天秤/Balance(MtG)

登録日:2016/07/20(水) 12:14:54
更新日:2023/02/18 Sat 12:53:10
所要時間:約 4 分で読めます






対戦相手の戦場にクリーチャーは4体、あなたのクリーチャーはゼロ。
対戦相手の手札は7枚、あなたの手札は《天秤》と《Zuran Orb》の二枚のみ。
土地はお互い5枚ずつ。
さて、これからどうなるでしょう?




A: 《Zuran Orb》を除き、何もかもがまっさらになります




《天秤/Balance》は、Magic the Gatheringの黎明期に存在したカードの一枚。最初の基本セット・アルファ版にすでに収録されていた。


天秤/Balance(1)(白)
ソーサリー

各プレイヤーは、コントロールする土地の数が最も少ないプレイヤーがコントロールする土地の数に等しい数だけ、自分がコントロールする土地を選ぶ。その後、残りを生け贄に捧げる。
同じ方法で、各プレイヤーはカードを捨て、クリーチャーを生け贄に捧げる。

概要

そのカード名どおり、自分と対戦相手の戦場のカードを天秤に載せて、平等化させるといったイメージ。
…だが、のちに登場した《ドルイドの誓い》と並んで、マジックの世界における悪平等の典型例みたいなカードである。


例えば、あなたがノンクリーチャーデッキ*1を使っていたとしよう。
この場合、あなたのコントロールするクリーチャーの数は当然ゼロなので、相手も同じ数になり、戦場からクリーチャーはいなくなる。
つまり、これは神の怒り》と同等の効果を持っているのと同義である。


例えば、あなたの手札の枚数がゼロで、一方対戦相手の手札は7枚という絶望的な状況だとしよう。
この場合、やっぱりあなたの手札の枚数に合わせることになるので、対戦相手は手札を全て捨てる必要がある。つまり、これは「相手の手札全てを捨てる手札破壊呪文」と等価だといえる。
いくら白が平等な色とはいえ、本来触れない手札に干渉してしまうのはあまりにもアレである*2


土地についてはまだマシかもしれない。マジックのルーリング上、土地は1ターンに1回しか置くことができないからだ。
だが、マジックのカードには土地を能動的に少なくする手段もいくつか存在する。
その土地を生贄に捧げることで一時的にマナを増幅させるサクリファイスランドや、土地を生贄に捧げてライフを回復する《Zuran Orb》などだ。
これらと組み合わせれば、ハルマゲドン》と同等の効果を発揮する。
特に《Zuran Orb》とのコンボは「ズーラン・バランス」と呼ばれ、様々なデッキで猛威を振るった。
ちなみにデュエル・マスターズがマジックを扱っていたころ、第一回の勝負の決定打がこのコンボだった。

何?打ち消してやるって?
なら対抗呪文は解決して《Zuran Orb》に土地食わせないでエンドします。*3

カードの種類によっては触れないカードがあるのもこれまた問題。同じ戦場に残るパーマネントでもエンチャントやアーティファクトは破壊されないのである。
特にアーティファクトは、茶単と称されるそれらに依存したデッキを生み出すほど多種多彩なカードが存在し、これらをずらずら並べて《天秤》を撃てば一方的に自分に有利な状況を作り出せる。


そして、これら全てのことをたった(1)(白)のマナ・コストでやってのけてしまうことが最大の問題点であった。
そうした要素から、このカードはマジック史上最強のリセットカードと評されている。
その強さは伝説のネクロの夏の決勝で、たった一枚のこのカードをトップデッキしただけで劣勢のゲームをひっくり返してしまったという逸話だけでも十分窺い知れるのではないだろうか。
尤も問題になった【ネクロディスク】はキーカードがアーティファクトとエンチャントのため、本来は天秤を撃ってもそうそうひっくり返るような状況ではないが

