野崎亮(龍が如く)

登録日:2016/11/28 (月) 01:02:35
更新日:2024/02/24 Sat 17:04:37
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運命は決まっている。仕方のないことなんだ



野崎亮とは、「クロヒョウ2 龍が如く 阿修羅編」に登場するキャラクターである。

CV:要潤


表向き(と言うのも組織の性質上おかしいが、)地下格闘技集団であり、実態は悪質な半グレの犯罪者組織である阿修羅。
野崎はそこで整体師助手として勤めている。
顔の両目から鼻の上方にかけて、かつて事故か何かに遭ったことを思わせる大きな傷痕があり、その見た目から推察出来る通り彼は盲目である。

鍼治療の腕前は超一流だが、それ以上にある筋では有名な占い師であり、その際立った的中率から「予言者」と絶賛されている。
財界人や政治家は大枚を叩き、頭を地面に擦り付けて、自分に確実に利益を齎してくれる彼の「予言」を賜ろうとしている。
ただ、その「幸運を齎す予言」とは大抵
「大枚はたいて占って貰ったら、その占いの通り『商売敵が突然消息不明になって大儲け出来た』」
等、きな臭いものが非常に多い。













重度のネタバレにつき閲覧注意


















この僕を止められるものなら 止めてみてくれ…

阿修羅を完全に支配するために 必死に特訓して 僕は絶対的な力を手に入れたんだ!


野崎は、阿修羅の本当の首魁である。

連帯感も人情も無い阿修羅に属するチンピラ達が、その気質に反して高い統率性を持つ理由は、中間管理職の秋田靖人の統率力に因るところも大きい。
しかし最大の要因は、阿修羅による犯罪行為の全てにおいて、一人一人の行動に至るまで野崎が綿密に計画書を練り上げているからである。
彼はこの犯罪計画書を便宜上「予言の書」と呼ばせており、下っ端にもなるとその実態を理解していないようだが、犯行現場で指揮を担当する金城等の幹部格は彼の「予言」に全幅の信頼を寄せている。
……と言うより、構成員の殆どが野崎に屈服させられた奴隷である。

当然ながら、予言の力なぞ一切持っていない。
彼が持つ真の特技は、鍼治療術と並んで卓越した洗脳術、そして阿修羅を総べるために会得した中国拳法である。


【本編前の経緯】

幼い頃はあけぼの園という児童養護施設で育ち、常に本を読んでいる子供だった。
施設時代から、市川静香と言う少女を除いて他の児童とはほぼ交流も無く、その後大阪の親戚に引き取られるも上手く行かず、すぐに家出。
やがて静香と落ち合って恋人になり、二人でひっそりと寄り添うように生きていた。

何とか生きていく為に、元々肝臓が弱い静香でさえ水商売で稼ごうとしたり。
二人だけで必死にもがくような生活を続けていたが、無理が祟って静香は肝臓癌を患ってしまう。
野崎にとって人生の全てである静香を救う為に、彼は犯罪行為に手を染めてまで必死に手術費を捻出した。

何とか手術を受ける目途が立って事なきを得たと思った矢先、よりによって警察官である鶴見という男が、
「同じく鶴見の息子が肝臓を患ったために、医者に賄賂を払って、生体肝移植手術の順番を無理矢理改変。先に移植を受けられる筈だった患者を差し置いて、息子の手術を優先させた」
この不正行為によって全てが狂わされた。
そうして、金に物を言わせた権力者の違法行為の所為で手術が間に合わなかった静香は、結局帰らぬ人となってしまった。
しかも、それで救われた鶴見の息子は、親の金で違法カジノに入り浸り、人に話せないような犯罪行為を遊びで繰り返す人間の屑であった。

金も権力も無いというだけの理由で、真面目に生きていた静香が、不正行為によって当然のように死に追いやられた。
不正を働いた輩と静香の代わりに生き延びた屑には、法的な罰すら下さない。
世間の無常と、自分のような社会的弱者の末路を目の当たりにした絶望した野崎は、ただ静香の復讐を果たすと誓った。
この体験以降、野崎は、他人を欺き陥れ闘争に巻き込む怪物になる決意を固めた。



