SCP-1082-JP

登録日:2017/01/18 (水) 15:49:00
更新日:2024/04/14 Sun 16:48:34
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SCP-1082-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクト(SCiP)の一つである。
項目名は『母犬のために』。オブジェクトクラスは「Euclid」に指定されている。


SCP-1082-JPは、拷問SMなどに用いられるボールギャグの設計図が描かれたA4サイズのコピー用紙である。
描かれているボールギャグは、犬の躾に用いられる口輪を彷彿とさせる未知の形状をしており、紙を裏返すと『母犬のために』という文字が日本語で書き込んであるのが確認できる。

このオブジェクトの異常性は、設計図の描かれた面を人間(以下、被害者)の顔面に押し当てた時に発現する。
被害者の顔面に一旦紙を押し付け、剥がすと被害者の顔面に設計図通りの構造をしたボールギャグが装着されてしまうのだ。

それから約10秒後、今度は被害者の前腕から指にかけてと、膝から足の指にかけての腱が未知の手段によって損傷する。
その結果、被害者はバランスを崩して転倒したり、椅子から転げ落ちたりして負傷してしまうことも多い。

被害者を襲う異常はこれだけではない。
…というか、これからがこのオブジェクトが有する異常性の本番なのである。

次なる異常性が発生すると、被害者の体温が急激に上昇し、同時に男性なら全身を、女性なら下腹部を中心に襲い来る激痛に転げ回る羽目になってしまう。

対象が女性だった場合、痛みに転げ回る対象の肉体年齢は徐々に逆行し、少女のものに変貌する。
そして、もし対象が男性だった場合には…年齢退行に加え、更なる異常が発生するのである。

なんと、痛みに転げ回る彼の体が徐々に女体化してしまう。
繰り返します。女体化してしまうのである。

乳房やお尻などが膨らみ、下半身には新たな女性器が発生する代わりに、男性器はその機能を失って単なる飾りとなってしまう。
こうして、『ボールギャグをかまされた少女』という、ある種の方々にはとてつもなく魅力的な存在が完成するのであるが、異常はこれだけでは終わらない。

被害者の年齢が退行して行く過程で彼女・あるいは彼の肉体は人間の骨格を保ちつつも全身の筋肉組成が変質し、肘と膝で四つ這いを行うことに適した形状に再構築されてしまうのだ。
つまり、被害者の肉体は2度と自らの足で立ち上がることができなくなってしまうのである。
この肉体の変質は、女性の場合は2分ほど、男性の場合は女体化する関係からか5分以上は継続する。

そして、異常の最終段階に到達すると、被害者の体温は更に上昇して脳機能が損傷を受け始める42度を突破。
被害者の前頭葉が損傷し、論理的演算能力や言語表現能力、視覚処理能力など、人間に必要な行為に深刻な異常を抱える事になってしまう。
この段階で対象は気絶したり、あまりの苦痛にショック死してしまう危険性があるので注意が必要だ。

こうして『四つ足で歩くよう肉体改造が施された、ボールギャグをかまされた少女』というR18の創作物でもそうお目にかかれない存在が完成するのである。

当然、世間様の目に触れてしまったら少女は警察に保護され、他人にオブジェクトを使用した変態はお縄となって最終的には世のため人のためにDクラスとして財団でご奉仕する事になるだろう。

――しかし、ありがたい事に…失礼。
恐るべき事に、このオブジェクトには世間様の目なんていう煩わしいものを一切気にする事なく、自らが生み出した少女と戯れる為のオプション機能が付属しているのである。

なんと、このオブジェクトによって変質してしまった被害者は、オブジェクトを使用して少女を生み出した人物(以下、加害者)以外の人間にはとして認識されてしまうのだ。
ここまで行っちゃった少女…少女でいいのか? とにかく犠牲者もオブジェクトとしてSCP-1082-JP-A、加害者もSCP-1082-JP-Bと付番されている。

