真アーチャー(Fake)

登録日:2016/05/13 (金) 00:06:39
更新日:2024/02/11 Sun 09:30:06
所要時間:約 14 分で読めます





――――弱い(・・)


Fate/strange Fake』に登場するサーヴァント
偽りの英霊を呼び水として召喚された真なる英霊の一角であるアーチャー
マスターはバズディロット・コーデリオン。

【概要】

身長2mを超す長身で痩せ形の男性。
頭から体の真ん中を分断する形で布を被っていて顔は見えず、肌全体を濃い染料で染め上げた異様な風体をしている。
なお、小説版の挿絵だと布を被っただけだったが「激しい戦闘中でずれ落ちないのは不自然では?」と思われたのかコミカライズ版では頭を覆う部分を鎖で固定している。

ホテルにて休息するギルガメッシュとティーネを奇襲する形で姿を現した第2のアーチャー。
その狙撃の精度と破壊力は凄まじく、20km以上離れた場所から一切の減速・高度変更もないレーザーのような超音速の矢を放ち、半端な攻撃ならば容易く弾くギルガメッシュの鎧を一撃で破損させる程の威力を誇る。
更に並みのサーヴァントでは防ぐのも難しい、数十にも渡る王の財宝の連射を弓で軽く打ち払う程の超絶的な技量の持ち主。
その上、その気になったギルガメッシュの数千かつ全方位の王の財宝の射出すらも謎の力で無傷で防ぎ、それを児戯と嘲笑うなど、その大胆不敵な行動は読者の度肝を抜いた。

性格は冷淡かつ不遜。
ギルガメッシュを逆上させるために挑発的な言動を繰り返しマスターとはいえ幼子であるティーネを露骨に狙い撃つなど高潔な英雄とは程遠い行為を平然とやり遂げ、真ライダーからは外道と蔑まれている。




以下ネタバレ









ああ、そうだ。我が骨肉、我が魂こそは、神になり下がった愚者(・・・・・・・・・・)の影法師よ!


【真名:アルケイデス】

その正体はアルケイデス。大英雄ヘラクレスの幼名であり、人としての名前である。

クラス:アーチャー→アヴェンジャー
マスター:バズディロット・コーデリオン
身長:203cm
体重:141kg
属性:混沌・悪
出典:ギリシャ神話

ステータス
筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具
A B A A B A++



◆スキル
○クラス別スキル
復讐者:A
復讐者として、人の怨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。怨み・怨念が貯まりやすい。
周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を絶っても自立できる能力。
ランクCならマスターを失っても一日現界可能。

対魔力:A
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。


○保有スキル
歪曲:A
本来呼び出したクラスが強制的に歪められ、別のクラスの特性を付与された証。
引き替えに、元のクラス別スキルのいずれかが低下する。
アルケイデスの場合は単独行動が低下してランクCとなっている。

心眼(真):B
修行と鍛錬に基づく戦場での洞察力。
アルケイデスの場合、神から与えられた本能は捨てた為に人として積み上げた技量による発現となる。

勇猛:E
幻惑や混乱と言った精神干渉をはねのけ、格闘能力を上げるスキル。
令呪により身に宿る神の呪いを引き出された影響で、本来の値と比べ著しく弱まっている。

戦闘続行:A+
瀕死の傷を負ってもなお戦い続ける事ができる、戦場で生き足掻く強さを表した能力。



勝利のためなら平然と幼子すら殺そうとする彼だが、これは本来の属性ではない。
本来三騎士のクラスとして召喚された彼は『非の打ちどころ無き大英雄』としての側面が強調され、ある種の騎士道を重んじる性格となる。
故に幼子を自ら手にかけるなど有り得ない。事実マスターであるコーデリオンの「闘争に勝つ為なら、幼子の命を手にかけられるか?」という問いには拒否を示し、それを自分に強制するようならマスターを殺す事すら考えていた。

だがしかし。それに対してコーデリオンは即座に令呪を使用。

命令は三つ。


「取り繕うな」

「お前が見てきた人間達を思い出せ」

地上の衣(人の本質)を受け入れろ」


本来であれば、神性:Aの規格外の霊格を持つサーヴァントに共有して見られる令呪の命令を振り切れるほどの魔力を有しており、自分の命を捧げるに相応しい主でもない限りは令呪を弾いて命令そのものをキャンセルしてしまう、それどころか持て余して複数画の令呪で自害を命じたとしても「十二の試練」で得ている命のストックが減るだけ(=令呪で現世から退場させることが事実上不可能)というトンデモサーヴァントである。

