隣の芝刈り(遊戯王OCG)

登録日:2017/01/13 Fri 17:40:55
更新日:2023/10/15 Sun 21:04:27
所要時間:約 5 分で読めます





隣の芝刈り
通常魔法
(1):自分のデッキの枚数が相手よりも多い場合に発動できる。
デッキの枚数が相手と同じになるように、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る。


隣の芝刈りとは、レイジング・テンペストにて収録された、遊戯王OCGの1枚である。レアリティはスーパーレア(シークレットレアもあり)。
自分のデッキが相手のデッキよりも多い場合に、デッキの枚数が同じになるように自分のデッキの上からカードを墓地へ送る効果を持つ。

一見するとあまり意味のない自爆のように聞こえるが、このカードは遊戯王のデッキ構築におけるセオリーを覆したカードである。

…解説の前に、まず他のメジャーなカードゲームのデッキ枚数について見てみよう。
デュエマ・ウィクロスは40枚丁度、ヴァンガード・Z/Xは50枚丁度、ポケカは60枚丁度、
バトスピは40枚以上、バディファイトは50枚以上、MTGは60枚以上と指定枚数ぴったりor上限なしのパターンが多い。

一方で遊戯王の場合、(マスタールール以降では)デッキ枚数が「40枚以上60枚以下」と定められている。

この芝刈りは発動時に相手のデッキ枚数と自分のデッキ枚数の両方を参照しなければならない面倒な側面があり、
なおかつ状況に左右されやすいカードではあるが、上手くいけば大量の墓地肥やしがこれ1枚で行える。
遊戯王は墓地にあった方が都合のいいカードがたくさんあるゲームで、その為、墓地は第二の手札と呼ばれる。
つまりこのカードは「コンボの起点」として非常に優秀な能力を持つと言える。

実際大量墓地肥やしができるカードは遊戯王の歴史の数々で活躍しており、意味不明な性能と評される「苦渋の選択」、発動に成功したら勝ちとすら言われた【カオスドラゴン】のエンドカードであったエラッタ前「未来融合」を見てわかる通り、
特定のカードを落とせると言えど5枚前後落とすだけで勝敗の決着がほぼついてしまうのだから、ランダムとはいえ20枚前後落とせる可能性を秘めたこのカードの性能はまさに破格。
墓地を利用するカードや墓地から効果を利用できるカード、それも質より量を問うタイプのカードと相性が良く、
特に墓地のカードを積極的に使用する【インフェルノイド】にこのカードを投入して作られた【芝刈りノイド】は大会でも結果を残している*1
……厳密には同じパックで登場したデッキの上から5枚墓地へ送り手札をすべて捨て2枚ドローしフリーチェーンの除去を行えるカテゴリの影響も大きいが。



運用方法

このカードの運用法についてを解説していこう。
このカードで墓地を肥やしたいのであれば、なるべく相手と自分のデッキの枚数に差があるときに発動したい。
つまり相手と自分のデッキに枚数差を意図的に作れる状態を構築するのがこのカードを効率的に使用する上で必要になってくる要素となる。

その方法は大雑把に分けると、「相手のデッキを減らす」か「自分のデッキを増やす」の2択になる。

前者は相手が積極的にデッキを圧縮するデッキであれば自然と枚数差は生じるが、
逆に言うと「自分の墓地を肥やす前に相手の情勢を優位にさせてしまう」状況の為、あまり有効とは言えない。
それ以外で相手のデッキを減らす場合、デッキ破壊などが挙がるが基本的にデッキ破壊は自身の墓地には依存しない為、
デッキ構成の上でのベクトルが違ってくるので相性はあまり良くない。

このような理由から相手のデッキを減らすよりも自身のデッキを増やす方がこのカードを有効に使える。

例えば相手が40枚デッキで自身が60枚デッキだとして、先攻1ターン目にこのカードを発動すると、
いきなり+20枚という破格の墓地肥やしを行うことが出来、デッキの枚数は同じだが墓地のアドバンテージで大きく上回った状況でゲームを始められる。
1ターン目で引くことが出来なくても《左腕の代償》でサーチしたり、少々アド損だが《おろかな副葬》で墓地に送り《魔法石の採掘》で回収とすれば同様の状況が作れる。

このカードがデッキ構築のセオリーを壊したと言われる所以はそこ

デッキ枚数は「必要なカードを引く確率を上げるため、なるべくデッキの枚数を40枚に近くする(出来るだけデッキ枚数を少なくする)」
……というのが従来のデッキ構築における定石であり、当時の上級者が60枚デッキを使う事は殆ど無かった。

単純に40枚と60枚では40枚の方が必要なカードを引く確率が上がるからである*2
これは公式ルールブックやアニメ5D'sのデュエルワンポイントレッスンなどでも書かれている程基本的な考え方である。
当時のOCGにはバベル(MtG)みたいなタイプのデッキはないのである……。

それらを後述の弱点もあるが、デッキ枚数を増やす構築に大きな意義を与えたこのカードの存在は画期的と言えるだろう。

このカードを使用した60枚デッキは状況によっては凄まじい墓地アドバンテージを持って相手と決闘が出来る為、
墓地を手札のように扱えるデッキならかなり有利に立ち回る事が可能である。


