ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー(映画)

登録日:2016/12/02 Fri 02:39:38
更新日:2024/03/22 Fri 22:37:15
所要時間:約 6 分で読めます





不滅の軍団“ゴールデン・アーミー”が復活!?



ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』とは、2008年に公開されたアメリカの映画。

映画版ヘルボーイの第2作であるが、原作に沿った前作とは異なり、本作では完全オリジナルストーリーとなっている。
原作者であるマイク・ミニョーラは、ギレルモ・デル・トロ監督の映画版アレンジを気に入り、第1作目でフィーチャーされた映画オリジナル要素を膨らませる形で製作が進められた。
エクトプラズム人間のヨハン・クラウスなど、原作からの新キャラを登場させているのは、原作ファンへとサービスと言えるだろう。
物語はヘルボーイリズのカップルとしての変化、そしてエイブヌアラ王女の恋愛と『美女と野獣』的恋愛要素を掘り下げているのもポイントであり、独特のユーモア感も健在で前作以上の評価を得ている。



【あらすじ】

太古の昔、人間と神話の種族との間で戦争が勃発。苦境に立たされたエルフの族の王は、無敵の軍団ゴールデン・アーミーを操り、人間界に屍の山を築いていく。
だが、あまりの非道さを憂いた王は軍団を封印。軍団に指令を送る黄金の王冠を3つに分け、その1つを人間界に託して休戦協定を結んだのだった……。
そして、現代。王の息子ヌアダ王子が再び人間間に戦争を仕掛けるため、ゴールデン・アーミーの復活を企んでいた。
B.R.P.D.(超常現象捜査防衛局)で極秘任務を遂行するヘルボーイは、念動発火能力を持つ恋人リズと、水棲人間エイブら仲間と共にヌアダの行方を追う。
だがそんな中、人間界に渡っていた王冠の一部をヌアダが強奪。ヘルボーイたちは、残る1つのパーツを持つヌアダの妹ヌアラ王女に接触し、人類の存亡を賭けた壮絶な戦いに挑む!



【登場人物】

■B.R.P.D.

  • ヘルボーイ
演:ロン・パールマン/吹替:谷口節

地獄生まれのヒーロー。ニックネームはレッド。
本作では恋仲のリズとB.R.P.D.本部で半同棲生活を送っているが、ズボラな自己中ぶりが災いしてケンカが絶えない。
目立ちたがり屋な性格は相変わらずであり、組織の方針もお構いなしに人目につくような公私混同を平気でやってのけ、序盤での任務のアクシデントで人前に姿をさらしてしまった際には嬉しそうな様子でマスコミの前に現れていた。
もっとも、当の民衆からは色眼鏡で見られており、中盤で怪物から街を救ったシーンでは助けた民衆からバケモノと罵られたり石を投げられたりと、ある意味ヒーローが避けて通れない現実を突きつけられてしまう。これには流石のヘルボーイも酷く落ち込んで苦悩していた。
本編後半ではヌアダ王子との戦闘で瀕死の重傷を負う事に……

◇サマリタン
ヘルボーイの愛銃である大型拳銃。
前作では弾がほとんど当たらないほど射撃が下手だったが、本作では射撃の腕が嘘のように上達しているおかげで普通に役に立っている。

◇ビッグ・ベイビー
本作で初登場した6連リボルバー式ハンドキャノン。
サマリタン以上にビッグサイズでとてもじゃないが人間には扱えない代物だが、ヘルボーイは普通に片手で撃っていた。
装弾数が6発で1トリガーにつき2発同時に発射するため、実質3発しか撃てない。ぶっちゃけグレネード版ブルーローズ


  • リズ・シャーマン
演:セルマ・ブレア/吹替:本田貴子

念動発火能力者であるヒロイン。
以前は己の能力のせいで子供時代に起きた不幸な出来事がトラウマになっていたが、今はその能力を受け入れてB.R.P.D.に勤務している。
序盤にて、痴話喧嘩でヘルボーイを部屋の扉ごと爆炎で吹き飛ばすというインパクトのある登場をした。これはぶっちゃけヘルボーイが悪い。
その一方では、街を救ったヘルボーイを迫害した身勝手な民衆に激怒して文字通り怒りの炎をメラメラと燃やしたり、組織の命令に背いてでもヘルボーイを死から救おうとしたりする等、何だかんだでヘルボーイを一番愛している。
ちなみに本作ラストではヘルボーイとの間に双子を妊娠している事が明らかとなった。