しかしコーデリオンは令呪三画の同時使用に加え、
  • 膨大な数の贄を使用して作られた魔力結晶による尋常ではない魔力
  • 東方の呪術
  • 自らに『支配』の魔術を使用する事で使用を可能にした冬木の聖杯戦争の副産物――――聖杯の泥
上記のこれらを総動員し、彼の精神汚染を実行した。


一つ目の命令により、自分の中の憎悪を取り繕う事は不可能となり、
二つ目の命令により、神の血を引くが故、化け物と呼ばれ続けた事、我が子を自らの手で縊り殺す事を強制された事を思い出し、
三つ目の命令により、その憎悪と呪いを受け入れ、


アーチャーのサーヴァントとして召喚された大英雄は、復讐者(アヴェンジャー)へと変質した。
属性が変質しているという点でオルタ・サーヴァントに近い存在。いわばヘラクレス・オルタ*1
プロフィールを見れば分かる通り、バーサーカー時と比べて身長が50cmも縮み、体重は170kgも落ちているが、これはその体に宿る神の祝福を全て捨て去った為。

神々への憎悪によってアヴェンジャーとなったアルケイデスにとって、その力は忌むべきものでしかない。
利用し、使い潰す事は許容できても、それを自分の身に宿すなど、愚にも付かぬ真似にすぎない。

彼がヘラクレスではなく、アルケイデスを名乗るのも同じ理由。
ヘラクレスの名は神の栄光(ヘラの栄光)を意味するものであり、アルケイデスにとってはおぞましい忌み名なのである。
その為、その名を名乗り、最終的には神の座に上ったヘラクレスを「暴君どもに迎合し、神に成り下がった愚物」として唾棄・嫌悪している。

故に、彼が聖杯にかける願いは「神々への復讐」神の栄光(ヘラクレス)の忌み名を世界から駆逐する」こと。

神々からの生来の恩恵を完全に捨て去った影響で通常のクラスの枠内では有り得ない程に解放された下記の『十二の栄光』の能力は絶大だが、
戦士としての経験に本能による第六感を加算する「心眼(偽)」や格闘能力を圧倒的に向上させる「勇猛」等の強力なスキルが変質ないし劣化し、
呪い等への耐性を高めてもくれる本来の高い神性も持っておらず、十二の試練も使えない。
得た物は大きいが、捨て去ったものはそれと同等以上に大きい。

性格や性質が完全に変質してしまっているが、傲岸不遜で油断し切った人物にでもなったか、と言えばそうでもない。
冒頭のギルガメッシュに対する挑発を込めた嘲笑も、あくまで挑発である。
戦士としての技術の拙さは酷評しているが、英霊としての強大さはちゃんと見抜いており、本気で争えば数日間に及ぶ死闘になる厄介な難敵と然るべき警戒はしている。

また、神性の欠片もない近代の単なる殺人鬼であるバーサーカーが、自分と渡り合ったことに対しては心の底から賞賛の言葉を送っており、
変質していても根っこの部分は変わっていないと言える。



宝具

◯『十二の栄光(キングス・オーダー)
ランク:C~A++ 種別:- レンジ:-

神性と共に失った不死性を引き替えに手にした『試練をねじ伏せた証』の数々。
『生前の伝承の中で手にした宝具』を具現化させ、己の道具として使い潰す事ができる。
ただし、聖杯の理そのものをねじ伏せて使っている状態なので、魔力の消費が通常の数倍に及ぶ。

つまり十二の難行を元にした十二の宝具を使用できるという事。
クラスを捻じ曲げられる前からこの宝具の一部を使用出来たが、全ての宝具を扱えるのはアヴェンジャーとしての性質を帯びてからである。


本来であれば膨大な魔力消費によって満足に戦えないところだが、
バズディロットは数万人の人間を材料にした大量の魔力結晶によってアルケイデスが数ヶ月は全力で戦えるだけの魔力を確保している。


