レッドブル(映画)

登録日:2016/06/18 Sat 23:50:08
更新日:2024/04/15 Mon 22:02:26
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■レッドブル

『レッドブル(原:RED HEAT)』は、88年に制作された米帝映画。
オーストリア産мышцаアーノルド・シュワルツェネッガー主演。
資本主義にどっぷりと漬かり肥え太った米帝娯楽産業の豚共が、偉大なる社会主義の共和国の中枢都市たるモスクワと「赤の広場」で撮影する事を許された初めての映画だと云う。*1

ジャンルはアクションで、原作、監督、脚本は相棒物の傑作『48時間』の脚本を手掛けたウォルター・ヒル。
本作もまたпартнёр物の傑作として知られており、偉大なるモスクワ警察のイワン・ダンコ大尉が、醜く肥え太った資本主義者のであるヤンキー警官を教え導く物語となっている。

吹替を担当したのは、お馴染み玄田哲章をはじめとした名優達で、特に素材としても人気が高いのはテレビ朝日(日曜洋画劇場)版。
この作品も吹替台本の意訳が神がかっているので耳に刻み付けよう。

【物語】

国家により鍛え上げられた頑強者ぞろいのモスクワ警察特捜部の中でも、超人的な体力の持ち主にして、サウナから容疑者を雪原へと殴り出す等の過激で無慈悲な捜査を行なうことで知られるイワン・ダンコ大尉。
ある雪の日、彼は相棒と共に米ソにまたがる麻薬密売ルートの大ボス、ビクトル・ロスタを追いつめていた。
しかし、大捕物の隙に逃げ出した(だいたいダンコのせい)ビクトルは、立ち塞がったダンコの相棒を殺して逃亡してしまう。

……それから半年後、ビクトルがシカゴの刑務所にいるとの情報を得たモスクワは、身柄引き取りのためにダンコを西側最大の犯罪都市シカゴへと送る。

気乗りしない様子で同志を出迎えたのは、多少は有能だが面倒な規則を省みない背徳の街のはみだし刑事アート・リジックだった。

同志ダンコは当然の様に資本主義世界に馴れ合う事などしようとせずにビクトルを連れてモスクワへと帰ろうとしていたのだが、空港ガードマンに変装した一団に急襲されて卑劣にも同志ダンコは倒され、ビクトルは連れ去られてしまった。

信じられない失態を犯した同志ダンコはモスクワからの帰国命令を無視し、唯一残された手懸かりである貸しロッカーの鍵の謎を解き、ビクトルを再び捕えるまでシカゴに残ることを決意するのだった。

邪魔者は一纏めにしろ、とばかりに腫れ物扱いのダンコの世話役を押し付けられたリジックは不平を述べるが、はみ出し者の言葉を聞いてくれる者は居ない。

生まれが違うもの同士……。衝突と失敗を繰り返し、引き返せない状況になる中でも足掻きながら事件の解決へと奔走する二人の刑事の間にはいつしか信頼が生まれていた。

果たして、異物の二人の捜査の行方は……!?

【登場人物】

※吹替はテレビ朝日版
イワン・ダンコ大尉
演:アーノルド・シュワルツェネッガー
声:玄田哲章
モスクワ警察特捜部の腕利きで、安定のмышца自慢。
無表情で感情の起伏の無いキャラクターは、代表作となっていた『ターミネーター』の殺人アンドロイドを逸早くヒーローに転化させたアレンジである。なかなか抜けなかったシュワちゃんの訛りや棒読み演技の印象を上手く活かした役と言える。

■アート・リジック部長刑事
演:ジェームズ・ベルーシ
声:富山敬
シカゴ市警のはみ出し刑事で、腕はいいが規律違反の常習者で食えない性格の持ち主。ついでにネタになる程の女好き。
最初は厄介者のダンコを煙たがっていたが、容赦のないビクトルのやり口に義憤を燃やす中でお互いを理解して行く。因みに、中の人は見た目とは裏腹にシュワちゃんより7つも年下である。

