衛府の七忍

登録日:2017/01/20 (金) 19:50:28
更新日:2024/02/21 Wed 23:12:02
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「無残に敗れしもの、選ぶが良い」
「苦しみのない常世国にて、菩薩の慈愛に包まれるか」
「あるいは怨身となりて、再び乱世にに蘇り飽くことなき呪いの刃を振るい翳すのか?」


ギ エ エ エ エ ! !





概要

「若先生」こと山口貴由氏が2015年からチャンピオンREDにて連載していた漫画。2020年に突然連載が終了した。
非常に重く暗い世界観だった「シグルイ」「エクゾスカル零」のリアルタッチな画風と残酷描写を引き継ぎつつ、
覚悟のススメ」や「蛮勇引力」の頃のような熱く大見得やハッタリを効かせた、娯楽性の強い作風に回帰しているのが特徴。
ギャグ描写も(シリアスな笑いを除けば)ほぼ廃されていた前2作とは打って変わって、山口氏独特の言葉遊びとともに盛り込まれている。

登場人物は山口氏の過去作からのオマージュが多く、メインキャラ及び怨身忍者のデザインも、
現時点では前作「エクゾスカル零」の登場人物とエクゾスカルがモチーフとなっている。

今の所、やがて「エクゾスカル零」の未来へと繋がる世界観なのかは不明。

物語

元和元年、大阪の陣において徳川方が勝利し大阪城は落城。
治国平天下大君となった徳川家康は、豊臣家残党を徹底的に粛清・一掃するため「覇府の印」という手形を発行。
これは如何なる者が所持しようとも徳川家の威光を受け、豊臣の残党を自由に狩ることが許された。
この権力の元、「まつろわぬ民」への理不尽な圧政と殺戮が繰り返されていた。

そんな中、「衛府」より使わされた七つの影。
彼らは「怨身忍者」。無残に死にゆく身分なき者達のために今、立ち上がる。


零鬼編の登場人物

  • カクゴ / 零鬼
「本気(マジ)やんぞ、家康!」
「出鱈目に刻んで盛ってやるゆえ 素っ首並べい!!」

零鬼編の主人公。「葉隠谷」に住む化外者の青年。
一族は真田幸村と縁があり、彼から一族に授かった大鉈*1を得物としており、同じく授かった業物の脛当てを身に着けている。
伊織を匿ったことにより民兵に一族を皆殺しにされ、捕らえられた伊織を救おうとして殺害される。
しかし突き刺された武器を取り込んで怨身忍者・零鬼として蘇った。
以後は幕府を打倒せんと伊織と行動を共にしている。
モチーフとなった「覚悟のススメ」「エクゾスカル零」の葉隠覚悟と比べるとやや荒っぽい気性を持つ。
口調はラフな現代風だが、零鬼に変身すると時代がかった口調へと変化する。
伊織のことは単なる仲間ではなく、異性として好意を抱いているのだが、身分の違い故に思い悩んでいる。

零鬼は瞬時に超高速で多人数の頭を切り裂き、同時に挿げ替える「接ぎ頭」、髪の毛を刃として敵を細切れにする「笹掻き」などの多種多様な技を得意とする。
また、怨身忍者は血液に伐斬羅という金属成分が含まれており、触れたものを瞬時に燃え上がらせることが可能。これを利用して傷口を塞いだり相手を焼くことも可能。
他の怨身忍者に比べると被弾・流血の描写が多く、波裸羅からも「やっと毛が生えたくらいの童貞」扱いされたりと、まだ未熟な面が見られる。
一方で刺客からは「場数を踏ませたら厄介」とも言われており、その潜在能力は高いことがうかがえる。

