登録日:2016/11/24 Thu 23:19:00
更新日:2024/03/31 Sun 20:36:32
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SCP-596は高さ63cmのブロンズ製の彫像で、胴体は蛇だが顔は人間のように見える。
「通常のプロトコルに従って警備された標準収容房に保管」という、極めてシンプルな収容手順のSCPであり、その効果も直接接触しなければ発揮されない。
しっかり保管しておけば何の危険性もない、典型的なSafeクラスオブジェクトである。
その異常性を端的に言うと「直接触れている者の怪我や傷を治療する」。
外傷は勿論、損傷した臓器の再生や失われた血液の造血も可能。
それどころか飢餓や脱水症状も防いでくれる上、睡眠をとらなくても衰弱しない。
さながら究極生命体じみた身体になれるのである。
脱水症状による細胞外液やその水分の欠落、飢餓による血糖やケトン体の流出といった要素すらも防いでしまう(恐らくはそれらの身体要素すらも自動で再生してくれるのだろう)あたりから察するに、明言こそされていないがウイルスや細菌による傷病も回復してくれる可能性が高い。
おまけに、この手の能力にありがちな「肉体や細胞の過剰な再生・増加により身体が限界を超えてしまい崩壊する」といったデメリットもない。
このSCPの効果は触れている者を健康な肉体に回復するところまでで止まるため、身体が通常時まで回復した時点でそれ以上の再生効果は起こらないのだ。
以上のことから、SCP-596はあの万能薬(
SCP-500:あらゆる病気を治す薬。在庫僅少)に代わる有用オブジェクトと言える。
腹痛や二日酔いに苦しむ財団職員の皆さん、これからはSCP-596の使用申請を提出するようにしてくださいね!
そんな夢のようなマジックアイテムが存在するとでも思っているのかね?
確かに、上記の特異性に嘘偽りは一切ない。
「再生の像」としての効果は正にこの通りである。
……ではそろそろ、「忌まわしき」効果について説明していこう。
まず、SCP-596に触れたが最後、二度と像から離れることはできない。
怪我や不調が完治しても、触れた者(以下、被験者)は像から身体を引き剥がせないのだ。
加えて、自力で像を動かすこともできなくなる。
像を握ったまま移動することすらできなくなるため、被験者が移動するためにはゴム手袋等を装備した他の者にSCP-596を持ってもらい、それを動かしてもらうことで「それに誘導されて動く」という手順が必要になる。
ちなみに被験者の腕や指等、SCP-596との接触部分を切除して切り離した場合、切り離された瞬間に被験者は死ぬ。そしてSCP-596に残った腕なり指なりから、元の被験者と同じ人格・記憶を備えた人間が再生する。
切除したのが指一本だったとしても、像から切り離した瞬間に死ぬ。
以上のことから、事実上被験者はSCP-596に触れた瞬間からその場に拘束され、二度と自由意志では動けなくなるということだ。
この時点で既に十分えげつない気がするが、本番はここからである。
更なる特異性として、SCP-596に触れている間、被験者は極度の不快感と苦痛に晒される。
それはもう凄まじいらしく、後述の実験でこれにあてがわれた被験者は、実験開始から1ヶ月弱もの間、延々絶叫と身悶えをやめなかったそうな。なぜ絶叫が途絶えたかって?叫び過ぎて喉が潰れたから。そして治癒効果で治り次第また叫び始めている。
財団職員が色々調べたようだが結局それらの原因は一切不明。身体的にも精神的にも、これほどの苦痛を訴えるに足る兆候は見受けられなかった。
性質が悪いことに、SCP-596の治癒効果は被験者の意識が無い間は著しく妨げられる。
つまり鎮静剤等で苦痛を和らげようとすると満足に回復しない。鎮静剤が切れてからまた再生効果が発揮されていくのだ。いやがらせか。
なお、後から別の人間がこの像に直接触れた場合、元から触っていた被験者は即座に死亡し、新しい方が被験者として上記の状態に陥る。
苦しみから解放されるには、どう足掻いても死ぬしかないらしい。
さて、ここからはこのSCPの特異性を確かめるために財団が行った実験と、このSCPを活用するために行った実験の数々を、ごくごく簡潔に紹介していこうと思う。
……活用?
