お辰狐

おたつぎつね

種別
別名  
住所 岡山県山陽町
特徴  梅手折の峠に棲んでいた人を騙す古狐で、魚や油揚げ、祭りの土産物を奪ったり、風呂だといって池に入らせる、牡丹餅だといって馬糞を食わせるなどの悪戯で村人を困らせていたため、以前若衆を誑かして金を巻き上げた旅芸人の名に因んでお辰狐と呼ばれるようになった。 ▽あるとき、峠を越える旅人がお辰狐に騙されて池で溺れ死ぬという事件が起きた。村人たちがこの件について相談していると旅の僧が通りかかり、お辰狐の調伏を買って出た。若衆が狐の住む岩に案内すると、僧はそこで錫杖を立て経を唱え始めた。すると僧に後光が差し、岩穴から狐が這い出して気絶した。畜生でありながら人を騙すのみならず命まで奪ってしまった、観音の慈悲によって命だけは助けてやるから早々に立ち去れと僧が言い渡すと、狐は立ち上がってどこかへ消えてしまった。若衆が旅僧を村に案内しようとしたが、途中でその姿が見えなくなってしまった。村の観音堂へ行くと、本尊の観音様の下半身がびっしょりと濡れており、供えてある草鞋にも泥が付いていた。旅僧の正体は村人の願いを聞いた観音様だったのである。村人は以前にも増して観音様を信仰し、お辰狐の悪さも途絶えたという。
資料 『おかやま伝説紀行』立石憲利
最終更新:2011年08月18日 23:35