SPC-1764

登録日:2016/11/29(金) 23:18:45
更新日:2023/12/28 Thu 20:30:11
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SPC-1764とは、統一王国の逸脱物品調査部門、略称DARDが管轄する超常現象事例の一つである。
脅威格付け第9段階逸脱 (空間/時間)


概要

SPC-1764は直径約10センチメートル、厚さ約1ミリメートルの薄い金属製の円盤である。
分析の結果、これは全体の99%がチタンで構成されていることがわかっている。

その他にプラチナ、鉄、カドミウムが微量ながら含まれている。両面共に非常に光沢のある加工が施されており、その表面における光の反射率は実に99%に達する。ここまで来るとほとんど完全反射である。


取扱いとしては、低温の懸濁コロイドで包み、液体窒素で満たした浴槽の中で保管するよう指定されている。
SPC-1764の温度が-210標準温度を超えた場合、200標準距離尺度以内にいる全ての人員に対し、視覚的・音声的警告が発せられる。
この警告はサイト対応チームが安全な操作手続きを復旧できたと考えられる状態になるまで解除されず、訓練を受けていない人員は、いかなる場合においても管理区域への立ち入りに第2サークル以上の許可が要求される。

コイツの性質に関する更なる情報については、漏洩の危険を考慮しレベル9秘義の訓練を受けた人員のみに限られている。その情報だが、既存の超常現象事例ファイルのそれとはまったく異なるものであり、SPC-1764の特異性が伺える。


追加情報

このSPC-1764についてだが、これについて興味深い事実が存在する。というのはこの円盤、「Special Containment Procedures Foundation」なる団体が保有する物体であるらしいのだ。
この団体についての詳細は不明だが、どうやら我々の知るDARDとほぼ同様の組織らしく、活動内容も酷似している。

問題なのはSPC-1764についての取り扱い手順を記した概要のパートが、自動的にDARDで使用されているテンプレートとは異なった形式に書き換えられてしまうことである。
この形式はどうやら件の団体で使用されている方式らしい。
理論部による検証では、この現象は、件の団体が存在する「別次元」と、DARDの存在する「この次元」が接触し、SPC-1764を起点に局地的な情報異常が起きているためだと結論付けている。

これは操作手続きの概要を記したパートのみに限られ、その他の補足レポートや分類に関する記述には異常が発生しない。しかし、操作手続きの概要パートだけは、何度書き直しても1日以内に「別次元」のテンプレートに置き換えられてしまうのだ。
しかもこれがどんな方法を、何度用いても同じ結果になるため、ついにDARDはこの記述の書き直しを放棄してしまった。
統一王国の直属機関がそんなんでいいのか

なお、この情報異常はこれ自体が第10段階逸脱(空間/時間/多次元)超常現象として分類されており、恐らく向こう側では操作手続きの概要部分がDARD形式に置き換えられていると考えられる。
興味深いのは、向こう側に存在する件の団体は「確保、収容、保護」という概念を用いていることだ。

ここから読み取れるのは、件の団体がDARDのような超常現象の解析と調査、研究を行うのではなく、収容、かつ安全に保管するための存在であり、かつそれらの現象や物品、つまりは超常現象が周知のものでないことである。
恐らく、テラー・アインシュタインイベントに対して異なる解決策が実行されたのだろう、と推測できる。

ただし、興味深いとばかりも言っていられない。
というのはこの「団体」は、向こう側でのこの物品に対する分類として「k-t-r」というカテゴリを用いている。
つまり彼らは、カバラーの単語が持つパワーを詩的文脈により、物品の現実改変能を示すために用いることに危険性を感じていないのだ。
これはとりもなおさず、統一理論があちらの次元では解明されていない、またはUTへの調査がジェリコの情報理論=JITに到達していないことを示してもいる。

あちらの次元でJITが発見されていないことは、超常現象事例ファイルが極めて頻繁に、オブジェクトを事例ファイルナンバーで言及していることからも読み取ることができる。
このことは、DARDの用いる応用命名法は、少なくともあちらの次元では完全な理解に至っていないという事実の表れでもある。
それでも、事例ファイルには多くの情報検閲及び編集の形跡が見られ、少なくとも情報戦争に関する基本的な事項は知られているらしい。


これがまずいのかと聞かれれば、非常にまずい、というか恐ろしい示唆である。
変化した文章は、我々の次元に関する「別次元」の唯心論者に相当する人物による考察で締めくくられている。
この考察には、DARD及び統一王国の性質に関する警告的な記述が含まれていたのだ。

どういうことかというと、問題の物品=SPC-1764が2つの次元間の最初の不和、つまり単なる情報漏洩に留まらず、物理的な侵入のきっかけを意味するかもしれないという、危険なほど軍事主義的な結論に至っているのだ。

DARDは別次元の組織が自分たちの次元に侵入を始めた際にすぐ対応できるよう、秘儀戦闘のスペシャリストが即応体制を整えるべきだと結論。「Th-m—l」レベルの秘儀――すなわち"焼け焦げた地球"政策――の実行を阻止するべく動き出した。
何が起きようと、DARDが統一者の下で任務を遂行することに変わりはない。が、不確定性操作の秘儀がかの団体の在る野蛮な社会の手に落ちることは絶対に防がなければならないのだ。












