ニンニク/大蒜

登録日:2012/09/19(水) 20:20:24
更新日:2024/03/03 Sun 21:40:07
所要時間:約 6 分で読めます




ニンニクとは、ヒガンバナ科ネギ属の野菜。
語源は仏教用語で耐え忍ぶという意味の「忍辱」(「にんにく」と読む)。
誰だいやらしい想像をしたのは
英語ではgarlic(ガーリック)



■概要

原産地は中央アジアまたは西アジアか地中海沿岸と推定されている。

その歴史は古く、古代エジプトの記録にまで遡れる。
紀元前4000年頃には既にこの地に伝わっており栽培もされていたようで、滋養強壮に良いことからピラミッドの建設に従事する労働者らにも配給されていたらしい。
ちなみに供給が滞るとそれを巡ってのストライキまで発生したそうな。
この記録は古代ギリシアの歴史家ヘロドトスがピラミッドの発掘調査の際に発見したものである。

古代メソポタミア文明ではタマネギと共に既に料理に使われていた。
中国にはオリエント世界からやや遅れて紀元前2世紀頃に伝わったが、今や中華料理には欠かせない食材であり生産量も消費量もトップクラスである。
我が国には中国経由で9世紀頃伝わったそうだが、食欲増進効果のためか精進料理の禁止対象となってしまったこともあり、薬用や観賞用がメインであまり食用には使われていなかった模様。
現在では中国、インド、韓国などアジア圏での生産量・消費量が多い。欧州ではスペイン、ウクライナ、ロシア等が主な産地となっている。国内産ニンニクの大半は青森県で作られており、生産量の70%以上を占めている。「田子にんにく」のブランドが有名。
さらに特定の製造過程で臭いが抑えられ、食感や栄養素が変わる黒ニンニクも作られている。

料理のメインとなることは少ないけれど炒め物や焼餃子、パスタなど利用法は幅広い。まさにお料理のマルチプレイヤーである。



■効能

臭いことで有名な野菜でもあるが、それは大蒜を切った時にアリインという成分が変化してアリシンという臭いの原因となる物質に変化するため。
この臭いが嫌な場合は、切る前にレンジで加熱したり牛乳で煮たりすれば抑えられる。

アリシンはビタミンBの効果を高める作用があり、また殺菌作用があるため病気の予防にも良い。
特にビタミンBを豊富に含む豚肉との相性は抜群で疲労回復効果が高まる。
余談だが疲労回復用としてニンニク注射というものがあるが、あれは主成分のビタミンBの匂いがニンニクの匂いに似ているからそう呼ばれているだけで、ニンニクそのものや由来成分は入っていない

意外な使い所としては、すり下ろして患部に直接塗るかにんにくを溶かした水に足を浸け水虫を治療する、なんてものも。
ただしアリシンの殺菌力は異常なほど強力かつ無差別で、O-157に代表される大腸菌やコレラ菌などの強い病原菌をも簡単に死滅させる一方で、胃腸内に棲む善玉菌でさえ標的となる。なお納豆菌さんは普通に生き残る。強い。
生のニンニクを食べすぎて腸内細菌が死滅してしまい、入院する羽目になってしまった事例は少なくない*1
加熱するとアリシンの効果は弱まるが、それでも食べる量はほどほどに。過ぎたるは及ばざるが如し、です。

他にも血管拡張作用と、血液をサラサラにして血行を良くする効果がある。
ついでに動脈硬化を防ぐ効能も有りと生活習慣病対策にも役立つ。どっかの黄色いデブが健康なのもコイツのお陰かもしれない。
ただ一定量を接種すると急激に血流が良くなりすぎて、暫く動悸レベルの胸の苦しい感覚と、トンでもない血流速度により、顔面が真っ赤になるなどの副作用もある。セルフギア2状態である。

フィクションでは吸血鬼の弱点とされているが、これはニンニクが万病に効く薬として重宝されていて、魔除けの力を持つと信じられていたことに由来する。*2
しかし、食欲を刺激するので仏教の精進料理では禁じられている。※菜食主義を参照



■栽培特性

種球の植え付けは9月頃に行う。
植える2週間前には堆肥や肥料をやって耕し、ニンニクの栽培に適した土を作っておくこと。
植え付けの時にはちゃんと種が芽の出る先が尖った方を上にするように注意する。
12月、2月頃に追肥をして葉が黄色く枯れる5月~6月頃には収穫できる。

ちなみに買ってきた大蒜から芽が出て使えなくなってしまった場合はプランターなどに植えると葉大蒜(ニンニクの芽とも呼ばれる)になる。
芽が10cm程度に伸びたら引っこ抜いて葉の部分を頂こう。



■料理

  • 焼きニンニク
皮を剥いた大蒜をバターと一緒にアルミホイルで包んで、オーブントースターで焼きあげる。
ニンニク自体の旨みを堪能できる。
バターの代わりにオリーブオイルや胡麻油を使っても良いかもしれない。

  • 揚げニンニク
大蒜をレンジでチンした後、皮が付いたまま丸ごと揚げる。
食べる時は丁寧に皮を剥がしてほくほくの中身を頂こう。
これを乾燥・粉砕して調味料にすることも。

