ギャルゲーブーム

登録日:2014/12/06 Sat ??:??:??
更新日:2023/08/18 Fri 16:03:57
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1990年代後半、特に96~98年にかけて起こった家庭用ゲームソフトにおけるブームの一つ。ギャルゲーバブルとも。


概要

一般的に、95年発売のPS版『ときめきメモリアル~Forever with you~』を始まりとし、98年の『センチメンタルグラフティ』発売までの期間を指す。

この時代、それまで一部のパソコンマニアの間でしか知られていなかったギャルゲーが、様々な要因から家庭用ハードへ、一般的に広まっていった。
売り上げはブームを反映した。雨後のタケノコの如くゲームが乱立し、ブーム期の作品の内、実に12タイトルが十万本以上の売り上げを記録。
二大巨頭の『ときメモ』『サクラ大戦』に至っては、単一ハードで五十万本を超え、前者はミリオン以上という異次元レベル。
「10万本売れれば大ヒット」の今では、まるで考えられない時代だったのだ。

その分、まさにバブル(泡)のように、衰退する時は一年程度だった。


ブーム期の特徴

最大の特徴として、第一に多彩なジャンルを上げることができる。

この時期の作品は『ときめきメモリアル』の影響下、女の子との対話によって恋愛をシミュレートする、という流れで作られた物が多く、
結果、様々な方法で、シミュレーションゲームとしてアプローチがされた。
きっかけとなった『ときメモ』(さらに言えば、その源流である『卒業』など)の影響力から育成要素を取り入れたものが多いが、
女の子との会話を重視した『NOeL』シリーズや『トゥルー・ラブストーリー』シリーズ、RPGの要素を取り入れた『ブルーブレイカー』、
スポ根青春ものとして『ドキドキプリティリーグ』『プリズムコート』、変わり種として、ボードゲームの『ネクストキング~恋の千年王国』がある。
また、SS・PC-FXは18禁ゲームを発売出来たハードであり、『野々村病院の人々』のような作品も生みだされている。

現在でこそ、ギャルゲー=ノベルゲームというイメージだが、ブーム期はむしろそちらの方が少なかった。
98年のブーム終息以降、『Memories off』の発売や、『ToHeart』等のエロゲーの家庭用ハード移植後に数を増やし、00年代以降主流になる。

ジャンルの多彩さも相まって、意外ともいえる人物が関わっていることも特徴。
『ときめきメモリアル ドラマシリーズ』を手掛けた小島秀夫や、上記『ネクストキング』の桝田省治は有名どころで、
他にも、『エターナルメロディ』『悠久幻想曲』シリーズ楽曲を担当した畑亜貴、『エーベルージュ』キャラクターデザインに北爪宏幸、
多少違うが、『トゥルー・ラブストーリー』の仲間由紀恵などがいる。

ゲームの有名無名問わず、声優がヤケクソ的に豪華なことも多い。これは、下記の通り、90年代の声優ブームを反映しており、作品によっては、もはや90年代オールスターである。
反対に、声優ブームの影響で、声優の供給量が増加。
ギャラが安いことと、CVを使いたいが製作費を安く抑えたいゲームの利害が一致して、ゲームが声優デビューの場、というのも良くある現象だった。
ゲーム人気から90年代の人気声優になった人も多く、また、00年代以降活躍する声優も出演していることがある。*1

メディアミックスが模索されたのもギャルゲーブーム期。*2
『ときメモ』は、アニメ・音楽・小説・ラジオ・実写映画・バーチャルアイドルなど、大よそカバーできる範囲では最大規模のメディアミックスだったし、
『サクラ大戦』は、出演声優陣による舞台という前代未聞の試みを行った。『センチメンタルグラフティ』の発売前の展開は、もはや伝説である。

ゲームで人気を得たキャラクターの関連商品を大々的に展開する手法も、この時代の産物である。特にコナミは、このグッズ展開が功を奏し、倒産危機を脱したほどである。
それまでは、ゲームはもちろん、どんなコンテンツであっても、ここまで大規模な展開は見られなかった。以降のマーケティングに大きな影響を与えたのは言うまでもない。

この時期の出来ごとを描写しているものとして、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』がある。
恐らくオリジナルより有名なパロディ『ときどきメモリアル』が登場する他*3
『セングラ』グッズ(しかも車や金の延べ棒等、明らかにおかしな規模)に金をつぎ込み過ぎて破産した男など、笑うに笑えない当時を良く描写している。