■ドネリー署長(警視)
演:ピーター・ボイル
声:富田耕生
シカゴ市警のボス。
当初は「お客様」のダンコを丁重に扱おうとしていたが、事態が悪化してからは本音も丸出しで、捜査が失敗したらダンコとリジックに押し付けるつもりだった。……まあ、縄張りで頭が痛くなる位の問題を起こされているのは確かなのだが。

■スタッブス警部補
演:ローレンス・フィッシュバーン (ラリー・フィッシュバーン)
声:野島昭生
リジックの上司のエリート刑事。
有能だがイヤミな性格。後のモーフィアスである。

■ビクトル・ロスタ
演:エド・オロス
声:麦人
本名ビクトル・セルゲビッチ・ロスタビリ。
米ソを股に掛けた麻薬密売ルートの大物。狂暴な反面、冷徹で慎重な性格の持ち主。

■キャサリン・マゼッティ(キャット)
演:ジーナ・ガーション
声:小山茉美
ダンスインストラクターで、ビクトルの現在の妻。
騒がしくなってきた周囲の状況に恐れをなし、ダンコに自分の安全を条件に取引を持ちかける。

■ギャラガー刑事
演:リチャード・ブライト
声:千田光男

■サリム
演:J・W・スミス
声:谷口節

■アブダル・エライジャ
演:ブレント・ジェニングス
声:江原正士

■パット・ナン
演:マイク・ハガーティ
声:島香裕

■ストリーク
演:ブライオン・ジェームズ
声:池田勝

【赤い名言集】

赤背景は同志ダンコの台詞。

「お前自分のあだ名知ってるか?ついこないだまでは“鉄の顎”だったが、今じゃ“鋼鉄マン”だってよ。あっちの方も鋼鉄並みか?ハハハハハ」

「俺達をパクる原因は何だ?」
(マフィアを投げ飛ばし、義足を外して中のコカインを床にぶちまける)
コカインだ

「おい、いつまで中に入ってんだい!電話しねえんなら早く出ねえか!・・・アホか?

「今夜ヒマかい?」
クソして寝な
「あ、どーも。最近のねぇちゃん、キツイや」*2

「どこでこの国の言葉を習った?」
「軍隊だ。必修科目だった。キエフの外交学校に通った」
ああキエフな。キエフ風カツレツのキエフだろ。妹の結婚式で食ったぜ

売人、ポン引き、淫売どもの巣窟だい

「本当にここへ泊まる気か?クソ溜めみてぇなとこだ

資本主義者め……! (でも見るのはやめない。安宿でポルノを見て)

あれがソ連警察のユニフォーム?まるで郵便配達か第2次大戦の兵隊ね
「客人には敬意を払え、オードリー」
「わかりました…」

「それじゃない。あと2手で詰みだ。ビショップをクイーンの4へ動かす」
「アドバイスかたじけないがね、俺の好きにやりたい」

「ソ連では仕事上のストレスをどう解消してる?」
「ウォッカだ」

「国に帰るぞ。死刑にしてやる」
クソ食らえだホモ野郎…

「お友達みたいだね。ボディランゲージで愛情示してる

「この、キーは、どこのロッカーの、キーだ、えぇ?答えろ」
Еби свою маму задницу. (イェヴィ スヴァユ マム ザドニツ。)」
「なんて言った?」
「こうだ、『テメェのおふくろのケツにキスしろ』と」
「このくそったれが!舐めやがって!」

「大尉、快適なフライトを祈ってるぜ。もしこのバカでかいクソをトイレに流すことがあれば、北極点でやってくれ」

私服?フッ、制服よりひでーぜ。目立ってしょうがねぇや

「ソ連式のほうが能率的だ」
「なんのためにわざわざ人権の説明してやったと思ってんだよ、野蛮人!

