冒険者たちは扉を蹴破り部屋に駆け込んだ。
そこはここまでに見た中で最も豪華な部屋であった。
隙間なく飾り立てられた壁、豪華な食事、召使の娘たち。
ソファーに座った一人の男が多くの娘に囲まれている。
そして翼の生えた子供がそばに浮かんでいた。
何かの壁画で見たことがある。
無垢な裸に白い翼。
天使だ。
小さな翼を器用にはためかせ、フワフワと宙に浮いている。
無垢な姿で宙をはためくだけだが、そこにだけ光が差しているような明るさを感じた。
自然と目が行き、そして見とれてしまう。
男が立ち上がり、尊大にこう言った。
「見たか、愚民よ。
私は天使に守護されている
神に認められし人間。
悔い改めひざまづかねば
その大罪、永遠に許されん!」
男は自信を持って立ち、その傍らには天使がはためく。
しかし、冒険者たちは従わない。
その態度に男が焦りの表情を見せた。
「な、何故屈しない!?
天使だぞ、見えないのか!?」
余裕を失い男は狼狽している。
おそらく天使の姿を見ればこの国では誰もが屈するのだろう。
しかし異国の冒険者たちには役に立たないものだ。
「ぐっ!
ここまで無知な蛮族とは……!
ええい、神の罰を受けるが良い!」
天使の姿を見ても動じない冒険者たちに、男は狼狽しながら武器を構えた。