ギリシャス(ウルトラ怪獣)

登録日:2016/07/12 Tue 21:13:46
更新日:2022/10/23 Sun 01:11:41
所要時間:約 7 分で読めます





ギリシャスとは、内山まもるの漫画版『ウルトラマンレオ』に登場した怪獣である。
出番が割り振られたのは『小学三年生』連載版で、1974年7月号掲載の第4話「マシンロボ・ギリシャス」に登場した。
肩書はそのまんま「ロボット」。

ちなみにギリシャスの登場回は、後にコロコロコミック1979年特別増刊3号にも傑作選として再録されており、
その号に同じく掲載されたのが『ウルトラ兄弟物語』のエピソード「ウルトラ一族の大反乱」である。


◆概要

分類としては、映像作品で言うところのキングジョーやヘルズキングと同類の、所謂ロボット怪獣の部類。
ただし宇宙人による侵略兵器ではなく、地球人が作った代物なので、設定的にはマウンテンガリバー5号や、
Z』仕様のセブンガーウインダム辺りと近しいところを持っている。

作中で「博士」と称される老科学者が、15年もの年月をかけて製作した巨大ロボット
無人操縦の類ではなく、操縦士を必要とする有人機タイプのメカニックであり、頭部の口元にコクピットが存在。
外観はギリシャ神話の石像や兵士を彷彿とさせるデザインで、恐らくは「ギリシャス」の名もそれが由来と思われる。
額には名前の頭文字であろう「G」が刻まれている。

ウルトラ戦士同様の飛行能力をデフォルトで有している他、搭載している武装も多彩。
頭部の鶏冠をウルトラセブンアイスラッガーの如く射出するのを筆頭に、腕の甲からニードルガンを連射と隙がなく、
また頭部と四肢を胴体に収納する事で、円盤生物のごとく高機動形態に変形する事も可能。

上述の通り、戦闘能力はハッキリ言って極めて高い。
なにせ、映像作品ではレオが特訓込みでようやく倒したギロ星獣を、格闘戦のみで瞬殺してしまうほどである。
反面、パイロットが気の触れた老科学者(詳しくは後述)とあってはどうしようもなく、結局そこがウィークポイントになってしまった
優れた操縦者と、真っ当な産みの親に恵まれていれば、
ギリシャスもまたウルトラマンレオと肩を並べて怪獣と戦う正義のロボット足り得た可能性もあると考えると、惜しい話である。
(もしそうであればレオの孫弟子に当たる半人前と共に戦い抜いた鋼の戦士たちに先駆けた機体となっていただろう)
戦い終えたレオ曰く「ロボットは最高だったが、中の操縦士が最低だった」。

「頭部と四肢を収納するロボット」「開発者の老科学者が物語に関わる」などといった点から映像作品の方に登場したガメロットを連想させる要素が多い。


  • 博士
白髭を生やした老科学者。
「博士」の呼び名は劇中の一般人からの呼称と、連載当時のアオリ文で「はかせ」と掲載されたのみで、本名は不明。
過去、他の科学者たちに自身にはギリシャスのようなロボットを開発することなど不可能と否定されたことがあり、
その上、変わり者*1と馬鹿にされた恨みを晴らすための一心で、15年の歳月をかけてギリシャスを建造。
地球はウルトラマンの手を借りることなく、地球人の手で守るべきと主張し、レオを排斥しようと目論んだ。
一人称は「わし」だが、ギリシャスとしての自己紹介の時のみ「おれの名はギリシャス」と自称している、なかなかヤバい爺さん。

ギリシャスのような強いロボット兵器を製造するなど決して無能ではないのだが、
その本質はマッドサイエンティストという言葉で表現する事すらおこがましい、ただの狂人
何せ、常日頃から目が渦を巻いており、口癖のように「ウヒャヒャヒャ」と気味の悪い笑い声を口走るなど、
はた目から見ていても真っ当な精神の持ち主とは到底思えない。
地球は地球人の手で守るべきという台詞もそれ単体なら立派なようだが、博士の口ぶりからしてその本意は、
怪獣や宇宙人の手から地球を守り、市民たちから感謝されているレオに対する「嫉妬」が見え隠れしており、
あろうことかレオに対して「どうせマグマ星人とグルなのだろう」と言い放つなど、博士が本気でそう信じ込んでいたかは兎も角、
当のマグマ星人に家族と故郷を奪われたレオにとっては最も許し難い侮辱を行うという暴挙に及んでいる。

こうしてみると、博士が科学者たちから排斥されたのも、技術云々より「本人の人間性」が原因だったのではと疑ってしまうが……


◇『マシンロボ・ギリシャス』あらすじ

※以下、雑誌掲載当時の柱に書かれていたコメントは青字で表記。

日本某所の山奥に存在する謎の施設、そこの格納庫にそびえ立つのは巨大ロボット・ギリシャス
開発者の博士は、自身が15年もかけて造り上げたギリシャスこそが最強のロボットであると褒め称え、
今こそその力を披露し、自分を変わり者扱いしたものたちを見返す時が来たと豪語。
操縦席に乗り込むと、格納庫のハッチからギリシャスを発進させ、空高く舞い上がった。
ロボットギリシャスとはなにものだ、てきかみかたか、ちょっときになるなあ!
いや、どう見ても操縦者からしてサイコパスそのものなんですがそれは……

一方、城南スポーツセンターでは、おおとりゲンがいつものように訓練に勤しんでいた。
バック転ノルマ60回をこなすも、流石にやりすぎたのか目を回してしまい、大村正司に介抱される羽目に陥ってしまう。
ダン「もっと厳しい特訓が必要なようだな……」

時を同じくし、市街地にマグマ星人が出現、ギロ星獣(内山まもるの漫画版では単なる悪役扱い)を従えて暴れまわる。
すぐさま変身して駆け付けてきたレオだが、ギロ星獣の怪光線や身軽なフットワークに翻弄され、苦戦を強いられてしまう。
その様子にほくそ笑むマグマ星人だったが、そこに轟音と共にギリシャスが出現。
空からの不意打ちで、あっという間にギロ星獣を屠ってしまう。
すごい力だ! ギリシャスはけっこう強い怪獣をあっというまにやっつけてしまったぞ!

