サンダーアロー(ウルトラ兄弟物語)

登録日:2016/06/17 Fri 08:38:08
更新日:2022/05/27 Fri 00:19:18
所要時間:約 10 分で読めます




サンダーアローとは、かたおか徹治の漫画作品『ウルトラ兄弟物語』の登場人物である。

初出は小学四年生(小学館)1980年4月号から1981年1月号まで掲載された、『ウルトラマン80』コミカライズの第10・11話。
事実上、同連載のラスボスを務める形となった。
同作は小学館のてんとう虫コミックス版単行本には収録されず、双葉社のアクションコミックス版単行本の第3巻にて『ウルトラ兄弟物語』に纏められて初収録された。
ちなみに同漫画は序盤こそ、TVシリーズの「学園編」を踏襲した雰囲気のコミカライズを展開していたが、
中盤から舞台が地球を離れ、地球赴任前の宇宙警備隊訓練所時代の80を主役にしたオリジナル色の強いものへと推移していった。
まぁ、いつものかたおか漫画である。

ウルトラマンゾフィーと同じ、M78星雲・ウルトラの国を出自とするウルトラ族で、宇宙警備隊の一員でありながら
5万年前にウルトラの国から追放され*1、ブラックホールに幽閉された「宇宙警備隊の反逆者」。
名実共に悪のウルトラマンであるが、外見は基本的なウルトラ族の容姿に比較的近く、額にV字型のエンブレム、
後頭部の鶏冠が一峰大二版『ウルトラセブン』のセブン上司みたいにノコギリ状のギザギザした形状となっているのが特徴。
装飾としてマントを羽織っており、これが宇宙警備隊時代からの物だとすれば、
恐らくはウルトラ兄弟やウルトラの父らと同じく宇宙警備隊の要職にあった人物のではないかと推測できる。
またウルトラの国を追放された身の上が故か、胸部にカラータイマーが存在していない

有する能力は、腕から発する必殺光線「エレクトリックサンダー」に加え、死んだ怪獣を蘇らせる強力な念力。
これによって怪獣墓場に眠っていた怪獣たちを蘇生し、使役する事でウルトラの国を攻撃する為の軍勢を作り上げた。

サンダーアローがなぜウルトラの国から追放されたかという理由は、作中では明確には描かれていない。
ただ、彼の言動などからして、何かしらの野心に起因する悪事を行った上での結果と考えて間違いないだろう。


サンダーアロー登場話のあらすじ


  • 小学四年生版『ウルトラマン80』第10話

怪獣墓場……そこは、かつて宇宙警備隊のウルトラ戦士と戦い、退治された怪獣たちが眠る、文字通り“死の世界”である。
静寂に包まれた暗闇の中、突如として何者かの声が響きわたった。

???「よみがえれっ!! よみがえるのだ!! 怪獣たちよっ!! うらみかさなるウルトラ族に………!! 今こそ……!! 今こそ、復しゅうする時がきた!!」

レッドキングブラックキングゴモラゼットンテレスドンアーストロンジラース、等々……
怪獣墓場に永劫の眠りに就いていたはずの凶悪怪獣たちの死骸が、次々と目を覚まし、謎の声に従って立ち上がってゆく。
まるで、ウルトラ族という共通の怨敵に復讐せんがため、声の主の憎悪に呼応するかのように……


突如、ミヌマ星に怪獣が出現したとの報が、宇宙警備隊にもたらされた。
ウルトラマン率いる宇宙警備隊第3部隊は*2ミヌマ星に急行するが、現場の市街地で暴虐の限りを尽くしていたのは
レッドキング、ブラックキング、ゼットン…… かつて、地球における戦いで倒されたはずの怪獣たちであった。

ウルトラ戦士たちは凶悪怪獣たちに果敢に立ち向かうが、その圧倒的な戦闘力には太刀打ちできず、全員叩きのめされてしまう。
そして遂に重傷を負い、風前の灯火となったウルトラマンの前に姿を現したのは、死したはずの怪獣を率いた主犯……
かつて5万年前にウルトラの国から追放され、ブラックホールへ流刑されたはずの反逆者、サンダーアローの姿に他ならなかった。
ブラックホールから脱出を果たした彼は、ウルトラ族に対する復讐の手始めとして、怪獣たちを使いウルトラマンを誘き寄せたのである。
ウルトラマンはサンダーアローが成そうとする暴挙のビジョンに戦慄するも、そのまま命尽き、斃れてしまった……


ウルトラの国には、ミヌマ星に散ったはずのウルトラマンが帰還を果たし、無事任務を遂行したと報告していた。
激務を終えたが故か、目の下にクマらしき影を浮かべたウルトラマンの敬礼を見た新ウルトラマンは、何かしらの違和感を抱くが
確証を持てなかったが故か、その様子を察したウルトラマン80に対しては、気のせいに過ぎないとはぐらかす。

