魔力の櫃/Mana Vault(MtG)

登録日:2016/07/16 Sat 01:10:59
更新日:2021/12/14 Tue 10:26:02
所要時間:約 7 分で読めます




《魔力の櫃/Mana Vault》は、Magic the Gatheringの黎明期から存在した強力なマナ・アーティファクト。最初の基本セット、アルファ版に収録されていた。

魔力の櫃 / Mana Vault (1)
アーティファクト

魔力の櫃はあなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
あなたのアップキープの開始時に、あなたは(4)を支払ってもよい。そうした場合、魔力の櫃をアンタップする。
あなたのドロー・ステップの開始時に、魔力の櫃がタップ状態である場合、それはあなたに1点のダメージを与える。
(T):あなたのマナ・プールに(◇)(◇)(◇)を加える。

カード名通り、魔力=マナを一時的に貯めておくための箱、といったイメージ。
一度魔力を引き出した後、もう一度マナを生み出すためにはマナをチャージしなければならない。
また、タップ状態である場合には自分がダメージを受けてしまう副作用もある。


暗黒の儀式》を考えても分かる通り、1マナで唱えて3マナを生み出すことができるというのはかなり強力。
1ターン目から2マナ分の加速、2ターン目なら戦場に出した土地2枚と併せて5マナの呪文にまでアクセスできてしまう。
実質的に対戦相手より2・3ターン先行しているようなものであり、それを考えれば多少のライフなど些細な代償でしかない。


が、初登場したアルファ版はパワー9に数えられる《Black Lotus》・Moxシリーズ、さらにそれらと同等の力を持つ《太陽の指輪》といった「ゲームバランス?何それ美味しいの?」な超強力マナ・アーティファクトが満載であり、このカードは余り注目されていなかった(比較対象が悪すぎるとも言えるが)。
加えて当時はライフ・アドバンテージが過剰に意識されており、ライフを失うこのカードは敬遠されやすかった。
…しかし、あまり活用されなかったせいでこのカードはかなり後まで(基本セットが第5版になるまで)スタンダードに残っていたのである。

特にその悪影響が出たのは、「アーティファクト・サイクル」とも呼ばれる悪名高きウルザ・ブロックの登場後である。
ウルザズ・サーガにてアーティファクトを簡単にアンタップできる《通電式キー》が登場、連続でマナを生み出させるようになった上にライフを失ってしまう欠点も消え去り、《トレイリアのアカデミー》のアーティファクト数稼ぎ件マナエンジンとして【MoMa】で猛威を振るうことになる。また、使い捨てのマナ加速手段としての強さもこの時に広く認識されたといってよい。
アカデミー禁止後は、《精神力》での大量マナ生成の役割を担うことに。

さらに次のウルザズ・レガシーでは最高の相棒とも呼べる《修繕》が登場。修繕の餌にしてしまえばタップ状態のダメージも無くなり、後述する亜種の《厳かなモノリス》ともども【メグリムジャー】で大暴れした。

これは流石に問題があると判断されたのか、基本セットの第6版移行に伴いスタンダード落ち。

その後もエクステンデッドでは相変わらず《修繕》の餌になったりコンボデッキの加速手段になったりしていたのだが、ウルザズ・デスティニーで《寄付》が登場、再び問題を引き起こす。

《Illusions of Grandeur》とのコンボデッキ【トリックス】が開発され、《魔力の櫃》はマナ加速手段として採用されたのだが、《Illusions of Grandeur》によってダメージ面の弱点も補われ、凄まじい爆発力を引き起こしたのである。結果最速3ターンで勝負が決まるほどになり、トーナメントで"引き勝負"が横行する事態になった。
そんな状況が容認されるハズはなく、同じくマナ加速手段として採用された《暗黒の儀式》共々エクステンデッドの禁止カードに指定されることになる。

長い時間をかけてその真価を発揮した、そんな「大器晩成」と呼ぶのが相応しいカードである。元々ぶっ壊れだったと言えばそれまでだが。

ちなみにエターナルでは【メグリムジャー】で暴れた際に既に規制されており(ヴィンテージ制限・レガシー(当時Type1.5)禁止)、その後も解除は為されていない。


《厳かなモノリス/Grim Monolith》

代表的なリメイクとして良く知られている《厳かなモノリス》についてもここで触れておく(正確には《魔力の櫃》だけでなく、《玄武岩のモノリス》の調整版でもあるが)。


厳かなモノリス / Grim Monolith (2)
アーティファクト

厳かなモノリスは、あなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
(T):あなたのマナ・プールに(◇)(◇)(◇)を加える。
(4):厳かなモノリスをアンタップする。

