菅野直

登録日:2012/09/06(木) 15:51:12
更新日:2024/04/20 Sat 00:32:21
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菅野(かんの)(なおし)



太平洋戦争期の日本海軍の戦闘機搭乗員。宮城県角田町(現角田市)出身。

海軍兵学校70期、第38期飛行学生。

最終階級は大尉(戦死により二階級特進で中佐)。

零式艦上戦闘機局地戦闘機紫電改を操り、個人・協同含め敵機撃墜破数72機。

数字からもわかる通り、太平洋戦争下でも屈指のエースパイロット

「菅野デストロイヤー」というニックネームを付けられたほどの強烈なキャラクター・生き様と、そのミステリアスな最期などから、注目を浴び続けている。

二つ名「デストロイヤー(破壊者)」はその戦果にではなく、
何かにつけて機体の扱いが乱暴で飛行機をぶっ壊しまくっていたことに由来する



【デストロイヤー爆誕】
1921(大正10)年9月23日に、貧農の身から苦学して警察署長になった菅野浪治と母すみえの間に生まれる。

次男坊で、姉に菅野かほる、兄に菅野巌がいる。後に妹の菅野志げ子と末妹の菅野和子が生まれている。
小学生の頃は、両親の教育の成果もあって品行方正で学業も優秀という兄の巌が両親から可愛がられるのを見ては、反抗的な態度をとって叱られていたが、
中学一年までは七歳年上の姉かほるが添寝していたと言う甘えん坊なところもあり、明るく喧嘩が強いガキ大将の様な存在でもあった。

旧制角田中学(現:角田高校)に進学すると、石川啄木に傾倒して詩を読み、学友たちと文学について激論を交わすと言う、
後のデストロイヤー振りからは想像もできないと言われる程の軟派な学生生活を送ったと言われている。

だがヤツはハジケた



【デストロイヤー覚醒】
1938(昭和13)年12月に江田島の海軍兵学校に70期として入学し、
1941年(昭和16年)11月に卒業後に第38期飛行学生となり1943(昭和18)年9月に修了して戦闘機のパイロットになった。

飛行学生時代から、着陸禁止区域に着陸しようとして練習機をひっくり返したり、模擬戦で教官の機体と接触を繰り返す等して、
練習機を学生の間に四機から五機は破壊したらしい。
デストロイヤーの愛称もこのころついた。



【デストロイヤー世界デビュー】
1944(昭和19)年4月、初代第343航空隊(通称「隼」)の分隊長となったミクロネシアにて初陣を経験し、
同隊が解体となる7月10日まで現地に留まった後に、第201海軍航空隊(306飛行隊)の分隊長となった。

この頃の菅野直は、軍紀違反の常習犯で、嫌いな司令官のいた小屋を零戦の降下時の風圧で吹き飛ばしたり、他の部隊の上官や将校に殴りかかったり、
女子挺身隊員に対して部下と共に一斉にち○こを露出させる等していた。

文学に熱くなっていたインテリ青年が
どうしてこうなった

一方実戦では、
操縦する零戦の翼を敵機B-24の尾翼にぶつけて撃墜する
背面急降下攻撃で敵機の胴体と翼の間をすり抜ける間に銃撃する
一度に2機のB-24を撃墜する

といった「零戦は打撃武器」な戦果を上げ、乗機に指揮官識別用の黄色いラインを引いていた事から、
米軍から「イエローファイター」と呼ばれて恐れられた。
ちなみにこのラインは自身に敵を引きつけるための目的で菅野が付け始めたものらしく、他の飛行隊長もそれに倣ったとのこと。
太平洋戦争末期からは新301飛行隊「新選組」の隊長を務めて、「紫電」「紫電改」を駆って戦う事になった。
新選組では、南洋でB-24相手におこなっていた急降下からのすり抜けさざま攻撃をさらに発展させ、
B-29の弾幕をかいくぐりながら700km/hの速度で20メートルの至近距離まで突っ込んで撃墜すると言うクソ度胸を示して撃墜数を増やし、猛将と呼ばれた。

※米軍の記録には、至近距離まで接近した紫電改のパイロットの顔やマフラーが確認できたとの事。

※菅野直の急降下攻撃は、菅野直以外が操縦する機体が耐えられなくなって空中分解する事もあった。



【デストロイヤー・華麗なる武勇伝】
7,8歳のころに近所の猛犬と格闘になりナイフでつき殺す。

特攻戦果を報告するが上司から戦果が大きすぎて言いがかりをつけられ。菅野は怒り腰の拳銃をそのまま五発床に発砲した。
菅野は自身の右足親指に銃弾をかすめたが発砲は暴発の扱いで済んだ。

酒で特攻の憂さ晴らしをしていると搭乗員宿舎に司令部からやかましいと苦情が来たが、
菅野は「明日の命も分からない搭乗員に何を言う」と怒鳴り黙らせる。

ルバング島に不時着した際、救援の到着するまでの数日間、原住民に対して「俺は日本のプリンス菅野だ」と名乗り原住民の敬愛を集め、
島の王様のように過ごした

内地からフィリピンに受け取った零戦を持ちかえる際、基地を間違え着地しそこの司令に叱責されたため、
菅野はエンジンを全開にし後流の風で指揮所のテントを吹き飛ばし去る

