ロッキー(映画)

登録日:2017/01/15 Sun 17:55:56
更新日:2024/02/21 Wed 10:50:52
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Gonna Fly Now !


『ロッキー(原題:ROCKY)』とは、1976年に公開されたアメリカ映画。
ロッキーシリーズ(映画)第1作。

●目次
【概要】
今でこそ世界的なハリウッドスターである男のリトマス試験紙……じゃなくて、シルベスター・スタローンの歴史に残る出世作にして渾身の名作。

当時はまだ無名の俳優だったスタローンがテレビで放送していたモハメド・アリ対チャック・ウェプナーの試合に触発されて脚本を書き上げ、それがプロダクションに気に入られたことから製作が始まった。
脚本料はかなりの値がついたがスタローンはそれには目も暮れず、ギャラは低くても良いから自分が主演することを条件としたため、最終的には低予算で製作されることが決まった。
限られた条件の中でスタッフと工夫を凝らしながら製作されたロッキーは公開されるや否やその人情味溢れるドラマが観客の心を掴み、批評家からも絶賛される評価を得てアカデミー賞まで受賞することになった。

こうして歴史に刻まれる名作となったロッキーのおかげでスタローンも一躍スターとなって栄光を掴み、今日に至るようになったのである。


今でもランボーと並んでスタローンの代表作であり、最高傑作と名高い本作であるが、その裏返しとして後の続編が本作と比較されてしまい、
単体としては楽しめるのに逆にシリーズ物としては評価が下がってしまうという本末転倒な事態も起きてしまった。

ちなみにかなりレアだがノベライズ版も存在し、映画では見られない各々のキャラクターの心情もよく分かるのでおすすめ。


【物語】
1975年、秋のフィラデルフィア――

三流の売れないボクサー、ロッキー・バルボアは場末のボクシングのファイトマネーだけでは生活できず、知人のヤクザであるガッツォの下で高利貸しの集金屋として日銭を稼いでいた。

ボクサーとして素質はあるのに努力をしないロッキーのクズ同然の自堕落な姿にジムのトレーナーのミッキーは愛想を尽かしてしまう。

そんなロッキーの唯一の生き甲斐は近所のペットショップで働く内気な女性エイドリアンであった。
彼女に惚れていたロッキーは度々アプローチをするが、人見知りの激しいエイドリアンとは中々打ち解けない。
それでも親友にしてエイドリアンの兄ポーリーの計らいによって二人は少しずつ距離を縮めていく。

感謝祭が目前に迫ったある日、アメリカ建国200年祭のイベントにしてボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチが催されることが決まったが、現チャンピオンのアポロ・クリードの対戦相手が負傷してしまい、
急いで代役を探すがランキング選手は誰も都合が悪くてこのままでは試合ができない。

そこでアポロが「地方の無名ボクサーにチャンスを与えてアメリカンドリームを体現しよう」とアイデアを提案し、早速話題になりそうな無名選手を探す。

そして白羽の矢が立ったのは、「イタリアの種馬」というユニークなリングネームを持つ男、「ロッキー・バルボア」であった……。


【登場人物】

◆ロッキー・バルボア
演:シルベスター・スタローン 吹替:羽佐間道夫
元グリーンベレー所属のベトナム帰還兵……じゃなくて、フィラデルフィアのスラム在住の三流ボクサー。
不器用で口も悪く、前科もあるが根は優しくフィラデルフィアの住民からは慕われている。

極貧暮らしというどん底の状態にあるためボクサーの仕事だけでは食っていけないので、ヤクザのガッツォの元での集金係が日課となっている。
生きていくためには仕方ないと自分でも分かってはいるが、そのおかげでトレーナーのミッキーから見捨てられてしまっている。

ボクサーとしての戦績は44勝20敗38KOで、KO率が高い。ちなみにスタローンと同じでサウスポー。


◆エイドリアン・ペニーノ
演:タリア・シャイア 吹替:松金よね子
ミッキーのジムの向かいのペットショップで働いている女性。ポーリーの妹。
シリーズ通じてのヒロインで最初はメガネをかけていたりとかなり地味で引っ込み思案な性格であったが、ロッキーとの交流でそれは解消された。

