ギルデロイ・ロックハート

登録日:2015/11/09 Mon 22:50:02
更新日:2024/03/07 Thu 10:10:23
所要時間:約 4 分で読めます




Gilderoy Lockhart

ハリー・ポッターシリーズに登場する魔法使い。

演:ケネス・ブラナー
声:内田直哉(映画版)、山寺宏一(ゲーム版)

数々の武勇伝を持つ魔法使い。1964年1月26日生。
その手柄を本に書いており、数々の著作を持つ。
作中に登場した作品は
  • 「泣き妖怪バンシーとのナウな休日」(Break with a Banshee)
  • 「トロールとのとろい旅」(Travels with Trolls)
  • 「狼男との大いなる山歩き」(Wanderings with Werewolves)
  • 「グールお化けとのクールな散策」(Gadding with Ghouls)
  • 「鬼婆とのオツな休暇」(Holidays with Hags)
  • 「バンパイアとバッチリ船旅」(Voyages with Vampires)
  • 「雪男とゆっくり一年」(Year with the Yeti)
  • 「私はマジックだ」(Magical Me) ※自伝
  • 「私は誰?」(Who Am I ?)
などがある。
特に、武勇譚のタイトルは音韻を踏んでおり、日本語訳でもその点を意識した訳が行われている。

肩書きとして「勲三等マーリン勲章*1」「闇の力に対する防衛術連盟名誉会員」「『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞」がある。
女性を中心に数多くのファンを持ち、モリーやハーマイオニーまでもが彼の虜となっている。
彼の抱く大望は、この世界から悪を打ち払い、自身が立ち上げたブランドの整髪料を世に広めることらしい。

『秘密の部屋』では担当が不在だった「闇の魔術に対する防衛術」の教授としてホグワーツに赴任してくる。
だが、教科書として自身の著書を何冊も指定し、授業・試験内容は自身やその著書に関するものばかりで、授業らしい授業を行わない。
また、他の科目の教授に対しては彼らの授業内容等に関して口出しする反面、そうするに足る実力を見せることはなく、むしろ失敗ばかりするため、
ロックハートのファン以外には教授・生徒問わず「本当に有能なのだろうか」という疑いの目を向けられ始める…と、どこか胡散臭い人物でもある。
ホグワーツの教師に対して敬意を抱いているらしいルビウス・ハグリッドすらも「あの男の武勇伝がもし事実ならへそで茶を沸かしてみせる」と鼻で笑っていた。



以下、各巻での活躍(?)

2巻『秘密の部屋』

ハリー・ポッターが2年生となった1992年、ホグワーツ魔法魔術学校の「闇の魔術に対する防衛術」の教授に就任。夏休み中にダイアゴン横丁でサイン会を開いた。

最初の授業では、担当科目ではなく「ギルデロイ・ロックハート」に関する問題ばかりの試験(問題数は54問!)を行っており、
自身のファンであるハーマイオニーが満点を取ったことを褒め称えている。
授業は基本的に自身の著書を読み、その名場面を再現するという、「闇の魔術に対する防衛術」の授業とは思えないものばかりで、
一度ピクシー小妖精を持ち込んで実践授業をした際には対応をしくじって教室を大惨事にしている。

それにより、生徒・先生問わず、自身のファン以外の周囲には実力や人格を疑われ始めるが、ロックハートはそんな視線に気付かず、
クィディッチでハリーが骨折した際には、ハリー当人が「やめてくれ」と訴えているにもかかわらず出しゃばった結果、骨を治すどころか骨を消失させたり、
決闘クラブを開催した際には、模擬戦相手を務めたスネイプの武装解除呪文で完封されるなどし、周囲からの疑念はさらに高まっていく。
主人公のハリーとロンにもナメられ始め、ポリジュース薬調合のために禁書指定の本を読む必要が出た際には、
「どうせ内容も見ずにサインしてくれる」とロックハートに閲覧許可を求めに行き、実際その通りに特に理由を深く訊くでもなく許可を出している。

