モケーレ・ムベンベ(未確認生物)

登録日:2016/07/16 (Sat) 00:30:58
更新日:2023/08/17 Thu 15:10:10
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概要

コンゴ共和国の北東部に位置するリクアラ地方に存在する楕円形の湖、テレ湖。
周りをジャングルに囲まれたこの秘境の湖で目撃されるのがモケーレ・ムベンベである。
その正体は絶滅したはずの恐竜の生き残りではないかと言われていて、
そのロマンや神秘性からネッシーやビッグフットに比肩する知名度を持つUMAである。
なお、モケーレ・ムベンベという名は現地の言葉で「虹」を意味する。

形態

体長は5~15m。四足歩行で、柱のような脚の周囲は90㎝、歩幅は2mほどと推測されている。
胴体は滑らかな肌に覆われ、身体の色は赤味のかかった茶色から灰色、黒い大きな模様があったなど様々。
首と尻尾は長く爬虫類に酷似しており、首の先には三角形の頭部がある。
少ない事例だが、頭部に角、もしくは鶏冠かエリマキのようなトサカがあったという目撃報告も確認されている。
草食性にもかかわらず 性格は狂暴で、 人間や他の生物を見かけると積極的に襲い掛かるという。

モケーレ・ムベンベが棲息しているとされるテレ湖は南北約3キロ、東西約2.5キロの楕円形をしている。
水の色は赤茶色に濁っており、水深は2m、深い所でも3mほどしかない。
恐竜の生き残りが棲息するには狭過ぎるのではないかという小ささだが、そこに行くのはベテランの探検隊や調査団でも決して容易い物ではない。

テレ湖は 最も近い村からでも3日間は歩き続けないと辿り着けない 秘境中の秘境 であり、
更にテレ湖周辺の土地は聖域として崇められているらしく、地元住民でも不用意に近づく者は滅多にいないという。
また、湖岸には岸辺らしき岸辺がなく、水辺のすぐ近くまで迫ったジャングルが湿地帯を形成している。
このため湖を一周回るだけでもかなりの日数がかかり、一周するのにおよそ3日ほどかかるという。
テレ湖の周囲長はおよそ6キロ。 公園にあるちょっと広めの池を二回りほど大きくした程度の湖 で、
一周するのに日付単位での時間を費やす というのは、ここが如何に探索困難な人跡未踏の地であるかを知らしめてくれる。

事実、リクアラ地方は、全面積の約80%が人間の手が入っていない 未調査地域 であるため、その環境は未だ多くの謎に包まれている。
滅びたはずの生き物が生き残っていたり、新種の生物が独自の生態を築いていたりしても全く不思議ではないのだ。

湖畔に響き渡る怪物の咆哮


1981年10月9日から12月9日までの2か月間、テレ湖を探索したアメリカの探検隊が、モケーレ・ムベンベに関する画期的な成果を上げた。
探検隊のリーダーはハーマン・レガスターズ。NASAのジェット推進研究所に勤めている工学技士である。
宇宙技術に関わる仕事に就いている彼は、衛星から受信した位置情報を変換できる特殊なレシーバーをはじめ、数々の最新機器を携えて探索へと乗り出した。

一行がテレ湖に到着したのは10月下旬。
だが、それから間もない10月29日の早朝、激しい水の音を聞いてテントを飛び出したレガスターズは驚くべきものを目撃する。
長い首と爬虫類のような頭を持った巨大な生き物が、テレ湖を悠々と泳ぎ進んでいたのだ。
怪物は彼がその姿を確認するやいなや、水中に没したという。
数秒というほんの短い時間ながら、未知の生物を自ら目の当たりにしたレガスターズは、モケーレ・ムベンベの実在を確信したという。

次いで11月4日、今度は湖に注ぐ小川の付近を歩いていた探検隊が、耳をつんざくような凄まじい叫び声を聞いた。
それは今まで聞いたことも無いような不気味で恐ろしい声であり、
探検隊に参加していたコンゴの生物学者で動物管理長も務めるエチアルセンジュ・ミンゴルー博士にも何の動物か全く分からなかった。
謎の叫び声はその夜、何度も湖畔に響き渡り、一行は眠れぬ夜を過ごしたという。