経緯

きっかけ

上記の通り、95年のPS版『ときメモ』をきっかけにすることが多い。しかし、もちろん準備段階はあった。PC、CD-ROM、アニメ、がキーワード。

まず、PCにおけるギャルゲーブームがあった。
91~92年にかけてリリースされた『同級生』、『卒業~Graduation~』、『プリンセスメーカー』の三作品は、
それぞれ女の子との交流を主体に扱った画期的な作品で、大きな話題となった。*4

一方、家庭用ゲームでは、90年代初頭にPC-エンジン(以下PCE)CD-ROM2やメガCDなどのCD-ROM媒体でのハードが出揃い、映像、音声面での表現力が飛躍的にアップした。
それまで、高い水準のサウンドやグラフィックを求めると、どうしてもPCになったのだが、当時はビジネスユースが圧倒的な上、Winの普及以前ということで値段が非常に高かった。
しかし、CD-ROM媒体の登場で、フロッピー中心だったPCは、メディア容量の面で逆転される。
PCにとって痛いのは、値段も手ごろだったことで、PC→家庭用へ、という流れが出来上がった。実際、上記の各作品は、全てPCEに移植されている。

また、アニメやキャラクターボイスをゲームに使えるようになった訳で、アニメ声優がゲームに起用される機会も増えた。
このことから、アニメ界隈で起きた声優ブームが相まって、アニメファンがゲームに参入する。

ここに目を付けたのがコナミ。
グラディウス』、『ツインビー』、『パロディウス』などでシューティングゲームの一時代を築いたが、当時は格ゲーブームど真ん中。
更に、海賊版の問題もあって、倒産寸前に追い込まれていた。
94年の冬に発売された『ときめきメモリアル』は、そんな状況の中、半ば諦めムードで発売されたイロモノだった。
当時のファンにとって、コナミは硬派なイメージだったらしく、*5あの硬派なコナミがご乱心」とか「まさかここまで死に体だったとは*6」などと一部で騒がれた。
しかし、イロモノは所詮イロモノで、それ以外、特に話題に上ることは無いゲームだった。
が、電撃PCエンジンでの猛烈なプッシュや、当時興隆していたパソコン通信での口コミから、発売後しばらく経ってから売れ、
一部では『Wizardry』以来の名作であるとすら評された。
実際、作りこみが丁寧だったことと、当時としては珍しいフルボイス作品であることから、現在では、タイトルとは別に、PCEゲームとして評価されている。

もっとも、実際のところ、これは局所的なブームに過ぎず、PS版発売時も同様に静かーなままだった。

ギャルゲーブーム

95年10月、PS移植版の『ときめきメモリアル~Forever with you~』が発売される。
上記の通り、発売直後は静かなものだったが、段々と売れ、最終的に545,525本(Vgchartz)を売り上げる大ヒット作になった。
同年発売の『同級生2』、また、『同級生』と『プリンセスメーカー』もPCE移植がされたことで、大体この辺からがブームだとされている。

翌96年には、『ときメモ』と並ぶ『サクラ大戦』がSSで発売され、30万本を売り上げるキラーソフトになった。
また、『アマガミ』や『フォトカノ』などの直接的なご先祖様である『トゥルー・ラブストーリー』、
多彩な作品でブームを牽引したメディアワークスの処女作『エターナルメロディ』も、この年の発売。

また、96~97年は、親戚であるエロゲーとのクロスオーバーが進んだ時期でもあった。
ギャルゲーブームというと、主に家庭用ハードでのものを指すことがほとんどだが、
PCゲームにおいても、アリスソフト『鬼畜王ランス』やエルフの『同級生2』、『下級生』、『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』、
Leafのビジュアルノベルシリーズなど、名立たる名作が、この時期に軒並み発表されている。
これらの一部は家庭用ハードにも移植され、エルフ『同級生』シリーズや『下級生』、『YU-NO』などの移植がヒットする。

また、97年には、なんといっても『センチメンタルグラフティ(以下セングラ)』の人気が爆発した。……発売前に。
そう、

発売前に。


『セングラ』は、プロモーション戦略により、イベント・グッズがゲーム発売前に大々的に展開され、期待感からギャルゲーブームを最高潮まで引き上げた。
……が、98年1月に満を持して発売されるや否や、あまりのクソゲーっぷりからファンが離れ、ブームの終焉を導いた……と、一般的には言われているのはご存じの通り。

ただ、この認識はあまり正しくなくて、ゲームジャンルとしては、98年にはカンブリア爆発並みの爛熟さを誇り、あらゆる名作が誕生した年でもあった。

単一ハードでは『ときメモ』に次ぐ売り上げを誇ったサクラ大戦2
その二大巨頭による夢のような合作「中世版ときメモ」みつめてナイト
悠久幻想曲』シリーズ最高傑作の悠久幻想曲 2nd Album
むしろバレーボールシミュレーションとして面白い『プリズムコート』
フルアニメーションADVだが、どうみてもギャルゲーな『やるドラ』四部作。
推理ミステリの良作『御神楽少女探偵団』
コンシューマにおけるビジュアルノベルの先駆け『風の丘公園にて』
評価の高いサスペンスADVの18禁オリジナルタイトル『慟哭、そして……』
などなど……。