この認識災害はかなり強力なものであり、一度発動してしまうと被害者を撮影した写真や被害者をモデルにして描いた肖像画など、あらゆる記憶媒体を用いても被害者の存在は犬としか認識されなくなってしまう。

しかも、この認識災害には被害者に関わる全ての人間の記憶に干渉して『被害者はもともと犬だったのだ』という誤った認識を刷り込んでしまう厄介な機能も付随しているのである。

例えば、オブジェクトの犠牲となってしまった被害者に子供がいたとして、その子供にインタビューを行なってみると子供の中にある母親に関する記憶が上書きされている為、「私の母親は犬です、私は犬から生まれました」という珍妙な証言が得られる事になってしまったりするのだ。

しかも、オブジェクトの能力を事前に理解した上に、オブジェクトを使用して人間を変質させて行くその現場に立ち会っていたとしても、最終的には認識災害を受けてしまい目の前に出現する少女が人間であるとは認識できなくなってしまう。

こうして、被害者の窮状を正しく認識し、救いの手を差し伸べてくれる人間は誰一人いなくなってしまうのだ。
被害者が人間であることを正確に認識できるのは、加害者のみという事になってしまう。

それにより、頼れる人をすべて失ったという絶望感から情緒不安定となった被害者は、自分を人間だと理解してくれる唯一の存在である加害者に対して依存するようになり、加害者は心置きなく被害者をペットとして愛でられるという…計算され尽くした機能をこのオブジェクトは有しているのである。

なんだこの変態御用達オブジェクトは……考えた奴出てこい! 表彰してやる。

なお、前頭葉が損傷している上にボールギャグをかまされているとは言え、被害者が声を出す事が出来なくなるわけではない。
その為、声を上げさえすれば「なんで犬が人間みたいな声を出しているんだ」と怪しまれる事となり、最終的には加害者は財団のお世話に――

――ならないのが、このオブジェクトの至れり尽くせりな所である。
被害者の声にも認識災害が発動する為、加害者以外の人間の耳には被害者の声が発情した犬の鳴き声にしか聞こえなくなるのだ。

ならばこのオブジェクトに関するデータをDクラスを複数犠牲にして、調査し切った後の日本支部なら彼女たちにとっての救いに…と思いきや、
被害者の「収容手順」として「自動給餌システムによって流動食を給餌」・「収容室に犬を近づけるな」と記されており、「標準人型生物収容プロトコル」に沿って収容すると記されているが、
一言たりとも「彼女たちに人間的措置を施せ」とは書かれていないのだ。
日本支部公式サイト掲載の「人型オブジェクト標準収容手順」では、「作業課題」を定期的に人型オブジェクトに与えているとされるが、
「言語・論理的機能への致命的な損傷」・「四足歩行」・「見た目はただの犬」・「それゆえに単純な感情しか示せない」被害者の様子からすると、作業を与えても行えるかおぼつかない。
さすがに被害者が死んだ時(ないし外部でそれらしき死体が発見された時)はちゃんと発見地の文化に沿って葬儀が行われ、墓地に埋葬される様だが。
また多くの被害者は「犬化」によるトラウマと身体的ストレスによってPTSDと身体完全同一性障害を発症し、「適切な治療」が行われないと前腕および大腿を切断せざるを得ないような自傷行為に及び、かつ被害者からの意思表示が不可能なことと「犬である」という認識災害により、兆候を発見することは困難だという。
非道な「飼い主」達から解放されても、隔離され「餌」を与えられているだけで、下手したら「死なせないため」という名目で手足を奪われ這うだけの生活。
貞操の危機「だけ」は防げても、それは「ペット・玩具」として扱われていた時や、Dクラスとして捨て駒にされていた時とどう違うのだろう…。


