ろすと、俺の視線に気がつくとニッコリと微笑み、絵になる仕草でおもむろに足を組み、我が物顔で机に頬杖を付きつつこちらに目線を流し、言い放った。 「初めまして、茂木くん。オナニーって、凄いよね。リリンの生み出した文化の極みだよ。」 コイツはハードでロックな奴が来たもんだ…。

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