怒りの撤退(プロ野球)

登録日:2016/09/18 (日) 01:24:07
更新日:2024/04/14 Sun 14:47:13
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そうなれば…猛虎はきっぱり、怒りの撤退宣言を行う。




怒りの撤退とは、阪神タイガースに関する年末の風物詩及びそれを指すネットスラングである。

【解説】


阪神タイガースという球団は、何だかんだでフロントが外部からの補強に積極的。

シーズンオフはFA権を持つ選手が現れ、阪神に限らずどの球団も補強に関する動きを見せる。
阪神のフロントも当然動き出すわけだが、阪神を取り巻く環境には他球団と少し違う要素がある。

そう、関西方面におけるスポーツ紙などのマスコミだ。

阪神の動きに日夜注目するマスコミは、勿論FA選手の動向にも積極的に関心を示す。
それだけならまだしも、この記者達は球団が獲得調査しただけで『阪神入り確定』『阪神と相思相愛』と、時期尚早に断言するかのような口調で記事を書きまくるのである。
メディアやファンに唾を付けられた選手は『虎の恋人』と早速呼ばれてしまう。だから気が早いと(ry

こうしてファンを期待させるだけさせといて、実際には阪神に移籍しない。
その事実にファンは期待を裏切られ、メディアは憤怒の撤退報道記事を書く。
それを他球団のファンや実際の選手の移籍元のファンは暖かい目で見守る。

FA・自由契約
虎の恋人や!
獲得失敗
言い訳と共に撤退

…この、コントと言ってもいい一連の流れが『怒りの撤退』とネット上では呼ばれるのである。

一応フォローすると、決して阪神がFA競争に弱いというわけではない。
怒りの撤退と嘲笑される一方で、結構な数のFA選手やメジャー帰りの獲得に成功している。
球団自体も資金はあるし、歴史的にも伝統があったりして、移籍を視野に入れた選手から見ても魅力的な要素はある。

だが、FA市場でも競争必至な選手を高確率で狙って周りも煽るので「怒りの撤退」が目立ちやすいのだ。
資金面ではライバル・巨人や別リーグで言えばソフトバンクや楽天などが上回るので、その辺りの球団にはどうしても後れを取る。
伝統がある故の地元甲子園のファンやメディアのプレッシャーが足枷になるという面もあるだろう。
というか、そもそも少し調査しただけで恋人扱いするメディアが一番悪いような……。

ちなみに最近では、阪神に限らず獲得競争に敗れた球団やそのファンを煽る一部の人間がこのスラングを使うことも少なくない。

【由来】


この一連のコントを『怒りの撤退』と呼ぶようになったのは、2007年オフにヤクルトスワローズを退団したセス・グライシンガーの獲得を目指した際のメディアが原因。

阪神球団は実際にグライシンガーの獲得に向けて動いていたが、巨人との獲得競争に敗れてしまう。
そして、それを撤退の可能性を報じた2007年12月4日のデイリースポーツ記事から生まれた。
ちなみに、当時の記事名は「虎 グライシンガー獲り怒りの撤退も」となっている。

以下、当時の記事内容の抜粋。

阪神が、ヤクルトから自由契約となったセス・グライシンガー投手(32)の争奪戦に関して、常識外のマネーゲームに発展した場合は即刻、撤退する方針を固めたことが3日、分かった。
球団は、あくまで同投手獲得を最大のヤマ場と位置づけて交渉に入るが、一方で昨今の外国人選手争奪の相場が高騰する現状を異常事態と判断。
球団幹部は「ファンに失笑される補強はできない」と話し“抗議の撤退”も視野に入れた。

2年総額7億…8億…ついには10億円と、グライシンガー獲得戦を前にウワサされる相場は跳ね上がるばかりだ。

この日、兵庫県内で取材に応じた南球団社長は、グライシンガー側と近日中に交渉に入ることを明かし「簡単にはあきらめません」とセ界最多勝右腕獲得に意欲を見せた。
ただし「バカなマネーゲームはしませんけどね」と微妙な言葉を付け加えた。

この発言について、球団幹部はこう解説した。
「今年の年俸が5000万円以下だった選手に、仮に2年で8億も出す球団があるなら、付き合い切れない。どうぞ持っていってくれということ。ファンがあきれる。失笑を買うだけだ」

先発補強が急務の阪神にとっては、グラ獲りは今オフ最大のヤマ場だ。
だが、球界のためにも、これ以上の外国人相場の高騰化に“加担”するわけにはいかないと判断した。

あくまでグライシンガーとの正式交渉に入らないと実情は分からないが、球団は、多少のマネーゲームは仕方ないとしても2年総額5-6億円が、実績を加味しても、悪影響を及ぼさないギリギリ限度とみている。

球団はグライシンガー側が2年7億円を最低ラインに置いているとの情報も得ているが、事前調査の結果、それ以下の額でも十分に交渉可能とみている。
だが、他球団が法外な額を提示すれば一気に常識を超えた世界に突入する。


