輪るピングドラム

登録日:2011/07/11(月) 18:19:34
更新日:2023/03/26 Sun 18:37:30
所要時間:約 5 分で読めます






きっと何者にもなれないお前たちに告げる


生存戦略、しましょうか


僕の愛も、君の罰も、すべて分け合うんだ。




『輪るピングドラム(まわる-)』とは、2011年7月から放送されたアニメ。全24話。
製作はBrain's Base。
OP1:ノルニル/やくしまるえつこ メトロオーケストラ
OP2:少年よ我に帰れ/同上
ED1:DEAR FUTURE/coaltar of the deepers
ED2以降は週替わりで曲が変わる。

監督・脚本は『美少女戦士セーラームーン』、『少女革命ウテナ』を手掛けた幾原邦彦。ウテナから実に12年振りの監督作品。

あの幾原の新作ということで一時期話題になったが、放送前の情報が少なかったことが影響してかネットではあまり盛り上がらず。
CM発表後になっても期待度はそこまで高くなかった。


しかし、第1話にて、

ヒロイン死亡→復活→ペンギン→お茶の間→変身バンク→スタイリッシュ脱衣→ボッシュート

という怒涛の超展開コンボにより人気が爆発。2011年夏アニメのダークホース的存在となった。


特にこの変身バンクが中毒的。
ARBの原曲から大幅にアレンジを加えたカヴァー挿入歌「ROCK OVER JAPAN」、目まぐるしく変化する背景、ウテナ的な演出、
美少女戦士や銀河美少年を彷彿させるポーズ等で強烈な印象を視聴者に与え、一度見るとリピート必至。

しかし前半こそ明るいものの、後半になってからは高倉家の陰の部分を中心に次々と衝撃の事実が明らかになっていき
最終的には高倉家を中心に「愛」と「家族」をこれ以上なく描き出していく作品となっている。
後半のあまりに情け容赦ない展開は必見。おそらく誰もが前半の明るさが懐かしむこととなる。
その落差は別作品かと疑われるレベルで、前半の展開で後半の展開が読める人はまずいないと思われる。

他の演出に関しても、タイトルの「ピングドラム」にかけてモブを「ピクトグラム」で表現したりと幾原節の前衛的なものになっている。

またサブタイトルが非常に秀逸。
後半は怒涛の展開と演出・入るタイミングが合わさって、様々な感情が掻き立てられる。

とにもかくにもネタバレが最大の敵となる作品なので、初見の際はぜひ予備知識なしでの視聴をオススメしたい。


そして本作終了から10年後、十周年を記念して劇場版『REcycle of the PENGUINDRUM』が発表され、翌年に前後編で公開された。


◆ストーリー
両親のいない高倉家には3人のきょうだいが暮らしていた。双子の兄の冠葉と弟の晶馬、そして妹の陽毬。
陽毬は不治の病に冒されており、担当医の鷲塚医師から余命が長くないと宣告される。
数日後、自宅へと帰ってきた陽毬は、兄と一緒に水族館へ行く。
数少ない家族の思い出が残るその場所で、陽毬は不思議なペンギンと目が合う……。
(公式サイトより)



◆登場人物

○高倉冠葉
(CV:木村昴)
主人公その1。高倉双子の兄の方。
活発な性格をしており、言葉使いも少々粗暴。結構なイケメンで非常に女性にモテる。
陽毬を溺愛しているシスコン。兄妹愛だけでなく恋愛感情も含んでいる。

○高倉晶馬
(CV:木村良平)
主人公その2。どちらかというと彼の方が主人公に見える。高倉双子の弟の方。
兄とは逆に穏やかな性格。3人の中で最も常識人だが、そのためか不思議な出来事には適応力が低い。
兄と同じくシスコンだが、色恋には疎い。
小説版は基本的に彼視点で綴られている。


○高倉陽毬
(CV:荒川美穂)
ヒロインその1。高倉家のアイドル。
病弱で余命幾許もない。
水族館へ行った日に突然倒れ、そのまま亡くなった。
……はずだったが、水族館で買ったペンギンの帽子の力で復活する。
太陽拳の使い手。

○プリンセス・オブ・ザ・クリスタル
陽毬がペンギン帽を被ると出現する別人格。非常に高圧的な性格で、口も悪い。
目的は不明だが、延命の代償としてピングドラムを探すよう双子に命じる。
ちなみに彼女の名前は作中では言及されない。
幾原監督が便宜上、適当に付けた名前がそのまま採用されたとか(BDコメンタリー参照)

荻野目苹果
(CV:三宅麻理恵)
ヒロインその2。脳みそド腐れゲロ豚ビッチ娘。
好きなものはカレーとペンギン。
高倉家に出入りするようになる少女。多蕗に絶賛片思い……というかストーカー中。
多蕗への想いに決着をつけた後は晶馬を意識するようになるが……。
物語開始時点では少なくともピングドラムを所有していたらしい。
視聴者における、「序盤の印象」と「終盤の印象」が恐らく一番大きく変化する人物の一人であろう。


