翼(小説)

登録日:2011/08/29 Mon 15:13:00
更新日:2023/01/04 Wed 07:06:05
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羽とは異なり、自ら翔ぶもの


『翼』とは川上稔のデビュー前の短編小説である。

氏が物書きで食っていこうかと本気で考えていた頃の作品であり、この短編が出来なかったら『小説で食ってくのはスッパリ断念した』とのこと。
そういう意味では〈都市シリーズ〉『終わりのクロニクル』『境界線上のホライゾン』など、
数々の作品から成る川上作品の“全ての始まり”である(というかAheadシリーズ作品)。
なお、ファンタジーやSF要素はかなり低めだがこれも〈都市シリーズ〉へと繋がる物語の一つである。

氏の作品らしく、『架空のゲーム』を主軸としながら後の作品群に在るような“力いっぱい想うことの強さ”
“なりふり構わずに駆け抜けていくバカの強さ”が表現されている。

余談:氏の友人曰わく「ああ、オマエが書いた中で一番マトモな小説か
また書いてから五年の間に三回手直しされており、現在の完成度はその三回の推敲の結果とし、
『作家志望はこの作品を参考になどしないこと』とあとがきで述べている。



○あらすじ
仮想現実シミュレーションゲーム「チェイン」。
『現実とは全く違う自分を違和感なく、体験する』ことが出来るゲームに没頭する少年は、プレイ中にある雑念を聞く。
言葉にならぬ呼びかけ。架空の人格で意志の暴走が抑えられたゲームプレイヤーではけして聞くことが出来ない些細な違和感。
その日から少年は内から湧く疑問に突き動かされるようにその『雑念』を追い始める。



○登場人物

  • 少年
主人公。高校生とも大学生とも見えない、どことなく気力の無さそうな雰囲気のある少年。
ゲーム内でのキャラクターは『サムライ』→『エアロナイト』

本来なら架空の人格でプレイする「チェイン」をなるべく“生の人格のまま”でプレイしたことで、ある奇妙な感覚を得ることになる。
上京するにあたってある少女と別れている(もっと、それは“いいひと”で終わった関係と述べている)。


  • 『Y・S』
「チェイン」のプレイヤー。
少年が感じていた『雑念』の正体。
上京前に別れた少女と同じイニシャルであるが、同一人物であるかは不明。
彼女のエンディングに立ち会ったことがキッカケとなり、物語は動いていく。


  • 髭面の店長
少年が行くゲームセンターの店長。



○登場ゲーム

  • 「チェイン」
仮想現実シミュレーションゲーム。プレイヤーは箱型のボックスに入り、ヘッドセットを被ったまま催眠状態に入る。
そのヘッドセットが唯一脳と直結している視覚を闇の直射によって刺激し、立体音響とともに仮想現実をプレイヤーの脳内に映し出す。
確かな現実感を持って形作られるそこでは、プレイヤーの眼球網膜から読み取られる意志の強さによってキャラクターが操られ、
またキャラクターはその疑似人格をもってプレイヤーの意志の暴走を抑えつける役割を持つ。

催眠状態でプレイするため洗脳疑惑や脳になんらかの悪影響があるのではないかとの問題があり、
その保険料とプログラムの外部解析のために1プレイ500円とアーケードゲームとして少々割高。
しかし人気は高く、『ある事件』が起こったあとには早朝から長蛇の列が出来るほどの爆発的――という表現では追いつかない勢いで――人気を博した。




現実とは時間を一定速度で消費した
“信じられる事実”
のことである




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最終更新:2023年01月04日 07:06