アイアムアヒーロー

登録日:2017/01/19 (木) 02:47:16
更新日:2023/11/06 Mon 21:34:51
所要時間:約 7 分で読めます




アイアムアヒーローとは、週刊ビッグコミックスピリッツにて連載されていた花沢健吾による漫画作品である。


概要


35歳の漫画家アシスタント・鈴木英雄の冴えない日常を描いた漫画作品。
漫画家再デビューを目指すも編集者からは相手にされず、職場の人間関係にも悩み、恋人は酔う度に元カレを引き合いに出すわと悶々とした日常を丁寧に描いている。
2016年には大泉洋を主演に迎え、『図書館戦争』シリーズに続き監督:佐藤信介、脚本:野木亜紀子のタッグで実写映画化もされた。



登場人物紹介


主人公。35歳の漫画家アシスタント。クレー射撃が趣味であり散弾銃と許可証を所持している。
一応、漫画家として連載を持っていたが単行本2冊で打ち切りとなり、以後は新作のネームを持ちかけてはボツの繰り返しとなっている。
臆病で内向的な性格の上、妄想癖があり自身の人生でも自分は脇役で主人公になれないのかとコンプレックスを抱えている。

  • 矢島
英雄の妄想である小男。一種のイマジナリーフレンド。
英雄を「先輩」と呼び、賛同するような意見しか言わない。
映画版には登場しない。

  • 黒川徹子(演:片瀬那奈)
英雄の恋人。愛称は「てっこ」。英雄の良き理解者ではあるが酒乱であり酔う度に元カレの中田コロリを引き合いに出してくる。
映画版ではうだつの上がらない英雄にストレスを感じヒステリックに当たるなど破局寸前の仲に…。

  • 中田コロリ(演:片桐仁)
売れっ子の漫画家。てっこの元カレで語尾に「~でちゅ」と赤ちゃん言葉を使うキモ男。
英雄の漫画家としての才能を買っている。
外見が片桐仁に激似だが、映画ではその片桐仁が演じる事になった。

  • 松尾(演:マキタスポーツ)
英雄の仕事先の漫画家。妻子持ちでありながらよく女性アシスタントと関係を持つ。
名前からすると松尾スズキがモチーフのようだが、実写版の演者であるマキタスポーツにもよく似ている。

  • 三谷(演:塚地武雅)
英雄の先輩であるチーフアシスタント。態度が大きい女子アナオタク。
名前からも分かる通り、原作では三谷幸喜にクリソツ。


追記・修正をお願いします。






































英雄の冴えない日常は……

















ある日突然、臨界を迎える。













本当の概要


実は上記の日常を描いた部分は物語の導入部に過ぎず、その実態はゾンビ漫画作品である。
この展開には当初、本作を作者の前作『ボーイズ・オン・ザ・ラン』のようなうだつの上がらない男のサクセスストーリーだと思っていた読者を大きく驚かせた。
ただし、1巻の時点でも後の不穏な展開に繋がる伏線が細かく散りばめられている。

2巻以降は本作におけるゾンビ「ZQN」による平和な日常の崩壊が仔細かつ淡々と描かれていく他、社会に劣等感を抱いている者たちの心理描写を濃密に描き話が進むにつれてその面がどんどん色濃くなっていくなど、
他のゾンビ作品とは一線を画した内容となっているのが特徴。

この一種のフェイク展開は実写映画版の予告でも見られ、何らかのパニック映画である事を伺わせながらも映像にはZQNがほとんど映っておらず、
妙に楽しそうに見える編集がされている事もあってか、作品をよく知らない人から「大泉洋主演だし、コメディなのかな」と思われた事もあった。
映画版は原作のアウトレットモール編までを下敷きにしたストーリーとなり、原作と比較してエンタメ寄りな内容になりながらも、
R15+指定という事もあってCGや特殊メイクを駆使した自重しないグロ描写や、実銃などを使った大迫力のアクションシーンなどが評価され、*1
数々の映画祭で受賞する功績を残すなど原作の勘所を上手く抑えつつ再構成した良実写映画化作品として高評価を貰っている。
コラボした同時期公開の『テラフォーマーズ』とは雲泥の差だ
尤も、R指定という事もあってか、世間では『シン・ゴジラ』や『君の名は。』など、より一般受けするような内容の方に話題が行った感もあるが。

Web雑誌「やわらかスピリッツ」では別の地域を舞台としたスピンオフ「アイアムアヒーロー in OSAKA」「in IBARAKI」「in NAGASAKI」の三種が連載されていた。こちらはそれぞれ共に全1巻の中編作品。
トリビュートアンソロジー漫画と小説も発売されている。



本当の登場人物紹介

  • 鈴木英雄
パンデミック発生後、街中に溢れかえるZQNから何とか逃げながら富士樹海で(映画では混乱する街で)比呂美と出会う。
当初は銃を取る事をためらっていたが、アウトレットモールにて遂に意を決しZQNの群れに対し引き金を弾くようになる。

  • 矢島
てっことの一件の後、もやのような状態で現れ英雄を諭すような言葉を残す。

  • 早狩比呂美(演:有村架純)
本作のヒロインである女子高生。大人しい性格で学校ではいじめの対象となっている。
英雄との逃避行の中で(映画版ではパンデミック前に)感染した新生児のZQNに首を噛まれてしまい感染。しかし後述する半感染状態となり、英雄を襲う事は無かった。
後に、小田の手術により回復。感染前の状態へと戻っている。

