深海獣レイゴー

登録日:2016/06/25(金) 14:52:51
更新日:2023/11/29 Wed 02:38:40
所要時間:約 8 分で読めます





2008年6月10日に公開された林家しん平氏監督の自主制作の特撮映画。
太平洋戦争中、トラック諸島に現れた怪獣レイゴーと、それを迎え撃つ連合艦隊の死闘を描く。
(ちなみに試写会は2007年9月14日に行われた)

【作品解説】

2005年に『ゴジラ FINAL WARS』が終了すると、2000年代には予算のかかる怪獣映画はなかなか製作されなくなってしまった。
2006年には『小さき勇者たち~ガメラ~』が制作されたがこれも興行収入は振るわずじまいであった。

この流れに危機感を感じた落語家で特撮ファンである林家しん平氏が、 「怪獣映画が少しでも盛り上がって欲しい」 との思いから自ら音頭を取り、作成したのがこの作品である。
脚本と監督は林家しん平氏が担当し、特撮面を雨宮慶太氏、原口智生氏、若狭新一氏を製作スタッフに招いて作成した。

ただ林家しん平氏によると製作と公開には非常に紆余曲折があったようで、始めはとある会社と組んで製作に入ったものの編集段階でその会社が傾いてしまい、1年半休止状態になった。

ようやく次の会社が見つかり2005年ごろに何とか完成に漕ぎ着けたものの、しん平氏は1年間も落語の高座を空けて撮影に専念してしまったので落語家としての信用がなくなり、さらに半年ほど仕事が入らなかったそうである。
(その間は力仕事のアルバイトで喰い繋いだり、果ては妻に離婚されたりと、波瀾万丈の人生を送られたとか。)

また、監督とプロデューサーが映像業界においてまだ新米だったため、予算などを相手方の言いなりに払っていたら、実はぼったくられていたようで、何だかんだで製作には1億円近い予算がかかったらしい。

レイゴーや大和、駆逐艦部分の特撮に関しては、全長180cmくらいの骨格が入った造型物やミニチュアをグリーンバックの前で棒による操りの要領で撮ったものと、細かい部分はCGを組み合わせた方式で撮影されている。

ただそのCGも予算の関係上、プロが作成したものと鹿児島県出身のアマチュアの方が自宅のパソコンで作ったものの併用であるため、カットによって非常にクオリティにばらつきがあるのも特徴。

しかし、自主制作でここまで作り上げたというのには本当に頭が下がる。

キャストには主役に『ウルトラマンコスモス』で春野ムサシ隊員を演じた杉浦太陽氏、島の古老役にミッキー・カーチス氏、大和の艦長役に『ウルトラマン』でハヤタ隊員を演じた黒部進氏、
大和の砲兵役に『ガメラ 大怪獣空中決戦』などで大迫力刑事を演じた螢雪次朗氏などの一流の方々を招いて作成されているため、彼らによる演技は見ごたえあり。

余談ながら作中にはところどころに以前の特撮作品のオマージュが盛り込まれているため、ファンならばそれがどこにあるかを探してみるのも本作の楽しみ方の一つである。

当初は単館での公開を予定していたが、クロックワークスが配給に付き、最終的には複数館で公開されることとなった。

数年後に「深海獣雷牙」という続編も作られ、2009年に公開された。こちらは現代の浅草を舞台としている。

【スタッフ】

監督:林家しん平
企画:林家しん平
脚本:林家しん平
原案:林家しん平
美術:雨宮慶太
造形:原口智生、若狭新一


【あらすじ】

※以下ネタバレ注意

時は太平洋戦争末期のこと。日本海軍の大和以下連合艦隊は南方戦線のトラック泊地に駐留中、島の古老から進言を受ける。

彼によれば 「この島は龍の島で、そいつが戻ってきたせいで祟りが起こる」 のだという。当然ながら当初は一笑に付して相手にしなかった大和の搭乗員であったが、

ある夜、敵軍の潜水艦が接近しているのを察知する。大和は先手を打って敵潜水艦に向けて主砲攻撃を行い見事に命中するも、

その敵潜水艦の正体は、実は古老が語っていた伝説の深海龍「レイゴー」の子供であった。

子供を殺され復讐に燃える親レイゴーは大和以下連合艦隊に復讐の牙を向け、共生関係にあるボーンフィッシュ(後述)を仕向けて搭乗員の多くを惨殺したり、

毎夜現れては次々と駆逐艦や伊号潜水艦を沈めていったりと甚大な被害を出し始め、連合艦隊を大いに翻弄することになる。

度重なる襲撃に業を煮やした上官達は「A-140F6 深海零号作戦」と名付けたレイゴー殲滅作戦を計画し、指揮は主人公である海堂猛の手に委ねられるのであった…。



【主な登場人物】

◆海堂猛

本作の主人公の若き大和搭乗員。
大学では海洋生物を研究しており、小島千恵とは恋仲であったが、戦況の悪化から徴兵されることとなった。
乗艦していた大和がトラック諸島に停泊していた時に、レイゴーの襲撃を受け、経歴から作戦指揮を執ることとなる。
レイゴー撃滅後は天一号作戦で大和と運命を共にした。
なおコスモスペースで怪獣保護を行っているそっくりさんに顔が非常に似ているが、関係は不明。