そして終盤、ロンの妹であるジニーが『秘密の部屋』に拉致されるという事件が発生した際には、彼女はもちろん、他の生徒の身も案じて開かれた職員会議にて、あろうことか遅刻しながらのんきに入室。
ミネルバ・マクゴナガルを始めとした教授陣に、これまでの数々の放言や緊張感などが欠片もない職務態度をそれとなく糾弾された*2挙句、
数々の放言を理由に、ロックハートは彼らから『秘密の部屋』の怪物退治を任されることになった。
ちなみに、口では期待しているように言いつつもマクゴナガルらは既にロックハートの実力や人格を見限っており、どうせ居た所で何の役にも立たないため、
体のいい「厄介払い」も兼ねて彼に怪物退治を任せただけで、内心ではこれっぽちも期待していなかった。

なお、この時点では「ジニーが『秘密の部屋』に連れ去られた」ことしか判明しておらず、
『秘密の部屋』の具体的な場所や行き方については、マクゴナガルらも知らなかったし、当然ロックハートも知らなかったのだが、
ロックハートは以前「(それらについて)もうほとんど知っている」等と吹聴しており、それを指摘されて怪物退治に行かざるを得なくされた。
とはいえ、マクゴナガルたちも逃げ道を塞いだところで本当にロックハートが『秘密の部屋』にいる怪物退治に向かうとは思っていなかったと考えられ、
見栄っ張りの彼を辞令を出すことなく自ら雲隠れに追い込んで放校処分にするついでに、以前から彼の言動に溜めていた鬱憤をぶつけたといったところだろう。


以前の自分の適当な嘘に首を絞められる形でにっちもさっちも行かなくなったロックハートはホグワーツから逃げ出そうと試みるが、
出立準備を進めているところをジニーを助けようと動いていたハリー・ロンに見つかり、その行動を彼らに糾弾された結果、
そこでロックハートの功績は本当は他人の手柄であり、手柄を立てた本人から詳細を聞き出した後に忘却術をかけて忘れさせ、あたかも自分の手柄のような体で本を書いていたことを白状。
その後、秘密を知った彼らにも『忘却術』を掛けようとするが、そうするだろうと見抜いていたハリーたちに『武装解除』され、杖を没収される。

そして、既に『秘密の部屋』の入り口と行き方を知っていた彼らに、半ば強引に同行させられ、
そこにあった巨大なバジリスクの抜け殻を見て気絶した……ように見せかけ、あまりの情けなさに油断したロンに襲い掛かって彼の杖を奪取。
自身の行動の意図を問い質すハリーたちに、口封じも兼ねて彼らに『忘却術』を掛けて廃人とし、その上で抜け殻を回収することで、
「ジニーは助けられず、ハリーたちも戦いの結果廃人となったが、バジリスクは倒せた」という筋書きで帰還するという計画を語り、
意気揚々と『忘却術』を掛けた…が、ロンの杖が折れていたために放った呪文が逆噴射し、自身の記憶を失ってしまう

名実ともに役立たずとなったロックハートは、ジニー救出を急ぐハリーたちに置いてけぼりにされたが、
事件解決後、流石に置いていくわけにもいかないと彼らに保護されて帰還。

こうして『秘密の部屋』から生還したロックハートだが、記憶を失ったことで、教師を続けることは出来なくなった。
映画ではエンディング後に「私は誰?」という著作を出版したことが明らかになった。


5巻『不死鳥の騎士団』

ハリーたちがアーサーの見舞いで聖マンゴ魔法疾患傷害病院を訪れた際、患者として登場。
サインしたがる癖があるものの、記憶は失ったままである。

なお、この巻で、ハーマイオニーが「3年生の時に、初めてこの科目(闇の魔術に対する防衛術)がよく分かった先生に習った」と言っており、
ハーマイオニーも彼がインチキ人間であったことを知る羽目になった*3と思われるが、それに対する彼女の反応は描かれていない。
ぜひ知りたいところではある。