突然の乱入者に面くらうレオとマグマ星人の前で、ギリシャスの口元が開き、操縦席から博士が姿を現す。
博士は、自身がかつて15年前、科学者たちから変人扱いされた事に対する恨み辛みを呟くと
これからはウルトラマンの力を借りずとも、ギリシャスによって地球人自身が地球を守れるようになると宣言。
挙句、レオがマグマ星人を中々倒すことができず、いつも取り逃がしてしまうことについて
お前たちは最初からグルなのだ。だからレオはいつもマグマ星人を逃がしているではないか」と、根拠のない中傷を行う。
地球人のために、ただでがんばってるレオにむかって、ギリシャスはよけいなことをいってるぞ!

レオは、自身の故郷や家族を奪った仇と仲間扱いされたことに憤るも、
悪い方に空気を読むことにだけは長けているマグマ星人が、博士の策略に便乗し「とうとうバレてしまったな」などと発言。
勢いづいた博士がギリシャスを操り、鶏冠をアイスラッガーの如く射出し、レオとマグマ星人を攻撃する。
マグマ星人はギリシャスを相手にするのは分が悪いと判断したか、さっさと逃亡を図ってしまう。
逆に、レオはここで自分が逃げてしまえば、根拠のないデタラメを肯定するようなものだと判断。
自身の潔白を証明するためにも、何としてでもギリシャスを打ち負かすしか選択肢はなかった。
レオは、きのどくだなあ! せっかく地球人のためにがんばってるのにマグマ星人とぐるだと思われるなんて。

悲壮なレオの心情も気を払うことなく、ギリシャスの対戦相手が残っていることにご満悦の博士は
地球人との戦いを好まないレオの説得にも耳を貸さず、ギリシャスを高機動形態へと変形させる。
覚悟を決めたレオをもタックルの連撃で翻弄するが、突如として戦場からレオの姿が消えてしまう。
頭部だけ出して周囲を伺うギリシャスだったが、実はレオは人間大サイズになってギリシャスの死角……首筋にしがみ付いていたのだ。
敵が頭部……コックピットをのこのこと露出させてしまったのを好機と見たレオは、すかさず再度巨大化。
飛行中のギリシャスのボディに組みつくと、そのまま地面に向かってきりもみ回転を仕掛ける。
それは、先ほどゲンがスポーツセンターで訓練していた、回転練習の成果によるものであった。

そう、確かにギリシャスは堅牢なロボットであったが、操縦者は所詮普通の人間に過ぎない事に気付いたレオは、
パイロットを戦闘不能にすることで、余計な血を流すことなく決着をつけることとしたのである。
その目論見は成功、急速回転させられながら地面に叩きつけられたギリシャスは傷一つ付かなかったものの、
当然中の操縦者はそうとはいかず、コクピットの博士は目を回してダウンしてしまった。
うまい! スポーツセンターのとっくんで、レオははかせの目をまわせばよいことに気づいたんだ。

かくしてギリシャスを打倒する事に成功したレオ。
あとは博士が吹聴した風評被害の件が気がかり……と思いきや、戦いを見守っていた市民たちから浴びせられたのは
レオ、気にしないでくれ。こんな変な博士のいったことなんか誰も信じていないよ」という励ましの声。
そう、これまで怪獣や宇宙人から守られてきた地球の人たちは、ちゃんとレオが正義の味方であることを信用してくれていたのである。
敗北のショックで完全に頭が狂ったか、動かなくなったギリシャスの上でひたすら踊り続ける博士など歯牙にもかけず、
レオは人々の感謝の言葉を背に飛び去るのだった……
よかったね、レオ。地球の人たちは、やっぱりレオのことをわかってくれていたんだね。


◆余談

ウルトラシリーズでは珍しい「地球、それも民間製のロボット怪獣」たるギリシャスであるが、これには当時の世相も反映されていると思われる。
前作『ウルトラマンタロウ』が放送されていた頃、かの伝説のアニメ『マジンガーZ』が放送。主役の声もそっくりである
これが子供たちに大ヒットし、学年誌の版元である小学館も姉妹作である『ゲッターロボ』の掲載権を取得。
『レオ』放送時には『ゲッター』が子供たちにバカウケとなり、学年誌には『レオVSゲッターロボ』という版権の垣根を超えた企画も掲載されていたほどである。
ギリシャスは、当時のそんなロボットアニメブームを反映したキャラクターとも言えるのだ。


追記・修正はウルトラマンレオをちゃんと信用してくれてる人がお願いします。

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最終更新:2022年10月23日 01:11

*1 単行本掲載時。恐らく連載版はもっとアレな記載だったと思われる。