キングコング(2005年)

登録日:2016/08/29(土) 19:41:19
更新日:2023/12/29 Fri 00:21:35
所要時間:約 15 分で読めます





「キングコングを初めて見たのは、八歳の時だ。
それ以来、髑髏島=スカルアイランドの世界は、あらゆる面で、
私の創作活動の推進力となった」byピーター・ジャクソン


2005年に公開されたユニバーサル・ピクチャーズ製作の怪獣映画。ピーター・ジャクソン監督作品。187分。
原点に忠実かつ、1933年版『キングコング』では描写しきれなかった部分も丁寧に描いた傑作リメイクである。



【作品解説】

ジャクソン監督が8歳のころに『キングコング』を鑑賞して以降ずっと構想を温めていたという作品である。

2億700万ドル(248億4000万円)という巨費が投じられたのと、ハリウッド版ゴジラの失敗のせいで一時は製作が難航したものの、無事完成までこぎつけた。

時系列はオリジナルと同じ1933年になっているが、これは 「恐竜の生き残りがいたとしてもギリギリ信じられる時代だから」 だそうである。

映像は監督が『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで培った特撮技術が最大限に活用されており、非常に見ごたえのあるものとなっている。ロケはニュージーランドなどで行われた。

それ故か2005年度アカデミー賞において本作は視覚効果賞、音響編集賞、録音賞の計3部門を受賞している。

日本での公開時には50億円以上の興行収入を目指したが、当時怪獣映画が下火になっていたせいであまり振るわず、23億円にとどまってしまった。

これは海外でも同じだったようで、全世界の興行成績は5億4700万ドルにとどまった(10年後に封切していればまた違った結果だったかもしれない)。

しかし、映像作品としての評価は非常に高く、米映画レビューサイトや日本の各レビューサイトでも高評価されることが非常に多い。

一方、島に上陸するまでの前振りが非常に長いため、人によっては中だるみを感じることも多いようであり、それはこの作品の欠点の一つといえるだろう。また、節足動物の描写は人によっては叫びだしたくなること請け合い。

本作に登場する生物をデザインしたのは、のちにギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』を手掛けることになったウェタ・ワークショップで、そのせいか生物学的に見ても破綻のないものとなっている。

余談ながら田中芳樹氏の手によるノベライズ版がある。



【あらすじ】

※以下ネタバレ注意

時は1933年の世界恐慌下のアメリカ。映画が失敗続きだった映画監督のカール・デナムは、一獲千金を求め海図に記載されていない島スカルアイランドへ、

失業していた喜劇女優のアン・ダロウ、脚本家のジャック・ドリスコル、アクション俳優のブルース・バクスターらとともに映画の撮影に向かう。

船が海流の影響などで座礁するといったアクシデントもあったが無事に到着し、島で映画を撮り始めるも、原住民の襲撃に会いアンがさらわれてしまう。

救助のためにジャックたちが村に辿り着いた時、ちょうどコングが生贄としてささげられていたアンを気に入り、奪い去るところだった。

一行ははアンの捜索に向かうことを決め、ジャングル内へと向かったが、島の想像を絶する脅威に見舞われ、一人また一人と命を落としていった。

しかし、最後まであきらめなかったジャックの尽力でコングからアンを取り戻したカール達は、怒り狂って襲いかかってきたコングをクロロホルムで眠らせ、ニューヨークに連れ帰ることに成功する。

そして、カールの手によりニューヨークのアルハンブラシアターで見世物となったコングだったが、公開日、カメラのフラッシュとアンがいなかったせいで興奮して鎖を引きちぎって街に逃げ出し…。



【主な登場人物】



◆アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)
声:安藤麻吹

喜劇専門の舞台女優。失職中にデナムにスカウトされ、新作映画のヒロインに抜擢される。
コングの生贄となるも、徐々に気持ちを理解し、長い間孤独だった彼の理解者となっていった。

◆ジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)
声:宮本充

脚本家。アンは彼の作品のファンである。の男だったオリジナル版とは違い、どこか頼りない印象を受けるが、アンを思う気持ちはだれにも負けない。
巨大昆虫に取り囲まれても発狂しない度胸も兼ね備えている。

◆カール・デナム(ジャック・ブラック)
声:後藤敦*1

映画監督。野心家な一面がある。スカルアイランドで映画撮影をして一発逆転を狙っていたがカメラが谷底に落ちた際に破損し、映画撮影からコングの捕獲へと関心がシフトしていった。
最後まで生き残り、本編後に組織された島の学術探検隊にも参加し、自身が捕らえたコングが最後の一匹だったことを確認した。

◆ハーブ(ジョン・サマー)
声:楠見尚己

デナムの助手である初老の撮影技師。かつてアザラシに片足を食べられたせいで義足をつけている。
ベナートサウルス(小説版ではカルノタウルス)に食べられてしまった。

◆ランピー(アンディ・サーキス)
声:後藤哲夫

ベンチャー号のコック。性格は若干荒っぽく、「羊の脳の煮込み」などといったゲテモノ料理を作ることに定評がある。
ジャック曰く「本当に自分が作ったものを食べているかは疑問」とのこと。谷底で巨大な虫たちと戦って帰らぬ人に…。
ちなみに役者のサーキス氏はコングのモーションキャプチャーも演じていた。
彼はその後、ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』でゴジラのモーションキャプチャーも演じたため、
中島春雄氏に次いで世界で二人目となる、ゴジラとコングの両方を演じた俳優となった。

