登録日:2011/06/15 Wed 22:35:04
更新日:2025/01/28 Tue 23:56:50
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「水中の酸素を一瞬にして破壊し尽くし……あらゆる生物を窒息死させる……。
そのあとで液化してしまう、液体中の酸素破壊剤です……」
【概要】
オキシジェン・デストロイヤーとは、
ゴジラシリーズに登場する兵器。初出は1954年の第1作『
ゴジラ』。
芹沢大助博士が開発した
液体中の酸素破壊剤であり
人間がゴジラの抹殺に成功した唯一の手段である。
酸素を研究する過程で発見した特殊な物質を電磁的に反応させることにより、
水中の酸素を一瞬にして破壊し尽くし全生物を窒息死させ液化させてしまう。
なぜ酸素を破壊する兵器で生物が液化するのかという疑問が出るだろうが、
これは微少化した酸素原子が物質を構成する原子の隙間に入り込んで破壊してしまうからである。
オキシジェン・デストロイヤーに使用されている特殊な物質についてだが、
後に伊集院博士がミクロオキシゲンという物質(微小化した酸素)を開発しており、これと同様のものと思われる。
このミクロオキシゲンは零下183.2度になると液化して効力を発揮しなくなる(リアル酸素と同じ)ため、極低温によって無力化することができる。
こちらは酸素の性質と生物の成長促進効果性質を有し、食糧問題の解決に役立つと考えられていた。
その威力は砲丸大一個分あれば東京湾を死の海に変えてしまうほどであり、
開発者である芹沢博士も兵器として使用されれば水爆同様に人類を破滅させると考えてその存在を公表しなかった。
実験で小型サイズを使用した時も水槽内の魚を一瞬で溶かし殺した。
また、『
ゴジラVSデストロイア』において伊集院博士が仮に水中ではなく大気中で使われていたらさらに被害が大きくなっていただろうと語っている。
伊集院は当初ミクロオキシゲンがオキシジェン・デストロイヤーに近いと思っていたが、東京湾のデータを採取してからは遠いという見解となっている。
集合体となったデストロイアの破壊力を見て「あれほどの破壊力はミクロオキシゲンではあり得ない。オキシジェン・デストロイヤーではないか」と、
破壊力においてはミクロオキシゲンをはるかに超えるとみなしている。
これほどの危険な兵器をなぜ開発したかについてだが、芹沢博士本人は兵器として作ろうとしたのではない。
ただ、酸素の使い方をあらゆる角度から研究していたところ、偶発的に「至ってしまった」のだ。
本人もその威力を知った時には数日食事が喉を通らないほどに恐れ、悩み、これをより良い使用方法が見つかるまでは封印しようとしていた。
【劇中の活躍】
劇中では、
ゴジラによる被害によって苦しむ人々のために芹沢博士が使用した。
当初は上述の通り公表したいものでなく、
むしろ現在使ってしまえばオキシジェン・デストロイヤーの技術は兵器として利用されるだけでしかなかったため、誰にもその研究を明かしてはいなかった。
しかし、かつての許嫁であった山根恵美子に他の誰にも話してはいけないという約束でこっそりその成果を見せる。
恵美子もその研究の恐ろしさに誰にも話さないと誓うものの、
ゴジラによって多くの人々が犠牲になっていくことに耐えられず、
約束を破って恋人である尾形秀人にオキシジェン・デストロイヤーの存在を明かしてしまう。
二人は必死でゴジラを倒すために使わせてほしいと芹沢を説得するが彼はゴジラを倒せるのは自分だけと知りながらも「今これを使えば世界中の施政者達は必ず原爆や水爆と同じように兵器利用するに決まってる」と悪用を恐れて頑なに使用を拒絶し続ける。
しかしゴジラによる破壊に苦しめられる人々の姿に、ついに芹沢は心を打たれオキシジェン・デストロイヤーの使用を一回限りの条件で許可する。
