種別 | 狐 |
別名 | |
住所 | 鳥取県境港市 |
特徴 | 境港は安政年間までは境浦と呼ばれ、境港駅のある一帯(昭和三一年当時)は、かつて白砂の松林だった。中には一抱えもある老松もあり、そこにおたねさんという狐が棲んでいた。元来おたねさんは義狐ともいうべき存在で、善人は決して騙さず、悪人のみを苛めるという性格をもっていた。女に化けるのが得意で、夜中に地方の嫌われ者や悪党が酔って歩いていると、女に化けたおたねさんにあちこち引っ張り回された挙句、風呂だといって池に入れられたり、土産に馬糞を竹の皮に包んで持たされたりした。野良泥棒などをおたねさんに頼むと、おたねさんはその盗人をよく知っていて、毎晩その家の前でコンコン鳴き喚き、しまいには雨戸を叩いて鳴くようにまでなる。そのため盗人も閉口して手出ししなくなり、遂には地域の野良荒らしは絶えてしまったという。おたねさんの棲み処の松林には竹の皮包みの握り飯がいくつも供えられたが、そのうち悪人だと思う者が供えたものには絶対に口をつけなかった。ゆえに人々は、自分が備えた物が食われているのを見て安心したという。 |
資料 | 『山陰の民話』佐藤徳堯 |