十和利山熊襲撃事件

登録日:2016/07/15 (金) 18:21:15
更新日:2021/10/18 Mon 11:19:20
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※この項目では実際に起こった凄惨な獣害事件を明記しています。閲覧には注意してください。


2016年5月~6月にかけて、秋田県鹿角市十和田大湯近辺で発生したツキノワグマによる獣害事件。
4名死亡、2名軽傷、1名反撃無傷という事で、本州単独での被害規模としては1番目に位置する。
なお、被害人数としては国内史上3番目ではあるものの、後述の理由から国内史上4番目以降にカウントされている。
行政は注意喚起をしていたが、身勝手な人間の行動によって被害が拡大した為、近世日本の動物襲撃史に類を見ないほどの大量食害となった。


【背景】

十和田湖の南、青森秋田の県境に聳える十和利山(990メートル)の裾野に広がる、熊取平と田代平の牧場地帯で、
相次いで発生した4件のツキノワグマによる襲撃、及び死亡事件が発生した。
全てタケノコ採りがキーポイントである。

【5月20日】

2016年5月20日、鹿角市十和田大湯字熊取平の竹林にネマガリダケを採りに行っていた男性(79歳)が行方不明になり、
翌21日7時頃に捜索していた秋田県警鹿角署員が周辺で遺体を発見した。
また、同じ日には60歳代の女性がタケノコ採りをしていたところ熊に襲われ重傷を負った事故も発生しているため、
警察は出没地点に注意を呼びかける看板を設置した。

【5月22日】

5月22日7時30分頃、最初に襲撃された男性が発見された場所から北西に800メートルの場所で、
男性(78歳)が妻(77歳)と共にタケノコ採りをしていたところをクマに襲われる。

その際、男性は妻に「逃げろ」と告げたために妻は無事だったが、約6時間後の13時20分頃、
500メートル南の場所で捜索中の鹿角署員や消防によって男性の遺体が発見された。
遺体には側頭部や腹部に爪傷や咬み傷があった。

相次ぐ死亡事故に鹿角市が周辺の道路を通行止めにしたほか、注意看板を周辺5か所に設置。
周辺で注意を呼びかけるチラシ配りをするなどの対応を行った。

【5月29日】

5月29日8時50分頃、2人の遺体発見現場から北東に約3キロメートルの十和田大湯字田代平の竹林で、
息子(50歳代)と共にタケノコ採りをしていた女性(78歳)が背後からクマに襲われ重傷を負った。

【5月30日】

5月30日11時05分頃、田代平でタケノコ採りをしており、25日から行方不明になっていた男性(65歳)の遺体を鹿角署員が遺体で発見する。
遺体はクマにかじられたと見られ激しく損傷しており、死後数日が経っていると思われる。

【6月10日】

6月10日10時40分頃、山菜採りに出かけた3日前の6月7日から行方不明になっていた女性(74歳)の遺体を発見。
食べられていた痕跡があった。
同日14時頃、女性の遺体発見現場から10メートルほどの場所で鹿角連合猟友会が体長1.3メートルのメスのツキノワグマ1頭を射殺した。

【解剖】

6月13日にツキノワグマを司法解剖した結果、胃から人体の一部が検出された事から、そのツキノワグマが食害していた事がわかった。
翌14日には、秋田県知事の佐竹敬久が県議会予算特別委員会の総括審査で入山自粛を呼び掛けた。
しかし、現場は国有林や私有林、牧草地が入り混じっているため入山制限は困難との見方を示した。

【その後】

その後も熊取平や田代平へタケノコ採りをする人が絶えないため、警察は18日から周辺の国道104号や県道7カ所に検問所を設置した。
その後6月30日に男性(54歳)がクマに襲われけがをする事件も発生しているが、田代平からは9キロメートルほど離れており、
一連の事件と関係があるかどうかは定かではない。

【見解】

一連の事件で襲ったクマについて、5月31日から6月1日まで現地で調査を行った「特定非営利活動法人 日本ツキノワグマ研究所 理事長 米田一彦」は、
5月頃の雌クマは反撃性・攻撃性が低い為、オスのツキノワグマの仕業であると断定した。
また、射殺されたメスのツキノワグマの胃の中の肉片が微量だったことから
「たまたま」現場にいて遺体を食べていたか、襲ったとしても複数のクマによる行為であったと推測された。

つまり、特定の個体による獣害ではなく、その地域に生存しているクマ達による獣害となった可能性が極めて高い。

【それでも入山】

県道東側は5月下旬、十和田市の男性の遺体が見つかり、新郷村の女性が襲われた現場もある。
入山しようとしていた八戸市の家族連れは「深く入らないから大丈夫」と話した。

犠牲者が出た山林を避け、県境にまたがる十和利山の登山道脇でタケノコを採る人も数人いた。
五戸町の男性(69歳)は「クマに出くわす不安はあるが、タケノコを採るのが好きだし、売ったお金で孫におもちゃなどを買ってあげたいので来ている」と語った。

県境では、タケノコを業者に売る人も絶えない。
「リュックサックいっぱいに40キロくらい採れば1万6千円。1日でこんなに稼げる仕事はこの辺にはない」と、10日に八甲田山系で採ったタケノコを売りに来た三戸町の男性(46歳)。
「自分は鹿角には入らないが、クマの被害で人が来なければ採り放題だと思って入る人もいるのではないか」と推測していた。


【余談】

ツキノワグマはヒグマよりも臆病でサイズも小さく、攻撃力も高くはない(あくまでもヒグマと比較してであるが)。反撃して命が助かる事もある。
そもそもヒグマと違って積極的に人間を襲う事は無いが、出会い頭でビックリしたり、背中を見せて逃げる者を追いかける習性がある為、
その場合には被害に繋がってしまう。

昔から、鈴やラジオを鳴らして熊避けにする事はあったが、現代のクマは人々の新しい行動、活動に順応しやすくなってきている。
今回の殺人グマも、タケノコ採りに来た人が所持している鈴を逆に目指した可能性がある事に注意したい。

クマの1匹が獣害を犯した場合、別のクマがその遺体に出くわして食害参加してしまうと、そのクマも獣害を犯す可能性が極めて高い。
今回の様に、狭いエリアで生活しているクマ達ならば尚更である。


海外には各種動物による獣害が多く存在するが、大型のネコ科がいない日本国内ではクマによる獣害がほとんどである。
いくら人間の社会が発達しようとも、自然と共存・共生しなければ、人間自身が豊かに生きていく事は難しい。
その自然(クマ達)を駆逐する事が、日本の自然を守る事では無い事には留意したい。





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最終更新:2021年10月18日 11:19