そしてオキシジェン・デストロイヤーの技術が悪用されないようにゴジラに対し使用する分以外は設計図を含めて焼却処分して東京湾へと向かった。
芹沢はオキシジェン・デストロイヤーのカプセルを完全な状態で作動させるには水中操作しかないと言って、サポート役の尾形と共に潜水服を着込んで海に潜る。
尾形は芹沢の合図で浮上するものの彼がついてきていないことに気付く。
はじめからオキシジェン・デストロイヤーの秘密を封印するために海中で自殺するつもりだった芹沢は、カプセルを起動すると苦しむゴジラを見届けて命綱を断ち切って恵美子と尾形に最後の言葉を遺す。
「尾形、成功だ。大成功だよ。幸福に暮らせ。さよなら。さよなら」
芹沢は自らと共にゴジラを葬り去った。
その頭脳にあったオキシジェン・デストロイヤーの設計図と、恵美子への叶わぬ想いと共に。
しかし、この事が東京湾を無酸素状態とし、地球が無酸素だった時代から眠っていた古代生物を復活させ、怪獣
デストロイアを生み出す結果になってしまう。
デストロイアは高濃度のミクロオキシゲンを光線のように噴射したり、角の分子結合を緩めて伸ばしたりと様々な応用をしており、
このことからもオキシジェン・デストロイヤーが兵器として運用された場合の汎用性の高さがうかがえる。
第一作で
核兵器や
戦争の化身であるゴジラをも葬り、そしてその40年後にデストロイアという脅威を生み出してしまった兵器。
オキシジェン・デストロイヤーはある意味、もう一つの核、もう一つのゴジラとも言える存在なのかもしれない。
【その後の展開】
ちなみに『ゴジラ』本編では一応オキシジェン・デストロイヤーという名前も含めてマスコミが実況付きで報道しているが、
その後の一般での知名度は作品によって異なっている。
『
ゴジラの逆襲』では、ゴジラの対策会議の際に山根恭平博士の説明の中でわずかながらその存在が語られる。
しかし昭和シリーズではそれ以降二度と触れられることは無かった。
VSシリーズではしばしば登場しており、調べようと思えば普通に知れるものであったらしい。
『
ゴジラVSビオランテ』では、国土庁に出向している権藤一佐の部屋にオキシジェン・デストロイヤーのレプリカが飾られているのが確認できる。
『
ゴジラVSキングギドラ』に登場する「ゴジラ誕生」という本にもオキシジェン・デストロイヤーのことが記されている(資料集などで確認可能)。
それによると、やはりあの一件で、東京湾は生物が住めない死の海になったそうである。
そして『
ゴジラVSデストロイア』ではストーリーの肝として何度となく言及される。
『
ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』ではオキシジェン・デストロイヤーの名前は登場していないが、
1954年に襲来したゴジラが、ある科学者が制作した「未知の毒化合物」によって倒された事が語られている。
だがVSシリーズとは異なり、こちらの世界ではかなり徹底した箝口令と情報操作が敷かれたらしく、准将である立花泰三ですらその事実を知らず、
防衛軍の上層部も「今の防衛軍はかつてゴジラを倒した頃とは比較にならない程の火力を有している。50年前の防衛軍に負けたゴジラが再び現れたところで問題はない」と楽観視する声も強かったのだが、実際には当時も現在もゴジラにはあらゆる通常兵器が全く通じず、防衛軍は何の役にも立たなかったという。
こういった事実も含めてすべて隠された上で、世間一般にはゴジラは防衛軍の攻撃によって倒されたと認識されている。
要は手柄の横取りである。
『ゴジラ』ではゴジラの骨をも溶解してしまっているが、
『
ゴジラ×メカゴジラ』と続編『
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』では骨だけ残り、使用場所はVSシリーズとは異なり房総半島沖、という設定になっている。