野崎の毒牙に最初にかかったのは、阿修羅の共同経営者と言える秋田である。
冤罪で逮捕されて窮地に立たされていた秋田を、偽の目撃証言によって救ったのが初コンタクトである。
彼が釈放された直後に野崎は会話を交わしたが、その内容は以下の通り。

「自分は偽証によって秋田を救ったが、正しいことを成すためには、犯罪行為も必要になる」
「社会のはみ出し者はどんな手を使っても力を手に入れなければならない。でなければ一生弱者だ」
「孤独であり何も持たないということは武器になる」
「腕力にしか自信が無いと言うが、自分はそれを活かす術を知っている。自分の言うことを聞いてくれれば悪いようにしない」

一見すると孤独な者同士が互いを鼓舞しているようにも見えるが、無論そうではない。

彼が語る経緯が本当かは怪しい*1が、野崎は
「秋田の仲間達が心配してビラ配りをしていて、それで強盗事件を知った。自分は秋田達が事件の時間帯は練習しているのを見かけていて、秋田が無実なのも知っているから助けた」
と秋田に告げていた。
しかし、秋田を救うために野崎が実行したのは「金で偽証してくれる人間を雇う」という行為だった。
これについて「自分も秋田と同様に世間から信用されない弱者に過ぎない」という共感を高めると同時に、
「秋田を救った所為で自分まで犯罪者になってしまった」といわんばかりで、秋田に罪悪感を植え付けるようなニュアンスも込めて語りかけてもいる。
更に、上記の演説の通り、「秋田には信頼しあう仲間が既に居り『実際ビラ配りは功を奏した』」にもかかわらず、
「秋田(のような人間)は所詮無力かつ孤独である」「真っ当な行為に意味は無い」とも吹き込んでいる。
なかなかに巧みかつ悪質な意識誘導の意図が窺える。


こうして野崎は、秋田が抱え込む社会への敵愾心や失望を利用して、自分こそが真の理解者であり秋田を苦境から救える相棒だと言わんばかりに誘導していった。
まず手始めに秋田と絆で結ばれていた仲間達を切り離して、彼を孤立させた。
その後も万事が全て同じ調子でコトを運んだ。
野崎が計画した犯罪の片棒を秋田に担がせつつ、あくまでも秋田を阿修羅の首魁として表舞台に立たせ続けた。
そうして野崎は目論見通りに、組織と権力を保つ為に野崎に隷属せざるを得ない、立派で便利な犯罪集団の頭へと秋田を仕立て上げてしまった。

実はこの秋田という男が当時交際していた恋人は、静香が水商売の先輩であり親友として慕っていた女性だった。
静香が入院した後も見舞いによく着て、霊安室ではその死を悼んで泣いてくれた彼女には、野崎も素直に感謝しており、彼と静香にとって恩人とさえ言える。
その恩人の恋人である秋田を偽証してまで助けた所で留めるか、復讐のために身内に率いれるとしても『自分は秋田の恋人の亡くなった親友の恋人であり、自分の恋人の死因のように社会的弱者として転げ落ちていくのを許せず偽証してまで救った』と秋田に語っていたならば、或いは美談になったかも知れない*2

だが実際には、野崎はそんな男を凶悪犯罪者にまで故意に堕落させており、彼女は裏に野崎が居るとは知らないまま、
「恋人の秋田が、のし上がる為なら犯罪行為も重ねる人間へと変わってしまったことで、愛想を尽かして彼と破局した」
のだから、美談どころかホラーである。

後述の復讐の手口にしても残酷極まり無いが、この時の野崎は既に、恩人であろうが歯牙にもかけない人間になり果てていた*3




【本編中の活動】

このように一切の手段を選ばず、慈悲も無い行動を断行し続けた野崎は、何時しか特に関西方面において大きな影響力を持つ存在となっていた。

かつて何の価値も無い孤児として自分を見下してきた権力者ですら、確実に利益を齎す「予言」を授けてくれる野崎に縋りつき土下座も厭わない。
そんな環境で優越感や万能感に浸るうち、何時しか野崎は権力に溺れていき、「静香の仇討ち」という大願すら野崎の中で重きを占めなくなっていた。