そうなれば…猛虎はきっぱり、怒りの撤退宣言を行う。

【主に獲得を目指し、怒りの撤退をしたとされる選手一覧】


ここでは怒りの撤退と評された選手の名前を挙げる。

ただし、阪神の補強報道は上述した通り調査しただけで「虎の恋人」と決めつけられるパターンも多い。
さらに補足すると「怒りの撤退」かどうかはファンの主観にもよる。

そんなんなのでリストに多少不満や疑問はあるかもしれないが、その辺りはご了承願いたい。

阪神タイガース

選手名 以前の所属球団 実際の移籍球団
(または残留)
備考
セス・グライシンガー ヤクルト 巨人 「怒りの撤退」スラング発祥元
成瀬善久 ロッテ ヤクルト 当時の報道によると背番号「18」待遇も報道
宮西尚生 日本ハム 残留 成瀬に続いてWショック報道
金子千尋 オリックス 残留 4年総額20億円報道
→残留報道記事でのフロント幹部「その態度は球界の笑い物」報道
中島裕之 2Aミッドランド オリックス 電子メールで断られる
村田透 3Aコロンバス 残留 球団幹部「まもなく発表できると思います」
→球団関係者「詰めが甘かった」
大野雄大 中日 残留 小さい頃から大の阪神ファンであり、FA権取得時に阪神も獲得調査でファンも大盛り上がり
→残留決断により失敗

他球団の例

選手名 以前の所属球団 獲得に動いた球団 実際の移籍球団
(または残留)
備考
ケビン・ミラー フロリダ・マーリンズ 中日 ボストン・レッドソックス 中日入団が決定するもレッドソックスの横槍が入り決裂。
野球における日米の関係悪化がガチで心配された。
ジェレミー・パウエル モントリオール・エクスポズ オリックス ソフトバンク オリックス入団が決定するも、ソフトバンクとの二重契約が発覚。
こちらも両球団の関係悪化がガチで心配されたが、本人は二重契約ではないと反論している。
福留孝介 3Aスクラントン 中日 阪神 条件面で折り合いがつかず決裂。
ただし阪神を戦力外になった後、2020年に中日に復帰。
小谷野栄一 日本ハム 西武 オリックス 西武移籍を有力視する報道が流れており、交渉の場ではライオンズブルーと同色のネクタイを着用していたことから相思相愛も有力視されていたが、結果はオリックス入団となった。
丸佳浩 広島 ロッテ 巨人 獲得競争相手の巨人を上回る複数年契約と大金やまさかの監督手形などを提示するも巨人に敗北。
球団が入団会見用のホテルを仮予約をしていたことや清田育宏が球団の獲得失敗を喜ぶ発言をしたことでファンが激怒して大炎上する*1などのネタが発生する。
岩隈久志 楽天 オークランド・アスレチックス 残留 あまりの提示条件の低さに選手の方がブチ切れたという真逆の例。
中村紀洋 近鉄 ニューヨーク・メッツ 残留 こちらは互いにルール違反を主張した事で、選手と球団の双方がブチ切れたというとんでもない事態に。
浅村栄斗 西武 オリックス 楽天 浅村が交渉の席にすら座らずに代理人から断りの一報を入れるという眼中にない扱いをしたことがネタにされる*2
西勇輝&浅村栄斗 オリックス
西武
ソフトバンク 阪神
楽天
2018年オフにFAを宣言した2名の大物選手に対して金満球団として扱われるソフトバンクによる総額30億クラスのダブル獲得という超大型補強の意向が示されるが、結果は他球団にまさかの2連敗。
この失敗以降、ソフトバンクが補強の競争に強いという印象も見直されていくことになる。

※今後「怒りの撤退」と呼ばれるような獲得失敗の選手の例があれば、追記をお願いします。

【余談】


怒りの撤退が、次シーズンで新たなネタに昇格することもある。

例えば、本命の選手の獲得に敗れた際に人的補償やトレードで別の選手を獲得してその選手が活躍するという事があったりする。
或いは、獲得予定だった選手と同ポジションの生え抜きが活躍するサプライズが起きたりする。
すると、獲得競争に敗れた球団のファン及びなんJ民はこう騒ぎ出す。


「○○最高や!△△なんて最初からいらんかったんや!」と……。


実際にその歓喜が続くこともあるが、普通に確変(その場限りの一時的な活躍)で終わることもある。
そうなると上記の台詞は夢に消え、単純な強がりと化す。






そうなれば…Wiki篭りはきっぱり、怒りの追記・修正宣言を行う。

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最終更新:2024年04月14日 14:47

*1 トークショーにて獲得失敗の際にガッツポーズをしたことや妻に喜んでその情報を告げるなどの発言が物議を醸した。清田はポジションが外野手であるため、丸が仮に好待遇で入団すれば出場機会を減らされる可能性が高かったことは事実なので偽りのない本音だったのだろうが、「清田が近年成績不振の状態が続いていたり、プライベート関係で問題を起こしていた」「他のロッテの選手は丸に内心はどうであれラブコールを送っていた」「そもそも清田が成績不振でなければ丸の獲得への動きや獲得失敗による敗走は起きなかった可能性がある」といった点が炎上の理由となった。

*2 この浅村の態度に対して「入団する気が無くてもせめて最低限の対面はするべきではないか?」とオリックスファンを中心に批判が集まった一方、「入団の意思が皆無な状態で交渉に時間を割かれるよりは最初からこの態度の方が両者時間を無駄にしないのでむしろマシではないのか」という擁護も少なからずある。なお、オリックス側の浅村への態度に関する立場は後者の姿勢で、浅村の対応に理解を示す意思を見せた。