作者によれば彼の記憶はずっと戻らないそうであり、またモデルは実在の人物(以前の夫ではないらしい)であると明かしている。



なお、「ポッターモア」では、彼の生い立ちについて明かされている。

マグルの父と魔女の母の間に生まれるも、姉2人が魔法を使えず、魔法が使えるのが彼だけであったため母親にはちやほやされた模様。
ホグワーツではレイブンクロー寮に所属。
知能や能力は平均より上で、当初は成績も良かったようだが、一番になれないことに失望したのか自己顕示ばかり考えるようになり、
在学中にクィディッチ・ピッチに長さ6メートルの文字で自分のサインを刻んだり、
自分の顔の形をした巨大な光る映像を闇の印のように打ち上げたり、自分宛に800通のバレンタインカードを送って、ふくろうの羽や糞などで朝食が中止になる事態を招く等、
様々な騒動を起こす、目立ちたがりの行き過ぎた問題児になった。
卒業後は忘却術にのみ注力し、他の魔法を使えなくなってしまう。
そんな中、彼がペテン師であることを見抜いていたダンブルドアは、彼がペテン師だと世間に知らしめるために彼を雇うことを決め(当然ながらマクゴナガル達の反対があった模様)、
「ハリー・ポッターを教えれば箔がつく」と釣って雇うことに成功した模様。

本編中では大言壮語の無能教師みたいな扱いをされたロックハートだが、上述の通り元々無能だったわけではなく、努力の方向性を間違えてしまった結果と思うとどこか切ない。
また、「元々他人の手柄だったことを違和感なく自分の手柄のように書き換え、ハーマイオニーをも魅了する本に仕上げられる文才」や「数多くのファンを獲得する世渡り能力」など、
魔法に関しては忘却術以外てんでダメな一方で、それ以外の分野に関しては無能どころか有能と思えるような才覚を示しており、忘却術の腕前も高かったことから、
忘却術士や小説家など、自分を偽らなくともひとかどの人物になれるような向いている職業に就けていれば、本編中のような結末を迎えることはなかったのかもしれない。

ちなみに「アルバス・ダンブルドアはなぜロックハートを雇ったか」「ダンブルドアはロックハートのことを見抜けなかったのか」などと度々話題にされることがあるが、
答は上記の通りでダンブルドアはロックハートのインチキを見抜けなかったのではなく、見抜いた上で雇っていたのである。


実は後で明かされる若き頃のダンブルドアは、「名誉と栄光を求め、周囲に讃えられることを望む、虚栄心と自己顕示欲に満ちた人物」であったとされ、
実力があるという点を除けば、実のところロックハートと本質がよく似た人物だった
(ちなみにダンブルドアは老成してからもこの点を克服できておらず、「周囲が期待する理想のダンブルドア」像を無視できず、その通りに振る舞おうとして苦悶した「見栄っ張り」のままだった)
またダンブルドアには、自分自身の能力や判断力について疑念が強かった。

これらを考えるとダンブルドアは、「教師や大人や有名人といっても、無条件に信用できるものではない」ということを生徒に伝えたいがために、
いわば反面教師として雇ったものと考えられる(実力こそ違えど、ダンブルドアもロックハートも「教師で大人で有名人」ではある)。
そして以後、ロックハートと同じく「地位も名誉も年齢もあるが、中身が伴っていない大人たち」が登場するようになる。
なお、(多少の脚色が入っていた可能性もあるが)著書の内容自体は誰かが行った本当の体験談であり、書かれた退治・対処の方法自体も、恐らく聞いたままの正確な情報を書いていると思われる。
そのため、実は彼の授業も、座学としては全く意味がなかったわけではない…と信じたい。

またハグリッド曰く、「闇の魔術の防衛術」の教師職が一年しか持たない事態が長年続いたため、その任を請け負ってくれる人が誰もいなくなってしまったらしい。
(実際これはヴォルデモートが仕掛けた運命操作の魔術が作用していたそうな。ダンブルドアが解除できないのだからよほどの呪いだろう)
そのため、「やってくれるならもう誰でもいい」というままならない事情もあった模様。





追記・修正は忘却術をマスターしてからお願いします。

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最終更新:2024年03月07日 10:10

*1 マーリン勲章において勲三等は、魔法界の知識や娯楽に貢献した人物に授けられる。

*2 スネイプまでもがこの時ばかりは他の教授陣に同調していた。

*3 『秘密の部屋』では終盤にバジリスクに石化させられていたため、上述のロックハートの醜態を主人公三人の中で唯一目撃していなかった。