貞子VS伽椰子

登録日:2016/06/28 (火) 23:00:00
更新日:2023/09/30 Sat 03:41:23
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バケモン

には

バケモン


ぶつけんだよ!


今やジャパニーズゴーストの代名詞となった『リング』シリーズの貞子と、インパクトある外見と呪いの不条理さから、怖さでは貞子を上回るとも言われる『呪怨』シリーズの伽椰子。
同じ女性の幽霊ということで何かと比べられることの多い両者だが、その貞子と伽椰子の対決を描いた映画が2016年に実現した。
元々は2015年のエイプリルフールネタだったのだが、実はこの時に既に映画化の企画が進行していたらしい。

監督はコワすぎシリーズで知られる白石晃士。
コワすぎ!』『カルト』『オカルト』『ノロイ』(『ある優しき殺人者の記録』)に代表される白石ユニバースには属していないとされるが、作中にコワすぎシリーズに登場したとあるアイテムにそっくりな道具が登場し、ファンをニヤリとさせる。

貞子パートと伽椰子パートを交互に描いていき、終盤でクロスオーバーさせる構成となっている。要は『平成ガメラシリーズ』や『ギャレゴジ』、『MOVIE大戦シリーズ』のようなものである。
当初エイプリルフールネタだったこと・白石作品であること・ネタに走ったプロモーション・予告編での「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」というホラー映画とは思えないセリフからネタ映画だと思われていたが、予想を裏切って(特に前半は)ホラー作品として成り立っている。
監督曰く、「タイトルを見て『冗談だろ?』と思って見に来た人をいい意味で裏切る作品を目指した」とのこと。



○あらすじ
大学生の倉橋有里は、親友の上野夏美に、両親の結婚式の様子を収めたビデオをDVDに焼いてほしいと頼まれる。
二人はリサイクルショップでビデオデッキを買ってきたのだが、その中には怪しげなテープが入っていた。
興味本位で再生する有里だが、夏美だけがビデオを見てしまう。
もう一度見ようとする有里だが、異様に怯える夏美はビデオの再生を止める。
そこへ、夏美のスマホに非通知の無言電話がかかって来た。
後日、ビデオデッキを買ったリサイクルショップに詳細を聞きに行った二人だが、そこでビデオを見たアルバイトの子が突如自殺してしまったことを知った。

時を同じくして、とある住宅に高木鈴花という女子高生が引っ越してきた。
突然の引っ越しに戸惑う鈴花だが、向かいにある家に只ならぬ気配を感じる。
後日、クラスの友人から、その家は以前一家心中があり、入った者は呪われて死んでしまう「呪いの家」であると聞かされる。
その日の帰り道、呪いの家の前に四人の男子小学生がいるのを目撃する。
あまり深入りはすまいとする鈴花だが、翌日、近所の小学生四人が行方不明になったことを知るのだった。

呪いのビデオを追う大学教授の森繁新一の紹介で、霊能者の法柳の除霊を受ける夏美。
だが呪いのビデオに取り付く幽霊、貞子の力は凄まじく、法柳は返り討ちにあい、助けようとした森繁も死んでしまった。
絶望しかける有里だが、そこへ法柳から依頼を受けた霊能者、常盤経蔵と相棒の珠緒が到着した。
法柳から託された大金で、経蔵を雇う有里。
どうやって私達を助けてくれるのかと問う有里に対して、経蔵は言った。
バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」と。



○登場人物
  • 倉坂有里
主人公その一。
偶然手に入れた呪いのビデオを興味本位で再生するが、スマホに気を取られていたために一旦は呪いを回避する。
呪いによって周囲の人間が次々に命を落としていく中で、なんとか呪いを断ち切ろうと奮闘する。
夏美の呪いを解くために、別の人間に呪いのビデオを見せれば助かるという噂に一縷の望みを賭けるが、ただの噂だったために無駄に呪いを受けただけに終わった。

  • 上野夏美
有里の友達。
両親の結婚記念日のプレゼントにすべく、結婚式の様子を映したDVDを用意しようとするが、その過程で呪いのビデオを見てしまう。
自分だけが理不尽に死ぬことが我慢できず、呪いのビデオをインターネットにアップするという暴挙に及ぶ。