それから程なくし、M地区(エムブロック)プラズマルームに存在する、ウルトラ族の命の源泉たる「プラズマスパーク核融合装置」のもとに
顔色の妖しいウルトラマンが接触、時限爆弾と思しき装置をセットする。
そこに駆け付けたのは、先ほどからウルトラマンの様子に疑問を抱いていた新ウルトラマン。
ウルトラマンは何でもないと弁解するが、プラズマルーム入り口には事切れた警備兵の死体が転がっており
おまけに先ほどウルトラマンの行った敬礼は、既に5万年以上も前に廃止されたものと新ウルトラマンは指摘。
観念したウルトラマン……否、ウルトラマンの偽者は、哄笑と共にシルエットを歪ませると、姿を変じさせる。
その正体は、かつて新マンが地球で戦った怪獣の中でも、彼を一度は敗北にまで追い込んだ因縁深い強敵、ブラックキングだったのだ。

その頃、先の新マンの様子が気にかかっていたウルトラマン80は、プラズマルームからの絶叫を聞きつけ、現場に急ぐ。
そこで80が目にしたのは、既に事切れた新ウルトラマンの死骸と、その傍らに立つ怪獣ブラックキングであった。
先の絶叫は新ウルトラマンの断末魔だったことを悟った80は、お前を蘇らせたのは誰だとブラックキングを糾弾するも、
それと同時にプラズマスパーク核融合装置に仕掛けられた時限爆弾が起爆、80は爆発に巻き込まれてしまう……

時を同じくして、F地区(エフブロック)S地区(エスブロック)を始め、ウルトラの国に点在するプラズマスパークの施設が次々と時限爆弾で爆破されていった。
ブラックキング同様、ウルトラの国へ潜り込んだサンダーアロー配下の怪獣たちが、同時多発的に破壊活動を開始したのである。
衛星軌道上からウルトラの国の被害をチェックし、「作戦成功せり」のウルトラサインを目にした事で、サンダーアローはほくそ笑む。
今こそ、彼にとって恨み重なるウルトラの国に対し、怪獣軍団が総攻撃を仕掛ける絶好の機会が訪れた時であった……

サンダーアロー「フフフ……今こそっ!! ウルトラの国、総攻げきの時が来たっ!! いくぞっ!!」



  • 小学四年生版『ウルトラマン80』第11話(連載最終話)


反逆者サンダーアローのウルトラ全めつ作戦が始まった。あやうし、ウルトラの国――

サンダーアロー率いる怪獣軍団の電撃的な攻撃で、壊滅状態に陥ってしまったウルトラの国―――
灰塵と化したプラズマスパーク施設の残骸が散らばる中、奇跡的に命拾いをしたウルトラマン80が息を吹き返すと、
辺り一面は既に瓦礫だらけの荒野…… 事態を呑み込めずにいる80の元に、傷つきボロボロになったウルトラマンタロウが現れた。
タロウは80に、この非常事態の首謀者が反逆者サンダーアローで、その目的は怪獣軍団の総攻撃によって、
ウルトラ族の命の源たるプラズマ装置を全て破壊し、ウルトラ族を全滅させた後、ウルトラの国を占領することだと教えた。
敵の猛攻の前に、ウルトラの国に数十基存在したプラズマ装置も今や数基を残すのみだという。
タロウは、ウルトラの母が現在残った最大のプラズマ装置を死守していることを80に告げ、救援に行くよう命令。そのまま事切れてしまう。
80はタロウを抱き起すも、彼が再び目を覚ます事は無かった……

K地区(ケーブロック)では、ゾフィーやウルトラセブンを始めとする宇宙警備隊の生き残りたちが、怪獣軍団を相手に奮戦していた。
しかし、強敵揃いの怪獣達を前に隊員たちは次々と倒され、プラズマ装置も破壊されてしまう。
既にウルトラマン、新マン、いつの間にかエースが倒れ、残すところプラズマ装置は母が死守しているただ一基のみ……
ゾフィーとセブンは僅かな希望に賭け、最後のプラズマ装置があるR地区(アールブロック)へと急行する。

R地区、ウルトラの国に残された最後のプラズマ装置を前に、ウルトラの母率いるウルトラ族の生き残り達は必死の抵抗を続けていた。

サンダーアロー「もう一度言う!! きさまたちに勝ちめはない!! こう服しろっ!!」
母「われらウルトラ一族正義のためには、死などはおそれません!!」
サンダーアロー「ええい!! ちょこざいなっ!! やれーっ!!」

母はサンダーアローの降伏勧告を跳ね除けるが、怪獣軍団の猛攻の前に生き残ったウルトラ族はあっという間に全滅し、
それでもなお母はプラズマ装置を守ろうと立ち上がり、腕を組んで光線を撃とうとするも、
無情にもサンダーアローの放ったエレクトリックサンダーによる反撃を受け、全身を焼かれてしまう。
直後に駆け付けてきたゾフィーとセブンに看取られながら、母はウルトラの国の未来を彼らに託し、力尽きる――――