相手が《強欲で貪欲な壺》を使用するデッキの場合、
《強欲で貪欲な壺》1枚の効果で合計12枚もデッキが減るため、大幅な墓地肥やしが狙える。
ただし、このカードを使う前に相手がキーカードを引き当ててしまったら厳しいが。

また、墓地アドバンテージ以外にも、ワイトキングやヴェノミノン、ヴェノミナーガのように墓地に特定の種族、名称を扱うモンスターが一定数居ると攻撃力が跳ね上がる永続効果を持ったモンスターを生かすのにも使える。

弱点

ここまではこのカードの意義やメリットについて触れてきたが、
このカードのデメリットについて触れておくと、やはり「デッキの枚数を増やす事」にある。

このカードの効果を十全に生かせないような状況、例えばデュエル後半に引いたり、
相手も同じ枚数のデッキの場合等ではこのカードは役に立たず、デッキそのもののを増やした意味がなくなってしまう。

しかも「デッキ枚数を増やすことでこのカード自身を引きにくくしている」という側面もある為、
このカードをなるべく早く引き込む為のサーチカードやドローソースも投入しておきたい。
このカードを引くことを前提としたデッキ構成は危険なので、他の初動札も用意しておきたい。
デッキ枚数が増えるという事は入れられる初動札の数も増やせるという事である。

また、1度使ってしまえば相手と自分のデッキ枚数は横並びになる為、基本的に2枚目以降は腐るという欠点がある。
なので、複数枚投入する場合は2枚目の「隣の芝刈り」が腐るのを覚悟で投入する必要がある。
とはいえ1回だけでも発動すれば2、3枚分のディスアドを帳消しにする大幅なアドバンテージを獲得しそのまま押し切れることも多く、そもそも60枚デッキで2枚同時に引くという事もあまりないためそんなに気にしなくても良い。

最大の欠点は質より量を重視するその性質上、相手も60枚ないしそれに近いデッキだとほとんど使用する意味が無いというのが明確な弱点。
例え多少なりとも肥やせるとしても、このカードの効果を生かすためにわざわざ決して小さくないリスクを呑んでデッキを増やした見返りが「針虫の幸福」1、2枚分ではとても割に合わない。
特に隣の芝刈りを採用しないタイプの60枚デッキだと隣の芝刈りばかりか、実質的に隣の芝刈りをサーチ・ドローするためのカードも軒並み1戦級以下の物になり下がるので根本的なデッキパワーで押し負けやすくなってしまう。
幸い「隣の芝刈り」を入れていない60枚付近のデッキは滅多に無いが、
隣の芝刈りの性質に近い「強欲で貪欲な壺」の存在から9ガジェのような高い安定性を持つカテゴリでデッキ枚数をあえて水増するデッキもなくはないため、当たったらほぼ負け確定である。

また、墓地に送られるカードにランダム要素が絡む以上、狙ったカードを墓地に送れなかったという状況も考えられる。
このカードを使う以上、大きな問題にならないように構築されることが多いと思われるが、意識しておきたい。

このようにこのカードを使用する上で大事になるのは「状況」である。

性能以外の弱点としては、使用の際に互いのデッキの枚数をカウントするというちょっと面倒くさい作業が入ることも挙げられる。
まぁこのぐらいは大した手間ではないが、故意でも事故でも、枚数のカウントミスが起きると後々ややこしいことになるので、
カジュアル対戦でも第三者のチェックを入れてもらった方が無難かもしれない。


デュエルリンクスでは

カードトレーダー産として登場。
なにげ出た時期が2018年なので結構リンクスでは古いカードだったりする。
当初はカードプールがそこまでなかったので活躍はしなかったが、カードプールが増えるしたがい活躍の場は増えていき、主に武神、不知火、ジェムナイトなどで使われてた。
最終的にはこのカードを握った時点で勝ちが確定という場面までいき、2020年10月1日をもってデビル・フランケンと共に、リンクス初の禁止カードに指名された。


余談

因みにこのカードの名前の由来は、ことわざ「隣の芝生は青い」からだろう。
「他人のものは例え実際には同じようなものでもいいものに見える」という意味を持っているが、
墓地アドを度外視すれば確かに相手より自分のデッキ枚数が多いという状況はデッキ圧縮度で言うと「相手の方がいいように見える」状態と言える。

このカードはさらに「芝刈り」の要素を付け加えている。

遊戯王wiki内では『このカードは自分のデッキが多いことを「自宅の芝が伸びている」、
相手のデッキが少ないことを「隣家の芝がよく刈り込まれている」事にたとえ、隣と同程度に芝を刈り込む効果となっている。』と表記しており、
最終的に「実質的に同じようなもの」という状況を作り出そうとしている事が分かる。

諺の状態になぞらえたいいネーミングと言えるだろう。
ひょっとしてこのカードを見越して現世と冥界の逆転をエラッタしたのか


追記・修正は驚異的な墓地肥やしが出来る状況を作った上でお願いします。

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最終更新:2023年10月15日 21:04

*1 更に言えばこのカードが収録されたパック、レイジング・テンペストが発売されたのと同時期である2016年10月の制限改訂にて「モンスターゲート」が準制限に緩和されたこともあり、勢いを失っていたインフェルノイドは再び息を吹き返す程であった。

*2 ちなみにデッキにあった方が都合が良いカードを使う場合やドローソース及びサーチカードが豊富なデッキ等は、デッキ枚数を増やすこともある。