《ネクロポーテンツ》は設置されているが、《ネビニラルの円盤》が無い盤面

《Zuran Orb》で土地を全てライフにしてからの天秤により土地と手札が全部吹っ飛ぶ

通常ドローが《ネクロポーテンツ》の効果で止まってしまう

どうしてもライフを支払ってドローして、土地を探しに行かないといけない

ライフが詰まったところで【白ウィニー】のリカバリー能力に押し切られる
という感じだった模様。*4ちなみに有名なデモコンデスは最終戦である。

これほどに凶悪なカードがどうして基本セット第4版まで残っていた*5のかは大いなる謎である。
パワー9等のリソースを圧倒的に増やせるカードと比較して、このカードのように対戦相手のリソースを一気に削ってしまうカードの強さが認識されるのが大分後だったというのもあるようだが。


現在このカードが使用可能なのはエターナル環境に限られ、レガシーでは禁止カード・ヴィンテージでは制限カードに指定されている。
新たに《天秤》の影響を受けないカード・タイプとしてプレインズウォーカーも登場しており、その力は現役当時より上回っている感すらある。
ただし《意志の力》など妨害手段も強力だし、《Mox Sapphire》でも残ってれば《Ancestral Recall》か《宝船の巡航》一発で立て直せちゃうのでそこまで強くはない。
前にも書いたスタックルール導入につき一人ゲドンしてしまう可能性が高いのも逆風。
…そもそもクリーチャーが出ない+土地が少ないという環境上、効果が劇的じゃないというのは内緒。

2種類調整版が存在する。
1つ目はオデッセイに登場した《平等化》。
こちらはパーマネントの数を揃えるようになっていて、平等に大分近づいたと言えよう。
それでも上述のサクリファイスランドや墓地の枚数だけ大きくなれる《土を食うもの》・スレッショルドクリーチャーといった相方に恵まれたこともあり、【ターボバランス】というデッキで活躍した。

2つ目は時のらせんに登場した《均衡の復元》。
効果はオリジナルと全く同じだが、マナコストを持たないためそのままではマナを支払って唱えることが出来ない。
ではどうするのかというと、このカードの持つ『待機』能力を利用して唱える事になる(大雑把に説明すると、待機コストを支払うことで数ターン後に呪文が発動する)。
この呪文の待機コストは(白)で待機ターン数は6。「相手にバレバレだし即効性もないからこれで大丈夫でしょ。」とスタッフは判断したのだろう。
2016年現在の基準で考えると全体リセット呪文の点数で見たマナ・コストは5~6、
1ターンを1マナと換算するならこの呪文の点数で見たマナ・コストは7相当である。
盤面のクリーチャー以外にも対処出来ることを考えるなら、7マナでも破格ではあるが十分に納得できる設定といえるだろう。

…同じく待機を持ち、発動ターンを調整するついでに自由にパーマネント数を調整できる
《大いなるガルガドン》を見なかったことにすれば、だが。


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最終更新:2023年02月18日 12:53

*1 クリーチャーの枚数がゼロ、若しくはフィニッシャーのみのごく少数のデッキで、ヘビーパーミッションなどなら自然とこうなる

*2 手札破壊は黒の役目

*3 補足…現行のルールでは《天秤》の解決前に《Zuran Orb》の能力をスタックして解決しないといけないため、土地をライフに変換した後に《対抗呪文》を唱えられると一人ハルマゲドンする。当時のルールだと《天秤》に対し《対抗呪文》をインタラプトで打たせるか打たせないか選ばせてから《Zuran Orb》を起動できるため、カウンターされなければ確定で一緒にハルマゲドン出来る。なお《天秤》に対し《対抗呪文》を唱えないと選んだが最後、《Zuran Orb》を起動しようが何をしようが、もう《天秤》に対し干渉することは出来ない。

*4 現在カバレッジや動画が残っていないので、詳細は不明

*5 そのおかげで日本語名があるのだが。日本語版がリリースされたのは第4版以降