フィリピンで敵機銃弾を受けた際、大腿部からの摘出手術で麻酔なしで臨むと希望したが痛みから途中で一時中止してもらい瞑想し気合を入れると、
えぐり出し縫合を終えるまで表情を変えず一言も発しなかった。



【さよならデストロイヤー】
1945年8月1日の戦闘中、菅野から戦闘第301飛行隊所属堀光雄飛曹長の無線に

「ワレ、機銃筒内爆発ス。ワレ、菅野一番」と入電が入った。

これを聞いた堀が自機のはるか下方を水平に飛ぶ菅野機を発見し即座に近づいたところ、
左翼日の丸の右脇に大きな破孔を発見した。
すぐさま戦闘を中止し菅野機の護衛に回ったが、菅野は敵の攻撃に向かうように再三指示した。
堀がそれでも護衛から離れないので菅野は拳を突き付けて見せ、堀は攻撃に戻った。

堀はその瞬間にそれまで怒りの形相であった菅野の表情が和らいだのを見たという。

菅野から
「空戦ヤメ、全機アツマレ」
と入電があったため、堀は菅野がいると思われる空域へ向かうが、途中再び

『ワレ、機銃筒内爆発ス。諸君ノ協力ニ感謝ス、ワレ、菅野一番』

との通信を遺して消息を絶ち、そのまま死亡扱いとなった。

通信の内容から、機銃が暴発したことで操縦不可能に陥って墜落したものと考えられているが確証はない。



【デストロイヤーあれこれ】
彼が撃墜王となったのは大戦の戦況が劣勢になった1943年9月以降。
343空の教官であった坂井三郎からは、
「なんでお前みたいなヒヨコが選ばれたんだ?岩本徹三とか連れてくればいいのに、お前のような若造がなぜ隊長だ?ジャク(使えない搭乗員の意味の隠語)め……」
と度々愚弄される事も多く、堪忍袋の緒が切れそうになった事が多かったという。
飛行時間が坂井より絶対的に短いことから侮られ、『取るに足らない若手』と公言されてしまっていた。
一応、海軍兵学校卒のエリートだったので、水兵出身の坂井から嫉妬されていたとも
もっとも、坂井は「一度も墜落させたことがない」ことを最大の誇りとしており、デストロイヤーの異名がつくほど機体を破壊しまくっていた菅野に我慢ができなかったとも言われる。

劣勢期に撃墜王となっただけに、ゼロ戦が急速に陳腐化していくのを最前線で見、感じていた証人であった。
新鋭機の登場を心待ちにしていた中、紫電改の配備はまさに水を得た魚。
撃墜スコアを更に伸ばし、猛将と諢名されるに相応しい働きを見せたが、
南方戦線以来の相棒とも言えた杉田庄一曹長(死後、中尉)、源田大佐が呼び寄せた護衛役の武藤金義少尉らが、
彼の身代わりになるかのように相次いで戦死、あるいは行方不明になると、
デストロイヤーの名を持つ菅野も仲間と相棒を激戦で立て続けに失うと、目に見えて鬱状態に陥ってしまったという、源田実大佐の証言が残されている。

また、343空の三人の結成時の飛行隊長の中でも最も武運に恵まれており、上記の通りに終戦の14日前まで生き残っていた。
だが、愛機ではない機体での出撃が運の尽き。とうとう未帰還になってしまった。
何故、愛機が使用できなかったのかは今なお不明。精鋭と評判の343空といえど、終戦間際には機材が不足していた事を示すエピソードである。
整備士の技能低下もあったかもしれない。
343空は8月からは作戦を限定し、人員と機体の補充要求もしていなかったとされている。

彼の存在が343空の名を後世に残した側面も大きく、ちばてつやの『紫電改のタカ』で343空がマンガ世界にデビューを飾ると、菅野も登場したのだが……
風貌はベテランパイロットっぽいいかついヒゲおやじ。誰だお前!
実際には坂井三郎から侮られていた通りに若手(行方不明になった当時で24歳!)パイロットであり、同作主人公の滝城太郎に近い風貌であった。
343空というと、菅野がいる部隊というイメージが定着したのに貢献した一作である。
ちなみに、より情報が明らかになった後の時代である後世のドリフターズ(漫画)では史実通りの若者で描かれている。

なお、近年のNHKのドキュメンタリー番組では343空は菅野がいて、
当時の日本軍最新鋭の戦闘機の両巨頭(もう一方は疾風)での片翼であった紫電改を装備していた部隊ということで、
情報が入っていれば長崎原爆投下を阻止してくれていたはずだと願望に近い説が立てられたが、原爆投下時には菅野は行方不明である。無茶言いなさんな





もしかしたらいまでもどこか大空飛んでいるかもしれない…


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最終更新:2024年04月20日 00:32