  • 森繁新一
二人の通う大学の教授。
なのだが、具体的に何を教えているのかは映画を見ていてもサッパリわからない。
講義の最中に「呪いのビデオを見つけたら高く買う」と大真面目に言い放ったり、貞子が見たいという理由でお祓いを断ったりと、幽霊を見ることに常軌を逸した情熱を持つ。
「貞子を見るまでは死ねない」と言っていたが、その願いも虚しく、呪い(物理)により顔面を潰されて死亡。

  • 高木鈴花
主人公その二。
呪いの家の近所に引っ越してきた女子高生。
呪いの家と波長が合い、その影響で家に呼ばれているらしい。
小学生を見殺しにしてしまったという自責の念にかられていたが、それを利用されて家に誘い込まれてしまう。

  • 法柳
森繁の知人である霊能力者。
無理やり水を飲ませ続けるというかなり強引な方法で除霊を行うが、貞子の反撃に遭って呪い殺される。

  • 常盤経蔵
腕は確かだが報酬もバカ高いという霊能者。
ついでに口も悪い。
以前から目をつけていた呪いの家を利用して、貞子を倒そうと試みる。

  • 珠緒
経蔵の相棒の、盲目の少女。
生意気な性格をしており、森繁の死体を見て「無駄死に」と言い放つ。
目が見えない割にはスタスタ歩き障害物を難なく跨ぐのはご愛嬌。
目が見えない代わりに、霊をイメージで捉えることが出来る。

  • 小学生達
名前は不明。
鈴花が見かけた一人が、三人組からいじめを受けていた模様。
「呪いの家に入ったら許してやる」と無理矢理家に入らせるが、いじめられっ子に石をぶつけられて激怒し、自分達も家に入ってしまう(なお、いじめられっ子がビデオ版のように取り憑かれたのか、あるいは伽椰子の存在を感じ取り、利用して仕返ししようと考えたのかは不明)。
その結果、一人は台所下の棚に、もう一人は湯船に、伽椰子によって引きずり込まれる。
リーダーも、俊雄によって天井に引っ張り込まれた。
なお、伽椰子がいじめられっ子の味方などするはずもなく、いじめられっ子も伽椰子によって押し入れに引きずり込まれてしまった。
警察は家出として処理した様子。



○登場する幽霊
今作品では二人を戦わせるという無茶を実現すべく、白石監督による設定再構築が行われている。
監督曰く「今回のために両シリーズを後追いで見て、不要な設定を削って統合した」とのこと。
(白石は海外ホラーのほうが好きなので両シリーズを見てなかった

したがってここに登場する二人は名前こそ貞子、伽椰子だがオリジナルとはほぼ別物。
要は平成ライダーで言うところのリ・イマジネーションである。

  • 貞子
今回の呪いのビデオは前置きとなる映像が一切なく、貞子がこちらに向かってくるシーンのみとなっている。
そのため、かどうかは分からないが、死ぬまでの期間が二日と、オリジナルよりも大幅に短くなっている。
しかし、その分オリジナルよりも凶悪で、自分の邪魔をするものは決して許さず、名の知れた霊能者をも惨殺した。
犠牲者が呪いで死ぬ前に自殺しようとした場合も同様であり、その場合はタイムリミット前であっても犠牲者の前に現れ、呪い殺す。
オリジナルと同様の目を持っており、これを見た相手を狂死させる。
オリジナルの呪いのビデオは、ご存知の通り他人に見せることで死を回避できたが、今作の呪いのビデオの死の回避方法は最後まで不明のままだった(そもそも存在しない可能性が高い)。
どのような経緯で霊になったのか、呪いのビデオがどのように誕生したかは劇中では語られていない。
ついでに言うと、両手に爪がついたままであるので、井戸で死んだのではない可能性もある。

