ランバ・ラル

登録日:2012/02/21 Tue 23:35:48
更新日:2024/02/05 Mon 23:43:08
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ザクとは違うのだよ!
ザクとは!

ランバ・ラルとは機動戦士ガンダムに登場した人物である。

●プロフィール
年齢:35歳(!?)
所属:ジオン公国軍
階級:大尉
搭乗機:グフ
声:広瀬正志(TVアニメ、劇場版)、喜山茂雄(THE ORIGIN)


●劇中でのランバ・ラル
モビルスーツのパイロットでありながら、"ゲリラ屋"の任務も得意とする。面倒見が良く部下の信望もある優れた指揮官。35歳とは思えないほど立派な髭があり老け顔。パッと見では50くらいに見える。
クラウレ・ハモンという愛人(資料によっては内縁の妻)もいる。
歴戦のモビルスーツ乗りであり腕は超一流。搭乗機を青いパーソナルカラーで塗装していたことから「青い巨星」という異名がついたと言われている。
一年戦争以前(もしくは大戦序盤)に地球で活動していた経験があり、初めて見る雷雲に集団パニックを起こしかけたハモンや部下達に正体を教えると共に「(見た事のある自分でも)こんなに間近で見ると恐ろしいものだな」とフォローしている。

一週間戦争とルウム戦役において6隻の艦艇を沈めるという戦果を挙げながらも、親ダイクン派の父を持つが故に昇進から遠ざけられていた。
だが、地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐が地球連邦軍の「木馬」との戦いで命を落としたことが彼の運命を変えることになる。
彼の上官であるドズル・ザビ中将は「弟のかたき討ち」のため、ランバ・ラルにホワイトベース追撃の任務を与えたのだ。
これにより、彼は直属の部下とともに地球に降下する。

なお、このドズルには「親ダイクン派の息子であったラルを引き上げてくれた」という一応の恩はあるのだが、
ラルとしては元々自身も親ダイクン寄り(これはセイラに対する態度から明らか)で、なお且つザビ家が台頭していく様子も見ていたためか、ドズルにもザビ家にも忠誠心など持っていなかった。
それどころかドズルが私情で命令を発したことや、彼の命令が戦略や政略はおろか指揮系統すら無視した無理筋の命令であることを理解し、冷めた目で見ていた。
それでも任務を拝領したのは、それが一軍人としての立場であり、かつ部下の生活のためでしかない。
作中では徹底して軍人として行動している。

尚、ドズル配下である以上、ジオン・ダイクンの息子シャア・アズナブルとは同じ要塞で勤務する顔見知りであったはずなのだが、のちの展開を考えると正体には気づいていない模様。
あの仮面は「面識ある人物にも正体を隠せる」という意味でやはり効果があったようだ。

監督の富野由悠季によると「子供が欲しかったができなかった」というイメージでキャラクター造形が行われており、それが劇中でアムロを気に入った理由の一つになっているとの事。
実際、自分より早くにアムロを見初めていたハモンの心情を直ぐに察したのか「あんな子が欲しいのか」と言っており、その後は自分もアムロに絡みに行っている。
因みに自分の作品でさえボロクソに評する富野監督から珍しく「良くできたキャラクターを作れた」という評価をされている。理由は「直接的な描写せずにハモンとのセクシャルな関係を描けたから」なのだが

直後の太平洋上における戦闘以来、ホワイトベース隊とは五度に渡り戦闘を行い、そのうち三度アムロ・レイと対峙している。
一度目はガンダムの実力を調べるため格闘戦を挑みすぐ退散するも、アムロが「見逃してくれたのか?」と口にするなど、ジオンの脅威とシャアに代わる強敵としての威圧感をまざまざとホワイトベース隊に見せ付けた。

二度目となったタリム盆地付近での戦闘ではアムロの搭乗したガンタンクに押され接近戦に持ち込めないまま撤退を余儀なくされた。
三度目の戦闘の前にソドンの街でホワイトベースから脱走してきたアムロと対面しており、ハッキリした物言いをするアムロにハモンとともに興味を示し、食事を奢ると持ちかける。
この際部下が捕らえたフラウ・ボゥに反応したアムロの様子から、ホワイトベースの乗員と看破したがわざと見逃す。
その一方でフラウに尾行をつけており、ホワイトベースの位置を特定する事に成功。

「良い目をしているな、少年… だが、この次はこうはいかんぞ、いいな!」

直後ランバ・ラルはホワイトベース隊を急襲。そこへ駆けつけたアムロにモビルスーツでの格闘戦を挑まれた。
ガンダムのパイロットが年端もいかぬ少年であったことに、彼は戦争の変化を実感する。

「まさかな、時代が変わったようだな…。坊やみたいなのがパイロットとはな!」*1

アムロの乗るガンダムと対峙するが、以前とは逆に追い込まれ、シールドを囮にした戦術によって、彼のグフは両腕を切断された末に胴体を貫かれた。
この際に脱出しながら発した

「見事だな! しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ!」
「そのモビルスーツの性能のおかげだということを忘れるな!!」