◆小島千恵

海堂の幼馴染で恋人の女学生である。
戦争後は海堂と結婚する予定だったらしい。そんなバリバリの死亡フラグ建てるなよ…


◆大迫登

大和の砲兵である。トラック島で知り合った女性を大和の中に連れ込んだり、
大和の艦内で禁止されている賭博をやったりと素行には若干難があるが、
レイゴー攻撃の際には自ら矢面に立って活躍した。
(ちなみに妻子持ちで、内地に残してきた子供の名前は「大迫力」であり、これはガメラへのオマージュとなっている)


◆山神長官

大和の艦長で、大和の「大和ホテル」という蔑称にはあまりいい感情を抱いていない。
初期は指揮を執っていたが、途中で海洋生物を研究していた海堂の恩師でもある松田艦長に指揮権を譲った。
ハヤタ隊員に顔が非常に似ているが関係は不明である。
(ただ、カレーを食べていた際にスプーンを大きく天井に掲げていたため、何かしらの記憶はあるかもしれない)


◆松田艦長

海堂の恩師である大和新艦長。
大学では海洋生物学の教鞭をとっていたため、その経歴が買われて指揮を執ることになった。
決戦時には海堂のサポートを行っている。


◆古老

トラック島に居住している古老で、大和の搭乗員にレイゴーの脅威を説明したが、
誰からも取り合ってもらえずに追い出されてしまった。


◆秋山艦長

駆逐艦雪風艦長。
大和の護衛として爆雷投下でレイゴーと交戦。


◆村西艦長

駆逐艦夕月艦長。雪風の応援に駆け付けるもレイゴーの反撃にあい夕月は轟沈。
彼もあっけなくレイゴーに食われてしまった…。


◆エイハブ(仮名)艦長

駆逐艦潮艦長。スキンヘッドに眼帯に銜え楊枝とかなり特徴的な風貌をしている。
名前は作品中で呼ばれていないので見た目からのイメージ。上着のボタンを外す時あやしい効果音が鳴る
レイゴー攻撃の際には爆雷投下や酸素魚雷発射で応戦したが、レイゴーの攻撃で潮は爆沈。彼も艦と運命を共にした。


◆ノーマン・メルビル

米国海軍水兵。レイゴーに仲間をやられ、唯一彼のみ生き残った。
日本語は片言ながら話すことが可能。捕虜となったが、砲兵がレイゴーの攻撃でやられた際に経験を買われ、一時的に戦闘に協力した。


◆レイゴー

体長80メートルのトラック諸島の伝承に登場する水棲肉食怪獣。大和の攻撃で子供を殺され、復讐を誓う。
夜行性で、身体から電気を放射するらしく、出現時には必ず青い稲妻を纏って出現する。また、肉食性である。
発射された爆雷を尻尾で打ち返したり、酸素魚雷を尻尾で受け流したりと、ある程度の知恵も回る模様。
最期は海堂の進言による 大和の注水を利用し、ギリギリまで甲板を傾けて46㎝砲を撃つ という戦法で腹部を撃ち抜かれて絶命した。
ちなみに 「もしもゴジラの進化前の生物が水爆を浴びずにそのまま成長していたら?」 をコンセプトにデザインされた怪獣であるため若干ゴジラに似ている。
雨宮氏はいくつかデザインを書き起こし、そのうちの一つが採用された。


◆ボーンフィッシュ

レイゴーと共生関係にある、龍に似て髑髏の頭部をもった、サメの胴体骨格の姿をした銀色に発光する深海魚。
性格は凶暴かつ好戦的。深海性の為レイゴー同様、深海にて行動し夜になると海面に上がることがある。
食性は肉食傾向が強いようで、人間やホオジロザメなどを作中では食べていた。
レイゴー襲撃の前夜に群れをなして大和を襲撃し、甲板にいた兵士たちを手当たり次第に攻撃・捕食したせいで大和の甲板は地獄絵図となった。
古典的なフラッシュの暗転で表現されたことで、より一層の緊迫感を表現させている。(これは平成ギャオスの攻撃シーンのオマージュとも取れる)
レイゴー絶命後はぱったりと姿が見えなくなったが、どうなったのかは不明。(恐らく共生関係にあったレイゴーが死んだので後追いしたと思われる)
また、同じ深海魚として「ボーンスカル」という人間の髑髏のような頭部をもったものも作られていたが、結局使用されなかった。



【余談】

  • レイゴーの立体物は個人ガレキメーカーであるアトリエG-1の奥田茂喜氏が上映当時にソフビ人形を制作していた。蓄光バージョンとリアル塗装の2バージョンがあったが現在は絶版である。

  • 「大和の注水を利用し、甲板を傾ける」 という作戦と言うのは実際に可能だが、主砲が自重に耐えるか、それを動かすギアが壊れないかなどについては林家しん平氏曰く自信はないとのこと。





追記、修正宜しくお願いいたします。




この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 深海獣レイゴー
  • 怪獣映画
  • 特撮映画
  • 林家しん平
  • レイゴー
  • ゴジラ
  • 杉浦太陽
  • ガメラ
  • 零号作戦
  • 大和
  • インディーズ作品
  • 雪風

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年11月29日 02:38