「ハギノとミヤタの朝」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ハギノとミヤタの朝」(2013/11/22 (金) 03:39:29) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<p> </p>
<p>「ミヤタ、さん。起きてください……」</p>
<p>甲斐甲斐しく毎朝起こしてくれるこの少女の、少し戸惑うような表情は嫌いじゃない。<br />
いつもゆらゆらと身体を揺すりながらも、俺がなかなか起きないのにうろたえる様子。<br />
泣き出すギリギリのところで起きると、いっそう嬉しそうになる。</p>
<p>「おはようございます。ミヤタさん」<br />
「ん。そういや昨日渡した魔導書、どうだった?」</p>
<p>勤勉である少女――、ハギノは、魔導書を読むことの出来る高度な知識を持っている。<br />
俺はその才能を伸ばしてやることに歓びを感じており、知り合いのツテで、時折魔導書(あるいは準ずるもの)を貰っては譲ってやることにしている。<br />
俺には魔法の才能はない。ならば才能のあるハギノに譲ってやるのが当然だろう。<br />
ぱあ、と表情を明るくしたハギノが、じたばたと両手を動かしながら語り始める。<br />
魔法系統における新しい説がたくさんあることを理解し、もしかしたら自分で新たに魔法を作ることが出来るかもしれない、とか。<br />
羨ましくないといったら嘘になる。才能がない者はある者に焦がれる。当然だ。<br />
けれど、ねたましいと思ったことはない。<br />
本当にこの少女は、力の探求をしたいと思っているのが伝わってくるからだ。<br />
ふらりと手を伸ばすと、何故だろうか、びくりと薄い肩を揺らしてぎゅっと目を瞑る。<br />
そんなに、俺は怖くうつるのか。眉を顰めて笑いながら、緩くハギノの頭をなでる。<br />
予想していなかったんだろう、頭上に疑問符を浮かべたままじいっと俺を見つめていた。</p>
<p>「ミヤタさん……?」<br />
「……いや。よく勉強してるんだな、と思ってな」<br />
「……ふふふ」</p>
<p>しなやかで美しい強さを持つ彼女。<br />
この笑顔を守らなくてはいけないと、俺はぎゅっと唇を引き結んだ。</p>
<p> </p>