◯『射殺す百頭(ナインライブズ)
ランク:C~A+ 種別:- レンジ:臨機応変

手にした武具、あるいは徒手空拳により様々な武を行使する。
言わば『流派:射殺す百頭』という技能そのものが宝具化したもの。
武具の力を最大限に引き出し、対人から対軍、城攻めに至るまで状況に合わせて様々な形を見せる。

5巻では弓での真名解放を使用。
以前から語られていた通り、ターゲットを追尾するかのように動く9本の矢を同時に発射する。
作中ではヒュドラ毒を塗った矢に泥の魔力を乗せ、矢の軌跡がまるで邪竜のような様相となっていた。
神獣クラスの巨体相手に魔力と泥をつぎ込んで使えばヒュドラそのものを再現し、敵へと食らいつかせる。
彼の極限まで鍛え上げられた武術、マスターからの膨大な魔力、そして泥が揃ったからこそ生み出せる御業である。
しかしイシュタルの見立てによれば、本来持っていた最高クラスの神性だけで同じものを再現できるという。


◯『天つ風の簒奪者(リインカーネーション・パンドーラ)
ランク:EX

復讐者のクラスに当てられたからこそ発動できるアルケイデスの3番目の宝具。
その効力は他者の宝具を奪い取り、己のモノとして使用出来る。当然、奪い取られた方は宝具の使用は出来なくなる。
似たような宝具である騎士は徒手にて死せずと違って、道具としての形を持たない宝具であろうとも問答無用で己のモノに出来る。
元々ヘラクレスは激高して相手を撲殺するなど荒っぽくなる伝承があるのに加えて他人の道具を強奪する逸話も豊富であり、そのエピソードの具現と言える。



【関連人物】

  • バズディロット・コーデリオン
偽りの聖杯戦争のマスター。
目的のために利用しているだけで忠誠心は無く、事が済めば殺すと本人の前で公言している。

  • エウリュステウス
回想に登場する「臆病な王」。生前の「彼」に『12の功業』を課した。
「彼」を心底恐れており、彼が戻る度にデカイ瓶の中に逃げ込んで震えていたらしい。

  • イアソン
回想に登場する傲慢な金髪の男。「彼」にとっては、同じ師を持つ兄弟弟子。
周囲から化け物と呼ばれていた「彼」を正面から賞賛し、自分の下に就かせることで「未来の王を護りし大英雄」にせんと考えた。
初出の『Fate/Grand Order』ではそのクズっぷりが目立っていたが、「彼」にとっては周囲とは別の意味で「化け物」と呼び存在を認めてくれた友人であり、自らの運命の重さに翻弄される姿が自分に重なり、放っておけなかったらしい。
その信頼関係は本物であり、FGO第一部最終章においてイアソンは自分を援護しようとする仲間に対し、自分よりもヘラクレスへの援護を促す為に
「1を10にするより、10を100にする方が強いに決まってるだろうが!」
と発言しており、親友である大英雄ヘラクレスへの絶大なまでの信頼が窺える。
反転したアルケイデスの状態でも彼を「傲慢で身の程を知らぬ愚者」としつつも「私の友」とはっきり言っており、
彼を蔑んだコーデリオンに「次言ったら殺す(意訳)」と警告している。

  • メガラ
回想に登場する「彼」の妻。
伝承では狂気に陥った「彼」に殺された説と、「彼」が子を殺害したのを悲しみ自害した説の2種類がある。
本作では後者の説が採用されている。
神に翻弄される夫を見限れるほど無慈悲にはなれず、されど現実を受け止められるほど強くも無かった。

  • 子供
ヘラの策略で狂気に陥った「彼」に殺害された。
本来の「彼」は、この出来事を深く悔いていた。
なお、この時の「彼」には子供が3人いたらしいが、回想に出たのが誰かは不明。

