ゲッターロボの初期稿

登録日:2011/05/07(土) 13:52:19
更新日:2024/03/13 Wed 10:16:49
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合体ロボットアニメの祖であり、その筋のクリエーターにとっては「ゲッターロボ」は神仏が如き存在‥‥
意外にも「ゲッターロボ」は何も考えてないようでいて実は考えてある。という深い作品なのだ。
「ゲッターロボのモチーフはサッカーなんだよね」だなんてちょっとしたひらめきではない。
なのでこの項は、「ゲッターロボの草案とはいかなる物か?」という事を書き記す。



◆発端
ゲッターロボ號の巻末エッセイ漫画「ゲッターと私」にはこう描かれている。
ダイナミックプロで三台車を買って、無免許にもかかわらずダイナミックプロ社長と石川賢と永井豪の三人が車に乗った。
案の定三台の車は玉突き事故を起こしておじゃんに。

GO「よし、次の企画は合体物で行こう!」
KEN「え?」
GO「今の感覚だよ、三体合体!」

まさにダイナミック。
しかしこれは微妙にウソであり、本当は東映からの「三人の超人が合体してロボになる話を作れないか?」という鋼鉄ジーグも真っ青の相談が発端。

そして作られた初期プロットこそはゲッターロボの原点
「チェンジ・ロボット・ゲッター3」
である。
大体のあらすじはゲッターロボと同じだが、このプロットではゲッターチームはロボに乗るのではなく、変身サイボーグ……ますます鋼鉄ジーグだ、いやキューティーハニーか。
三人の若者が肩車の順番を変えることによって三形態のサイボーグに変身する。
1が武蔵、2が隼人、3が竜馬であり、タイトル通り3がこのプロットにおいては主役形態であった。

三人の名前もこの時点では

流竜馬(アニメスタッフによる設定画では流竜之進となっている)
犬神隼人
巴武蔵

となっている。
隼人の名字が後に「神」一文字になった理由は言うまでもない。

このプロットは惜しくもお蔵入りとなったが、次なる段階「チェンジロボット・ゲッターロボ」に引き継がれる。
「チェンジロボット・ゲッターロボ」では、主人公の少年達をサイボーグではなく生身にしてレーシングマシンを合体させよう、と言う話になった。
「ゲッターと私」は微妙にウソだ。と書いたのはこれがあるからであり、あながちあれもウソだけじゃない。
これで方向性は定まり、レーシングマシンを戦闘機っぽいメカに変えて企画は進む。



◆生みの苦しみ
1973年12月に方向性が決定したが、翌年の4月にはアニメを放映しなければならないので急ピッチでデザインの策定が開始された。
初期稿は後の石川賢曰わく

「うう~ダセ~~」
「シブい、渋すぎる」

やはりゲッターロボと言えば亀の甲羅がモチーフのあれっきゃない。
悩みはデザインやキャラクターだけでは無い、そう……合体である。
ゲッター1のデザインは出来ていたが、2と3のデザインは非常に難航した。
「ゲッターと私」から引用すると…

KEN「無茶だ!!物理的に不可能だ!!サマにならない!!いったいこいつらのエンジンはどこにあるんだ!!」

いかにコロンビア大学卒業(ウソ)の石川賢でも無理な物は無理だった。
しかしここで永井豪の助けが入り
「上からマシンを差し込んで、こっから腕を出せばいいじゃん」などと神懸かったセンスを披露。

KEN「そっ…それアリなんですか!?」
GO「マンガだよマンガ、マンガはもっと自由な発想で描かなきゃ面白くなんないよ」

流石冷奴先生、設定ばかりこねくり回してつまんない漫画を描くような奴とは物が違う。

ちなみに「ゲッターと私」ではこう描かれているが、実際は

KEN「僕のような真面目な人間ではあのデザインは出来ない、あれは豪ちゃんがやった」
GO「僕は理詰めの人間なのであんな無茶な合体は出来ない、あれは賢ちゃんがやった」
KEN「えっ」
GO「えっ」

……二人の間ではこういう事になってる。

なんだかんだあったが無事にデザインは揃い、テレビアニメは放映されて大成功に終わった。

余談であるが、雑誌のインタビューなどで

GO「でも三体合体なら本当は六形態あるハズだよな」

とか

KEN「竜馬のモデルは僕です(笑)」

などと言っちゃったりもした。



◆Gの衝撃
主役機の交代や交代要員など、衝撃的な展開のゲッターロボGであるが、その初期稿はさらに衝撃的であった。
最初は、なんとゲッターチームが隼人を残して二人とも死ぬという内容だった。
ゲッターロボ・サーガにて竜馬が「あばよダチ公!」と言い残して爆発に巻き込まれたが、本当はそこで竜馬は死ぬはずだった。
しかし流石に鬱展開過ぎると思ったのか、竜馬生存ルートの方に話を切り替えた。
ありがとう石川先生。

竜馬が死んだら一体誰が主人公になってたのか?という疑問が湧き上がるが、そこは幻の主人公
「来栖丈」
の出番。

来栖丈はかつての早乙女博士の同僚、故・来栖博士の息子であり、隼人より頭が良くて、竜馬より身体能力が高いというインチキスペックが与えられていた。
そしてその来栖博士が遺した設計図を元に作られた新ゲットマシン「ドラゴン号」と改修された「ジャガー号」「ベアー号」がゲッターロボGに変形する予定であった。
だからゲッタードラゴン初期デザインでは下半身がゲッター1まんまだったりする。

アニメ版の初期稿ではムサシは武蔵坊弁慶(新ゲッターの人じゃなくて歴史上の人物の方)のごとく立ち往生で死亡。
リョウはゲッター線爆弾を搭載したイーグル号で特攻。この二人の死がきっかけとなりジョーと文治がゲッターチームに加入。大魔人ユラーとの決戦を行う予定だった。
また早乙女博士の義理の兄にあたる団兵衛というキャラクターの登場も考えられていた。
しかし結局リョウは生存。来栖丈はボツになってしまった。
来栖丈のデザインは後のゲーム「ゲッターロボ大決戦」の男主人公アキラの元になったという噂。
そして初期稿では弁慶ではなく、準レギュラーの大先生こと大枯文治が三号機を担当するハズだった……


このように、ゲッターロボには適当に決めてたようでいて、実は七転八倒悶絶必死の苦労があった。
それらを踏まえるとゲッターロボを更に楽しめる……かも

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最終更新:2024年03月13日 10:16