  • エイブ・サピエン
演:ダグ・ジョーンズ/吹替:佐々木睦

ヘルボーイの相棒である水棲人間。ニックネームはブルー。
熱血漢のヘルボーイとは反対の冷静ぶりは相変わらずであるが、本作ではヌアラ王女と出会って恋に落ちてしまう。
中盤でヘルボーイと一緒に酔いつぶれてバリー・マニロウの曲を熱唱するシーンは必見である。



  • ヨハン・クラウス
演:ジョン・アレクサンダー(声:セス・マクファーレン)/吹替:江原正士

ヘルボーイ達の上官としてB.R.P.D.にやってきた新メンバー。
かつては霊媒だったが、幽体離脱中に肉体を失って半物質エクトプラズムのみの存在となり、現在は半物質を封じ込める気密スーツを着用している。
有事にはスーツからエクトプラズムを放出して無機物や有機物、死者に乗り移ってそれらを操ることができる。
優等生タイプで合理的・理論的な行動に重きを置くため、スタンドプレーに走りB.R.P.D.に迷惑をかけるヘルボーイをよく思っておらず、ヘルボーイの方も口うるさいヨハンを毛嫌いする等、お互いに相性が悪い。
その人柄故に、ヘルボーイを厄介がっているマニングにとっては数少ない味方と言える。


  • トム・マニング
演:ジェフリー・タンバー/吹替:岩崎ひろし

FBI局長。ある意味本作一番の被害者
前作ではヘルボーイを露骨に嫌っていたが、本作では一転して態度を軟化している。
一見すると、関係が良好になったように見えるが、実際はヘルボーイに対して以前のように口うるさく文句も言えずに彼を丁重に接しなければならない立場を強いられている。
極秘事項となっていたB.P.R.D.とヘルボーイの存在は今や民間人にも気づかれ始め、 証拠隠滅とマスコミ対策に奔走している現状に加え、好き勝手に行動するヘルボーイに振り回される等、日頃からストレスマッハな日々が続いている。
そのせいか、胃薬を常時持ち歩いている。


  • トレヴァー・ブルーム・ブルッテンホルム教授
演:ジョン・ハート/吹替:山野史人

B.P.R.D.の創設者であり、ヘルボーイの育ての親。
回想場面で少年時代のヘルボーイに本を読み聞かせていた。
前作で死亡したため、現在は故人であるが、死後もヘルボーイにとって心の拠りどころになっている。


■ベツムーラ王国

  • ヌアダ王子
演:ルーク・ゴス/吹替:家中宏

エルフ族の王子。
色白のイケメンでアクロバティックなアクションを披露する武闘派。
プライドが高く自分達の種族が世界を支配するべきだと考えており、エルフ族復興のためなら肉親を手にかけることも厭わない残酷な革命家である。
父・バロルが交わした人間との休戦協定を破り、ゴールデン・アーミーを甦らせ、自らの王国の設立と自由の返還を要求した。

◇銀の槍(シルバーランス)
ヌアダ王子の武器である伸縮自在の魔力の槍。
刃先は折れてもすぐに再生でき、更に折れた刃先が一度肉体に突き刺ささると持ち主以外では抜くことができず、少しでも触ろうとすれば刃先が内部に向かって少しずつ伸びて傷つける等、かなり合理的かつ厄介な機能を持っており、戦闘で槍を刺した直後にわざと刃を折って相手の体内に埋め込むという戦法で追い打ちをかける事もできる。
本編にて、槍の破片を胸に刺されたヘルボーイは生死をさまよう羽目に……。


  • ヌアラ王女
演:アンナ・ウォルトン/吹替:佐古真弓
エルフ族の王女。

ヌアダ王子の双子の妹。
性格は兄と異なる穏健派であり、邪悪な兄の陽に対する慈悲深い陰の存在である。
序盤で父王からゴールデン・アーミーを甦らせるために必要な鍵のひとつを預かって逃亡していたところ、偶然エイブに出会う。
双子であるためか兄とは不思議な絆で結ばれていて、片方が傷つくともう一方も傷つく体質を持っている。
……そのせいでヘルボーイ達はヌアダ王子にうかつに手を出せずに苦戦する事になる。


  • バロル王
演:ロイ・ドートリス

エルフ族の王。
かつて人間との戦いでゴブリン族にゴールデン・アーミーを作らせたが、その不眠不休の軍隊の破壊力を恐れて封印し、人間との間に休戦協定を結ぶ。
現在もこの協定を守っているが、この協定を巡って息子と意見が対立。そして……