◆チョイ(ロボ・チャン)
声:佐藤晴夫

ランピーの友人の中国人。趣味はボディビル。
コングに谷底に落とされ死亡。

◆ジミー(ジェイミー・ベル)
声:伊丸岡篤

最年少の乗組員。銃の腕前は天才級。ヘイズとは親子のような関係。
船内ではジャックの脚本のミスを指摘したりもした。最後まで生き残った。

◆ヘイズ(エヴァン・パーク)
声:楠大典

ベンチャー号の一等航海士を務める黒人。ジミーにとっては父に等しい存在である。
コングによって殺された。

◆ブルース・バクスター(カイル・チャンドラー)
声:木下浩之

アクション俳優の二枚目。初期は意気地なしだったが、徐々に度胸をつけ、
最終的には率先してジャックたちのピンチを救いに来た。
演じたカイル・チャンドラーは、後に『ゴジラVSコング』にも出演し、コングと二度の共演を果たす。




【スカルアイランドの自然的背景】




本作で一行が向かったスカルアイランドは、スマトラ島の近くに浮かぶ海図にも載っていない島である。これには理由があり、周辺の磁気が異常であることと、海流が荒れているせいで発見するのが困難だったからである。

もともとこの島は古代ゴンドワナ大陸のテチス海沿岸の一帯であった。この島が大陸移動で離れて以降、大規模な気候変動や環境の変化が外界では起こったが、島の内部の環境は非常に安定していたのだ。

そのため、先史時代の様々な動物が生き残ることができたのである。今から3000年前にはコングの祖先となるギガントピテクスをとあがめるアジアからの入植者もやってきて、ヒッタイトやエジプトクラスの高度文明を千年前に地震で滅ぶまで維持した。

この島はインド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートの境界線に位置していたが、そのせいで地震が頻発し、島の面積は過去数百年間で5分の1にまで減少している。特に平地の減少に至ってはひどいもので、数百年間に80パーセント近くも消滅したという。

現在はスカルアイランドは存在しない。1948年に大地震が発生して海の底に沈んでしまったからだ。
だがその間にカール・デナムの指揮のもと何度か行われたプロジェクト・レガシーと呼ばれる調査で、島の生物や文化について一部だが明らかになった。

地域の大まかな区分は以下のとおりである。

◆低地

スカルアイランドを二分する尾根に挟まれた、開けた草原地帯である。小川なども存在しているためのどかな印象を受ける。
前述したように消滅の危機に瀕していて、数百年間で80パーセント近くの地域が減少している。
この地域には鳥盤目のリゴクリスタスや竜脚類のブロントサウルス、フェルクタスといった植物食恐竜のほか、
それを狙うバスタトサウルスやゴルゴノプスに似たリュカイサウルスなどといった肉食恐竜が生息している。また、昆虫の数も非常に多い。

◆ジャングル

高層ビルほどもある節くれだった木々がうっそうと生い茂るジャングルである。絶えずじめじめしていて薄暗く、地面には巨大ナメクジや昆虫がうごめいている。
このジャングルがあったせいでスカルアイランドの生物の多くは絶滅を免れることができたため、新たな種へと進化することができたと推測されている。
ベナートサウルスやフィートドン、シミトドン、カーバー、幼体のバスタトサウルス、エサは選り好みしないカラフルな雑食恐竜のアバルサウルス、
竜脚類のアスペルドルサス、地中の根やキノコを食べるモンストゥルタルプス、ステゴサウルスの子孫のアテルクリサウルスといった恐竜が生息している。
また、ムカデも非常に多く、その多くが恐竜をエサにしているため、1937年の春季探検隊が 「ムカデが恐竜を食べるなど、地球上でそんな場所がほかにあるだろうか?」 と驚愕しているほど。

◆谷

地震と自然の浸食作用によって作られた谷間に、生暖かい湧き水とジャングルから流れてきた糞やミネラルなどの豊富な栄養素が混ざってできた。
地上では考えられないほど巨大な節足動物や無脊椎動物が支配する環境下で、彼らが死肉や落ちてきた哀れな犠牲者を貪って独自の生を営んでいる。
この場所でクルーが襲われるシーンがあるが、虫嫌いの人はトラウマ必至なので閲覧注意。

◆高地

スカルアイランド中心部の高山地域。地殻変動によってできた木が一本も生えていない険しい山脈地帯である。ここにコングの住処が存在している。
植物は低木の藪や地衣類などがかろうじて生えている程度で、それをエサとする草食動物や、彼らを襲って食べるテラプスモルダックス、
スキンバードなどの肉食動物が存在し、地上よりはずっとましだが、ここでも生存競争は盛んである。



【スカルアイランドの生物】

コングのほかにも恐竜や、ここでしか見ることのできない巨大な節足動物、飛行性の哺乳類、クジラぐらいもある巨大な魚、肉食性の飛べない鳥などが生息している。

あまりの多様さに1937年探検隊の一人は「この島は動物学者にとっては夢の地であり、科学者にとっては悪夢のフィールドである」と称したほど。

キリがないので本記事の解説は原則として映画に登場したもののみにとどめさせていただく。(比較対象としては未登場の生物も使うが)

(※非常に長いので折りたたみました)



追記・修正はスカルアイランドを調査しようと思っている方がお願いします。

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最終更新:2023年12月29日 00:21

*1 予告編では高木渉が担当

*2 これは実在したティラノサウルスにも共通する特徴である

*3 「ヴェナトサウルス」などとも表記される

*4 2004年に亡くなったことで実現しなかった