レブレサック

登録日:2011/10/29 Sat 21:06:37
更新日:2024/03/18 Mon 22:18:59
所要時間:約 7 分で読めます




レブレサックとは、『ドラゴンクエストⅦ』に登場する村の一つである。黄の石版。
ストーリーでは17番目に訪れる。前は聖風の谷で、次はコスタール

暗いイベントが多いDQ7の中でもかなり上位に位置する……否、DQシリーズトップクラスに最悪の村である。


ただし人間社会の闇を描ききったエピソードとしては高い完成度を誇る為、好き嫌いは有るが評価自体は高いエピソードでもある。

■過去


正体不明の深い霧に囲まれて完全に疑心暗鬼に陥った村人達。
村人達に信頼されていた神父は諸悪の根源を倒すべく、少年ルカスの両親と力自慢の若者を連れて『魔物の岩山』へと向かう。
しかし神父らが帰ってくることは無く、代わりに教会に化け物が現れた。

「化け物は悪魔の手先に違いない、退治するしかない」と意気込むも、誰が実行するかが問題になり話は進まない。
そこで村人はたまたま立ち寄った旅人(=主人公)に「教会の化け物を倒してくれないか」と依頼する。

渋々依頼を引き受けた主人公らとそれに随伴する少年ルカスは教会に行くものの、違和感を覚える。
化け物からは敵意は感じられない。村人を襲うこともなく、ただ悲しそうな顔をしているだけなのだ。

化け物を倒す事に躊躇した主人公達。
その為に主人公達は村人から「実は化け物の仲間だったのではないか」と思い込まれ、魔物の岩山に幽閉される。
この時、リレミトを使わない限りは山頂に行くまで脱出が不可能になる。

■魔物の岩山にて


山頂には神父が居た……しかしそれは神父の姿をした化け物、ボトクであった。
ボトクは事の真相を語る。

「仲間達は次々に死んでゆき、それでも神父は諦めず立ち向かってきた。
だから私は言った。村を守りたいなら私と取引しないか? と。
私と姿を取り換えおぞましい化け物の姿になって生きるならば……
お前の生きている限りは村を襲わずにいてやろうと」

つまり、教会にいた化け物こそが本物の神父だったのである。
自分達の命を繋いでいた神父を殺そうとしていた……なんたる皮肉であろうか。

難なく*1ボトクを倒して村に向かう主人公達。そこで見たものは磔となり火あぶりを受けようとしている化け物の姿だった。
しかし間一髪でボトクの呪縛が解け、化け物は神父の姿に戻る。
この時になって真実を悟った村人達。磔は解かれ、神父は一命を取り留めた。

一晩明けてから神父に謝りに行こうとする村人達。
しかし明け方、一人教会を出ようとする神父の姿があった。

「もし私がこのまま村に留まるならば……
村の人々はいつまでも私の姿を見るたび苦しむでしょう
彼らに罪は無い。全ては魔物の仕業だというのに村人は苦しむでしょう」

と言い、神父は村人達に気付かれぬように村を去ってしまう


なお、神父様はプロビナ地方に旅だった模様(明示はされておらずプロビナの神父も記憶を失っているが、女神像等の詳細部分が一致する為)。
プロビナでは主人公達を守る為に魔物の前に出て命を落とした。人徳あり過ぎるよこの神父。
唯一真相を知るプレイヤー達は複雑な気持ちに襲われた。

身を挺して皆を守ってくれた神父を追い出してしまった後悔の念。
過去の過ちを繰り返さぬように村人は石碑を立てて、神父様と主人公達の記述を後世に残そうとした。

その身を魔物の姿に変えて村を守った神父様を
我々は殺そうとした。
神父様を魔物の手先と疑い村中の皆で殺そうとしたのだ。
神父様こそが我々を守ってくれたというのに。
我々の過ちは旅人達のおかげで防がれたが、罪は消えることは無い。
我々はいつまでもこの過ちを忘れてはならない。
そして、旅人と神父様への感謝の心も……。


これで事件は解決。
もっとも、神父を攻撃してたくせに「あたしゃ最初からアイツが神父だと分かっていたよ。でも他の住民が怖くて言い出せなかった」なんて供述をしやがる住民も居るが。なんて面の皮が厚い……。*2
主人公達は過去のレブレサックを抜け、「さ、今はどうなってるかな〜」と現在のレブレサックを見に行くのだが……。


■現在


町の中心に佇む石碑、その内容を確認する主人公達。

その身を魔物の姿に変えて村を守った神父様を
我々は心から愛していた。
ところがある日やってきた魔物の化身が、神父様を殺そうとした。
我々は力を合わせ、神父様を守った。
我々は神父様への感謝を忘れることは無いだろう。

あれ?

そう、見ての通り内容がすり替えられているのだ。
「神父を救った旅人=主人公達」を「やってきた魔物」と悪役扱い。
村人はまるっきり善玉になっている。
あと後ろめたさからか急いで改変したらしく、知らなくても違和感を覚えそうなぐらい文章の繋がりもおかしい。

……しかも唯一真実を知る*3少年リフは嘘つき呼ばわりされていじめられる始末。
主人公らはリフと協力して、埋められた本物の石碑を発見。村長に真実を突き付けるのだが……、


「こんなもの あってはならないんですよ……。」


と言い、あろうことか石碑を破壊する。
そして村長も村人も、何事も無かったように生活を続けていくのであった。

……以上が最悪と言われる所以。

もっとも、村長の行動は村を守っていく立場の人間として一概に間違っているとは言い難い。
そもそも最初に歴史を捻じ曲げたのは村長本人ではなく、過去レブレサックと現代レブレサックの間のどこかの時代に行われたことである。
また、レブレサックには、王国の庇護がある様子もなく、クレージュエンゴウリートルードのようなめぼしい産業や観光地もない。
そんな村にとって、村民たちがかつて捻じ曲げて残した歴史は、村にとっては大切な求心力であった可能性もある。