  • 兵藤伊織
「真田のお殿様も家来集も"義"のために、負けるとわかっていた戦に挑み討ち死になされた おまえには永久にわかるまい」
「伊織っス」

真田幸村の家臣の娘。作中で真田の姫として度々扱われる。
幕府の残党狩りから逃れるため、葉隠谷の化外者の集落に身を寄せたことが切っ掛けでカクゴと出会う。
自分と同時に捕らえられ、惨死した用人の貝蔵を埋葬したあとは、徳川の天下を覆すべくカクゴと行動を共にする。
武家の出故に誇りと義を重んじる性格。物語当初は非常にプライドが高く「裸を見られたら死ぬ」と言い切っていた。
普段はそうでもないが切羽詰まってくると口調が荒くなる。伊織っス。
自然の中での生き方を知らないため、そういった知識に長けたカクゴに食事の面でフォローされたことも。
割と好戦的な部分もあり、民兵を攻撃する零鬼に「一匹切らせてくれい」とはしゃいだ。
なおカクゴとの関係は「武士は武士としか結ばれぬ」と述べているが、決して悪く思っているわけではない。

震鬼編の登場人物

  • 憐 / 震鬼
「本当にちんこでけえ奴ぁ、道具持たねェ」
「本日只今より動地一家の憐 真面目に鬼やらせていただきやす!」

震鬼編の主人公。「動地一家」の忘八者。一家から湯宿を任せられている。
喧嘩は滅法強く用心棒を一撃で殴殺するほどの、絵に描いたような巨漢。巨根。
行き倒れた銀狐を拾うが彼女の心意気に触れ、惚れ込んで結婚する。
しかし、秀吉の子を宿した女の事件に銀狐が深く関わっており、誤認で捕らえられた女達の解放を条件に出頭する。
が、銀狐を含む女達は残らず処刑されていた挙句、自身も釜茹での刑に処され死亡。
直後、「龍」との問答*2を経て砕けた大釜を取り込み、怨身忍者・震鬼へと変身し城主を殺害する。
銀狐を葬った後は一家を辞め、鬼として生きる決意を固める。
口では悪ぶってはいるが情に厚い性格。ただ、頭に血が上りやすく、銀狐に暴言を浴びせてから死に別れたことを後々悔やんでいた。

震鬼は怨身忍者の中でも特に巨大な体を持ち、腕部を熱を持つほどの高速振動が可能なほか、他のものを透過して特定の物質のみを掴み取る事が出来る。
腕の振動を地面に伝導し人体を沸騰させる「土沸かし」やロケットパンチ「ろくろ腕」等といった腕部を用いた攻撃を得意とする。

  • 銀狐
「湯女上等、ヨゴれてやんよ」
「あたし生きるよ、憐のために」

行き倒れていたところを動地一家の湯宿に拾われた女性。
湯女として生きる決意を固めた所、その器量を憐に惚れられスピード結婚。
しかし彼女は実は豊臣家の奥御殿女中九尾組でありくの一。大阪夏の陣で追い込まれ理性のタガが外れた豊臣秀頼に犯された過去があり、秀頼の子を宿している可能性があった*3
関係ない女性が巻き込まれることを恐れ、出頭しようとするがほとぼりが冷めるまで匿われることになる。
しかし刺客の襲撃を受けてしまい、撃破はしたものの桃太郎卿の「魔弓石女矢」で射抜かれて石化してしまう。
事件が収束した後、憐によって天狗神社に葬られる。

雪鬼編の登場人物

  • 六花 / 雪鬼
「何だかかなしいね」
「大した世の中ではないがもう少し生きてやるか!な、権九郎!」

雪鬼編の主人公。飛州の奥地「初夜ノ森」に住む「まつろわぬ民」*4
世間知らずで元気な少女。大食いで大きなおにぎりを食べることを夢見ていた。
人里に憧れて山から降りてきたが、その出自故に人々からは白眼視され追われる立場にある。
非常に洞察力が鋭く、作中で人外の剣閃を放つ生き甲冑の存在を見抜いている。
不知火典膳が撒いた毒によって山と共に命を落とすが、朽木を取り込んで怨身忍者・雪鬼として復活する。
権九郎の仇を討ったあとは彼の遺骨と共に何処かへと旅立つ。

雪鬼は朽木を鬼の力で押し縮めた外殻を持ち、その強度は鉄よりも硬く金剛石並となっている。
通常はファーのようになっている腕部・脚部の装飾を硬化・高速回転させれば拡充具足*1をも粉砕する「つむじ独楽」を放つことも可能。
また、強烈な寒波を放つことも出来、その威力は人間を凍てつかせるほど。
「エクゾスカル零」の初夜六花と違い、靭帯拡張剤は不要。