このセリフはアムロに「強敵」の存在を自覚させ、彼を精神的に成長させる。

「僕は……あの人に勝ちたい!」*2

しかし結果として、戦況は木馬はほとんど消耗なし、ラル隊の機動兵器はほぼ壊滅という状態であり、上記の台詞も客観的に見ればアムロの言う通り「負け惜しみ」であった。
やむなくランバ・ラルは、ガルマ亡きあとジオン地上軍の元締めとなったオデッサ方面軍司令官マ・クベ大佐に救援依頼を出す。
だがそのマ・クベは、保有する鉱山での不貞の発覚を恐れたことや、キシリア・ザビの派閥に属する彼の領分でドズル派のラルが動き回っていることが気に入らず、ラルのことを嫌っていた。
ラル隊が地球降下時に乗ってきたザンジバル級機動巡洋艦を没収したのもその一環である。
そんなマ・クベが易々と救援するはずもなく、むしろラル隊へと配属されるはずだった新型機ドムを「輸送中に撃墜された」と偽り、救援要請を握りつぶしてしまう

……というと目の前で戦っている味方と強敵を無視して、本国の政治争いばかりに目を向け、あまつさえ前線司令官でありながら本国事情を前線にまで持ち込んでいるマ・クベが悪いのだが、
元を正せば、戦略的意義がほぼないうえに*3、ヨソの派閥の感情をむやみに逆なでした命令を出しながら、特に根回しやフォローもしてこなかったドズルにこそ問題があるといえる*4
ドズルとキシリアの派閥争いは今に始まったことではなく*5、トラブルが起きた時に現場で摩擦が起きるなんてことは当然の帰結として想像できた・予想してしかるべきだったはずであり、
ラルはドズルの失策に巻き込まれたとも言えるだろう。

ともあれ、伝令担当のウラガンから、この偽の報告を受け取り救援は無理だと聞いたラルは

「…分かりました。このランバ・ラル、例えモビルスーツ無くとも立派に任務は果たして見せますとマ・クベ殿にはお伝え下さい。ご苦労様でした」

と返し、ウラガンを見送る。
その場を離れたウラガンは、ラルの事を「(いくさ)馬鹿」と評した。

ラルの側としてはマ・クベの小細工やドズルの不手際に気づいていたようだが、その不満を顔に出すことなく、MS抜きでの戦闘、すなわちゲリラ戦に活路を見出す。
そのために自ら部隊を率いてホワイトベースへと白兵戦を仕掛け、艦内にも突入。
しかし艦内で、かつて自分が仕えたアルテイシア・ダイクンことセイラ・マスと対峙した時に若き日の記憶が蘇る。

「私はジンバ・ラルの息子、ランバ・ラルです!」

「アルテイシアと知って、なぜ銃を向けるか!」

思わぬ形での再会。
しかしその衝撃が隙となり、負傷してしまう。
進退窮まり自らの敗北を悟ったランバ・ラルは自決を選び、ホワイトベースの少年兵の目の前で手榴弾を使って飛び降り自爆し、
「戦いに敗れる」という現実を見せつける最期を迎えるのだった。

「兵士のさだめがどういうものか、良く見ておくのだな」
「戦いに敗れるというのは、…こういう事だぁー!!!!」


彼の地球降下後の活動や死は、大局的にはほぼ影響はなかった。ジオンにとっては、精鋭部隊を無為に消耗しただけである。
しかし、彼の派遣にまつわる軋轢はのちのザビ家の内紛を、「坊やみたいなのがパイロットとは時代が変わったか」という言葉はジオンの学徒動員を予見したかのようであり、
やがてジオンはランバ・ラルの生前の言葉をなぞるように混迷し、衰退していく。

逆にホワイトベース隊においては、終盤の白兵戦で銃を取っての「殺し合い」を展開したことや、それを遠因としてリュウ・ホセイにつながったことなどから、結果としてクルーたちの意識を改革することにつながった。
特にアムロに関しては、惰性ではない「越えたい相手」を見出したこと、兵に殺されそうになったところをブライトが助けてくれたことなど、多くの点で彼を成長させることになる。

そして、この“主人公である少年と、敵でありながら擬似的な親子として何かを伝えて去っていく男女”という構図は余りにも印象深かったのか、以降のテンプレパターンの一つと化す程に飽きる程にオマージュされ続けていくことに。
作品によっては、前述の“男女の方は子供が持てない(または失った)”ことが直接的にバックボーンとして付けられてる場合もある。

スペルはRamba Ralなのだが、イタリアの セクシー女優 でRamba Malu(ルンバ・マールー)と言う人物がいる。
とは言え当該女優がデビューしたのは初代ガンダム放映より何年も後なので名前が被っただけなのだが
イタリア語の女性名しか「Ramba」に当たる人名は無いのである。またしても女性名のガンダムキャラが…。