真実の歴史を伝えた結果として村が求心力を失い、消滅という末路を辿っていくなら、歴史を葬った方がいい・・・。

という考えを村長はしたのかもしれない。
村長宅の本棚には、「よい村長となるには」というような書籍が多く、村長がよき村長となるために努力していることは間違いない。
村長が徹底的に嫌われているのは、村長が特に葛藤する様子もなくぶち壊したのと、過去の惨劇を見てきたプレイヤーだからこそ抱く気持ちなのかもしれない。

ましてや、現代の村人たちは歴史の改竄がされていることなど何も知らない、いわば善意の第三者である。
他方で、真実を知った少年達が大人達に真実を伝えても、彼らの親を含めた大人達が揃って彼らを嘘つきと決めつけ、理不尽な罰まで与えた事実、
そして後に神に化けていたオルゴ・デミーラが姿を表した時、村長を含めた村人達(一部の例外は除く)がよそ者を魔王の手下扱いして追い出そうとしていた事実が、
プレイヤーの怒りと失望に拍車をかけていると言える*4

幸いな事にリフをいじめていた村の少年達には真実が伝わり、彼らは反省しリフへの酷い態度を改めている。
そのおかげで彼らは神に化けていたオルゴ・デミーラが姿を表した時も怯えるだけの大人達とは違い、明確な勇気と強い意思を持っていた。
他の村人も、「俺たちはかつて神父様を守ったんだぞ!!今回も俺たちは頑張るんだ!!」くらいの姿勢を見せていれば、イベントへの評価も変わったのかもしれないが……。

『真実を知った子供達』という、未来に小さな希望を残す形でこの村のエピソードは終了する。
子供達だけじゃなく、宿屋の女将も主人公達を信じて亭主に黙って泊めてくれるいい人なのも忘れずに。

この村に関する評価としては、「滅んだ方がまだマシな最悪な村」と怒りを露わにする人もいれば、「怒る気持ちは理解できるが、村人たちの行動も理解できる」と諦観の念と共に語る人、あるいは「プレイヤーという第三者の視点から見ているからこそ理不尽に思うが、自分が村人の立場なら歴史の隠蔽と改竄に賛同するだろう」と冷静に見る人もいる。
良くも悪くもプレイヤーの印象に残る村、という意味では非常に完成度の高いエピソードと言えるかもしれない。 
ちなみにこの胸糞エピソードはスルー可能で、石版を取ったらちゃんと揃っていればここを飛ばしてコスタールに行ける。リフは嘘つき呼ばわりのままだが…
ただし3DS版では必須エピソードになっているのでPS版既プレイヤーは注意。
ストーリー進行上マリベルを連れてくることは不可能。超がつくほど毒舌で、かつ思ったことをすぐに言い、そして称賛が足りないと不満を漏らす彼女がこの村に来てたらガチギレしそうだが。
一部では「ここを封印したのがオルゴ・デミーラ唯一の善行」と称される場合もあるが、そもそもオルゴ・デミーラがこの村を封印しなければ一連の悲劇は起こらなかったため、これに関しては全くの的外れな主張と言えよう。

因みに、かのヌルスケの墓があるのもこの村。

ちなみにリートルードの橋のように渡った先で何かあると思って過去のレブレサックから南に行くと、砂漠の城がある。
どうやらそれほど時間は経っていないらしく救い主様を温かく迎え入れてくれるが、残念ながらイベントは何もない。
しかしレブレサックからすると、せっかく命からがら霧の向こうに行けたとしても砂漠という更なる試練が待っていたと思うと救いがない…

民衆の指導者的立場にある人間が、先祖の罪を知らされるという例は、後にDQ9のセントシュタイン国王とフィオーネ姫という例が出てきた。
詳細はこちらを参照すれば分かるが、彼らの場合、保身のための隠蔽に走った村長とは対照的に、国王は先祖の罪を一生かけても償うと誓い、フィオーネ姫は先祖の罪で滅ぼされた国の復興を誓い、彼女に古文書を預けられた歴史学者イロホンは「世の中には知らねば幸せだったという事もあるが、知らなければ前へと進めぬ事もある」として、歴史を後世まで伝えると決めている。

ちなみに、本エピソードのボス、ボトクは小説版だと魔王の腹心としてレギュラー化している。
原作で出番のあった部分がなくなったのに出番がむしろ増えているというのはなかなか珍しい。


真実をねじ曲げない追記・修正をお願いします。

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最終更新:2024年03月18日 22:18

*1 ボトクはボスとしてははっきり言ってかなり弱い。知能派の魔物だったのだろう。直前のヘルクラウダーが強すぎるともいうのだが

*2 なお、この村には同じ姿のおばさんが何人かおり、アリバイがないのは井戸の前のおばさんと宿屋のおばさんのみ。こういったのは怪物姿の神父様に対して一際声高に「あんなの殺してしまえばいい」と発言していた井戸の前のおばさんと思われる。よくもまぁぬけぬけと。

*3 本当の歴史を忘れ去った村の中で、リフの家にだけは代々真実が受け継がれていた。ちなみにリフの父親も過去に同じようにいじめられたため、真実を語ることをやめてしまった。

*4 ただし後者は「防犯」という面を考えれば、言い伝え抜きでも間違いとは言いきれないかも知れない。とは言え主人公達はまだしも、主人公達が来る前から村に移り住んでいた人をも、よそ者だからと魔王の手下扱いしたのはいただけないが