Time Vault(MtG)

登録日:2016/07/13 Wed 04:14:34
更新日:2023/06/17 Sat 22:17:44
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《Time Vault》は、トレーディングカードゲームMagic the Gatheringのカードの一枚。最初の基本セット、アルファ版にすでに収録されていた。


Time Vault (2)
アーティファクト
Time Vaultはタップ状態で戦場に出る。
Time Vaultはあなたのアンタップ・ステップの間にアンタップしない。
Time Vaultがタップ状態である間にあなたがあなたのターンを始める場合、代わりにあなたはそのターンを飛ばしてもよい。そうした場合、Time Vaultをアンタップする。
(T):このターンに続いて追加の1ターンを行う。

「時の櫃」を意味するカード名通り、「自分のターンを貯蔵し(=飛ばし)、その後にターンを得る」ような効果をイメージして作られている。

追加ターン(TCG)の項目も参照してほしいのだが、自分のターンを連続して行うエクストラターンというのは非常に強力な効果を持っている。
このカードはパワー9にも数えられた《Time Walk》と同様、たった2マナでそれを発生させる効果を持っているが、タップインであるためターンを得るにはまず相手にターンを渡さねばならず、その上先に自分のターンをスキップしなければアンタップすらしないため単純には使いづらい。


そのため、こちらは黎明期によくある使いにくいカードの一枚として埋もれていった…。

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「あれ、このカードヤバくね?」と思ったあなたは正しい。

最初に「タップインだから使いにくい」とは書いたが、逆に言えば別のカードでアンタップさえできれば簡単にターンを得られてしまう。
例えば同じアルファに収録されたカードに《ぐるぐる》というカード((青)で好きなパーマネントをタップorアンタップできるインスタント)があるが、それが《Time Walk》と同等のカードになってしまうのである。
連続してアンタップする手段が用意できれば…、後は「ずっと俺のターン!」状態である。

そうした悪用手段があるため、このカード、実は四回エラッタを受けたかなり曰くつきのカードである。


一番最初のテキストはこちら(この項のオラクルは当時の物を現代流に解釈して表記しています);

Time Vault (2)
アーティファクト
Time Vaultはタップ状態で戦場に出る。
Time Vaultはあなたのアンタップ・ステップの間に通常のアンタップはせず、あなたのターンを飛ばすことでアンタップする。
(T):この後に追加のターンを得る。

最初に書いた通り、連続的にアンタップする手段さえあれば簡単に無限ターンになる。
そのため、アーティファクトをクリーチャー化する《動く秘宝》とクリーチャーを能動的にアンタップすることのできる《賦活》とのコンボが開発された。
(余談だがこの《賦活》というカード、《サルディアの巨像》とのコンボや《停滞》の維持コストのために《極楽鳥》につけられるなど、黎明期のジョニー御用達のカードであったようである。)


あんまりにも悪用が酷いので出されたのが最初のエラッタ;

Time Vault (2)
アーティファクト
Time Vaultはタップ状態で戦場に出る。
Time Vaultはあなたのアンタップ・ステップの間にアンタップしない。
Time Vaultがタップ状態でturnカウンターが置かれていない場合、あなたのターンを飛ばすことでTime Vaultをアンタップし、その上にturnカウンターを1個置く。
(T):Time Vaultからturnカウンターを取り除くことで、次の通常のターンの前に追加ターンを得る。

Turnカウンターが必要になり、無限ターンも封じられてめでたしめでたし…とはならなかった

これは最初のテキストからあった問題なのであるが、そのまま解釈すると、アンタップ・ステップ(当時はフェイズ)が始まってからそのターンを飛ばすかどうか決めることになる。これではおかしいので、この選択は前のターンが終わってからあなたのターンが始まるまで、つまりターンの間に行われると解釈された。


が、この「ターンの間」という概念がフェイズ・ゼロなる奇ッ怪なバグデッキを生み出すことに…

+ フェイズゼロって?
ミラージュに登場したマナ・クリーチャーに《根の壁》というカードがあり、タップも不要で毎ターンマナを生み出すが、「各ターンに一回」という制限があった。
が、この能力を「ターンの間」に使うことによって、「誰のターンでもないため、1ターンに1回の制約を無視し、無限マナを生み出すことができる!!」と考えられたのである。
まるで意味がわからない。もちろんそのままではアンタップフェイズに無限のマナバーンをしてしまうが、「《停滞》でアンタップフェイズを飛ばせばいいよね!」とかもっと分からない。とどめはアップキープに《天才のひらめき》あたりを相手に打てばOK。