この叫び声はテープに録音され、アメリカに帰国後、専門家たちの分析にかけられた。
分析したメンバーは、カリフォルニア州のボーグ・ウォーナー力学研究所の音響分析専門家ケニス・テンプリン、
ドイツのチュービンゲン大学の動物声紋学の権威であるデヴィッド・ヴァイシャンベル博士ほか、動物学・爬虫類学の専門学者5人である。

彼らによる徹底的な精査の末、得られた結論は以下のようなものだった。

1.叫び声の音源は複数の動物である。
2.叫び声はそれぞれ場所を変えて発せられている。
3.叫び声はアフリカに棲息する既知のどの動物にも該当せず、明らかに未知の大型動物のものである。

つまり、録音された叫び声は明らかに未知の生物のものであり、
このテープは未知の生物=モケーレ・ムベンベが実在するという、明白な科学的証拠となったのだ。

カメラに捉えられた怪物

レガスターズが率いる探検隊のモケーレ・ムベンベ目撃は更に続いた。
11月24日の午前9時ごろ、探検隊のメンバーであるコンゴ人の狩猟官らが、テレ湖の湖面を移動する謎の生物を目撃。
生物の体長はおよそ12m、体色は暗褐色で、水面に波を立てながら湖の北部を泳いでいた。
彼らは実に8分間にわたってその姿を双眼鏡で観察し続けたという。

そして11月27日、モケーレ・ムベンベがカメラに捉えられた。
撮影者はハーマン・レガスターズの妻であるキーア・レガスターズ。
彼女は湖をボートで調査中、ボートからわずか30mの距離から、突然ヘビの頭のようなものが2mも突き出てきたところを目撃し、
とっさにカメラを取り出して撮影したのだ。
ただし、怪物はすぐさま水中に潜ってしまったため、シャッターは一回しか切ることが出来なかった。
この間、わずかに5秒。カメラの露出もピントも、正確に合わせる余裕など全くなかった。
現像を終えた写真は、当然ながらピンボケではあったが、それでもそこには水面に浮かぶ"何か"の姿が写っていたのである。
そしてこれは、モケーレ・ムベンベを撮影した、数少ない貴重な写真となったのだ。

主な目撃の歴史

  • 1776年
リーヴァン・ブロワイアール神父の著による「フランス伝道団回想録」によると、
神父の一行がコンゴ地方のジャングルを進行中、周囲が90㎝もある大型の足跡の列に遭遇した。
しかも、それぞれの感覚は2.1~2.4mもあったという。
これは最大級のゾウに匹敵する物だったが、そこには鋭い爪跡も残されていたため、
ゾウのものではないことは明白だった。

  • 1800年代末
アフリカのピグミー族が、モケーレ・ムベンベを殺して食べるという事件が発生した。
小さな沼で水生のイモを栽培していたピグミー族の村に、巨大な怪物の群れが現われ、沼をかき回して広げ、木々をなぎ倒した。
後日、怪物の群れは再び姿を現し、そのうちの1頭がピグミー族が防御用に作った柵を乗り越えて来たため、大勢で取り囲んでで殺した。
その肉を村人が食べたところ、肉を食べた全員が死亡してしまったという。

  • 1880年
イギリスの冒険商人アロイシャス・スミスが、未知の巨大動物を発見。
この動物を、現地では「ジャゴニニ」と呼んでいたという。

  • 1909年
ドイツの著名な動物商人カール・ハーゲンベックが、「野生の動物達」(原題:『Savages and Beasts』)という書物の中で、
「コンゴ地域に半分ゾウ、半分竜のような謎の生き物がいる。恐竜の生き残りの可能性が高いだろう。」と言及する。

  • 1913年
ドイツのリクアラ・コンゴ探検隊の体長フライヘル・フォン・シュタイン大尉が政府に提出した報告書に、
原住民から聞いた話として、未知の巨大動物についての記述が掲載された。
内容を要約すると、以下のようになる。
それは、粘土質の岸壁の水面下に開いた無数の洞穴内に潜み、時には白昼でも餌の植物を探しに、陸地へ上がってくる。
好物は川べりに映えているリアナで、これは白い大輪の花を咲かせ、ゴム質の乳液を出し、リンゴに似た硬い果実をつける。
住民の話では、茶色がかった灰色のすべすべとした表皮の動物で、大きさはほぼゾウ、少なくともカバくらいはある。
長くて自在に曲がる首を持ち、一本の長い牙もしくは角がある。また、尾も極めて長く、ワニのそれのように強力だという。
もしカヌーがうっかり近づきすぎると、すぐに襲って転覆させ、乗り手を殺す。
だが、彼らを食べることまではしない。