あくまでこの使用場所の変更は手塚監督のこだわりによるものだが、あえて深読みすれば使用場所が違うことにより、
ゴジラの骨がこの世界では残り、同時にデストロイアも誕生していない…とすることもできるかもしれない。
この骨は
自衛隊により房総半島沖にてサルベージされ、後に
3式機龍のメインフレームとして利用された。
なお、『ゴジラ×メカゴジラ』でもオキシジェン・デストロイヤーの名前は出ず、単に「特殊兵器」と呼ばれている。
最後にG細胞は幾重ものシャッターの中に厳重に封印されているのだが、オキシジェン・デストロイヤーと同じ容器に納められている。
小説『GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ』では、
星さえも破壊するゴジラの脅威に絶望する人々に希望を与えるために、ケイン・ヒルター研究員と仲間達が拡めた嘘っぱちとして描かれている。
一方で、仲間達は偽りの希望を与えるだけではなく、
へドラ研究施設を拠点にゴジラを倒す生物兵器の開発を試み続けていたが、
赤い外骨格を持ち金属を溶解させる群体のガニメの亜種が現れ……。
ゲーム『ゴジラ・ジェネレーションズ』では、「
ジャイアント芹沢博士」の武器として登場。
博士とともに数十倍のサイズになっており、紫に光る鈍器として用いられる他にも、全方位に稲妻状の光線を放つことが可能になっている。
芹沢博士が
巨大化など思いついた時点で正気ではないが、遺族はノリノリで許可を出したそうな。
ジャイアント芹沢博士は登場シーンで「ああ、こんな物さえ作らなければ……」と言っているので、巨大化もオキシジェン・デストロイヤーのせいなのかもしれない。
んなわけねーだろ
スマホゲーム『スーパーロボット大戦X-Ω』にも芹沢博士とともに存在が語られている。
劇中のゴジラの扱いや
碇ゲンドウの口ぶりからすると、オキシジェン・デストロイヤーの破壊力はエヴァや
マジンガーZ以上の代物だったようだ。
そして…、
モンスターバースシリーズ『キング・オブ・モンスターズ』では、米軍が開発した対怪獣用の新兵器として登場。
初代における「水中の酸素破壊剤」ではなく気化爆弾を始めとする非核性の大量破壊兵器で、半径3キロメートル圏内の生物を死滅させる大量殺戮兵器とされている。
ミサイルの弾頭に搭載されての登場ではあるが、容器の形状もオリジナルのオキシジェンデストロイヤーに準じたものになっている。
水中だけでなく周囲の空気までも無酸素状態にしてしまうオリジナル以上の効果範囲を持っている(劇中で使用した瞬間に周囲の街で起きていた火事が一瞬にして消える描写がある)。
逆に生物を分解する効果には限りがあるらしく、実際使用後に大量の魚の死骸が浮かび上がったが、ほとんどは無傷であった。
いずれにせよ使用されれば一帯を死の海に変える兵器であることはオリジナルと同様であり、エンドロール後の映像では地元の漁師が不漁を語っている。
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プエルトリコ沖にてモナークの目前で繰り広げられたゴジラとギドラの戦闘の最中に、米軍が長距離ミサイルに搭載して使用。両者の戦闘海域に着弾すると同時に炸裂し、核爆弾にも匹敵する強烈な爆発と共にゴジラに致命的なダメージを与えることとなった。
しかし、宇宙怪獣であったギドラに対しては殆ど効果が無く、逆にギドラを止める者がいなくなったことでギドラの破壊活動が活発化してしまう結果となった。
一方のゴジラも一命は取り留めたものの体力を著しく消耗してしまい、海底奥深くにある巣での休眠を余儀なくされてしまった。
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原典では悲劇的メッセージ性の強い禁忌の発明として扱われていたオキシジェンデストロイヤーが、KOMで単なる大量破壊兵器としての登場したことや、その扱いについて一部のファンのあいだでは批判の声もある。