本作ではロッキー同様に冴えない女性であったが、後のシリーズでは見違えるほどにマダムっぽくなっていった。

ちなみに人見知りが激しかったのは親の偏見的な言いつけのせい。


◆ポーリー・ペニーノ
演:バート・ヤング 吹替:富田耕生
ロッキーの親友でエイドリアンの兄。ロッキー以上に口が悪い冴えない男で未だ独身。

精肉工場の作業員として働いているが、その収入じゃ満足できないようでロッキーにガッツォの集金屋として紹介して欲しいと度々頼んでいるが、いつも断られている。
ちなみに断られる理由はポーリーの口が悪いから。妹のエイドリアンが相手でも平気で暴言を口にして馬鹿にしたりするので、エイドリアン自身も不満だった。

そんな風に口が悪くても未だ独身の妹を気にかけており、エイドリアンと付き合ってくれるロッキーには感謝している。

精肉工場の冷凍肉を何の気無しに殴った所をロッキーに参考にされてサンドバッグ代わりにするというトレーニング方法が開発された。
(格好いいがスタローンはこれで拳を傷めて変形して机に付けると隙間が出来ない位に平たくなってしまっているので実際にやるのはやめた方がいい)

続編の2ではようやくガッツォの仕事にありつけて広告料で大金も入ったので羽振りが良くなったが、一悶着を起こしてクビになったとのこと。


◆ミッキー・ゴールドミル
演:バージェス・メレディス 吹替:千葉耕市(DVDでの追加収録部分は槐柳二)
ロッキーが所属しているジムを経営している老トレーナー。
若い頃はバンダム級の世界チャンピオンだった50年の大ベテラン。試合で耳を悪くして引退した。

10年前にロッキーと出会い、ボクサーの素質がある彼に期待していたがいつまで経っても成果が出ずにヤクザの手先になってしまったことに失望してしまう。

アポロとの試合が組まれることが決まるとマネージャーになってやるとロッキーに持ちかけるも、逆にそれまで冷たくしていたのを掌を返されたことにロッキーは最初こそ腹を立てていたが、
時間はかかったとはいえようやく手を差し伸べてくれたことで二人は和解し、ロッキーのマネージャーとなる。

ボクシングの裏社会も見てきたためかマネージャーとしての手腕は優れており、トレーニングに支障が出ないよう悪い虫がつかないようにしたり、業界の悪徳な連中からもロッキーを守ってくれていた。
5ではロッキーもそのことについてはとても感謝していた様子。


◆アポロ・クリード
演:カール・ウェザース 吹替:内海賢二
世界ヘビー級チャンピオンのボクサー。口汚いが実力は本物。妻子持ちで妻の名前はメアリー・アン。
目立ちたがりな所があり、観客へのパフォーマンスやサービスは常に欠かさない。

アポロが本作や4の試合直前に扮していたアメリカ国旗の派手なコスプレはアンクル・サム(アメリカ合衆国を擬人化したキャラクター)。

相手が無名の選手でありお祭りということもあってかロッキーとの試合は余裕をかましていたが、不屈の闘志で挑んでくるロッキーに逆に追い詰められる破目になる。


◆トニー・デューク・エヴァーズ
演:トニー・バートン 吹替:緒方賢一
アポロのトレーナーを務める男。本作ではまだ役名が無いので演じた役者の名で呼ばれており、後のシリーズで正式にトニーが名前となっている。

ロッキーに油断していたアポロと違って、ロッキーがサウスポーであることやハングリー精神剥き出しのトレーニングをしている様子を見て危険視するなど実力を評価していた。
実は何気にシリーズ6作全てに登場している人物。


◆バッカス
エイドリアンの働くペットショップで飼われているブルマスティフ犬。後にロッキーのペットになる。
元は別の飼い主がいたそうだが店に預けたまま逃げたため結果的にそのまま捨てられてしまったらしい。

ちなみにこの犬は実際にスタローンの愛犬であり、名前も同じ。


◆トニー・ガッツォ
演:ジョー・スピネル
フィラデルフィアの港のイタリア人街を取り仕切るヤクザ。ロッキーの高利貸しの仕事の雇い主。
雰囲気は怖いが身内への面倒見は良く、ロッキーにエイドリアンとのデート費用をあげたり、アポロとの試合が決まった時にはトレーニング費用をくれたりしてくれた。

元はロッキーと同じ境遇だったイタリア移民であり、ロッキーのことを気にかけたりするのもそのため。
ロッキーが落ちぶれたりしても見捨てずに、いつでも戻ってくれば良いと声もかけてくれる。