  • 1930年
フランス領赤道アフリカ(現在のチャドおよび中央アフリカ共和国)の主任狩猟検査官ルシアン・ブランクの元に、
「巨大なヘビが水面に出現し、岸辺の木の枝を食べた」という目撃証言が寄せられる。

  • 1938年
ドイツの科学者レオ・ワオン・ボフバーバー博士が、
カメルーンのある地方を探検した際、原住民から怪物に関する話を聞き書きし、メモやスケッチ類、データなどを作成したが,
帰国途中、スペイン領ギニア(現材の赤道ギニア共和国)の川で火事に遭い、 全てを流失してしまう。

  • 1948年
ドゥアラ国際空港の航空保安官A.S.アレイが、
子供の頃(1979年当時)にカメルーン南西のバロンビムボ湖で友人と水泳中、2頭の首の長い怪獣が湖面に姿を現したのを目撃した。
一頭は首の長さが1m、体長5m、頭部の大きさは60㎝ほどで、角が一本あり、全体的に大蛇のような姿をしていた。
もう一頭は姿こそ似ていたが一回り小さかったという。

  • 1960年代
コンゴ南東部のモカンギで、猿を狩猟しに訪れたニコラス・モンドンゴが、
コンゴ民主共和国との国境付近を流れるサンガ川の支流リクアラ-ヘルベス川の川沿いを歩いていたところ、
12mほど離れた川面から赤茶色の皮膚と長い首を持った巨大な怪物が姿を現した。
頭部には鶏冠に似たひだのようなトサカがあり、体長は9m、背丈は6mほどあった。
ニコラスは3分間にわたって怪物の姿を観察したが、尻尾の部分は水中に隠れていてよく見えなかったという。

  • 1966年8月
コンゴのルボモ(現在はドリシーに改名)北東で、イヴァン・リデルが巨大な足跡を発見。
一見するとカバに似ていたが、カバの足跡は指が4本なのに対し、謎の足跡は指が3本だったため、違う生き物であるのは明らかだった。

  • 1979年2月
ゾウ狩猟を専門とするハンターのモンゴメラが、テレ湖近くの川面から長い首を出して木の葉を食べている怪物を目撃した。
モンゴメラによれば、モケーレ・ムベンベはテレ湖よりも、むしろその周辺の川で多く目撃されているという。
この証言は1988年の早稲田大学の探検隊が、本人にインタビューした確認したもの。

  • 1979年
アメリカの動物学者フィリップ・エイバーバッグが、
航空保安官から得た「大きな頭をした怪物が、湖面に消えていくのを見た」という証言を報告した。

  • 1980年
アメリカ、シカゴ大学の生物学者ロイ・マッカル博士が、
コンゴ共和国における調査・探検で、インポフォンド、エベナ両地区の原住民から、30件以上ものモケーレ・ムベンベの目撃情報を収集。
更に、モケーレ・ムベンベの好物と言われる木の実マロンボを持ち帰る。

ただし、このマッカル博士の調査手法には非常に批判が多い。
何しろ彼らは原住民が「そんなものは見たことない」と言っている場合でも、
「いや、君たちは本当は怪物の存在を知っているけど隠しているんだろ!?そうだろ!?そうだよね!?」
という勢いでまくしたてた。

……突然やってきた、しかも銃で武装している西洋人の集団にこんなに詰め寄られたら、適当に話を合わせたとしても何の不思議もあるまい。

  • 1981年1月10日
再度、コンゴ共和国に赴いたマッカル博士は、道中の度重なる事故でテレ湖に到達することは出来なかった。
しかし、付近の湿地帯でゾウなどとは異なる巨大な生物が尻尾を引きずったとしか思えない異様な形をした通過跡を発見した。

  • 1982年5月1日
コンゴ共和国政府によって派遣された生物学者マルセラン・アニャーニャ博士を隊長とする探検隊が、
テレ湖の湖面をうごめく茶褐色のモケーレ・ムベンベを目撃。
怪物は長い首とヘビに似た顔を持ち、大きな胴体を湖面からのぞかせて、首を左右に揺らしていたという。
アニャーニャ博士はカメラを取り出して撮影したが、突然の出現に焦ったのか レンズの蓋を外すのを忘れてしまい、 撮影は失敗したという。

