1993年第107回天皇賞・春

登録日:2011/12/07 (水) 09:00:48
更新日:2024/02/12 Mon 17:52:43
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もう一度マックイーン!
今年だけ、もう一度頑張れ
マックイーン!
しかしライスシャワーだ!


1993年4月25日に京都競馬場で行われた第107回天皇賞・春はライスシャワーの勝ったレースである。

【馬柱】



1993年京都3回2日10R 第107回天皇賞(春)
京都芝右3200m 五歳以上オープン 牡牝 定量(58kg)


馬名 騎手
1 1 キョウワハゴロモ 岸滋彦
2 2 トーワナゴン 小谷内秀夫
3 ライスシャワー 的場均
3 4 ムッシュシェクル 松永幹夫
5 マチカネタンホイザ 岡部幸雄
4 6 タケノベルベット 河内洋
7 ゴールデンアイ 藤田伸二
5 8 シャコーグレイド 蛯名正義
9 メジロパーマー 山田泰誠
6 10 レットイットビー 佐藤哲三
11 アイルトンシンボリ 柴田政人
7 12 ジャムシード 田原成貴
13 イクノディクタス 村本善之
8 14 メジロマックイーン 武豊
15 キョウワユウショウ 安田康彦



圧倒的1番人気は前走大阪杯をレコード勝ちで昨年、一昨年の天皇賞・春勝ち馬のメジロマックイーン。
2番人気は昨年の菊花賞馬で前走日経賞勝ちのライスシャワー。
3番人気は前走目黒記念でライスシャワーを破ったマチカネタンホイザ。
4番人気は昨年のグランプリ2勝馬で前走阪神大賞典をレコード勝ちのメジロパーマーだった。

3000m以上の重賞でレコード勝ちの経験のある4頭が、共に前走勝ちという絶好のコンディションで迎えた天皇賞。
前日まで降っていた雨も止み、快晴の良馬場で行われた。

歴戦の古馬達が集まる中、珍しくゲート入りを嫌がったメジロマックイーン。
そのおかげで少々遅れてのレーススタートとなった。


好スタートを切ったのはメジロパーマーとメジロマックイーン。
いつものようにメジロパーマーがハナを奪っていく。
ムッシュシェクルとキョウワハゴロモがメジロマックイーンを交わしていく。
メジロマックイーンは抑えて4番手。
イクノディクタスが続いて、その後にマチカネタンホイザ、ライスシャワーが続く。
1周目スタンド前では隊列は完全に落ち着いていた。
メジロパーマーが快速に飛ばし3馬身ほどのリード。
メジロマックイーンも落ち着いていた。

馬群が向こう正面に向かうとライスシャワーがじわりじわりとメジロマックイーンとの差を詰める。
真っ白なメジロマックイーンに対して真っ黒なライスシャワー。
500kgの大きな馬体のメジロマックイーンに対して430kgと小柄なライスシャワー。
まさに対照的な2頭が鎬を削る。
マチカネタンホイザがそれに続き、イクノディクタスがその後。
皐月賞2着のシャコーグレイドがいて、エリザベス女王杯勝ち馬のタケノベルベットが続く。
その頃には史上に残るハイペースで逃げるメジロパーマーのリードは5馬身にもなっていた。

レースが動いたのは3コーナー手前。メジロマックイーンがメジロパーマーを捕らえるべく、仕掛けていった。
それは京都の長距離GⅠを3勝している馬の百戦錬磨で絶対的な戦法だった。
ライスシャワーもそれに続いてペースを上げる。
2番手を走っていたムッシュシェクルも必死でついていこうとするが3コーナーを回った所で力尽きた。
4コーナーを回る頃には勝利の行方はもうGⅠ馬3頭に完全に絞られていた。

内からメジロパーマー、メジロマックイーン、ライスシャワーと3頭が並んで第4コーナーを回った。
その強さと迫力の前には、その他の馬はすでに脇役ですらなかった。
そしてまず先頭に躍り出たのは、メジロマックイーンだった。
大観衆の目には史上初の同一GⅠ3連覇が達成されるかというように思えた。
しかし、脚色が最も良かったのは外を回る真っ黒で小柄な馬、ライスシャワーだった。
大観衆の多くが思い描き望んだ展開とは逆のシーンが繰り広げられる。
ついにライスシャワーが先頭に立った。
観るものの望まぬ展開に、そしてその強さに大観衆は沈黙し、一瞬の間静寂が会場を包んだ。
その後はライスシャワーとメジロマックイーンの差は開く一方であった。
ライスシャワーは最後まで追い続ける必要はなく、最後は抑えるようにゴールした。


関東の刺客
ライスシャワー


昨年の菊花賞でミホノブルボンの無敗の三冠を阻んだのと同様に、同じ京都の地でまたもや大記録を阻んだのだった。
しかし、悪役のように扱われた実況や結果とは裏腹に、勝ったライスシャワーを労うように的場騎手が優しくなでて健闘を讃えるのがとても印象的であった。


結果

1着 ライスシャワー
2着 メジロマックイーン
3着 メジロパーマー
4着 マチカネタンホイザ
5着 レットイットビー
6着 アイルトンシンボリ
7着 ムッシュシェクル
8着 シャコーグレイド
9着 イクノディクタス
10着 タケノベルベット
11着 ジャムシード
12着 トーワナゴン
13着 キョウワユウショウ
14着 ゴールデンアイ
15着 キョウワハゴロモ

払い戻し
単勝 3 520円 2番人気
複勝 3 140円 2番人気
14 110円 1番人気
9 230円 5番人気
枠連 2-8 340円 1番人気
馬連 3-14 370円 1番人気


勝ちタイムは3分17秒1のレコードだった。
ライスシャワーは昨年の菊花賞と同様にレコードタイムで大記録を阻んだのだった。
メジロマックイーンも素晴らしいタイムで走ったのだから実に惜しいものである。
しかもマックイーンはゲート入りをごねたため、枠入り不良と判断され、ゲート再審査を課され合格するまで出走停止という泣きっ面に蜂となってしまった。結局1発合格したが。


勝ったライスシャワーは、この後長いスランプに陥り、次に勝つのは2年後の天皇賞・春になる。
それがまたドラマチックなのだが。

20世紀の日本競馬で、3000m以上の長距離GⅠを3勝以上している馬は、ライスシャワーとメジロマックイーンの2頭しかいない*1
最強のステイヤー談義では必ず出てくる筆頭の2頭の直接対決はまさにドリームマッチであり、またそれに充分に応えられるだけのレース内容だったと思われる。


追記・修正は、極限まで削ぎ落とした身体に鬼を宿らせてからお願いします。

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最終更新:2024年02月12日 17:52

*1 21世紀はキタサンブラックやフィエールマンが該当する。