SCP-115-JP

登録日:2017/01/12 Thu 18:59:59
更新日:2023/05/08 Mon 20:17:51
所要時間:約 8 分で読めます





願わくば、何も願うな。


SCP-115-JPとは、SCP日本支部が確保しているSCPオブジェクトである。
項目名は「鵺」。

特別収容プロトコル

SCPオブジェクトとのお付き合いの方法である特別収容プロトコルから見ていこう。

まずこいつのクラスはKeter→Euclidとなっている。
昔はだいぶヤバイ代物だったらしいが(え、SCP世界にヤバくないオブジェクトなど存在しないと?)
収容方法がある程度確立されたようであり、Euclidに格下げされているようだ。

次に本題の特別収容プロトコル、SCPとの付き合い方。

SCP-115-JPは、サイト-81██内の標準物品収容室へ保管されています。収容室は6メートルの通路を経て隔離されており、通路の手前側に監視室が備え付けられています。
収容室内には「特定思考発生装置」と「思考漏洩防止装置」、監視カメラが備え付けられ、最低限、特定思考発生装置は常時稼働状態として下さい。特定思考発生装置の本体は監視室へ設置しており、稼働状況は常時モニタリングされています。特定思考発生装置本体は監視室内で予備を含め3台設置されています。
装置の稼働には電力以外に、専用の「思考発生カートリッジ」と「エネルギー補給カートリッジ」が必要です。思考発生カートリッジは通常30日に1回交換して下さい。エネルギー補給カートリッジは容量が10%を下回った場合に交換して下さい。各カートリッジは監視室に常に12セットの予備があるようにして下さい。エネルギー補給カートリッジは、緊急の際はブドウ糖の水溶液で代用ができます。思考漏洩防止装置及び監視カメラについては、規定に則った整備をして下さい。
収容違反が発生した場合、職員は直ちに収容室から6メートル以上待避して下さい。収容室の区画を隔壁で隔離後、特定思考発生装置のデータを分析、設定を調整し再収容を試みて下さい。

どうやらこの「特定思考発生装置」と、「思考漏洩防止装置」なる装置が収容のキモのようだ。
それもそのはず、こいつは近くの人間の思考を読み取って活動するオブジェクトである。(後述)
それにしても思考発生装置は3台セットとは、中々厳重なようだ。システムダウンは許されないということらしい。
そしてこの「特定思考発生装置」なる装置、電気の他に何やらカセットと、エネルギーパックのようなものが要るらしい。
しかも「燃料」には「エネルギー補給カートリッジ」以外にもブドウ糖水溶液も使えるようだ。
各カートリッジは12セット、つまり1年分の予備を用意せよとのことで。

それにしても専用の機器が2種類(予備も含めれば合計4台)も必要とは、こいつは中々手間のかかるオブジェクトである。

説明

では、こいつが何なのかの解説。「SCPなんて元々なんだかよくわからない奴らだろ」なんていうツッコミは禁止。

SCP-115-JPとは50cm×50cm×150cmの大きさの六角柱。
材質はお約束の通り未知の物質となっている。
SCP-115-JPの特異性は、「半径5m以内にいる人間のうち、最も強い思考を読み取って自分自身に反映させる」というもの。
平たく言ってしまえば「近くの人間の頭の中を覗いてそいつの願望のとおりに変身する」ってものである。
例えば「腹減った…何か食べ物を」と思っている人間がいれば食べ物に変身するし、
「眠い…寝たい」と考えている人間がいれば安眠グッズに変身する。そんなやつである。
尚、食べ物に変身した場合は問題なく食べることができるようだ。

反映される思考は「半径5m以内にいる人間のうち、最も強い思考」となっている。

但し厄介そうな点もあり、思考の内容によっては自分自身だけでなく[編集済]にされたことも起こすらしい。
機械的な無差別スキャンだからこその厄介な点とも言える。

SCP-115-JPが収容されたのは、19██/██/██に某県の集落で発生した一連の自然災害が発端。
この集落は気候に恵まれ作物もよく採れたようだが、現在は廃村となっている。
この自然災害に関して住民が「あれは██様の祟りじゃ」との証言が得られたのと、集落内の倒壊した社から「██様の用法」と書かれた書物が見つかった結果、収容プロトコルが確立され今に至る。

で、こいつが補遺の一つとして掲載されている、「██様の用法」の内容。(現代語訳済み)

