学級崩壊

登録日:2016/12/10 (土) 14:10:43
更新日:2022/08/02 Tue 10:27:59
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教え子たち「金!暴力!SEX!」




学級崩壊とは、学校において学級としての機能が停止した状況を指す。


【解説】



学級がまともに集団による教育の場所としての機能を果たせなくなった事態を学級崩壊と呼ぶ。

例としては『授業中に立ち歩いて喋る』『教師のいう事を誰も聞かない』『隠れたいじめが起きている』など。
日本全国の学校全てで起きている…とは言わないが、現在まで多くの学校がこの現象に頭を悩めている。

尾木直樹による『「学級崩壊」をどう見るか』という著書を出所に、授業崩壊のチェック指標を掲載した。
以下のチェック指標と、学生のWiki篭りは自分のクラスの状況と照らし合わせてみよう。
そもそも義務教育を終えてないWiki篭りならばこのサイトを見る前に勉強しよう!


1.授業中の学習に関する教師の指示が通らない
2.授業中の立ち歩き、外出がある
3.授業中の私語が多く、教師の指示で止めない
4.授業中の口ゲンカ、小暴力が発生したとき、教師の指示で静止できない
5.チャイムでほぼ全員が前を向いて着席し、教科書、ノート類を出していない
6.誰かを冷笑したり、はやしたり、隠れた「いじめ」が発生しているのを教師は注意ないし止めさせることができない
7.明らかな授業妨害、担任「いじめ」に対して周囲の子が同調している
8.授業中、堂々とマンガを読んだりおもちゃで遊ぶのを止めない
9.配布したプリントをわざと破ったり、丸めて床に捨てるのを止めない
10.教師の注意を無視したり反抗したり、ときには暴力を振るう


学級崩壊の歴史


学級崩壊という概念は1998年を境に大きく注目を集める。

この時期にNHKやら朝日新聞やらが、学級としての運営が停止している状況を特集番組や記事で報じた。
すると、これを切っ掛けに全国の多くの小学校でも似たような現象が頻発していることが知られる。

翌年に当時の文部省の研究委嘱を受けた国立教育研究所は「学級経営研究会」を組織。
マスコミが報じる「学級崩壊」という現象の研究を開始する。
その研究における報告書では、学級崩壊という名前を出すのは避けながらも学級崩壊の定義を作り出した。


【崩壊の原因】



崩壊の原因と言っても色々と事情はあるが、ひとまず指摘されやすい理由をいくつか挙げる。


小学校で学級崩壊が起きやすい理由


学級崩壊が小学校で起こりやすいと言われているのは、中学校や高校との担任体制の違いが指摘されている。
基本的に小学校は一学級一人で担任を受け持つため、外部における干渉を受けにくい。
こうした閉鎖環境の形成は『学級王国』などと皮肉られる状況を作り出す。

このような環境では、良くも悪くも生徒と教師の距離感が密接なのだ。
このコミュニティにおいて生徒と教師の関係性が悪化すると、指導の難易度が上昇する。
前述したように閉鎖環境なので、学級外の人間が崩壊の予兆を察することができずに崩壊速度を加速させる。

外部からの介入が望みにくいなら、教師から外部に相談すればええやん」と普通は思うだろう。
ところが、一人一学級だと教師自身も学級で問題が起きると屈辱を感じたり、あるいは過剰な責任感に包まれることになる。事実、そういう事態が発覚すると周囲からその指導力を疑われ責められたり、場合によっては担任を外されるなどの処分もあり得る。
そうなると教師が外部の人間に相談するという選択を選ばず、状況の悪化に貢献する。

また、保護者からの苦情を恐れるあまり、生徒に対して厳しく注意することができない面もあるだろう。

ちなみに、小学一年生に起こりやすい学級崩壊の現象を「小1プロブレム」と呼ばれる。
これは、小学校に就学しても授業に取り組む「文化」や対人関係の在り方が未確立の生徒が多いため、結果として授業が成り立たなくなる学級崩壊の形態である。


学級崩壊の起こりやすい教師?


学級崩壊の研究者としても知られる河村茂雄が言うには、学級崩壊を引き起こしやすい教員は主に2パターンいるという。


管理的タイプ教師

権威的というか、良くも悪くも生徒を厳しく管理する教師。

誰が言ったか、学級崩壊が起きたクラスの八割はこのタイプの指導の教師……らしいが実際はどうなのか。
権威的な指導が生徒の反感を招き、生徒達の非行を引き起こして学級崩壊を引き起こす。

このタイプの教師は、ベテランの人でも学級崩壊を経験しやすい模様。
過去には通じた管理的な自己指導法がやがて時代性にそぐわなくなり、生徒の反感を買って崩壊を招きやすいため。
他にも一見しっかりしているように見えて、管理したがり=実は面倒ごとに関わりたくない(生徒を信用していない)→生徒からも信頼されないというケースもある。


接しやすいお友達タイプ教師/放任主義教師

結構見かけやすい、上司というよりは年の離れたお友達的に接する教師だったり、あるいは干渉しない(できない)教師。

このタイプの教師の指導法は、管理的タイプの教師とは違って機械的に授業を進めて集団作りをしない。
よって集団が形成されにくく、子供も集団形成力が成長されにくく、学校への所属意識も薄くなる。
その結果、学校の規則や教員の指示を無視して崩壊を引き起こす。

この手の教師は生徒と一対一の関係を築くのを得意とする(若しくは、そもそも人付き合いが得意ではない)。
一方で、生徒に嫌われなくないという意志から集団への注意喚起などが苦手な場合があり*1、その場合は子供への叱咤が不完全に終わりやすい。
また、こうした特徴故に子供からナメられているケースもある。