  • 深見権九郎
「六花よ、わしの憧れる相撲はな…」
「見終えたものが"大した世の中ではないが、もうしばらく生きてやろうか"と見栄をはって歩けるような見世物のことよ!」

浪人。大阪の陣では豊臣側に付いていた武士で、それ故に六花同様素性を知られると危うい立場。
引きつった背中の火傷は阿修羅を思わせる様相になっており、六花からアペウチカムイ(火の神)とも呼ばれた。
ふとしたことから六花と知り合い、自身の出場する相撲を見せる。
その後は先に交わした六花との約束で婿として迎え入れられ生活を共にしていたが、幕府の抱え力士を倒した為具足奉行の不知火天膳に狙われ、抵抗するも善戦叶わず敗死。
性格はモチーフの「シグルイ」の牛股師範の人柄の良さをそのままにやや豪快で、その相撲を見た浪人達をも「惚れたわい!」「俺達はなんでもやるが、奴だけは斬れん」と感服させた。

霞鬼編の登場人物

  • 波裸羅 / 霞鬼
「我が名は波裸羅 人は呼ぶ、現人鬼」
「地獄に堕ちる覚悟もなしに、この波裸羅と同等口(ためぐち)叩くまいぞ!」

霞鬼編の主人公。両性具有の超人で「現人鬼」の異名を持つ。登場時点で怨身忍者・霞鬼へと変身が可能。
自身を身に宿していた、「まつろわぬ民」の母と共に漁民に殺害されるも、刺された得物を取り込んで蘇り漁民に復讐したという出自を持つ。
当初は徳川側に推挙され、刺客として零鬼を追っていたが、共に行動していた刺客に反抗して殺害。
伊織からの共闘要請を「狂おしく愉快」と応じたことで、幕府に翻意ありと認定される。
変身せずとも人体を容易に破壊する身体能力を持ち*5、零鬼をも圧倒するほど。
正直、あらゆる意味でこの漫画の中で一番やりたい放題してる御方。伊織っスか。
モチーフである「覚悟のススメ」の現人鬼・散同様民草嫌いだが、その一方で母に思いを馳せる描写があり、全くの無情でもないようである。
ちなみに散様と比べるとどちらかと言うと男性寄りの描写になっており、「シグルイ」の伊良子清玄に近い部分も見受けられる。

霞鬼としての戦闘シーンは現時点で存在しないため、その能力は未知数。

霹鬼編の登場人物

  • 猛丸 / 霹鬼
「俺は九十九城のヤナワラバー、猛丸さー」
「獅子ぬ目、身分の檻壊す!」

霹鬼編の主人公。「ニライカナイ*6の戦士」を自称する活発児。登場時点で既に霹鬼への変身が可能。
元々は奴婢としての出身だが、島津家の襲撃を逃れたことを機に自分たちの集落「九十九城」を作り上げた。
この時に「獅子御獄」へたどり着いたことで,戦士として生まれ変わった。
しかし秀頼を迎えに現れた島津家に捕らえられ*7、「犬」として扱われた挙句「ひえもんとり」*8で生きながらに身を引き裂かれて死亡する。
しかしその遺骸は「運命の兄弟」幻之介と融合し、二魂一体の戦士へと変化する。
明るく快活な性格で人当たりもよく、武士である幻之介ともすぐに打ち解けている。
また、上記の経歴のため、カクゴや伊織・幻之介などに見られるような「身分」という心の檻を持たない。
自身の血液を瞬間的に硬質化させ、飛刀や鉤等に変化させる技を得意とする。