  • 藪 / 小田つぐみ(演:長澤まさみ)
本作のもう一人のヒロイン。アウトレットモールにて英雄たちが出会った元看護士の女性。
比呂美が通常のZQNと異なった状態にある事を察し、この騒動を止められるのではないかと推測。
アウトレットモールのコミュニティ崩壊後は共に行動するようになる。
「藪」は仮名であり、本名はアウトレットモール脱出の際に明かしている。

  • 黒川徹子
単行本1巻ラストとなる11話にてZQN化。見開きを連続で使った一連のシーンは読者に大きなインパクトを残した。
英雄に噛みつくも直前に玄関のドアを噛んだ事で歯が抜け落ちたため、英雄は感染せずに済んでいる。
ZQNとなりながらも「ひでおくんだいすき」と言い残し、英雄を守るために他のZQNを攻撃する場面が見られた。
その後、助けられないと判断した英雄により首を切り離され活動停止。映画版では英雄ともみ合った際にトロフィーに頭を突き刺してしまい活動停止。

  • 中田コロリ
パンデミック発生後、特に存在に触れずフェードアウト。
と、思ったら作品終盤にて多くの生存者と共に行動し物資調達の指揮を担うなど、たくましく生き延びていた事が判明する。

  • 松尾
女性アシスタントのみーちゃんに噛まれた事で感染、発症。三谷により撲殺される。

  • 三谷
事前にZQNの情報を得ていた事で対処が出来たものの、逃げる最中にZQNの群れに襲われ
墜落した飛行機の車輪に首を巻き込まれ撥ね飛ばされるという壮絶な最期を遂げる。
映画版では既に噛まれた後で発祥の兆候が見られた直後に自らカッターナイフで首を切る。

  • 伊浦(演:吉沢悠)
富士山麓周辺に存在するアウトレットモール屋上に籠城するコミュニティの実質的な支配者。
クロスボウを所持しており、反逆者を地上に落として処刑する冷酷な男。
非常に高い観察力を持ち、ZQNが生前の習慣に影響して行動する事を見抜いている。

  • サンゴ(演:岡田義徳)
アウトレットモールコミュニティの支配者…との触れ込みだが、実際は伊浦が支配者であり裸の王様。
元引きこもりの典型的なDQN
英雄から散弾銃を強奪し食料調達に向かうも敢え無く返り討ちに遭った。
映画版では少しだけ長生きし英雄と共闘するがやっぱりZQNにやられてしまう。

  • 来栖(クルス)
パンデミック3週間前にYouTubeに感染した母親を撲殺する動画を投稿し「死んでる奴起きろ。俺たちがヒーローだ」と言い残した。
この映像を通してネット上に「クルス信者」と呼ばれる多くの賛同者を生み出している。
なお、尺の都合なのか映画には登場しない。重要キャラなのに…。


ZQN


本作におけるゾンビに該当。「ズキュン」もしくは「ゾキュン」と読む。*2
厚生労働省では「多臓器不全および反社会性人格障害」、米軍では「ZERO QUALIFED NUCLEUS(核として無なもの)」と呼称。後者の頭文字を取って「ZQN」である。

心音・呼吸・脈が無くなるなど生体反応が停止し眼の瞳孔が開き全身の血管が浮き出た外見となり、生前の生活習慣に関連した言動を繰り返すようになる。
当然、非感染者には問答無用で噛みつく他、身体能力にも変化が生じ身体が腐敗などでどのように損壊していても許す限りの行動を行うようになる。四足歩行や自傷行為などの行動を取る者も多い。
つまり「走るゾンビ」にして珍しい「喋るゾンビ」でもある。
例によって弱点は頭部であり、破壊されると活動停止となる。頭と胴体が切り離されても活動停止となる。
また、大きな音に反応する習性もあるなど半ば意識混濁状態のようにも描かれている。

ただし、比呂美のように感染しながらも僅かながら自意識を保ち、生体として死に至らない場合もある。この場合は「半感染」と呼ばれている。

発症の根源は現在も不明なままだが、ウイルスによる感染が主と見られている。


余談


世界観は現実に即しており、「GANTZ」や「BECK」、映画版では「未確認で進行形」など実在の漫画やアニメなどが登場している。
みでしに至っては何故か朝アニメ扱い。ちょっとだけ羨ましい。でもなぜこのアニメを…。




追記・修正は英雄になれるかどうか考えてからお願いします。

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最終更新:2023年11月06日 21:34

*1 なお実銃を使えたのは、ロケハンの都合でモールを始めとする一部シーンの撮影を韓国で行ったため。またクオリティの高いCGなども、韓国ロケに合わせて高い技術力を誇る韓国のスタッフと合流できた事が大きい。

*2 読みが二つあるのは作者が読みを決めていなかったため。2014年3月放映の作者出演番組では編集との協議の上で「公式ではズキュン」としていたが、映画版では「ゾキュン」で統一された。ちなみに映画版は同年夏から撮影開始なので時期的にはニアミス。