深海人(ウルトラ怪獣)

登録日:2016/06/24 Fri 00:12:09
更新日:2023/07/22 Sat 11:34:19
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深海人(しんかいじん)とは、一峰大二の漫画版『ウルトラマン』に登場する怪獣である。

登場話は『ぼくら』(講談社)1966年8月号掲載の、栄えある連載第1話「怪獣ネロンガの巻」。
ちなみにこのエピソードは秋田書店の単行本・文庫版には長らく収録されておらず、1995年頃に翔泳社から刊行された完全版第1巻を入手するしか読む手段が無かったが、
2018年10月にリリースされた「最終決定版」と題した新装版に冒頭カラー原稿を再現した上での掲載が叶った。

身長・体重は不明だが、作中描写では大体ウルトラマンと同じくらいの背丈。


◆概要

名前の通り、「巨大な半魚人」とも言うべき外観をした怪物。
TVシリーズ初期における半魚人系統のウルトラ怪獣であるラゴンゲスラが、まだ人間や魚のフォルムを残していたのに対し、
この深海人は、フォルムこそ人型でありながらも、鱗に覆われた体表や、指の間の水かきはまだしも
その頭部が「イソギンチャクのような触角、牙の生えた口の中にギョロリと輝く単眼、その下に普通にある鼻の穴」……と、
どちらかといえば人間の感情移入の余地が有り得ない、後年のガタノゾーアチックな異形の怪物然とした外観を有する。
シルエットだけなら『ウルトラマンA』のスチール星人に妙に似通っている。
カラーページでは体色は黄色で塗られている。

戦闘能力については、自衛隊の戦車・ジェット機の爆撃による波状攻撃を受けてもビクともしない強度のボディを有しているものの、
作中描写では超能力や飛び道具などといった類の技は見せておらず、ウルトラマンとの格闘戦でも終始押され気味であった。
恐らく、漫画に登場した他の怪獣と比較しても、それほど強い怪獣という訳ではなさそうである。

なお、「深海人」とは呼ばれているものの、ラゴンやノンマルトのように知性や文明を感じさせる描写は作中に全くない
もしかしたら単に人型をしているから命名されただけで、野生の怪獣に過ぎない可能性もある。

作中における鳴き声は「ぐわー」「ガオー」など。


◇作中での活躍

出番は「怪獣ネロンガの巻」の冒頭。
物語は、海辺から港に出現した深海人が、初っ端から自衛隊と交戦している場面から始まる。

港に面した海面から上半身だけを晒しながら、係留されている漁船を次々と沈めながら迫りくる深海人。
自衛隊はジェット機編隊や戦車隊を動員、集中攻撃を仕掛けるも、深海人には全く効果がなく、その表皮には傷一つ付かなかった。
戦車を蹴散らし、慌てふためく自衛官たちに迫る深海人。一人の自衛官の退路を足で塞ぎ、手を伸ばそうとするが―――――
次の瞬間、深海人と背を並べるほどの巨人……ウルトラマンが現れ、その手を遮った。

深海人とウルトラマンは、洋上で格闘戦へと突入。
地球上に初めてその姿を見せた正体不明の銀色の巨人を前に、自衛隊の者達はただ見守ることしか出来ない。
手刀を胸に受け、深海人が怯んだと見るや、ウルトラマンは港に泊まっていた一隻のタンカーを持ちあげると、それを深海人に叩きつける。
木端微塵になったタンカーから大量の重油が溢れ出ると、それを全身に浴びた深海人が急にもがき苦しみ出した。
深海人は最後のあがきとばかりにウルトラマンへ掴みかかるも、逆に強烈な鉄拳の一発を顔にくらってしまう。
戦車やジェット機の攻撃すらものともしなかった深海人も、これで力尽きてしまい、そのまま海底へと没するのであった……

深海人が滅びたことを確認した自衛隊だったが、彼らが気付かない内にウルトラマンもまた、姿を消してしまっていた。
自分達を救ってくれた銀色の巨人の姿を探しまわる彼らの元に、空から降ってきた一枚の巨大な手紙がヒラリと舞い落ちる。
人間が2~3人は余裕で寝転がれそうなサイズの紙には、ウルトラマンからのものであろうメッセージが記されていた。

深海人は、ほろんだ。
しかし、地球はねらわれている。
美しいみどりの星、地球が……。
怪獣にねらわれているんだ。
わたくしは、地球をまもるため、
宇宙からやってきた平和の戦士、
ウルトラマンです。みなさん、
いっしょに、地球を怪獣から
まもりましょう……。

かくして、平和の使者「ウルトラマン」の存在と、地球が怪獣に狙われているという情報は、科学特捜隊本部にも齎される。
ホシノ少年が深海人の真似をしてお道化ながらも、直後に市街地や科学特捜隊本部を襲った大規模停電の真相を探るため、
ハヤタ隊員を始めとする一同は至急現場へと向かうのであった。


☆総括

……以上が、深海人の登場した「怪獣ネロンガの巻」冒頭部の大まかなあらすじである。
そもそもサブタイトルから分かる通り、この回の主役怪獣はこの後出てくるネロンガで、深海人が直接登場したのはおよそ6ページに過ぎない。
ウルトラマン相手に光線技すら使わせることなく、ほぼ瞬殺同然で倒されるだけの出番である。

ウルトラマンが地球上に姿を見せるきっかけとなった戦いという点では映像作品のベムラーを連想させる部分もあるが、
深海人のパートでは科学特捜隊は全く関与せず、もっぱらウルトラマン単独の活躍場面となっている。
更に言えば、この漫画中ではハヤタ隊員がウルトラマンと一体化する経緯などの展開は全く描かれておらず、
続くネロンガ戦では苦戦する科学特捜隊を援護するため、いきなりウルトラマンへと変身している。
連載最終話ではハヤタがウルトラマンと分離せず、怪獣ウェットンとの戦いで殉職したかに見せかけて宇宙へと帰還しているため、
これだけ見ると漫画版ではウルトラセブンのように「ウルトラマンの変身した姿がハヤタ隊員」と解釈できなくもないが、
後年、1999年12月刊行の「コミック★フィギュア王」に掲載された新作エピソード「ウルトラマン誕生の巻」(最終決定版上巻に収録)にて
一峰大二版『ウルトラマン』で初めてハヤタ隊員とウルトラマンのファーストコンタクトが描かれる事となった。

またこの回では上述したように「ウルトラマンの置手紙」という、いささか衝撃的な物品が出てきた事でも知られている。
とはいえウルトラマンとハヤタ隊員のファーストコンタクトが描かれない都合上、ウルトラマンが人間相手にペラペラ喋っても
それはそれで映像作品のイメージとは乖離してしまうだろうし、意思疎通の手段としては妥当な描写かもしれない。
ちなみに楳図かずおの漫画版『ウルトラマン』でも、ウルトラマンが掌に書いた文章で地球人に危機を伝える場面があり、
世に出たばかりでイメージの固まってなかったウルトラマンという「寡黙なヒーロー」を、
いかにして少年向け漫画の主人公として扱うか作家各人の試行錯誤が、各種漫画版から垣間見る事ができる。




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最終更新:2023年07月22日 11:34