02/17:(年代は全て伏せられているので省略)
墓泥棒の嫌疑をかけられていた、このSCPの最初の持ち主(文字通り手に持った状態だった)がそのまま財団に身柄を移され最初の被験体に。
移送の際に打ったと思しき鎮静剤の効果が切れると、収容房の中で被験者は激しい苦痛を訴えのたうち回った。
無論、SCP-596本体は動かせないため、像を握る手首は微動だにせず身体だけを像の周りで転げ回したようだ。
02/18:
苦痛と不快感がひどすぎるせいか、職員からの質問や外部からの刺激に対して反応が鈍く、食物も摂取できないようなので被験者の衰弱死が懸念される。
03/10:
一向に衰弱の気配を見せず、睡眠もとらないため冗談抜きで1日中絶叫と身悶えを続ける被験者。担当の博士はこの時点では、「もしもこの副作用をどうにかできれば回復・延命の手段として有用なオブジェクトになるかもしれないが、そうでないなら破壊も視野に入れるべき存在だ」という旨の考えを示していた。
03/13:
遂に絶叫が途絶えたので急遽鎮静剤を打って身体検査を実施。叫びすぎて声帯がズタズタに裂けてしまったらしい。しかし鎮静剤が切れてしばらくするとまた叫び始める。裂けた声帯が治癒したためである。
この実験結果を承けて、博士はこのSCPに関する新たな展望を得たらしいが…
03/14:
治癒効果の範囲を確かめるために意図して被験者の身体を切断する。鎮静化状態でつま先を切った時は再生せず、鎮静が切れると同時に再生が始まった。意識がある状態で右足を切除した時は即座に再生が開始し、同時に複数個所を切除した場合でも一方に遅れが出ることなく同時に再生が成された。
03/15:
SCP-596を握る両手を腕から切除したところ、直ちに被験者が死亡。
像に残った腕の断面から再度被験者が再生された。
再生を続ける被験者は翌日、運動器系と神経系が回復した時点でのたうち始め、呼吸器系が機能を取り戻した途端に叫び始めた。
03/17:
鎮静化した状態で採血を実施。ある程度採血すると血圧が低下し採取不可能となったが、
鎮静が切れると同時に血圧が高まり採血を再開できた。
翌日までの24時間で
72パイント(1パイントは約500ml)を採取できたことから造血効果が確認され、博士は今後の実験のために
血液型がO型RhマイナスのDクラスの使用を要請した。
03/19:
要請が通ったらしくO型RhマイナスのDクラスが投入される。元の被験者はようやく死によってSCP-596から解放されたが、新たな被験者は全身に複数個所の採血ポイントを設けることで、輸血や実験用の血液供給源として活用されることになった。
博士は続けてAB型のDクラスの用意も検討している。
04/12:
SCP-596被験者を採血だけでなく臓器の供給源にもしようと考える。しかし拘束中も激しく暴れるので外科処置が難しく、手っ取り早く腕を切除して死なせた場合は次の再生が完了するまで採血が滞るため課題山積み。
頭部を切除することで抵抗を抑えつつ臓器摘出と採血を両立できるが、脳幹が再生すれば再度切り落とす手間がかかる上、常時首の再生部を再切断し続けるのもやはり手間。
後日、博士は財団技術開発部門に対して「自動脳幹除去装置」なる代物を作れないかと問合せている。
04/26:
技術開発部の開発した新型装置がSCP-596実験現場で大絶賛の嵐。
再生中の頭蓋骨内に取り付けると、自動的に脳幹を掻き混ぜて液状化し吸引してくれる小型装置で、これの投入により頭部の切除と再生を許しても、脳幹の再生に伴う被験者の大暴れと絶叫を防止できる上、心置きなく頭部を切除・再生できるため眼球と歯芽までも摘出できるようになった。
以上が、SCP-596を使った実験に関する簡潔な説明である。
読んでるこっちが叫びたくなるわ!