  • 漬け
皮を剥いた大蒜を醤油やオリーブオイルやお酒に漬け込む。
ただし食べる時はちゃんと加熱すること。
漬けダレは炒飯や唐揚げなどの味付けに使おう。

  • バーニャカウダ
牛乳で煮たニンニクをオリーブオイルの中で潰して刻んだアンチョビを加えたソース。
アスパラガスやニンジンなどの野菜につけて食べる。

ニンニクの香りと唐辛子の辛さを移したオリーブオイルのソースを絡めたシンプル・イズ・ベストなパスタ。
お好みでベーコンやソーセージを入れても美味しい。

  • ガーリックライス
ニンニクの香りを移したバターあるいはオリーブオイルでご飯を炒め胡椒を効かせたシンプル・イズ・ベストなライス。
お好みで醤油味にしたり小さく切った牛ステーキと一緒に炒めたりしても美味しい。

  • アヒージョ
ニンニクとオリーブオイルで魚介類や野菜などの具材をグツグツ煮込んだスペイン料理
良い香りが移ったオリーブオイルにバケットやチュロスを浸して食べていいなんてスペイン人はよくわかってる……ハプスブルク家ばんざい……。

  • シュクメルリ
バターで焼いた鶏肉を大量の大蒜と牛乳で煮込んだジョージア(グルジア)料理。言わば「グルジア風チキンクリームシチューにんにく仕立て」というところ。レシピによっては牛乳を入れず水で煮込んだり、サワークリームを入れたりする。
近年日本で人気と知名度が高まっており、外食チェーンのメニューになったりスーパーやコンビニでレトルトや弁当が売られるようになったりしているほど。お米にもよく合う。

  • ポークステーキ
厚く切った豚ロース肉をニンニクと一緒に焼きあげて、醤油、酒、味醂などを使った和風のタレを絡める。
食べ応えがあり白米が何杯でも進む一品。

日本ではスライスした豚肉とキャベツで作るのが一般的だが、本場中国では皮付きの豚腿肉と葉ニンニクで作る。
反り返るまでしっかり焼いた豚肉の油が葉大蒜に絡んで絶妙な風味を生み出す。

こちらも本場では葉ニンニクを使う。

カレーの隠し味としても活躍する。
スライスしても良し、皮を剥いて丸ごと入れるのも良し。予め油で炒めたり揚げたりすると煮崩れしにくい。

スペイン料理のソパ・デ・アホが代表格で、生ハム、卵、パンが入っている。
スペイン料理には他にもニンニクが効いたトマトの冷製スープガスパチョ、トマト・ニンニク・パンで作られるサルモレホ、白いガスパチョとも言われ牛乳・ニンニク・アーモンドで作られるアホブランコなどなどのスープがよく知られている。
美味しんぼ』で紹介されたワカメ入りのニンニクスープ、『孤独のグルメ』で唯一無二と絶賛されたスープも有名か。他にも無限大にある。

  • アリオリソース/アイオリソース
ニンニク・オリーブオイル・卵黄・レモン汁・塩コショウを混ぜて乳化させたソース。簡単に作りたい時はオリーブオイルと卵黄の代わりにマヨネーズでok。
早い話がニンニクマヨネーズなので何にでも合う。茹でた野菜の他、肉料理や魚料理、パスタのソースなど使い道は幅広い。

  • すりおろし
すりおろしたり潰したりしてラーメンなどに入れるとこれまた力がついてくる。専用の潰し器も市販されている。
ただし、生食に近いので量はほどほどに。

  • ニンニクみそ
相撲部屋で食べられている、ニンニクをふんだんに使った肉みそ。



■余談

最近ではニンニクに外見はそっくりだが大蒜とは別種でリーキ(ポロネギ、西洋ネギと呼ばれることもある)の仲間にあたる「ジャンボニンニク」が日本国でも栽培・販売されている。
その名の通り大きさがニンニクの6~8倍もある。
ジャンボニンニクの中には「無臭ニンニク」と呼ばれるものもあり、その名の通り臭いが大蒜の14分の1くらいしかない。

マリオのライバル、ワリオがパワーアップに使うアイテムはニンニクである。マリオにとってのキノコのようなもの。

実は『キン肉マン』の主人公キン肉マン/キン肉スグル牛丼に並ぶ大好物のひとつで、初期ではコレをエネルギー源にしていた。
一番好きな食べ方は、火(ライター)で直に炙って3個食べること。腸内菌「やめてくださいしんでしまいます」

2月29日は「にんにくの日(に(2)んに(2)く(9)の語呂合わせ)」である。
更にこの日は「肉の日」でもあるので、是非相性抜群の豚肉と一緒に食べて免疫を付けよう。



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最終更新:2024年03月03日 21:40

*1 治療の際は健常な人から採取した糞便などを加工した菌液を使う。

*2 ニンニクに限らず、臭いの強いものは病魔や悪霊を祓う力があるとして重宝されてきた。日本では鰯の頭などが有名。