  • 伽椰子
オリジナルは嫉妬と勘違いの果てに発狂した夫に惨殺されて霊となったが、こちらは一家心中で死亡して霊になった模様(一家心中の理由は不明)。
こちらはオリジナルと大差ないが、オリジナルでは一歩でも家に入った相手をどこまでも追いかけていき、行方不明、変死、発狂など幾つかバリエーションがあったのに対し、劇中の犠牲者は全て家に入ってすぐに伽倻子によって“向こう側”に引きずり込まれている。
よって、オリジナルのように敷地外に出られるのかどうかは不明。
殺した相手の霊を使役できるのかどうかも定かではない(オリジナルと違って父親の霊が登場しないあたり、それはできないっぽい?)。
呪殺を駆使する貞子に対し、引きずりこむ・破壊するなど物理攻撃を得意とする。

  • 俊雄
オリジナルでは押し入れに隠れているところを伽椰子によって連れて行かれたが、こちらでは父親の手にかかって殺された模様。
オリジナルではただ脅かすだけの場合が多かったが、今作品では肩に飛び乗り、首を折ったり天井に引っ張りこんだりという方法で、何人かを直接手にかけている。
白石監督曰く、彼がフル参戦すると2vs1の戦いになってしまうので早めに退場させられるらしいのだが…?



以下、ネタバレ注意


















両親が伽椰子と俊雄の手にかかり、鈴花も追い詰められるが、危ないところで経蔵に助けられる。
経蔵は鈴花に協力を約束させ、計画を実行に移す。
計画とは、二人に別々の呪いをかけて、両方を消滅させるというものだった。
つまり有里に伽椰子の呪いを、鈴花に貞子の呪いをかければ、双方が獲物を奪い合い、食い合って消滅するのではないかと考えたのだ。
ただ、これは全てが最大限に上手く行った場合であり、うまく行かなかった場合の手も考えていた。
計画実行の夜、呪いの家で呪いのビデオを見る二人。
そんな二人の前に俊雄が現れるが、ついに有里の死のタイムリミットが訪れる。
貞子はまず邪魔な俊雄をテレビに引きずり込み、画面から姿を現す。
そこへ、二階から伽椰子も姿を現した。
台所へ逃げた二人を追い、衝突する両者。
最初は伽椰子が貞子を組み敷くが、貞子は逆に伽椰子を髪の毛で拘束する。
そして、見たものを呪い殺す目で伽椰子を睨みつけた。
破裂、四散する伽椰子。
貞子に追いつめられる二人だが、そこへ経蔵が助けに入った。
体を修復し、再び姿を現した伽椰子に呪いのビデオを破壊させ、その隙に外に逃げる三人。
家の裏にある井戸に向かった経蔵は、予備のプランを実行に移すことを決める。
予備のプランとは、一人が犠牲になって井戸に飛び込むというものだった。
飛び込んだ一人を追って貞子と伽椰子が井戸に入ったところを、蓋をして封じ込めようというのだ。
その役を自ら買って出る有里。
そこへ姿を現す貞子と伽椰子。
両者が飛び掛ってきたのを見計らって、有里は井戸に飛び込んだ。
衝突し、人の形を保てなくなる両者。
衝突の余波に巻き込まれて、下半身を吹き飛ばされる経蔵。
禍々しい姿となった貞子と伽椰子は、我先にと井戸の中の有里へ迫る。
そこへ、珠緒の指示を受けた鈴花が井戸に蓋をした。
封印は成功したかのように見えた。
だが珠緒は、二つの悪霊が混ざり合うのを感じていた。
吹き飛ばされる経蔵の封印。
そして、井戸から貞子と伽椰子が一つになった霊が姿を現した。
こうして、貞子と伽椰子が融合した史上最悪の悪霊が誕生したのだった。


  • サダカヤ
正式名称ではないだろうが、パンフレットにはこのように記載されている。
計略によって(物理的に)衝突させられた貞子と伽椰子が、巨大な樹木のような姿を経て、再び人の形に収束したもの。
姿は貞子の、動きと声は伽椰子のそれである。
貞子が伽椰子を取り込んだようにも、伽椰子が貞子を支配したようにも見える。
このサダカヤの呪いが、インターネットを通じて世界に拡散していくことを示唆して、映画は幕を閉じる。



追記、修正は、呪いの家で呪いのビデオを見てからお願いします。

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最終更新:2023年09月30日 03:41