天津甕星

登録日:2017/1/14 (土曜日) 00:42:00
更新日:2024/04/17 Wed 15:58:29
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天津甕星(アマツミカボシ)とは日本神話に登場する神であり、星を神格化した神である。
……が日本書紀の第九段にしか登場しない上に、本伝ではなく異伝にほんの少ししか出ていないかなり謎の多い神様でもある。

別名を香香背男(カカセオ)』、『天香香背男(アマノカカセオ)とも。

第一の記述では剣神にして雷神であるタケミカヅチと同じく剣神のフツヌシが全ての国津神及び石や草木を平定するもアマツミカボシは最後まで抵抗。
結局は従えることができず、タケハヅチノミコトによって懐柔され、ようやく平定したと言われている。

第二の記述ではタケミカヅチとフツヌシが天には天津甕星という悪神がいてこの神を倒してから平定に行きたいと発言したとされている。

つまり現時点で確定しているのは打ち倒すべき悪神である事、星を司る神である事のみである。

あまりに彼について書いた記述が少なすぎて謎が多く、説明が少ないので以下の活躍及び概要は数少ない記述から当項目の立て主の独自の解釈で書かせていただく。




【活躍(概要も兼ねて)】

――フツヌシとタケミカヅチが葦原中国に国津神や石、草木をも平定した時代。
だが、天津神に従う事を良しとせず、これにたった一人抵抗した神がいた。

その神こそ『天津甕星(アマツミカボシ)』である。

フツヌシとタケミカヅチのコンビは交渉すら聞き入れぬアマツミカボシに対して最終手段として武力行使で平定することを画策する。

 タケミカヅチ「言っても聞かぬというのなら痛い目にあってもらうでございやす!」
 フツヌシ「おう!いくぜ相棒!」

 アマツミカボシ「初めてですよ…私をここまで怒らせたおバカさん二人は…!」


こうして戦闘状態になるもアマツミカボシは凄まじい強さであり、あっという間に二人を追い詰めてしまう。
劣勢となったタケミカヅチとフツヌシは高天原へ撤退せざるを得なくなってしまった。

 アマツミカボシ「どうしました?その程度ですか?私を平定するのではないのでしたか?」

 フツヌシ「やべえ…コイツ強い…!!」
 タケミカヅチ「ここはいったん引きやしょう!このままじゃ死んじまいやす!」


アマツミカボシにボコボコにされ、命からがら高天原へ帰還したタケミカヅチとフツヌシのコンビは作戦会議をする事となり…

 アマテラス「ミカ!フツ!傷だらけじゃない!何があったの?」
 フツヌシ「いやぁ…まつろわぬ神にアマツミカボシという滅茶苦茶強い奴がおりましてな…」
 タケミカヅチ「葦原中国にこのような猛者が残っていたとは…あっしとしてもまことに不覚だったでございやすよ…」

 アマテラス「どうにか平定させられる方法はないものかしらね…」
 ????「お困りのようね皆さん?」

 アマテラス「あなたは!」

 フツヌシ&タケミカヅチ「「タケハヅチノミコト!」」


ここで名乗り出たのが機織り・織物の神として知られるタケハヅチノミコトである*1

 タケハヅチ「言う事聞かない悪い神様の相手なら私に任せてくださいな♪」

 タケミカヅチ「そうは言ってもお主は武器も力もない神でございやしょう?一体どうやって平定する気でございやすか?」
 フツヌシ「アマツミカボシはとてつもない強さを誇る奴だぞ?それをどうやって屈させるというのだ?」

 タケハヅチ「あのねぇ…貴方たちはなんでも力で解決しようとするからダメなのよ?ここを使うのここを。」(自分の頭を指さす)

 タケミカヅチ「と言いやすと…頭突き?」

 タケハヅチ「アマツミカボシは私の得意な機織りで懐柔して見せるってことよ。ほら、男って単純だからさ?」
 アマテラス「なるほど、その手があったわね!名案じゃない!」
 フツヌシ「俺達の分も頼んだぜ!」
 タケミカヅチ「あっしの無念も晴らしてくだせぇ!」
 アマテラス「頼んだわよタケハヅチ。葦原中国の平定は貴方にかかっているのよ?」


こうして敗退したフツヌシとタケミカヅチの仇討ちもかねてタケハヅチノミコトはアマツミカボシを力以外で屈服させようと向かった。
天津神のリベンジ戦が始まったのである!!

 アマツミカボシ「おやおや?また天津神の方ですか?おバカさん二人はどうしました?まさか怖じ気づいて逃げてしまったのではないでしょうねぇ?」
 名も無き機織り「いえ、わたくしは通りすがりのただの機織りでございます。」
 アマツミカボシ「あのおバカさんのように私を叩きのめそうなどというのなら私も容赦はしませんよ?」
 名も無き機織り「そんなそんな、わたくしは戦う気などありません。」
 アマツミカボシ「ほぅ、では何をしに来たのですか?」
 名も無き機織り「わたくし…アマツミカボシ様の事が好きでして…わたくしの自慢の織物を作って差し上げましょうと思っているのです…」
 アマツミカボシ「…そうですか。私の為に作っていただけるとはありがたいですねぇ…」


突然現れた機織りに警戒心MAXのアマツミカボシ。
だが、タケハヅチは名も無き機織りとして正体を隠しつつ戦う気はなく、あくまで得意の機織りで美しい織物を作りプレゼントする事が目的だと説明し警戒を解かせようとする。