余談だが、このタイプの教師のクラスではいじめの発生率も高いらしい。
しかしながら実際には人が集まればどこでも派閥が出来るのと同様、いじめも普遍的に発生するため、
相談や報告しやすさによる発見率の違いが大きい面もあるだろう。





川村茂雄はこのように二つのタイプに分類しているが、共通して言えるのは集団の形成力不足である。

管理的にもならず過剰にフレンドリーにもならずのバランスの良い指導が大切だと言える。
それと同時に、生徒が自己確立可能なように指導するのも重要だろう。
河村茂雄は、自己確立の為に教師自身が問題に気が付くように誘導する質問などの言葉がけを重視する様に呼びかけている。


【予防策】



学級崩壊を防ぐにはどうしたら良いのか?…というのは、世界中の教師・教授の議論の対象となっている。

日々教師・あるいは教師を目指す者は学級崩壊の防止策を学ぶこととなる。

本項目ではいくつかの教職向けの文献から予防策として掲載されている物を参考に記載したので、ぜひ考える機会にしてほしい。
学校に限らず、地域の集まりなどで小さな子供の集団を扱うにあたっても参考になるはずである。

子供と大人の関係性の転換

上述した管理的タイプ教師は、教師の主観による価値判断で生徒の管理を図ろうとしがちである。

このような教師個人の価値判断による生徒の管理は避けることが求められる。
生徒一人一人の特徴を把握し、教師にはそれに応じた多元的な価値観を持つことが必要とされる。


授業の転換

そもそも授業が面白ければ学級崩壊は起きにくいはず。

先生は教育のプロなので、授業実践を磨いていく必要性がある。
授業時間数も前半と後半に分けることで生徒にメリハリを付けさせたりと、生徒を集中させる工夫をする。

チーム・ティーチングを活用し、学級に複数の教員の視点を設置して生徒に目が届くようにもする。


一人担任制の廃止

小学校でも中学校のように教師が各自の専門科目を担当する教科担任制の成立を推す意見もある。

専門科目用の教師を設置すれば、嫌でも教師が複数人学級に関係を持つこととなる。
これで教師が一人で学級における悩みを抱えずに、複数人で互いに支えあう関係の構築が想定できる。

ただし、その分個々の教師が目を配るべき範囲は非常に広くなり、関係は希薄になる。
責任の所在が不明確になり、生徒側も誰に相談すればいいか分からなくなると言った事態にもつながる。
教師を増やして副担任制を設けられるならば問題は軽減できるのだが、そんな予算がないのだ・・・。

低学年と高学年の違い

小学校においては、低学年と高学年の生徒の違いを理解する必要がある。

小学校低学年は幼稚園などから入学したばかりの子供である。場合によっては幼稚園や保育園にも行っていないこともあり、集団生活の文化を完全に理解できていないことも珍しくない。
それが前述した「小1プロブレム」を引き起こす理由にもなっている。

この場合は、基本的には生活指導で学習の習慣や規範の取得をさせるだろう。
それはもちろんだが、そこに授業などで保育園や幼稚園における学びの手段をアレンジさせ、低学年でも何か違和感を感じずに取り組みをさせる。
子供同士の作業を多くすることで、幼稚園などの感覚とのギャップを軽減できるかもしれない。

高学年は、教師の管理体制などへの反逆として学級崩壊を招きやすい(=そして教師への集中攻撃にもなりやすい)。
そのため、生徒の自主性を基本尊重していく姿勢を見せる。
1960年代のアメリカで発展した、学級集団の形成を狙った構成的グループエンカウンターの利用も必要か。


情報共有や意識共有

情報公開や様々なイベント積極的に行っていく姿勢は大切だろう。

他教師は勿論、生徒の保護者とも連携する体制を構築する努力が考えられる。
授業参観や懇談会などのイベントを利用し、保護者や地域の住民が学級に介入しやすい環境を作る。
一方で、保護者の介入しすぎはしすぎで別の問題が起きるため、匙加減もかなり難しい。

学校も『学級崩壊は学級や個々の先生の問題』で結論を出さず、学級崩壊は学校自体の問題という意識を共有していく。
個々の先生の責任にすれば、困った先生方も問題を一人で抱え込むようになり、手の打ちようのあるものも取り返しがつかなくなってしまう。
親御さんとの関係構築をすれば困った親御さんの出現リスクもあるが、そこは学校全体で負担していく姿勢を見せることも大切だ。
生徒にも生徒主体の企画を開かせ、教師と一緒に学校の一員である自意識を形成させる。


【創作物における学級崩壊】



このWiki的には一番の注目点だが、創作物においても学級崩壊を取り扱った作品は少なくない。

基本的に学級崩壊を取り扱った創作物としては、教師や不良が主人公の作品(例:GTO(漫画))が多いか。
新任の教師が学級崩壊に対して立ち向かって生徒と向き合っていく……なんてのはよく見る展開だろう。
不良漫画なんかでは、暴力的な不良が支配していて学校が世紀末状態なのも日常茶飯事。

ある意味、小学生主人公の漫画も学級崩壊の要素があるだろう。
ケシカスくん』『ペンギンの問題』『浦安鉄筋家族』などは、授業中にギャグ展開が披露される。
展開によってはクラス及び学校を巻き込んだり、授業どころじゃなくなるのは、学級崩壊(というか授業崩壊)している……のかもしれない。
そもそも、浦安鉄筋家族では主に春巻龍先生のせいでまともに授業していない描写が多い。

学級崩壊は学校を舞台にした作品では人間ドラマを作りやすい展開なので、今後も使われていく題材だろう。






追記・修正は学級崩壊を経験してからお願いします。

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最終更新:2022年08月02日 10:27

*1 𠮟咤することによって保護者からの苦情がくることを恐れている場合もある。