鶴見が神室町ベガス実現の為に協力を阿修羅に打診してきた時ですら、静香の仇討ちを捨てて鶴見と二人三脚で権力の階段を昇って行こうか。そんな選択を本気で考える程に、あらゆる面で堕落し切ってしまった。



そんな折、野崎は右京龍也に出会った。

ボクシング世界王者として将来近いうちに栄光を掴めるであろう道を捨てて、危険を顧みず、自分を更生させたドラゴンヒートを守る為だけに戦う男。
権威に屈服せず信念を貫かんとするその生き様を拳一つで体現してみせる龍也を、野崎は屈服させずにいられなかった。


野崎は様々な手を使って、下記の「預言」を龍也に告げて、それらを実現させようとした。

まず、当時龍也の後輩である信司が阿修羅八部衆の沖田の手に掛かって重傷を負い、リハビリが難航していたのだが、そんな彼の為だけに簡易的な鍼療所を用意。
柿崎に行ったのと同じような処置を信司に対して施して信頼を得つつ、龍也への敵愾心を煽る虚言を吹き込み続けて洗脳。
信司が一発でも殴られれば後遺症で死ぬ状態のままナイフを与えて龍也に嗾ける準備を整えて、
「龍也が正当防衛せざるを得ない状況で、自分の仲間を自ら殴り殺す」と予言。

龍也と品原の試合と被るように金城に冴子誘拐を指示し、龍也の代わりに冴子救出を図った彼の仲間が金城に射殺される状況を造り出し、
「龍也が戦い続ける所為で周りが不幸になる」と予言。

眠らない街神室町への保安隊導入及び保安隊導入によって、短期間とはいえ神室町を機能停止に追い込み、
「龍也は帰る場所を失う」と予言。

そして、(一発目だけは空砲で後は全て実弾の)拳銃を
「阿修羅が売り捌いた拳銃に見せかけられるから、右京を殺しても足がつかない」
と称して鶴見に携帯させた上で龍也と対峙させるように誘導。
龍也が撃たれて怯んだ隙に鶴見が二発目以降を連射してそのまま射殺するか、発砲されて怯まず逆上した龍也が二発目を撃たれるより早く踊りかかりそのまま殴り殺すか。
どちらに転んでも問題無いようにお膳立てをして、「龍也が殺人者になって幕を下ろす」と予言。

鶴見と共に神室町を自分が牛耳る。
欲望塗れの神室町べガス計画を進行させる傍ら、こうした様々な障害を用意して、真っ直ぐに戦い続ける龍也の心を折ろうと画策した。


しかし、龍也は「予言」を全て切り抜けてみせた。
信司にタコ殴りにされようが刺されようが、信司が落ち着くまで受け止めて宥めてのけた。
誠が死んでも、生まれ故郷の一斉摘発で神室町から灯りが消えようとも、立ち止まることなく秋田率いる阿修羅八部衆すら退けてみせた。
あまつさえ、誠を侮辱する鶴見を撲殺出来る状況でも、自制して鶴見を無力化するだけで済ませてしまった。

自分が用意したあらゆる障害を乗り越えて、初志貫徹してみせた龍也。
彼の在り様を目の当たりにした野崎は、今の自分の生き方が間違っていることや、抗えない運命など無いということを気づかされ、同時に初心を思い出して鶴見への復讐心が再燃。


鶴見と龍也がドラゴンヒートの土地の権利書を巡り行うことになった交渉の場を利用して復讐を敢行することにした。
その内容は、龍也が殺さずに済ませた鶴見に追い打ちをかけるようにして、鶴見の息子に拳銃を持たせて、父親である鶴見の射殺を強要するというもの*4
自身の息子に殺される恐怖を味わわせて愉しむ残酷な復讐で鶴見を追い詰めたが、それすらも龍也に阻止されてしまった。

一貫して自分の思い通りにならず、仇の鶴見すら庇う真っ直ぐさを見せつける龍也に対して、
変わり果ててしまった自分に対するやり場の無い憤りをぶつけるようにして、野崎は戦いを挑んだ。
しかし、野崎自身も戦う前から最早龍也に敵わないと薄々察しており、激闘を繰り広げるも、予想通り敗北を喫した。

