SCP-587-JP

登録日:2016/09/25 Sun 21:34:05
更新日:2024/03/12 Tue 00:08:49
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在り来りな結末と教訓。結局、在り来りじゃなかったのは死体だけだったのだ。



SCP-587-JPとは、怪奇創作サイトSCP Foundation日本支部版で作成された記事の一つ。
オブジェクトクラスはSafe。

さて、このオブジェクトの外見だが、一言で言ってしまえば身元不明の他殺体である。
どこかの海の沖のとある島にて一年に一度、不定期に島内に出現する。年齢や性別はランダムで服装は全裸。
殺害方法は多種多様だが、凶器や犯人を特定するような証拠は発見されていない。
現在、3体までの同時出現が確認されており、複数出現した場合はお互いに近親関係にあるかのような特徴が見受けられる。
財団も行方不明者との照合なども含めて身元を特定しようと試みたが、失敗に終わっている。

このオブジェクトが発見されたのは、その島で起きたとある事件が切欠であった。
以下にその事件についての詳細を記す。


事件記録

時は19██年の夏。██島に住む島民が若い女性の死体を発見したのがその始まりである。
その死体の顔は潰されていたため身元の判別がつかず、当初は島民の誰かではないかと思われたが、
島民全員が顔なじみという狭いコミュニティであり、すぐに全員の無事が確認できたため、その可能性は却下された。
結局、死体の身元は不明のままだったが、殺人事件に関わることで日常が崩壊することを恐れた島民達(駐在含む)の全会一致により、
遺体は沖に運ばれてから捨てられ、事件はなかったこととして葬り去られた

だが、翌年の春先には年老いた男の、翌々年の冬には小さな女の子の死体が次々と発見される。
そのたびに島ぐるみの隠蔽が行われたが、ついに一人の青年が本土に事件のことを知らせるべきだと主張した。
これまでの隠蔽が公になれば島全体が罪に問われる。そう考えた島民たちは、あろうことか彼の家に火を放ち、彼の唯一の肉親である父親もろとも殺害。
さらに、隠れて本土に連絡を取ろうとしていた駐在も同様に殺害される

そして、それ以降は疑心暗鬼と猜疑心に駆られた島民たちによる、あいつが密告者だ、こいつが裏切り者だという根拠もろくにない告発により、次々と島民が殺害されていった。

結局、駐在からの定期報告がないことを不審に思った本土の人間が島を訪れて事件が明るみになるまでに、
島民17人が同じ島民の手によって殺害されるという大惨事となった。


一体どうして。私も皆も、ただ静かに暮らしたかっただけだったのに。
私も、皆も、まともじゃなかった。罪が暴かれるのを恐れて、それで・・・全員が、あんな恐ろしい事を・・・――島民の一人


事件の当事者から経緯を聞いた財団の博士は、このオブジェクトは何らかのミーマチックエフェクトを持つ認識災害ベクターであり、それによってこのような惨劇が引き起こされたのではないかと推測した。
つまり、「何らかの精神影響特性を持った死体を出現させる現象系オブジェクト」ではないか? と考えたのである。

というわけで、クラスD職員を件の島に長期滞在させ、SCP-587-JPを毎年目撃させる追加実験を実施。
だが、この実験と島民への追跡調査を行った結果――SCP-587-JPにはいかなるミーム的効果も存在しないと結論付けられた。
つまり、このオブジェクトは本当に出現するだけ、ただそれだけの「無害」なSCPであり、上記のような惨劇を引き起こす特異性は有していないのである。

島民17名が犠牲となった惨事はSCPオブジェクトの特異性の結果ではなく、島民たちの膨れ上がった疑心暗鬼の生み出したものだったのだ。

この調査結果をもって財団はSCP-587-JPのオブジェクトクラスをEuclidからSafeへと格下げ。
追加実験の中止と島民への追跡調査と監視の中断が決定された。


これ程嬉しくないオブジェクトクラス格下げは、恐らく他に類を見ないだろう。 ──██博士



SCPオブジェクトは確かに恐ろしい。
常識では測れない力を持っているし、それは日常をたやすく崩壊させてしまう。

だが忘れるなかれ、それらの大半は「人間」なくしては意味を失う。
日常を作るのは人間だが、それを壊すのも人間なのだ。










だから、本当に怖いのは――――










SCP-587-JP


死体に非ず



追記・修正はSCP-587-JPの無害さを噛み締めながらお願いします。

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SCP-587-JP - 死体に非ず
by locker
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最終更新:2024年03月12日 00:08