「一つ分の大きさ」とは

 かけ算の導入における、構成要素の一つです。もう一つの構成要素は「幾つ分」と書かれます。
 「一つ分の大きさ」は、「基準量」や「1あたりの数(1あたり量)」と同一視されることもあります。小数の乗法の意味を学習する中で(乗法の意味の拡張)、「基準にする大きさ」へと読み替えられます。

構文と意味

 かけ算の式にする際、一つ分の大きさをかけられる数、幾つ分をかける数とします。
 「一つ分の大きさ」と「幾つ分」のペアは、ある場合*1でかけ算の式とする際の言葉であり、かけ算の「意味」に関わってきます。
 それに対し「かけられる数(被乗数)」と「かける数(乗数)」のペアは、他の場面のかけ算の式でも使われます。長方形の面積のように、2つの因数に実質的な区別のない場合でも、「3×5」あるいは「5×3」と表す必要があり、「×」の左に書かれるのがかけられる数、右に書かれるのがかける数となります。かけられる数・かける数は、かけ算の「構文」に関わってきます。

「一つ分」と「一つ分の大きさ」の違い

 次の絵は、3×4の模式図です。
 このとき、3が「一つ分の大きさ」、4が「幾つ分」です。
 「一つ分」は、次の箇所とみなすのがよさそうです。
 「一つ分」は数量ではないわけで、数量にするために、「の大きさ」を付けている、というわけです。
 集合としてあらわすと、「一つ分」はS、「一つ分の大きさ」は|S|です。

文献

  • 文献:算数解説2008 87頁では、乗法が用いられる場合とその意味の書き出しが「乗法は,一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かに当たる大きさを求める場合に用いられる」となっています。
  • 文献:布川2010 50頁には「(一つ分の大きさ)×(幾つ分)」と書かれています。
  • 「一つ分」「幾つ分」のペアで書くほうが、揃っていて分かりやすいようにも見えますが、書籍ではあまり見かけません。文献:小島2005 39頁には「1つ分が3」や「(ひとつぶん)×(いくつぶん・ばい)」とあります。
  • 文献:Greer 1992 276頁では、"3 children have 4 cookies each. How many cookies do they have altogether?" を挙げた直後に "Within this conceptualization, the two numbers play clearly different roles. The number of children is the multiplier that operates on the number of cookies, the multiplicand, to produce the answer." と述べており、4枚のクッキーがかけられる数であるとともに、一つ分の大きさになっていることを確認できます。
最終更新:2013年01月21日 06:38

*1 いわば十分条件です。