SCPを読み慣れてる方ならば、「財団は冷酷だが残酷ではない」というフレーズを目にしたことがあるだろう。
SCP-596の実験記録は、「『冷酷』と『残酷』の違いって何だっけ…?」という疑問を我々読み手に喚起させること請け合いである。
つーか財団倫理委員会的にはこれグレーどころか真っ黒な気がする。
いずれにせよこの記事、それこそかなりSCPを読み慣れてる人でも相当きつい内容なのは間違いないだろう。
有用なオブジェクトであるという冒頭の文に嘘はないけれど。
最後に一点。
SCP-596の記事中では説明されていないため、再生中の被験者に痛覚が残っているか否かは不明である。
無傷で触れた時点から叫び出す以上、像本体に苦痛と不快感を催す性質があるのは確実だろう。
しかし、実験中の人体切除および再生サイクルの間で被験者が挙げる苦痛の声は、果たして像が持つ元々の不快感によるものだけなのだろうか。
追記・修正は像に触れてからお願いします。
- SCP-596
- 異論がなかったのでリネームを実行しました。 -- (名無しさん) 2020-03-27 01:38:47
- こういうえぐいのSCP財団って感じですこ -- (名無しさん) 2020-06-10 15:57:25
- 今だったら財団側の苦悩とかも描かれそうなオブジェクトよね。とは言え上にも出てる通り一人捕まってたらもうその時点で対処のしようがないオブジェクトなので、脳幹破壊して常時意識を失わせてるのはむしろ慈悲深いと言えるかもしれない。 -- (名無しさん) 2020-06-20 21:09:09
- 死刑囚一人と引き換えに臓器と血液が無限に手に入るなら、犠牲なんて実質ないようなものでしょ -- (名無しさん) 2020-07-21 01:47:06
- さすが3桁台だけあって、財団えげつねぇな・・・ -- (名無しさん) 2020-07-23 20:27:39
- ランドセルみたいに「提案は承認するけどお前頭おかしいよ…精神鑑定受けて、どうぞ」だったかもしれない -- (名無しさん) 2020-09-01 21:09:30
- 財団だったらやるだろうなぁ... -- (名無しさん) 2020-09-15 11:44:26
- もともと墓にあった=像に誰もついてなかったなら、再生能力に限界があるか、離す手段がある=極度の苦痛と不快感を代償に万能の治療を施すみたいなものだったんだろうなぁ……「そういう使い方じゃねーから!」とオリジナルの製作者は思ってそう。 -- (名無しさん) 2020-10-27 06:17:40
- 根本的な部分がガバガバじゃない?触ったらどう足掻いても取れないのなら、遥か昔から常に誰かと像がくっついてる状態だろ。どうやって保管されてたのを盗んだんだよ -- (名無しさん) 2020-11-23 18:49:54
- 財団が知らないだけで実は引き離す手段があるのかも知れない -- (名無しさん) 2020-11-23 18:55:37
- 片手でこれ持って、もう片方で『コーヒーを一杯』を持たせたらどうなるんだろう…?衰弱→再生→衰弱…っていう無限ループに陥ったりして。 -- (名無しさん) 2020-11-25 14:44:47
- 昔からあるんじゃなくて墓場に突然出現もしくは誰かが設置したか財団が発見できてない未知の手段でくっついてた人を死んで像だけが墓場にあったんじゃない?それを墓泥棒が触って動けなくなってのたうち回っていたところを逮捕されたとか -- (名無しさん) 2020-12-08 22:18:00
- ↑2 ロジェの提言かな -- (名無しさん) 2021-04-06 23:22:38
- 墓泥棒とされているのが実は墓の中の人がずっと生かされてた姿だったり? -- (名無しさん) 2021-06-10 16:16:29
- クソトカゲとか処分できそう -- (名無しさん) 2021-06-18 04:09:49
- ↑ただのDクラスですら苦悶で絶叫大暴れするのに、クソトカゲなんかくっつけたら周囲大惨事待ったなし。しかもまた変な耐性つけて生還する恐れすら…… -- (名無しさん) 2021-09-20 20:33:51
- ↑クソトカゲくっつけた次の瞬間に適当なDクラスをくっつければ像の特性でクソトカゲくたばってくれないかな。 -- (名無しさん) 2022-01-07 01:52:22
- 「この装置、自動的に脳幹をかき混ぜることができるんですよ」 -- (名無しさん) 2022-02-26 14:35:26
- 悪意を以て作られた呪物に財団が科学の力で勝利したっていうオブジェクトなのかもしれない -- (名無しさん) 2022-03-20 23:32:29
- 財団世界だし別世界から来たとか普通にあり得る -- (名無しさん) 2022-07-15 17:05:29
- これ像から人間部分だけを極限まで削り取って、仕上げにバーナーで炭化…とかやったら行けそうじゃね -- (名無しさん) 2022-10-11 01:51:09
- クソトカゲにこれ使ったら床のコンクリとか像ごと引き剥がして無理やり動き回りそう。そして殺す -- (名無しさん) 2022-10-11 18:16:20
- これ411-JPの効果使えば像に囚われた人も幸せでオールハッピーでは? -- (名無しさん) 2023-09-12 22:55:06
最終更新:2024年03月31日 20:36