■クリーチャー

  • ゴールデン・アーミー
今は地下で休止する世界最強の軍団。
その名の通り、黄金のボディが特徴の機械兵であり、エルフ族の王バロルの依頼によりゴブリン族が数十体製造したのだが、危険性に気づいたバロル王により封印された。
武器は腕に内蔵したブレードのみであるが、圧倒的な物量に加え、たとえバラバラに壊されても瞬時に修復する自己修理機能を備えているため、事実上無敵と言える。
……どこぞの鉄社長も真っ青なオーバーテクノロジーである。


  • ウィンク
演:ブライアン・スティール

ヌアダ王子の部下であるトロール族の巨漢。
大きな身体と超人的な怪力を持つが、頭の回転はあまり速くない。
右腕が機械の義手となっており、戦闘時には有線式のロケットパンチとして射出できる。


  • トゥース・フェアリー
一見すると可愛らしい妖精のような姿をしているが、獲物が近づくと集団で襲いかかって内臓から骨までを食い尽くす獰猛さを持つ。こんな歯の妖精は嫌だ。
最期はリズの炎でまとめて消し炭にされた。


  • エレメンタル
エルフ族が森の再生のために使ったと言われる存在。
元は小さな種子だが、水分を補給すると22メートルもの巨大生物になる。
ヌアダ王子が所有していた最後の一粒が解放されてニューヨークの街を破壊したが、ヘルボーイのビッグ・ベイビーで倒された。
劇中に登場した個体は前述の通り、最後の一粒……つまり最後の生き残りであり、ヘルボーイに倒された事で(ヘルボーイに非はないとはいえ)エレメンタルという種が絶滅する事となった。


  • 鍛冶職人のゴブリン
演:ジョン・アレクサンダー/吹替:不明

ゴールデン・アーミー製造に関与したゴブリン族の1人。光るものの収集が趣味。
劇中では描写されていないが、ゴールデン・アーミーを製造した時の事故で下半身を失っており、現在は台車のような歩行器に乗っている。
中盤でヘルボーイをエルフの国に案内していた。


  • ジャイアント・ドアウェイ
石の巨人の形をしたエルフ国への入り口。
普段は巨石に擬態して入り口を外敵から守っている。ゴブリンの笛で本当の姿を現わす。


  • 死の天使
演:ダグ・ジョーンズ/吹替:不明

その名の通り、死を司る天使。
骸骨のような顔に目はなく、大きく広げられた翼に多数の不気味な目をもつその姿は、まさに死神に相応しい存在。
人々の死を予知する能力を持ち、その心は塵と砂から出来ている。
太古の昔から地下に棲み、以前からヘルボーイ達が訪れるのを待っていた模様。
ヘルボーイの身体を蝕んでいた銀の槍の破片を抜き取って彼の命を救ったが、その直前にリズに対し「将来ヘルボーイが世界を破滅に導く存在になる未来が待っていても助けたいのか(意訳)」と問いかけていた。*1



【余談】

2012年にロン・パールマンがヘルボーイに憧れる難病の少年の願いに応えて、映画そのままの特殊メイクでお見舞いに訪れており、そのニュースを知ったデル・トロ監督はファンのために一度は3作目の製作を決意していたとの事。

本作が公開された当初は続編の構想があり、3作目で完結する予定であった。
ヘルボーイ役のロン・パールマンは3作目の製作を強く望んでいたが、デル・トロ監督の多忙に加え、資金の調達やDVDの売上等の問題で製作が困難な状況であったため、実現の目処が立たなかった。

ところが、2017年1月19日にデル・トロ監督が突然のTwitterアンケートを実施。
『ヘルボーイ3』に対して「Yes(観たい)」か「Hell,Yes(観たいに決まってる)」の2つの選択肢を提示し、24時間以内に10万票を獲得したら、パールマンと原作者マイク・ミニョーラと話し合うことを約束するとツイートした。
その結果、24時間で10万票を大きく超える13万2938票が投じられ、うち68%が「Hell,Yes(観たいに決まってる)」に投票した。
これを受けて、デル・トロ監督は再び3作目の製作を検討するとの事。今後については現時点では不明であるものの、実現に一歩進み始めたと言える。

……が、それからほどなく2017年2月22日にデル・トロ監督が「100%無理となった」とファンへ向けてTwitterで断言。
アンケートの後に3作目の製作を目指して関係者全員と話し合っていたが、ファンの期待が再び高まった矢先に突然の白紙という結果となってしまった。
どこぞのアメコミ映画のごとく全2作で重要な伏線を残したまま物語は終わりを迎えることになったのだ。





追記・修正は、幻の3作目を望んでからお願いします。

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最終更新:2024年03月22日 22:37

*1 無論、リズは死の天使の忠告を受け入れる覚悟でヘルボーイの助命を選択した。