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  • ヒザマ編
 朝も夜も騒がしい蛟龍町が束の間眠る、深夜と早朝の間。古びた倉庫に一人佇む謎の影。彼の手には小さな火種、周りには灯油の山。
火を放ち、燃え上がる様を満面の笑みで見守る。街の睡眠を妨害するように、起きる爆発。火災。慌ただしいサイレンの音。

 こちらはいつもの廃バス、テレビを見ている三人組。
 テレビは、もうすぐ開催される大規模な花火大会のニュースで盛り上がっていた。イナバとキュウビも楽しみにしている様子。
 ニュースが、連続放火事件に変わる。二週間前の廃屋放火事件から始まり、マンションのゴミ捨て場、小学校の飼育小屋と放火事件が
続いていた。今まではボヤ程度で済んでいたが、とうとう昨日、倉庫が全焼した。被害は甚大で、死傷者も出た。
『自警団は、この事件を一連の放火事件と同一犯の犯行とみなし、捜査を継続する模様です。市民の皆様もご協力をお願い致します。なお
 情報提供者には礼金が…』
「こっわー…でも賞金出るんだー」
「それしかねえのかよお前は」
『…昨夜の火事現場の映像をお送りいたしま』ブツッ
「あっ、なんで消すの!」
「キュウビ~タバコ買いに行こうぜ~」
「え…うん」
「あ、私も…」
バタン
「ちょっとぉ…」
 一緒に過ごして、少し打ち解けてきたイナバとヤタ達だったが、やはりまだ壁はあった。少し寂しく思うイナバだったが、旅金が貯まっ
たらすぐに出て行くし、と開き直る。

 花火大会と放火事件の話で盛り上がっている街。放火の話を聞くと元気がなくなるキュウビを心配するイナバ。
 ある日三人は、昔の住処であった公園に行く。するとそこにあった桜の木に火がつけられていた。その傍には、松明を片手に歌っている怪
しい男。放火犯と見られる怪しい男を追うヤタ。早く追いかけなきゃと焦るイナバ。しかし火を見たキュウビは酷く怯えたように逃げ出して
しまう。

 路地で男を追い詰めたヤタ。男はヒザマと名乗り、今までの放火事件は全て自分の仕業だという。動機は綺麗だから。気の狂っているヒザ
マは、予想のつかない動きでヤタを翻弄し、逃げてしまう。

 キュウビを追いかけたイナバは、ごみ山でうずくまっているキュウビを見つける。いったいどうしたのかと問うイナバに、キュウビは身の
上話を始める。
 キュウビは元々捨て子だった。赤ん坊の頃の秋、コインロッカーに捨てられた。
そこへ、偶然酔っ払いが火をつけてしまった。業火の中、キュウビは子どもだったヤタに救わるが、全身に大火傷を負ってしまう。ジンノ院
長の手術で一命はとりとめたが、全身には酷い火傷の痕が残り醜い姿になってしまった。
「みんな僕を見ると怖がるんだ。顔なんて見れたもんじゃない。だからお面をしているんだ」
「そんなことないよ。キュウビはいい子じゃない」
 イナバに、キュウビは面を取って自分の顔を見せる。あまりの醜さに悲鳴をあげるイナバ。
「…ご、ごめんなさい!キュウビ違うの!」
「いいんだよ。ヤタだって目をそらすもの。慣れてるよ」
「キュウビ…」
「でも、まだ火は怖いんだ。ヤタに後で謝らなくちゃ!…何かお腹減ったね!」
 なんでもないように明るく振る舞うキュウビに、イナバは何も言えなくなってしまう。

 夜、ヤタがごみ山に帰ってくると、外でキュウビが待っていた。今日逃げ出したことを謝るキュウビ。
「イエディに話したのか」
キュウビは答えず、抱き付いて泣き出してしまう。バスの中からその様子を見守るイナバ。

 キュウビが眠った後、外で煙草を吸っているヤタにイナバは話しかける。キュウビについて色々聞くイナバだったが、関係ないだろと一蹴さ
れてしまう。最後にイナバは、コインロッカーの犯人について聞く。
 3年前の冬、ヤタは放火犯を絞殺した。それが初めての殺人で、その時から自分は八咫鴉になったという。
一緒に暮らしているのだし、何か力になりたいというイナバ。元々俺らは他人のはずだ。もう頃合いだろう、街を出ていけというヤタ。
 イナバは、廃バスから姿を消してしまう。

 花火大会の前日。あれから色んな所を放火してきたヒザマは、大会用の花火が保管されている倉庫にやってきた。花火に火をつけようとする
と、ヤタが待ち伏せしていた。
 ヤタはヒザマの言動から、本当の狙いは花火だと気づいていた。今なら見逃すからもう放火はやめろというヤタに、ヒザマは笑う。倉庫の周
辺には既に火がつけられていた。戦い始める二人。

 一方、姿を消してから街をうろうろしていたイナバは、倉庫が火事になっていて、やじうまの中にキュウビがいるのを見つける。ヤタが中に
いると飛び込もうとするキュウビを止めるが、キュウビは振り切ってしまう。しかし、業火の前に足がすくみ、自分の無力さに泣くキュウビ。

 戦いの末、ヒザマは打ち負かすヤタ。火の中に落ちそうになるヒザマを助けようとするが、ヒザマの「僕も醜い姿にして生き伸ばさせるつも
りかい?」という言葉に茫然とする。その隙をついてヤタの手を払ったヒザマは業火の中へと消えていく。

 ヤタが意識を取り戻すと、泣いているイナバとキュウビがこちらを覗き込んでいた。消防隊が助けてくれたという。ヒザマの消息は知れない。
なんとなく仲直りした三人は、一緒に廃バスへと帰る。

 ヤタの機転により花火は守られ、翌日無事に花火大会は開催された。花火を見る三人。キュウビは、命の恩人であるヤタを守るためにもっと強
くならなければならないと決意する。イナバは、最初利用するだけと思っていた二人に強い関心を抱くようになる。
 ヤタは、花火を見て、楽しそうに歌うヒザマの歌声がどこから聞こえてくる気がしていた。

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