いずれにせよ、オキシジェン・デストロイヤーという「初代ゴジラを完全に殺した兵器」という肩書や歴代ゴジラにおいての重みが様々な考えを呼んでいる。
- 「生態系に与える多大な影響やゴジラを一時的にでも死(心停止)に至らしめる威力を持ち、かつ宇宙生物であるキングギドラに効かないという今作の展開に説得力を持たせられる既存の対G兵器ではオキシジェン・デストロイヤー以外に存在しない」
- 「過去作のオマージュネタが入っていて、古参のゴジラファンとしては嬉しい」
という肯定意見もある一方で、
登場も突然かつ一瞬のため前後の登場を示唆する部分が無く、また使用後もそれについて考えるなどのシーンが無いため「呆気なさすぎて雑すぎる」
という批判も。
- 「自然の脅威であるギドラと戦い、あまつさえ海中で優位に立ている最中、同じくらい自然の脅威となる兵器を扱った人類が、ED後もゴジラからのお咎めが無いのは都合がよすぎるのでは?」
- 「「自然を否定する脅威」と称してる割に、オキシジェン・デストロイヤーも使った人間も共々雑に消化するくらいなら、最初から反自然の象徴であるギドラにゴジラがやられる展開でもよかったのでは?」
などと賛否が分かれている。
「彼」の死について(ネタバレ注意!!)
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事実上このODの尻拭いのようなことをさせられて命を落とした芹沢猪四郎博士の扱いに関しても
- 「そもそも、芹沢「猪四郎」と本多猪四郎監督の名前を持つ人物を(理由はどうあれ)核で殺すというのは酷い」
- 「モンスターバースの芹沢博士が核で家族を失った痛みや苦しみを抱えているのに、その人にあえて核を使わせるのはどうかと思う」
- 「芹沢がゴジラの為に犠牲になるという展開は有りだが、ODも核も使いどころが悪すぎる」
- 「監督は初代ゴジラの芹沢博士が、どういった苦悩を経てオキシジェン・デストロイヤーを使用したか全く分かっていない」
などと一部で物議を醸している。
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【造形】
- デザインは本編班美術スタッフの安倍輝明、造形は井上泰幸。実物大の金属製2尺模型が作られた。
撮影に使用された模型は現在も東宝映像美術に保管されている。
『ゴジラvsデストロイア』のアバンタイトルではCGで描かれており、容器は金色で溶液は緑色となっていた。
闇の中に浮かび上がった初代『ゴジラ』の
タイトルロゴの爆発を飲み込み、起動しながらともに海に沈む……という演出が示すところは明白であろう。
- 各種イベントでも展示された他、前述の権藤一佐の部屋のレプリカに使われている。
『ゴジラVSモスラ』ではモブ画面で眼帯の男がこのオリジナルプロップを抱えて走っていると大河原監督が発言しているが、画面からは判別できない。
- 開発者、芹沢大介博士の演者である平田昭彦氏は特撮作品では初代バランを特殊火薬で一撃で撃退し、遊星人ミステリアン、ガラモン、初代メカゴジラ、ゼットンも撃退している事で有名な怪獣キラーである。
- ゴジラを題材としたトランプにおいてはJOKERに描かれる事がある。ゴジラをも葬る最強の切り札、ということか。
- 2015年に公開された、アサイラム社製のサメ映画『メガ・シャークVSグレート・タイタン』では、対メガ・シャーク用の最新鋭潜水艦ユニコーン1号・2号の新兵器として「オキシジェン・デストロイヤー弾」が登場する。
だがその性能は、ゴジラシリーズのものとは雲泥の差であり、メガ・シャークの9メートルほどの稚魚に対して使用されるも効果は無く、返り討ちにされるのであった。
追記・修正は、東京湾に潜ってオキシジェン・デストロイヤーを起動させた後でお願いします。
最終更新:2025年01月28日 23:56