○ペンギン
高倉家にクール便で届けられた謎の3匹のペンギン。同じくペンギンを所有する者以外には見えない。
1号が冠葉、2号が晶馬、3号が陽毬のパートナー。
それぞれ中々にハイスペック。
いつも画面隅で奇行を働いている。
実はそれぞれ、パートナーの心情を表した行動をとっている。

○多蕗桂樹
(CV:石田彰)
双子のクラスの担任。リア充。
昔から家族ぐるみの付き合いがあった苹果にストーカー行為を受けているが、全く気付いていない。
手の指のほとんどに古い傷痕がある。
劇中でゆりと婚約。

時籠ゆり
(CV:能登麻美子)
多蕗の旧友。苹果の恋敵。
「サンシャニー歌劇団」虹組で娘役を務める大人気女優。
苹果の目論見を看破した上で勝利宣言し、事実婚約に至った。婚約発表と同時に引退も表明。
が、男役と寝るなど同性愛の気もある。
口癖は「Fabulous Max」

○夏芽真砂子
(CV:堀江由衣)
苹果とは別の思惑で「プロジェクトM」を進める謎の女性。
スリングショットを使用し、ペンギン印の弾でヘッドショットすることで対象の記憶を消去することができる。
高倉家とは別の黒いペンギンを所有。
口癖は「嫌だわ、早く磨り潰さないと」

○エスメラルダ
夏芽と行動をともにする黒いペンギン。おそらく♀。
冠葉に執着する夏芽同様、そのパートナーである1号に異常なまでの求愛行動をとる。

○夏芽マリオ
(CV:荒浪和沙)
真砂子の弟。
病弱で、陽毬同様、オスのペンギン帽子で延命している。

渡瀬眞悧
(CV:小泉豊)
中央図書館「そらの孔分室」司書を務める謎の男。現在は医師もやっている。
この「そらの孔分室」自体が異空間であるらしく、選ばれた者しか立ち入ることができないようだが…
派手なピンク髪が特徴な美青年なのだが、見た目に似合わず声が凄くダンディ。
口癖は「痺れるだろう?」「だよね?」

荻野目桃果
(CV:豊崎愛生)
16年前の事件で亡くなった、萃果の姉。そして多蕗の初恋の相手。
彼女の日記には特別な力があり、今それを巡って様々な者が動いている。

○高倉剣山
(CV:子安武人)
高倉三兄妹の父親であり、「企鵝の会」の指導者的幹部。
16年前の事件の実行犯となり、事件が表沙汰になった後失踪。

○高倉千江美
(CV:井上喜久子)
高倉三兄妹の母親であり、「企鵝の会」の指導者的幹部。
剣山と同様、16年前の事件の実行犯であり、後失踪。

○ダブルH(伊空ヒバリ/歌田光莉)
(CV:渡部優衣/三宅麻理恵)
巷で大人気のアイドルデュオ。
TSMのイメージキャラクターも務めており、作中で各話の内容を示唆する広告で小芝居も担当する。
実は陽毬と小学校時代の親友で、最初は陽毬もグループ「トリプルH」の一人だったが、両親が起こした事件で疎遠となってしまう。
だが、陽毬のことは今もなお親友と思っている。 


【キーワード】
○TSM荻窪線
本作の舞台として登場する地下鉄。荻窪駅から池袋駅に繋がり、東京を横断している。
モデルは東京メトロ丸ノ内線
16年前にテロ事件が発生し、リニューアルオープンした。
なお実際の丸ノ内線で荻窪から池袋へ行くのは明らかに遠回りなルートなのであるが、本編の登場人物達は普通に荻窪から池袋へ行く交通手段として利用している。

○16年前の事件
TSM荻窪線で起こった爆破テロ事件。
犯行はピングフォースと呼ばれる過激派グループが行い、大多数の死傷者が出た。
どう考えてもあの事件がモデル。

○ピングループ
作中に登場する大手メーカー。
作中の製品のほとんどにこの団体のロゴが貼っている。
実は企鵝の会の表の顔。

○カレーの日
荻野目家のルールで、毎月20日はカレーライスを食べることにしている。
最近は両親の離婚もあって、家族そろってのカレーがほとんどないらしい。
20日が桃果の命日なので、彼女を忘れないために桃果の好物だったカレーを食べようと、苹果の両親が決めた日だった。

○企鵝の会
テロ組織・ピングフォースの隠れ蓑となった新興団体。
今もなお地下活動を続けている。
陽毬の治療費のために、冠葉が彼らの仕事を手伝っているが…。

○こどもブロイラー
「誰からも必要とされなくなった子供」が捨てられる施設。
捨てられた子供は「バラバラに砕かれ」、「透明な存在」になる。
企鵝の会の憎む「氷の世界」の象徴的存在。
一見メタファーぽく見えるが、明らかに実際に存在するような描写があったりと存在が曖昧になっている。





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最終更新:2023年03月26日 18:37