 名も無き機織り「それにしてもアマツミカボシ様は逞しいお方ですね…」
 アマツミカボシ「ホッホッホッホ…二人のおバカさんに最後まで抵抗した事を褒めていただいてありがたい限りですよ♪」
 名も無き機織り「いえいえ、わたくし強くて逞しいお方が大好きなものでして…ポッ…」


…と話したかは定かではないが、とにかくアマツミカボシにつけこむべく、あの手この手で誘惑し隙を伺っていた。

 アマツミカボシ「…ところで、何時になったら織物ができるのですか?」
 名も無き機織り「もうすぐできますよ?」
 アマツミカボシ「楽しみですねぇ?」


いつまで経っても完成せぬ織物にアマツミカボシは少し苛立ちながらもタケハヅチは織物作りを着々と進めていく。
そして、遂に完成させるとアマツミカボシに見せつける。

 名も無き機織り「できましたよ♪」
 アマツミカボシ「おお!これはこれは!なんとも美しい織物だ!流石は機織り女ですよ!」
 名も無き機織り「褒めて頂いて光栄です♪」
 アマツミカボシ「天津神は腕っ節ばかりのおバカさんばかりと思ってましたが貴方は違うようですねぇ?」
 名も無き機織り「気に入っていただいて嬉しい限りです。わたくし織物を織る事しか能がありませんから…」
 アマツミカボシ「ホ~ホホホホホホ!この美しい織物こそ星神である私…このアマツミカボシ様にふさわs…」

 名も無き機織り「フフフフフ…隙ありッ!!」

 アマツミカボシ「な、何ッ!?は、図ったな!?貴様味方ではなかったのか!?」

 名も無き機織り「あらぁ?だれが味方すると言ったかしら?」

 アマツミカボシ「ええい!貴様ぁ!何者だぁ!」

 タケハヅチ「織物と機織りの天津神!タケハヅチノミコトさ!」


美しい織物に目が眩んだアマツミカボシは遂に隙を見せ、この瞬間を待っていたと言わんばかりに名も無き機織りはニヤリと不敵に笑うとタケハヅチという正体を現す。
そして、アマツミカボシを拘束し降伏を呼びかけたのであった。

 タケハヅチ「抵抗は無駄です。大人しく平定を受け入れなさい。」
 アマツミカボシ「お、おのれぇぇぇぇぇ天津神めぇぇぇぇぇ!覚えてろぉぉぉぉぉぉ!?」


こうして最後まで抵抗したアマツミカボシはタケハヅチのハニートラップまんまと引っかかり懐柔させられたとさ…というわけである。
何時の時代も男を屈服させるのは武力ではなく、最終的には色仕掛けだというわけだ。
とっぴんぱらりのぷう。


【余談】

悪神という概念があまりないであろう日本神話において数少ない明確に悪神として扱われる神である。

何故日本神話屈指の戦神であるタケミカヅチとフツヌシですら屈させる事ができなかった彼を機織りの神であるタケハヅチが懐柔できたかは諸説あり、
建葉槌のを読み替えれば『武』を読み替えれば『刃』となり、
武神とも解釈できるからという説と
織物や機織りの神ということから女神として解釈され、織物が天女の羽衣伝説と結びつき、
飛翔する存在として戦神二人を差し置いて、天=アマツミカボシへ届く事ができたからという説、
織物に星そのものを司るアマツミカボシを織り込んで封印できたからという説がある。
最初の説の場合スサノオを除けば日本神話屈指の武神とも言われるタケミカヅチとフツヌシ涙目である
異説として元々タケハヅチはアマツミカボシサイドの神であり、天津神側にほだされて極秘で天津神側に寝返り、
寝返った事を知らないアマツミカボシサイドを内部から崩壊させたというものもある。
星神であるアマツミカボシの司る星だが星全般を指していたり、金星を指していたりとはっきりしないが
金星説の場合、明けの明星である金星は昼に見えることがあり、この事から、金星=アマツミカボシ太陽=アマテラスに従わないまつろわぬ神として解釈されたとされている。

彼を祀る神社は全国にある星神社や星宮神社が存在するが中でも代表的なものとして茨城県日立市には大甕神社が存在し祭神こそ彼を
屈服させたタケハヅチノミコトであるものの、その神域を成している宿魂石はアマツミカボシが化したものとして伝えられている。

星を神格化した星神というのは世界各地で見られ、主祭神として扱われることが多いのに対しアマツミカボシは打ち倒すべき悪神として伝わるがこれは星神を祀る民族がおり、
大和王権になかなか屈しなかった為に悪神として扱われるようになってしまったと言われている。

葦原中国平定の際に天津神に最後まで抵抗した事からタケミカヅチが下した国津神のタケミナカタと関連付けられ、同一視されることがある。

漢字表記に"天津"甕星とつくことから天津神の一柱とされる神だが同胞であるはずのタケミカヅチやフツヌシと戦って返り討ちにし、
タケハヅチノミコトに屈服させられるという記述がある事から天津神でありながら国津神側に付いて反乱を起こした裏切り者ではないか?という説も語られているらしい。



追記・修正はタケハヅチのハニートラップに惑わされない方がお願いします。

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最終更新:2024年04月17日 15:58

*1 ※性別は諸説あるがこちらでは女神という解釈