██様の用法
一、██様は社の中央に安置する事。
一、社は幅奥行き共に七間とする事。
一、社へ留まって下さるよう、祈祷を欠かさぬ事。
一、██様への願い事は[破損で判別不能]事。
一、██様からのお言葉は持ち帰り検討する事。
一、願い事は強く持つ事。
一、恐れぬ事。
[以降は損壊が激しく判別不可]

「間」(けん)というのは尺貫法における長さの単位であり、一間はおよそ1.82mとなっている。
つまり1.82m×7=12.74m四方の社に安置せよとのこと。
向こうからも何かメッセージを発することがあるのでその内容は持ち帰って検討せよ、ということらしい。
「願い事は強く持つ」というのは、先述の「最も強い思考を読み取る」という特性上、
途中で邪魔が入らないようにするための措置と取ることができる。
また「恐れぬこと」というのも重要らしい、いや重要である。
え、どういう理由かわからない?

じゃあ補遺その2のインタビュー記録を。

対象: SCP-115-JP

インタビュアー: ██研究員

付記: SCP-115-JPは特定思考発生装置により、日本語でのインタビューが可能なように調整されています。██研究員は監視所から遠隔でインタビューを行っています。

恐らく「特定思考発生装置」を使い、『こいつと日本語でお話できたらなー』とか考えさせているんだろう。
では、本題。

<録音開始>

██研究員: こんにちはSCP-115-JP。私の声は聞こえていますか?

SCP-115-JP: こんにちは。聞こえていますよ。ですがあなたの思考は聞こえませんね?

██研究員: (無視して)あなたに幾つか伺いたい事があります。よろしいですね?

SCP-115-JP: ええどうぞ、お答えできる範囲であれば何なりと。

██研究員: 19██/██/██、とある県での事件により多数の犠牲者が出ました。覚えていますね。あの事件を何故引き起こしたのか伺いたい。

SCP-115-JP: 私は望まれないと生きられません。他者に望まれないと存在できない、小さな存在なのです。

██研究員: 質問に答えて下さい。

SCP-115-JP: お答えしていますよ。皆は雨を望んでいました。故に降らせました。雨が降ると、皆が土砂崩れを想像しました。故に崖を崩しました。押し潰された方々は一様に死を覚悟しました。それ故お手伝いをしました。

(がたん、と██研究員が席を立つ音)

これで「恐れるな」の理由がわかっただろう。
こいつは「恐れ」すら読み取ってその通りにする。
これじゃ土砂崩れが起こりそう、と思えば「お望みどおり」とばかりに土砂崩れを起こす。
土砂崩れで死んじまう、と思ってしまえば「仰せのままに」とばかりに…。

SCP-115-JP: 何か音がしましたね。どうされましたか。

██研究員: いえ。……いえ。それでは、あの事件は全て住民が望んだ結果だと?

SCP-115-JP: その通りです。私は望まれないと存在できません。

<録音終了>

そしてここからが終了報告書だが、何やら不穏な内容のようだ…。
それもSCP-115-JPそのものというよりも、こいつを収容するための機材に関しての方で。

終了報告書: インタビューを信用するならば、現在の収容プロトコルは完全と言えるでしょう。将来的には思考発生カートリッジの供給が問題となってくるかもしれません。カートリッジのリサイクル手法を早急に確立させるべきです。Dクラス職員は有限な人材ですから。
-結城博士

思考発生カートリッジの供給…?
リサイクル手法の確立?
Dクラス職員…?

特別収容プロトコルにある、この「特定思考発生装置」の取り扱いと重ねると、
ある嫌な想像が出来るようになる。

特定思考発生装置を稼働させるには、「電源」の他に「思考発生カートリッジ」と「エネルギー供給カートリッジ」が必要らしい。
だがこのエネルギー供給カートリッジが間に合わない場合は、「ブドウ糖」でも代用エネルギー源になる。
そして、「ブドウ糖」をエネルギー源として動作、いや活動するモノ…もっと突っ込んで言えば人間の「部位」と言えば…?
ここからは飽くまで推測でしか無いが、こいつの正体はある可能性も浮上してくる。
しかも(この推測が正しいとすれば)おびただしい数の「材料」がカートリッジに加工され「消費」されていったということになる。
付け加えるなら1年分の「ストック」も含めて。
そしてその「材料」とは…今更言及する必要も無いだろう。"彼ら"の呼称の意味合いには「使い捨て」というものもあるのだし。



「██様の記事の編集の用法」
一、恐れず追記・修正する事


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-115-JP - 鵺
by k_u_m_a
http://ja.scp-wiki.net/scp-115-jp

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最終更新:2023年05月08日 20:17