  • カライス、ゼーテス
アルゴー船に搭乗していた、北風の神の息子で有翼の英雄。警官達と対峙した際に「アイツらよりはマシな目をしている(意訳)」と引きあいに出している。
ヘラクレスを疎ましく考えており、彼がニンフに従者ヒュラスを誘拐されて探し回っていた機に乗じて、「来るまで待つ」というイアソンの指示を無視して出航させてしまった。
いわば、アルゴー船の伝説でも有名な「ヘラクレス置き去り事件」の最大の主犯。
(ただし、ヘラクレスは後に自力でアルゴー船に追いついている)
ヘラクレスの怒りは相当な物で、アルゴノーツとして冒険を終えた直後、報復として二人まとめてブチ殺したといわれている。
劇中の本人の口ぶりから(当たり前だが)相当悪い心情を抱いている様子。
……一応、トラキアにおいてハルピュイアと対峙してドッグファイト繰り広げた見せ場を持つ、アルゴノーツの立役者ではあるのだが。

  • アムピトリュオン
血は繋がっていないため正確に言うと義理の父親だが、作中では名乗りの際に自分の父親として述べている。

  • アルクメネ
実の母親。
ある日アルクメネを見初めたゼウスは、彼女に言い寄ったが、アルクメネはアムピトリュオンとの結婚の約束を守り、決してなびかなかった。
そこでゼウスはアムピトリュオンが戦いに出かけて不在のおり、アムピトリュオンの姿をとって遠征から帰ったように見せかけ思いを遂げた。
こうしてアルクメネはゼウスの子ヘラクレスを身ごもった。

実の父親に当たる神だが、神であるが為に復讐対象の1人と見なしており、父親としても認めていない。

夫の不貞の証であるアルケイデスを憎み、狂気を取り憑かせて彼に自分の子供達を殺害させた神々の中でも最大の怨敵ともいえる女神。
だが、アルケイデスの本名ヘラクレスは「ヘラの栄光と祝福」の意味だと云う…凄い皮肉である。

  • ヒュラス
甥のイオラオス、教え子のピロクテテス、カイニスの兄ポリュペモスと並んでアルゴー船でヘラクレスの従者を務めたとされる青年。
絶世の美青年でヘラクレスから特に気に入られたとされるがその美しさに魅了されたニンフに攫われてしまう。
その妖精達と同質の気配をアルケイデスはセイバーに感じており……。
余談だが、この人オリオンの孫でもある。

師。
神霊の一柱ではあるが、反転しても殺したことを酷く後悔していることは変わらない。



【余談】

「様々なクラス適性を持つヘラクレスは、アーチャークラスとの相性が最も良い」
「アーチャークラスのヘラクレスはまさに怪物」
等と10年以上に渡り、公式からの言及や推測がなされてきたヘラクレス。
今回も結局アヴェンジャー・アルケイデスへと歪曲してしまったものの、元は真アーチャーとして召喚されたため、アーチャー・ヘラクレスとしての性能をある程度類推出来る。



【余談その2】

幼名を名乗っているため「ヘラクレス・リリィ」と呼ばれる事もあるが、これは誤り。
若い頃が召喚されているセイバー・リリィメディア・リリィと異なり、彼はあくまで「大人のヘラクレスとして召喚されたが、若い頃の名前アルケイデスを名乗っている」だけである。

体型が変わっているのは前述したように体に宿る神の祝福を全て捨て去った為であり、若い頃の肉体と言う訳ではない。
そもそも彼がアルケイデスからヘラクレスへと名を変えたのは「十二の試練」の前もしくは最中であるため、正式なサーヴァント・アルケイデスは(存在したとしても)「十二の栄光」を持ち得ないはずである。
まあ幼名を名乗っているのは事実なのでリリィと呼ぶ分には自由だが、設定の混同が無いように注意しよう。
逆に言えば、このアヴェンジャーの「アルケイデス」はあくまで自称であり、狭義の意味での真名ではないとも言える。


【余談その3】

ちなみにこの『英雄堕とし』について、作者の成田良悟「黒化してもイリヤを見て正気を取り戻すヘラクレスに子供を射たせるとか無理ですかねえ」きのこに相談したところ、

きのこ「復讐を舐めてはいけない。ましてや神への復讐だ。確かに『彼』が子供に弓を向けるのは絶対の禁忌だ。だが、それを覆す覚悟が無ければ神への復讐など無理なのだよリョーゴ」

という事で実行と相成ったらしい。きのこェ…


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最終更新:2024年02月11日 09:30

*1 但し、作者はもはやアルケイデスはオルタではないと否定したコメントを残している。