最近、ガンプラが普及された世界そっくりなおじさんが出てきているが関連性は不明である。


ゲームでのランバ・ラル
その印象的なセリフやパイロットとしての技量、人間的な大きさも相まって、一年戦争を題材にしたゲームでの登場率は高い。
スーパーロボット大戦シリーズはもちろん、Gジェネでも引っ張りだこ。
スパロボでは初代ガンダムの参戦が少ないこともあり、意外と参戦してないのだが、出てる場合はほぼ確実に登場する。ただ、搭乗機のグフがスペック上力不足になりやすいためよく乗り換えてくる。『A』ではグフ・カスタム、『F』ではRジャジャ、PS版『第二次』や『α』ではドーベンウルフなど。
基本的に戦いを通じてアムロを成長させる「敵」という役割のためか仲間にできたことは現在のところ一度もない。

Gジェネアドバンスでは自身のオマージュキャラであるバルトフェルドと組んで主人公達を攻めてくる展開もある。

特徴的なのは、ランバ・ラルを生かす選択ができる『ギレンの野望』シリーズであろう。
ギレンの野望では、ホワイトベース追撃が発生している場合、ギレンからドムを送る選択肢が出る。
キシリアやマ・クベには反対されるが、これを無視してドムを送るとIF展開となり、ランバ・ラル隊が生存する。
当然ながら、ドムの開発が間に合わないと原作通りになってしまう。ドムの開発は急いで行おう。
最近の作品では生存すると戦利品として、ホワイトベースやガンキャノンも手に入れてくれる。
敵軍の兵器を入手するイベントは希少であり、ラルの実力がうかがえる。

また、グフに乗せた後にドムゲルググもしくはギャンと支給することができるのだが、その都度「グフとは違うのだよ!」とか「ドムとは違うのだよ!」と律儀にセリフを変えてくれるのだ。
残念ながら、Rジャジャやガルバルディに乗せても「ゲルググとは違うのだよ!ゲルググとは!」とは言ってくれない。
作品によってはランバ・ラル専用ドム、ゲルググ、ギャンも用意されているので、是非乗せてみよう。

一方、『SDガンダムスカッドハンマーズ』では重装型アッグをこれがドムだと騙されて送り付けられる。しかも当人は「グフとは違うのだよ!」とノリノリで、これはこれで強いから困る。


小説版
ドズルの所属ではなく、ギレン・ザビ直属のSS(親衛隊、突撃隊)のエージェントとして登場し、一切モビルスーツに乗らない
アムロたちともまったくかかわらない。そもそも戦場に出てこない。
ジンバ・ラルの息子という負い目がある自分を使ってくれるギレンにそれなりの忠誠心はあるが、ギレンの愛人だったハモンを下げ渡されたことに複雑な感情を抱いている。
あくまでギレンの手先として忠実に行動する一方、デギンのエージェントとして暗躍するハモンの動きを黙認したため、結果的にギレンの死の原因を作った。
ちなみに、本作ではジンバ・ラルはまだ生きているらしい。

なお、今作では「シャア・アズナブルの正体はジオン・ダイクンの息子キャスバル」ということが彼自身の調査によって発覚し、その旨ギレンにも報告されている。
同時にラルの心境として「思うところがないではないが、ギレンが命じるならば自分はキャスバルを殺そう」と考えていた。
そのあたりはテレビ版よりも少々ドライ。あるいは、テレビ版でセイラと対面した際の動揺は「突然ゆえの動揺」であって、もうちょっと冷静に対面していたのならもっと違った結末を迎えた可能性もある。
そう思うと仮面をつけて正体を隠そうとしたシャアの考えはごもっともであった。


冒険王版
特にアムロと絡む事もなく、ただアムロの戦闘力におののくだけの人。
だが連載時全10話で打ち切りになった作品で3話分(「グフ登場」・「アムロ脱走」・「ランバ・ラル特攻」)使わせてもらうという厚遇を受けている。
また、TV版と違いグフを結構持ってきており合計8機も繰り出してきた。逆に言うとガンガン倒されまくったという事だが…
青い巨星なんて呼ばれる事もなく、最後のグフで出撃直後にガンキャノン(おそらくカイ搭乗)に撃破される。
機体の爆発で本人は吹き飛ばされたが無傷だった
が、そんな彼もブライトの拳銃の前には無力だった。




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最終更新:2024年02月05日 23:43

*1 やがて、ジオンは「坊やみたいなパイロット」に「最新兵器」のゲルググという不釣り合いな相性で出撃・多用し、敗戦する。

*2 因みに、この時にアムロの脳内に浮かぶランバ・ラルとハモンは実際の二人とは違い小男であるラルの方がハモンより大柄なイメージとなっており、=としてアムロの中でラルが理想的な男(父親)、そしてハモンがその理想的な伴侶(母親)としてイメージされていた、との考察も。……リアル両親は言っちゃあなんだがアレだしなぁ……。

*3 後のドズル管轄のソロモンの危機では(間に合わなかったものの)ドズルからの増援要請もないのにマ・クベは救援に向かっていた。それもソロモンからの脱出艇を急行するために見捨てようとしていた程である。つまり、戦略的意義や政略があった場合はラルを支援していた可能性も有り得た。

*4 ラルが苦戦しているのに援軍を求める先がドズルでなくキシリア派のマ・クベというのも妙な話で、ドズルは本当に「送り込んでそれきり」だったようである。

*5 開戦前から、MSの採用や潜水艦隊の建設をめぐって争いを起こしたことがある。