補遺

項目名を見て「なんのこっちゃ?」と一瞬思った諸兄も多いだろう。
SCP」ではなく「SPC」。財団のパチモンであるサメ殴ってるあいつらを思い出した人も多いのではなかろうか。*1

しかし、上述のわけわかめな書類の「追加情報」の部分と、これが財団のデータベースに登録されているSCiPについての記録であることを踏まえると、一つの事実がわかる。


つまり、このチタンの円盤「SCP-1764」に関する特別収容プロトコルと概要についての記述が、そっくりそのまんま別次元の財団に相当する団体のそれと入れ替わってしまっているのである。
その団体って何? と聞かれれば上に書いてある通り、DARD(the Deviant Artifacts Research Division)である。

入れ替わったこの記述から読み取るに、DARD世界では財団世界や我々の現実と異なり、魔法・魔術の類が常識的に使われ、社会に浸透しているらしい。加えてどうやら宗教的な価値観で統一された世界国家らしく、本家ページの最後の部分には、

このレポートは上級書記官オリバーにより統一王国歴一〇一三年第十ルナリウム二十九の日に封ぜられました。
統一者に賛美を。我と我が一万世代の子たちに統一者の御加護があらんことを。真実に対する虚偽と怠慢には追放を。

と記されている。

さて、かの団体が用いる「SPC」とは何かと言えば、「Supernatural Phenomenon Casefile」つまりは「超常現象事例」の略称である。繰り返すがサメを殴ることではない。
財団のレポートと入れ替わったDARDの報告書から見ると、彼らの任務は財団のような確保・収容・保護=外界からのSCiPの隠匿ではなく、超常現象に対する研究と解析であるらしい。
向こうの世界ではどうやら超常現象と言っても、それらが「原因不明の何か」ではなく「現実に、確かに起きている、我々が認識すべき事象と現象」として浸透しているようだ。
しかも物理法則に関する認識からしてこちらとは違うらしい。

まあ、それだけなら大したことではない。
のだが、問題はこのSCP-1764、財団におけるオブジェクトクラス認定が「Keter」にカテゴライズされている。
ほっとくと世界を滅ぼしかねない、神の試練とも言うべき、あるいは単純に「どうやって収容するんだ!」となるオブジェクトクラスだ。

では財団世界でのこのオブジェクトはどんなものなのか?
率直に言おう、不明である。
概要の部分が丸ごとDARD世界と入れ替わっているため、このオブジェクトにどんな特性があり、財団がどんな経緯でこれを保有しているのかはさっぱりわからないのだ。

とはいえ、DARDの報告書から見ると財団でのそれもほとんど同じ代物らしく、特別収容プロトコルも向こう側の操作手続きの概要に準じると思われる。
ならば、財団はなぜこのオブジェクトをKeter認定したのか?


それについても詳細に語ることは無理だが、報告書に記されているDARD上層部の動向から財団の反応を読み取ることが出来る。
DARD世界は前述したとおり、超常現象と肩を並べ、統一された価値観を持ち、魔術的要素を常識として取り込み扱っている、そしておそらくは単純な科学技術についても財団世界より上だと思われる。

このオブジェクトの何が問題なのか、という肝心の部分だが、それは「報告書がこの円盤を起点に、二つの次元で入れ替わっている」という混乱型の情報異常である(ちなみに明言されていないが、財団のスタンスから行けばこの時点で報告書自体がSCP指定である)。
この時点で外部への情報漏えいだが、このままSCP-1764を放置しておけばそこから次元の穴が開いて二つの世界が繋がりかねない。その先に待っているのは、全てにおいてこちらを上回っている別世界。

となれば、財団が何を危惧するのかは想像がつく。そう、世界終焉シナリオである。
そう来れば、財団が打つ手は?
答えは簡単、ThaumielクラスのSCiPを用いた対処。しかもDARDが財団の報告書から読み取ったところを見れば、恐らくDARD世界を破壊する試みであることがわかる。

DARD世界としてもそんな連中に滅ぼされてはたまらない、ということで、いざ財団世界と繋がったら迎え撃ってやろうと準備を整えている、ということのようだ。

ちなみにDARDの報告書でオブジェクトクラスが伏字になっているのは、「Keter」「Thaumiel」という単語は向こうの世界ではそれ自体がパワーワード(ファンタジー系の創作物で時々見る「術式」とか「魔術語」とかそういうもの)であり、文書に記すだけで魔術的な力を発揮してしまう、という理由のようだ。

つうか、他にも確認されているだけで5つもの世界に通じるSCP-1437や、入れ子構造で死を運び続けるSCP-2935など、財団世界には異世界と接触するオブジェクトが大量に存在している上、わかる限りではそのほとんどすべてがロクなもんじゃね―――!!! という状況である。



財団の明日はどっちだ。



追記・修正は統一王国の法に則ってお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SPC-1764 - DARD Information Restrictions Apply
by DrClef
http://www.scp-wiki.net/scp-1764
http://ja.scp-wiki.net/scp-1764(翻訳)

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最終更新:2023年12月28日 20:30

*1 全くの余談だが2016年11月に本当にサメを殴って捕まった男が現れた。マジか。