そんな二人を狙い、精神的ショックから立ち直った鶴見は銃で射殺を試みた。
しかし、野崎は龍也を凶弾から庇いつつ、鶴見に対してこの復讐が二段構えだったことを告げた。
野崎は予めミレニアムタワ―屋上にカメラを密かに増設しており、確実に鶴見を社会的に抹殺出来るように周到に準備を重ねていた。
交渉が決裂して鶴見の護衛と龍也が殴り合う様から、鶴見が龍也を射殺し損ねて正当防衛で殴られる様子まで。
自分の凶行が全て、カメラを通してネットの動画サイトで生中継されてしまった。
ネットの反応を見て現実を認識し、もう覆しようがないと気付いた鶴見は、絶望の余り屋上から飛び降りて自殺。

野崎の復讐はあっさりと完遂されたが、結局野崎には何も残らなかった。

そんなやりきれなさを抱えきれないのか、堕落し切っていた自分に野望を捨てさせ、
今更人間性を呼び起こした龍也に対して、自分の心情を吐露しながら憤りをぶつけつつ拳銃を向けた。

しかし、そんな野崎に対してすら、龍也は理解を示した。
ドラゴンヒートの為に阿修羅と闘う前の龍也は、自分の力量なら達成し易く誰からも称賛される栄光の道へと、妥協されるように流されかけていた。
かつての自分と野崎を重ねて、
「野崎の人生を変えたことに対する責任として撃たれてやる代わりに、龍也を殺した後の自分の人生に腹を括れ」
と言い放ってのけた。

堕落しきった自分すら真っ直ぐ向き合い受け入れる龍也に対して、野崎は絶句して自身の精神的な完敗を悟った。
自分があらゆる意味で間違っており、最早後戻りも更生も叶わない。
強く思い知った野崎は、手にしていた拳銃で自殺。
一連の事件の幕を下ろした。


全てが片付いた後、龍也は意気消沈して思い悩んでいた。
結局何から何まで野崎に翻弄され、その命を救うことも出来なかった。果たして自分の行いに意味が有ったのか……。
だが、共に事件解決にあたった竹中から
「鶴見の銃から龍也を庇った野崎の改心や、人を守ろうとした行いには大いに意味がある」
と諭されたことで、拳を振り上げ決意を新たに、また歩き出したのだった。



【余談】
最近では「ただ戦いを求める戦闘狂」のようなイメージを持たれ易い阿修羅。
しかし本来は、義のある復讐に固執して闘争の権化と化した神である同時に、善行と悪行を両方成した者達が、死後に延々と妄執に囚われて争い続ける潤いと渇きに苛まれ続ける「(阿)修羅道」の主でもある、とも言われている。
野崎は、そうした意味で、まさしく阿修羅の体現者と言えるだろう。

心理学に基づく巧みな話術と共に洗脳に活用する道具でもある鍼治療の技術だが、作中では本当に邪魔になった田中を除けば、怪我人の治療自体は真面目にこなしている。
静香の看病を経験したからか、病人・怪我人に対して治療をすることへの矜持は多少なりとも持ち合わせていたのかも知れない。



分かってる。記事は追記修正出来るんだ。ちょっと忘れちゃってただけさ




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最終更新:2024年02月24日 17:04

*1 野崎の作中でのやり口からして、この恩人の強盗殺人自体、野崎が秋田を取り込む為に仕掛けた罠である可能性がある、という推測するプレイヤーも居る。

*2 また、『秋田の仲間達のビラ配りは功を奏した』と言う所を『自分達はお互いの恋人が親友同士だった』という点を絡めて人の繋がりを強調し『秋田を偽証してまで救ってくれた存在』として秋田の仲間を配下に加えることも手駒を増やすと言う点でも有効な手段でもあった

*3 右京龍也の後輩・八代誠はあけぼの園の同窓生であり、自分を唯一いじめっ子から守ってくれた人間だった。野崎の頭脳なら当然記憶していただろうが、それでも本編中において、「(右京の心を折る為に)殺して良い人間」として指名し、部下の金城に実際に殺害させている。

*4 事前に裏カジノ入り浸りをはじめとした数々の犯罪の証拠を握った上で、「刑務所に一度入れば、今のようなだらけた生活は二度と出来ない。刑務所送りを逃れたければ、自分の命令を聞け」と脅しをかけていた。