玄武岩のモノリス / Basalt Monolith (3)
アーティファクト

玄武岩のモノリスは、あなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
(T):あなたのマナ・プールに(◇)(◇)(◇)を加える。
(3):玄武岩のモノリスをアンタップする。

アップキープでのダメージを無くした代わりに元手を1マナ重くしてバランスを取ろうとした感じか。

序盤の加速力としては本家に劣り(出したターンは1マナしか増えない)、コンボのサポートとしては使いにくくなっている。

…が、出た時期が最悪なほどにマズかった。このカードが収録されたのはウルザズ・レガシー。よりにもよって《修繕》と同じブロックである。
元祖同様【メグリムジャー】で猛威を振るったほか、その後も【ティンカー】のマナ基盤の要を為すカードとして活躍を続けた。その他、本家がスタン落ちした後の末期の【MoMa】において《精神力》の相棒役も務めている。

また、ダメージが無くなったこともあってコントロールデッキでも使いやすくなったのは大きな利点。《通電式キー》とともに、当時の茶単系デッキの隆盛を支えたカードである。

その後、ミラディンの超重量級アーティファクトの登場により《修繕》は最凶最悪のカードへと変貌、そのマナ基盤を担ったこのカードもエクステンデッドの禁止カードに指定されてしまう。

エターナルでも本家と同様に規制されていたが、こちらはいずれも解除されてた。このことはMagic the Gatheringにおける1マナの違いの大きさを語る事例として良く挙げられる。
その他、レガシーの禁止カード策定方針の一つは「確定2ターンキルの排除」なので、性質上3マナブーストとして使用可能なのは3ターン目以降であり、コンボの危険性が薄いというのも理由としてあるだろう。

がこんなカードが現れた。


《黎明起こし、ザーダ/Zirda, the Dawnwaker》 (1)(赤/白)(赤/白)
伝説のクリーチャー — エレメンタル(Elemental) 狐(Fox)
相棒 ― あなたの開始時のデッキに入っている各パーマネント・カードが、それぞれ起動型能力を持っていること。(このカードがあなたの選んだ相棒であるなら、あなたは1回のみゲームの外部からこれを唱えてもよい。)
あなたがマナ能力でない能力を起動するためのコストは(2)少なくなる。この効果は、そのコストに含まれるマナの点数を1点未満に減らせない。
(1),(T):クリーチャー1体を対象とする。このターン、それではブロックできない。
3/3

(テキストは印刷時の物。オラクルでは相棒のルール変更で「このカードがあなたの選んだ相棒であるなら、ソーサリーとして(3)を支払うことでゲームの外部からそれをあなたの手札に加えてもよい。」に変更されています。)

イコリアの問題児「相棒」の1体で、起動型能力のコストを軽減する。このクリーチャーが場にいる状態だとアンタップのコストが3マナ未満になるため無限マナが成立する。ザーダ自身はデッキ外から唱えることができるため実質1枚コンボである。

これに《歩行バリスタ》*1をフィニッシャーに据えることで【ザーダ・コンボ】*2というデッキが成立。《夢の巣のルールス》が環境を席巻していたために使用率はそこまで高くなかったが、MOでの勝率から今後の環境に悪影響をもたらすとされ、ザーダが禁止カードに指定されたためレガシーでは消滅した。
一応相棒のルール変更で直接は唱えられないようになったが、通ったら実質終了というのはアレなので、未だ禁止カード指定のままである。

《ザーダ》、《魔力の櫃》、《歩行バリスタ》の3枚と(2)(赤/白)(赤/白)を出す手段があれば理論上は1キルが成立。
現在このコンボが使えるのはヴィンテージなので、おそらくは《Black Lotus》と土地1枚で賄われると思われる。


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最終更新:2021年12月14日 10:26

*1 無色マナを+1/+1カウンターに変換し、+1/+1カウンターをダメージに変換出来るクリーチャー。

*2 同じ用に無限マナを生み出して《黄鉄の呪文爆弾》の使用→回収→再設置を繰り返して勝利する【ボンバーマン】というデッキにちなんで【ザーダボンバーマン】とも