ゾフィー達に遅れて駆け付けてきた80は、母の死に間に合わなかった事に慟哭し、サンダーアローに怒りを向けるが、
セブンは胸の張り裂けそうな想いを堪え、逆転の芽を確実に掴むためにも、逸る80を制止。
怪獣軍団がサンダーアローの念力で蘇ったのならば、彼一人を倒せばその効力も消える可能性が高いと提案する。
セブンの推測を何の確証もないとゾフィーは指摘するが、それでも現実問題、凶悪な怪獣の大軍を相手に
現在生き残った3人で真正面から立ち向かうことは到底不可能。最後の勝負をかけるしか道は残されていなかった。

セブンは自分が囮となり、その間にゾフィーと80でサンダーアローを討つよう指示。
囮の役目を代わろうと言って譲らない80に対し、セブンはこれからのウルトラの国を支えるのは80のような若者であると彼を諭し、
ゾフィーもまた宇宙警備隊隊長として若い戦士たちを指導する役目があるが故に、苦渋の決断で彼の意を尊重する他なかった……

意を決し、サンダーアローに飛びかかるセブン。ゾフィーと80も、それに続く。
セブンはアイスラッガーをサンダーアローの脇腹めがけて撃つも、ブラックホールの影響下で能力を倍増させたサンダーアローには刃は通らず、
逆にエレクトリックサンダーの反撃を受け、セブンは致命傷を負ってしまう。
セブンを殺され激昂した80のサクシウム光線すらも、いとも容易く腕で払ってしまうサンダーアローであったが、
ゾフィーは最後の手段として、80と自身の技を合成することで、技の威力を倍増させることに賭けた。

ゾフィー「そ、そうだ!! 一人一人の技ではだめだがあれ(・・)がある。80!! あれ(・・)を使うぞっ!!」
80「!! は、はいっ!!」
ゾフィー「必殺……!! 合成光線…… M87― !! サクシウム!!

サンダーアロー「そ、そんな……ばかな………。こ、このオレが………負けるなんて……」

ゾフィーと80、渾身の合体光線に貫かれ、さしものサンダーアローも自身の敗北を認められぬまま、遂に斃れる。
それと同時に、彼の念力で命を得ていた怪獣たちも、まるで陽炎のように消え去るのだった……

かくして反逆者サンダーアローの野望は潰えた……が、マン、セブン、新マン、エース、タロウ、そしてウルトラの母と、
宇宙警備隊を支えてきた数多くの勇者たちが戦いの中で命を落とす結果となってしまった。
だが、ゾフィーと80は悲しみをこらえ、いなくなってしまった者たちに託された想いを背に、再び立ち上がる。
壊滅状態に陥ってしまったウルトラの国を立て直し、再び宇宙警備隊を再興するために――――


サンダーアローのウルトラ一族全めつ計画は、正義を愛する心に完全にやぶれ去った―――
しかし…ウルトラ族のぎせいはあまりにも大きいものであった――
だが、いつかゾフィー、80(エイティ)の手によって、ウルトラの国がふたたびよみがえる日も近いだろう――

……まぁウルトラシリーズなら普通に生き返らせることもできそうなイメージではあるが。
ゾフィー「復興の前に、まずはヒカリに命を6つほどオーダーするか……」






ここまで読んで頂ければ連想される読者も多いと思われるが、
「宇宙警備隊の反逆者」「怪獣墓場の怪獣達を手駒にする」「ウルトラの国を壊滅させる」など、サンダーアローのキャラ付けや行動は
後年の『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』におけるウルトラマンベリアルを彷彿とさせる要素が多い。
というか、あまりにもベリアルと被りすぎており、同映画のスタッフがサンダーアローのエピソードを参考にしたのでは?と疑ってしまう部分もあるが……。

なお、本家のウルトラシリーズにおけるタロウ達は存命し続けているが、近年の作品で皮肉にもタロウの親友が悪のウルトラマンとなっていた。



追記・修正は、恐らく漫画で描かれなかった裏幕で大奮戦したであろうエース兄さんに想いを馳せてお願いします。

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最終更新:2022年05月27日 00:19

*1 この設定から、5万年前の時点で既に宇宙警備隊員の一員だったことが分かる……が、別エピソード『ゾフィーの伝説』では、現在の公式設定で2万5千歳のゾフィーが「5万年前に修行中のウルトラ戦士」として登場している事から、あまり鵜呑みにしない方が良いかもしれない。

*2 宇宙警備隊第3部隊がウルトラの国から出動する場面では、戦士たちを率いているのはゾフィーだが、話の繋がりからして恐らくはウルトラマンの書き間違いである可能性が高い。