因みに、オブジェクトによって生み出されるボールギャグを被害者の頭部から外す事ができれば無力化が可能なのであるが、生み出されたボールギャグは異常なほどの頑強さを保持しており、取り外すためには装着されている被害者の頭の方を破壊しなければならないという悲惨な状況となってしまっている。




財団との関わり

このオブジェクトが財団の管理下に置かれる事になったきっかけは、とある民間人が地元自治体に入れた一本の苦情電話であった。

「犬の鳴き声がうるさいんですけど!!」

その当時、問題の地域ではペットの連続失踪事件が発生しており、何らかのオブジェクトが介在していることを危惧した財団は自治体や保健所にエージェントを潜入させ調査に当たらせていた。
その任務の一環として、保健所に職員として潜入していたエージェントが苦情のあった家を訪問したのである。

その家の主人は、海外出身と思われるシグヴィルアという名前の女性であった。
彼女の家を訪れたエージェントは、縄で四肢を椅子に固定された可笑しな格好のグレイハウンドを発見。
不審に思ったエージェントが女史に尋ねてみたところ、女史はあっさりとSCP-1082-JPを取り出して「これは人間をペットに変えてしまうアイテムである」と嬉々として説明し始めたのである。

エージェントは即座にシグヴィルア女史を拘束。
財団に未知のオブジェクトを発見した旨を報告し、女史とSCP-1082-JP、そして彼女の飼っていた犬たちはまとめて財団施設送りとなったのであった。

後にシグヴィルア女史に対して行われた尋問により、彼女の飼っていた数匹の犬のうち、全ての雌犬がオブジェクトを用いて変質させた元人間であった事が判明した。

以下は、シグヴィルア女史に対して行われた尋問の抜粋である。


エージェント・二階堂「あの紙を、あなたはどのようにして手に入れましたか?」

女史「貰ったのよ、同じ苛烈な加虐と被虐の美を好む同志から。この路線は飽きたから譲る、あなたなら玩具なんかじゃない本物をあげられるって」

エージェント・二階堂「その人はどのような方でしたか?」

女史「さぁ? 掲示板で語り合っているだけだったから、どこの誰かは知らない。あれを送ってきたときだって送り主の郵便番号は書いていなかった」

【中略】

女史「あの紙は、人間を人間のしがらみから解き放ってくれる。いや、それを強制するという言い方が自然かな。
  私があの子たちを犬として扱っている限り、あの子たちは完全に犬である。だからどんな痴態も犬だから、許される」

エージェント・二階堂「わかりました。では、なぜあの紙のそのような異常な効果を知りながら使用していたのですか?」

女史「あの子たちは一緒に暮らしてる雌犬たちがみんな同じ境遇だとは気づくこともないだろうから、この世で自分のような悲劇のヒロインはただ自分一人になる。
  だから彼女たちは臆することなく悲劇の舞台を主役として演じ、自分が一匹の雌犬であることを自分に信じ込ませ、
  私に犬として主人の愛に甘んじそれに親愛で応じる無償の愛の極致を持ち続けることができる。
  私は思慕することにもされることにも飢えている。それを叶えたかったまで」
シグヴィルア女史は、彼女曰く『居場所のない子たち、自分の在り方に絶望した子、人間として生きていくことにうんざりした子』をオブジェクトを用いて変質させ、歪な家族ごっこを満喫していたという訳なのだ。

勿論、女史にはオブジェクトに関する情報を記憶処理によって忘れていただいた上、速やかにお帰りいただいた。
そして、彼女の供述をもとに彼女がよく出入りしていたインターネットの掲示板を調査してみたところ、『AKI産業』を名乗る人物が女史と接触していた事が判明。

財団は、この人物がオブジェクトの元凶であると考え、引き続き調査を行なっている。





追記・修正は犬の散歩に行った後でお願いします。
…ところで、その犬は本物の犬ですか?


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1082-JP - 母犬のために
by Tyobi
http://ja.scp-wiki.net/scp-1082-jp

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最終更新:2024年04月14日 16:48