霹鬼としての戦闘シーンは現時点ではないが、その獅子の眼光は島津義弘を圧倒し魅入らせている。

  • 犬養幻之介*9
「薩摩の狂犬ども 獣とは貴様らの如きを言う!」
「タケル ニライカナイへ参ろう」

霹鬼編のもう一人の主人公。豊臣秀頼に忠誠を誓う武士、馬廻七手組。
大阪の陣で砲撃に巻き込まれたことで左腕を失っている。
猛丸からは「ゲンノスキ」と呼ばれる「運命の兄弟」。
秀頼を連れて琉球へと逃れていたが、島津家と誤認した猛丸の襲撃を受けたことから知り合い、隠れ里に匿われる。
その後、猛丸を裏切る形で島津家に迎え入れられるが、自分の行動が原因による猛丸の無残な遺骸を目撃してしまう。
猛丸の生肝を抉った千加太郎に組み討ちを挑むが相打ちとなり、秀頼に知行を返上した直後に飛来した猛丸の亡骸と一体化する。
この時囚われ続けた「身分」という檻からようやく解き放たれる。
一体化後は外見を見る限り猛丸のほうが基本になっているが、表情は幻之介のそれに近いようである。
モチーフである「シグルイ」の藤木源之助と同様の、虎眼流の技である流れや虎拳を披露している。*10
一方で性格面では藤木とは逆に人間らしい感情的な面を見せる。

徳川幕府

  • 徳川家康
ラスボス。「衛府」から七人の尖兵が送り込まれることをすでに予見しており、彼らを討伐する命を全国に発している。
有事の際には巨具足*11・「金陀美」を身に着けて戦場を駆ける。

  • 吉備津彦命(桃太郎卿)
神州無敵と言われた、伝説の「桃太郎」その人。
「まつろわぬ民」の討伐と引き換えに「置き血」の洗礼を受けており、不老長寿。
現代では徳川方に組している。
血を流さぬまま物を切り裂く「御伽仕立瘤取剣」や射抜いた者を石化させる「魔弓石女矢」と言った不思議な宝具を持つほか、大人を軽々振り回せる怪力を誇る。
もちろん三匹の家来*12の他、異能の者を交配させて作った兵士・累人を配下に抱える。

衛府

  • 「衛府」とは
桃太郎卿の言によれば「まつろわぬ民の住む都であり、異世界」。
「人の命は平等である」という考えを持つらしく、身分制度を絶対視している徳川幕府と対立している。
「怨身忍者」はその衛府の尖兵である。

  • まつろわぬ民
時の権力者に追われた、大和民族以外の「身分なき人々」のこと。
作中では豊臣の残党や化外者などがこれに当たる。

死した人物の前に現れ、「常世国に行くか、怨身となって現世に蘇るか」と問いかける衛府からの使者。
後者を選んだ者は怨身忍者へと摩骸神変し、乱世にて呪いの刃を振るうこととなる。
また、波裸羅に伊織が立ち向かった際には、伊織の放った矢に霊力を宿し波裸羅を石化させた。

その他

「おいは恥ずかしか!生きておられんごっ!」
ガバ
「「左近どん」」
ズブ ドバ
「介錯しもす!」
ブワ ド ン
「笑うたこと許せ」「合掌ばい!」


「無残に敗れしもの、選ぶが良い」
「苦しみのない常世国にて、菩薩の慈愛に包まれるか」
「あるいは怨身となりて、再びアニヲタwikiに蘇り飽くことなき追記と修正を振るい翳すのか?」

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最終更新:2024年02月21日 23:12

*1 累人戦でこの大鉈はより大型で強靭なものに強化されている。

*2 本当は常世国に行くつもりだったらしく、引っ掛け問答だと思いこんで鬼になることを選んだ。

*3 実際に妊娠していたかは不明

*4 雪女の末裔とされる。

*5 作中ではなんと男根で人の頭を両断している。

*6 沖縄県で伝承される死後の理想郷。

*7 実際は秀頼の命で集落を皆殺しにされるところだったが、幻之介の機転で猛丸のみが「犬」として捕らえられた。

*8 数多の若武者が素手で捕虜から生肝を抉り取る風習。

*9 雑誌掲載時は「犬養源之助」表記。

*10 ただし幻之介と接点のない人物が流れ星を使っているため、この世界の虎眼流がどのようなものかは不明。

*11 と言う名の巨大ロボ。

*12 犬・猿・雉を模した女性