また、このオラクルのままならturnカウンターを「増殖」する手段とアンタップ手段があれば倍速駆動可能だった。
(例:《伝染病の留め金》+4マナ出せる状況で一度turnカウンターを出せば、後は増殖→アンタップ→起動で倍速駆動、追加ターン中に追加ターンは得られないので無限ターンは不可)。もちろんカードの収録範囲が全然違う(実に17年)ので当時は問題にならなかったが。
あとは《最後の賭け》で増えたターン(但し消化すると敗北)をこのカードに貯める(ターンが飛ぶので終了ステップの遅延誘発能力での敗北が誘発しない)ことで最後の賭けのデメリットを無くすロンダリングみたいなこともできた。要はTime Walkである。


ルールの穴を拡大解釈してそのままブラックホールにまで拡張したかのようなこのバグを封じるため、二度目のエラッタ;

Time Vault (2)
アーティファクト
Time Vaultはタップ状態で戦場に出る。
Time Vaultはあなたのアンタップ・ステップの間にアンタップしない。
あなたの次のターンを飛ばす:Time Vaultをアンタップし、時間カウンターをTime Vaultの上に1個置く。
(T),Time Vaultからすべての時間カウンターを取り除く:この後に追加のターンを得る。この能力は、Time Vaultの上に時間カウンターが置かれている場合にしかプレイできない。

このテキストだと《Time Vault》は時間カウンターを乗せればいくらでもアンタップできるため、これはこれで問題があった。
パーマネントをタップすることでダメージを与える《炎の一斉攻撃》と組み合わせれば、無限ダメージを与えられるようになったのだ。
…なんかどんどん趣旨から外れてる気がしてきた…


ええい! それならアンタップ状態になるときに、タップ状態にしたままにするかアンタップして次の自分のターンを飛ばすかを選択させりゃいい!!
…ということで出された三度目の正直のエラッタがこれ;

Time Vault (2)
アーティファクト
Time Vaultはタップ状態で戦場に出る。
Time Vaultがアンタップ状態になる場合、代わりに以下の2つから1つを選ぶ。「Time Vaultをアンタップし、あなたの次のターンを飛ばす。」「Time Vaultをタップ状態のままにする。」
(T):このターンに続いて追加の1ターンを行う。

だが、時間カウンターが必要なくなったので《ミジウムの変成体》を毎ターン《Time Vault》にコピーさせ続けることで無限ターンが可能に…



も う い や だ !!!

開発部の中心でWotCの誰かがそう叫んだのか、さすがにイタチごっこに嫌気がさしたのかはわからないが、四度目のエラッタが出され、その結果出されたのが最初のテキストである。もちろんフェイズ・ゼロはルールレベルで対策されて消滅した。

他の事情としては、もともとこのカード、カードプールの都合上構築環境で使用可能なのはエターナルだけだったというのもある。
またWotCが「カードパワー調整のためだけのエラッタは解除する」方針に転換していたことも理由の一つであるようだ(エラッタ(TCG)の項目も参照のこと)。

そんなこんなで《Time Vault》は晴れてレガシーの禁止カード、ヴィンテージの制限カードに指定されましたとさ。

カードプールの広がりもあって悪用手段は現在はさらに増えており、特に《求道者テゼレット》との相性は最高クラス。
自力で《Time Vault》のサーチもアンタップも賄え、さらに勝利手段まで備えている。
また、《通電式キー》との組み合わせなら「たった4マナで無限ターン」も可能であり、これらのギミックを搭載したTezzeret's VaultないしVault Controlと呼ばれるデッキはヴィンテージで猛威を振るっている。
このコンボを主眼にしたものは減ってきてはいるが、コンボパーツが少ないので他のデッキにもしれっと組み込まれてる事が多い。
特にアーティファクトを中心にしたデッキにはまず入っていると言っても過言ではないので対戦する機会があれば注意しよう。


《Time Vault》の項目にも追記・修正(エラッタ)を四回お願いします。

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最終更新:2023年06月17日 22:17