「俺達はアメリカ警察とは違う。我が国に麻薬を送れば、ある朝お前が目覚めるとベッド脇のコップの中に大事なタマタマが浮かぶことになる

「なんだいそれは?」
「時計だ。モスクワ時間のままの」
「肉の配給時間か?」
「インコに餌をやる時間だ」

「ミランダを知っているか?」
「どこの女だそりゃ?」
「そこの歩道でのびてる奴はなんなんだい?」
「ここに住んでる」

おいおいおいちょっと待て待て!あち!あちち!ああっ!くそっ!ムスコがやけどしちまったじゃねえか!チキショウもう!バッカ野郎!クソッタレが!どうしてくれんだよこのザマは!車は汚れる!スーツは台無し!おまけによぉ、タマはゆで卵になっちまったよ、もう!まるでションベンもらしたみてぇじゃねぇか、みっともねぇ…おいおいおい、気をつけて運転しろよ!ぶつけんじゃねぇぞ!始末書書きで余生を送りたかねぇからなぁ!

「ロシアに肥溜めはあるか?」
「ある」
俺たちは今その肥溜めに落っこってんだ。文字通りドツボにはまって全身クソまみれだよ!

「ダンコ大尉、おたくが今手にしてるのは世界一強力な拳銃だ」
「ソ連製のポドヴィリン9.2ミリオートマが世界一強力なピストルだ」*3
「バカ言え世界一はマグナム44と決まってら。ダーティハリーも使ってんだ
「ダーティハリーって誰だ?」

「バスの運転なんてどこで習った?」
「キエフだ、軍隊で」

この馬鹿!馬鹿野郎!!マヌケェ!
馬鹿だと!?馬鹿はどっちだい!もうちょいでお陀仏になるとこだったぞ!!
ビクトルはどうした!?
知るかいクソッタレェ!!

「俺たちは警察官だ、政治家とは違う。友情を持ったっていい。Удачи тебе, до свидания. (ウダチ チービア、ダスビダーニャ。)」
すまねぇ、ロシア語はさっぱりなんだ
「頑張れよ、また会おう」



【余談】


冷戦時代にはハリウッドでのソ連の扱いで両国関係が分かると言われていたらしい。ソビエトの警官を主人公に据えるばかりか、本国での撮影が許されるあたり、冷戦がいよいよ終わろうとしていた時代の節目の時にあったのがうかがえる。

ダンコの銃ポドヴィリンのプロップはデザートイーグルをベースに、グリップや銃口等にワルサーP-38風のディテールを施すことで製作された。これは巨漢であるシュワルツェネッガーにトカレフ TT-33やマカロフPMを持たせてみてもポケットピストルにしか見えなかったための措置である。彼が持ってもポケットピストルに見えないようなソ連の巨大拳銃といえばスチェッキン・マシンピストルが存在するが、これは特殊任務用の銃であり、当時のアメリカでは存在そのものが知られていなかったようだ。

シュワルツェネッガーとベルーシは後にシュワ主演作のジングル・オール・ザ・ウェイにて再競演を果たしている。ただし、ベルーシはサンタの格好をしたペテン師という今作とは真逆の立場の人物を演じているのだが。

作中でちょいちょい出てくるミランダとは、ミランダ警告のこと。アメリカの警察官が容疑者を逮捕する際に告知しなければならない4項目とされ、この4項目を告知しないで得られた供述は裁判の証拠にならないというもの。
  • あなたには黙秘権がある
  • これからあなたが話す内容は法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある
  • あなたは弁護士の立会いを求める権利がある
  • もし自分で弁護士に依頼する経済力がなければ、公選弁護人を付けてもらう権利がある
あとミランダ警告のミランダとはアーネスト・ミランダというメキシコ人男性が由来である。


「追記・修正なんてどこで習った?」
「キエフだ、軍隊で」

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最終更新:2024年04月15日 22:02

*1 ただし、アクションシーンの撮影までは不可能だったのか、それらのシーンは社会主義国家の面影を残すブダペストやオーストリアでロケが行われた。

*2 MADでもお馴染みの、本作の吹替を代表する流れるような会話。

*3 このポドヴィリンが映画オリジナルの架空銃なのは言うまでもない……が、実は9.2mmという口径はマカロフ拳銃と同じだったりする