ファンからは何故かガッツォさんと呼ばれたりと意外な人気がある。
映画では2まで登場するが、演者のジョー・スピネルが5の前年にお亡くなりになったので、もし生きていたら5にも登場していたかもしれない。ちょっと残念。


◆ジャーゲンズ
演:セイヤー・デイビッド
アポロとロッキーの試合をプロデュースするプロモーター。
本人も自負するように世界各地で様々な名試合をプロモートしてきたかなり高名な人物らしい。


◆スパイダー・リコ
演:ペドロ・ラヴェル
冒頭の場末のファイトシーンでロッキーと戦っていた三流ボクサー。
ヘッドバッドの反則行為を行ったことでロッキーを怒らせ、ボコボコにKOされた。

最終作のザ・ファイナルでも登場しており、本作とは見違えるほどに穏やかな性格となった。(それでも根っこは変わらないようだが)


◆グロリア
演:ジェーン・マーラ・ロビンズ
エイドリアンが働いているペットショップのオーナー。
続編の2や5でもちょっとだけ登場している。

ちなみに彼女のペットショップがあった場所の店は現在、閉店している。


◆リトル・マリー
演:ジョディー・レティジア
夜の街でたむろしていた不良少女。
ロッキーに説教をされつつ家に送られるが、「死ね、バーカ!」と悪態をついた。

最終作のザ・ファイナルでは成長してすっかり更生した姿で登場。
5の未公開シーンでも登場しているが、この時は本作より余計に非行少女になって落ちぶれていた。


◆ディッパー
演:スタン・ショウ
ミッキーのジムに所属している売り出し中の新人ボクサー。
ロッキーが成果を出せずにいた時にミッキーが世話をしていた。

実は未公開シーンやノベライズだとロッキーがアポロの挑戦者に選ばれたことに嫉妬してミッキーの制止も聞かずにロッキーを挑発した結果、
ボコボコに返り討ちにされた挙句、ミッキーにジムを追い出されている。


【余談】
◆作品賞を受賞した第49回のアカデミー賞ではスタローンは助演女優賞のプレゼンターを担当した。
するとスピーチ中にスタローンの後ろからなんとモハメド・アリ本人が登場
サプライズに動揺するスタローンに対し「俺のシナリオを盗んだな」と挑発し、その場でボクシング対決をするという演出を行い会場を大いに沸かせた。

◆ロードワークのシーンで市場の人から果物を投げ渡される場面があるが、実はこれはハプニング。
このシーンでは撮影スタッフが少なかったためかランニング中のスタローンが本物の新人ボクサーと勘違いされて実際に声援を送られており、果物屋の店主も同じようにスタローンを応援して果物をプレゼントしてくれた。
それがカットされずにそのまま映画に使用されることになった。

◆トレーニング中に生卵を大量にジョッキに入れて飲み込むシーンは、よく日米で意識の差があると言われる。
当時の海外では卵を生で食べるのは衛生的に見て非常に危険な行為であり、それだけの覚悟ということを示す意味合いもあるのだが、
日本では当時から卵を普通に生で食べていたため、文化の違いからこのシーンがまず「危険な行為」とすら思われないのが原因である。
ちなみにスタローンも、当該シーンの撮影はかなり嫌がったという。

◆「シティーハンターの冴羽リョウのあだ名「新宿の種馬」の元ネタ。
しかしこちらは原語では「Italiana stallion(イタリアン・スタリオン)」=スタローンの名前に通じる、という言葉遊びであり、またエイドリアンの為に戦い抜いたロッキー=優秀な雄馬(漢)というニュアンスであると思われる。
ちなみにスタローンのイタリア語読み、スタッローネは種馬という意味を持っている。
もっこり種馬(文字通りの性的な意味のほう)のような、簀巻きにされそうなアレな意味は含まないが、スタローンが困窮から已む無くポルノ映画に出演していたことを自ら皮肉ってもいるらしい。

◆上記のように低予算で製作されているためスタッフにも工夫がされており、当時のスタローンの奥さんがカメラマンであったり、スタローンの知人や友人、さらには家族までもがエキストラとして参加している。
なお、当時の奥さんは元々は後味の悪い終わり方を想定していた脚本をハッピーエンドに変えるようにも言ってくれたという。
特殊メイク予算も節約するため、最後の決戦は最終ラウンドからの逆撮り。つまりボコボコになっての「エイドリアーン!」からだんだん回復しつつ殴り合っているという事に……。


追記・修正はロッキー・ステップを100往復してからお願いします


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最終更新:2024年02月21日 10:50