  • 1988年
日本の早稲田大学探検部が、テレ湖の湖畔にキャンプを張り、24時間体制で40日間にわたり探索を行う。
この調査の詳細は手記として出版されているが、むしろ謎の巨大生物の存在を否定する内容が多い。
例えばテレ湖の水深を測定した結果たったの2メートルしか無かった。
またこの時、ガイドが怪物を目撃していると言われるが、手記によれば現地ガイドはしょっちゅう見間違いをしていた上に、現地のガイドは単に探検隊に話を合わせているだけとも言われるので、この証言の信憑性は心もとない。

正体の考察

目撃されたモケーレ・ムベンベの特徴に完全に合致する生物は、既知の動物の中には存在しない。
そこで正体として真っ先に上げられるのが、中生代に栄えた恐竜、アパトサウルスに代表される「竜脚類の生き残り説」である。
長い首と尻尾に爬虫類を思わせる小さな頭、太く頑丈な4つの脚など、モケーレ・ムベンベの特徴はアパトサウルスのそれにピタリと当て嵌まるのだ。
しかし、ここで問題になるのがその生態。
モケーレ・ムベンベはテレ湖をはじめ付近の河川や沼などの水中にいるところを頻繁に目撃されるが、
その正体とされる竜脚類も、一昔前までは 水中で生活していた という設定が一般的だった。
だが、近年では彼らの 生活の拠点はむしろ陸上だった ことが化石の状態や発掘場所からほぼ明らかになっている。
つまり、水中にいるところを目撃したという証言そのものが、皮肉にもモケーレ・ムベンベ=恐竜の生き残り説の最大の障害となるのだ。

また、モケーレ・ムベンベの目撃スケッチとして、尻尾をだらりと下げた恐竜のイラストが描かれることがあるが、
これも間違いで、最近は吊り橋のようにピンと水平に上げたのがむしろ自然な体勢だったというのが正しい学説とされている。

もう一点触れておかないといけないのは、モケーレ・ムゲムベの実在を肯定する研究者(特に恐竜説を支持する研究者)のかなりが進化論を否定するキリスト教原理主義者であることである。
彼らが恐竜説を支持するのは、「正統的な生物学者によって中生代に絶滅したとされている恐竜が現代に生きていることを証明すれば、進化論を否定できるから」という理由による(この理論は明らかに間違いなのだが)。
彼らの調査手法は客観的に見てもかなり杜撰で、湖の畔にある穴を指して「これはモケーレ・ムゲムベが冬眠するために掘った穴に間違いない!!」とか言い張ったりしている(でもなぜか掘り返してみたりはしない)。
モケーレ・ムベンべに限らず、UMA研究の世界にはこういう勢力が一定数いて、あくまで学術的にUMAの存在を証明したい研究者らとしばしば衝突している。

これらを統合すると、モケーレ・ムベンベを現代まで生き延びてきた恐竜とするには無理があるようだ。
そこで、近年では恐竜に酷似した特徴・生態を持つ新種の爬虫類ではないかという説が持ちあがってきている。
その一つとして挙げられるのが「未知の巨大オオトカゲ説」。
この説は前述のロイ・マッカル博士も支持しているが、現存するオオトカゲは殆どが肉食性であり*1、草や木の実を好んで食べるモケーレ・ムベンベとは生態が食い違っている。

他には更なる新説として「サイ説」も登場している。
これは、イギリスのBBC放送で、サイの絵を見せられた原住民が、「モケーレ・ムベンベ!」と発言したことから生まれた説である。
クロサイやシロサイなどの、アフリカ産サイの生息地は草原が生い茂るサバンナであり、
ぬかるんだ湿地に無数の樹木が立ち並ぶジャングルの奥地で見かければ、確かに未確認生物とも言えるだろう。
しかし、テレ湖周辺の住民たちは似たような特徴を持つ動物を総じて「モケーレ・ムベンベ」と呼称する傾向があるため、結局のところ、真実は謎である。
モケーレ・ムベンベの正体は本当に恐竜の生き残りなのだろか?
あるいはジャングルの奥地に適応した新種のサイなのだろうか?
それとも…?


追記・修正は徒歩でテレ湖まで辿り着いた方がお願いします。

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最終更新:2023年08月17日 15:10

*1 トカゲ全体を見渡せば、ウミイグアナやチャクワラなど、草食性のトカゲもいないわけでは無いが。