つまり、98年とは、技術的・発想的な絶頂を迎えたのである。単発物が主体となっているのも興味深い。まあ、裏を返せば、所詮バブルで、2匹のドジョウを狙ったってことだが。

が、それでもブームの終焉とされるのは、やっぱり絶頂と衰退は同時に始まるからなんだろうか……。

ブーム衰退の原因としては、当たり前ではあるが、実際には色々ある。しかし、やっぱり『セングラ』が元凶扱いされるのは変わらない。
ゲーム自体は、幾つかの欠点に目をつぶればクソゲーでもないので*7、ぶっちゃけ、発売までの経緯とタイミングが最悪だったとしか言いようがない。


衰退

99年以降、シリーズものの続編ばかりで新作がほとんど無くなり、発売タイトル数も売り上げも急降下。*8
また、新しく発売されたドリームキャストにPCゲームからの移植が増え、ビジュアルノベルが勢力を持ったには持ったが、最終的にDCも衰退。
もはやこの辺りで、家庭用ハードとしてのギャルゲーブームは完全に終息した。

ただ、巨大なものはゆっくり衰退するようで、『ときめきメモリアル2』『3』、『サクラ大戦3』『4』、『トゥルー・ラブストーリー2』『3』、『悠久幻想曲3』『リフレインラブ2』、『NOeL3』などの続編は、全部この時期に発売された。
が、続編ものが主体になったことと、いずれも人気はあるが、賛否ある続編であること、
更にいくつかの作品はPS2などの次世代機移行したが、それらがいまいち芳しい出来でないこと、なによりセールスが全く物にならなかったことで、大抵はこの辺でシリーズ打ち切り。
やっぱりブーム衰退を実感させるラインナップとなっている。

とはいえ、全く壊滅した訳ではなく、(当時は)ナムコご乱心と騒がれた『ゆめりあ*9や、
ブロッコリーの『ギャラクシーエンジェル*10など、将来を期待させる作品が送り出されたことも注記する。

その後

現在、ブーム期の作品で生き残っているのは非常に少なく、かろうじて『トゥルー・ラブストーリー』シリーズのスタッフが、後継作を製作している程度。
まれに、『ときメモ4』や『北へ。』など、思い出したように新作が出ることもあるが、
ゲームとしては、ブーム期のツートップだった『サクラ大戦』『ときメモ』を含めた全ての作品は、ほぼ完全に沈黙していると言って過言ではない。


結果論的には、
『ときメモ』フォロワーが主体だったので、粗製乱造により質が落ちてしまったとか、
その『ときメモ』自体が、同人誌を規制してサブカル人気に水を差したり、また、メディアミックス展開が拙かったりとか、
Win95~98の間でPCが一気に普及、安くなったから、PCゲームに顧客がUターンしたりとか、
ジャンルの旗艦ハードであるSSが、PSとのハード競争に負けたからとか*11
牧場物語』や『パワプロ』『サモンナイト』シリーズみたいに、方法論的に恋愛要素を加えたゲームが増えて、ギャルゲーの意味が薄くなったとかが、衰退の原因だと言われたりする。

しかし、ゲームデザインやマーケティング手法はもちろん、ブームに際して黎明期のインターネットが関わったことは一考に値するし、
アニメとギャルゲーの各業界が結託した結果、声優関連のコンテンツは、この時期に急速的に発展した。
単なる一ブームにしては、後の、特にサブカルチャーに与えた影響は、少なからず多いのもまた、事実である。

いずれにせよこの時代、多くの人々が、たかだか一つのゲームジャンルに熱狂していたのは紛れもない事実だったのだ。
もしかしたら、今貴方が目の前でプレイしているゲーム。それも、この時代に生まれたゲームかもしれない。

ブーム期の作品

同級生シリーズ(elf)

卒業(ジャパンホームビデオ)

プリンセスメーカー(ガイナックス)

ときめきメモリアルシリーズ(コナミ)

サクラ大戦シリーズ(レッド・エンタテイメント)

トゥルーラブストーリーシリーズ(アスキー)

メルティランサーシリーズ(テンキー)

NOeLシリーズ(パイオニアLDC)

ヒロインドリーム/2(マップジャパン)

悠久幻想曲シリーズ(メディアワークス)

リフレインラブ/2(リバーヒルソフト)

エーベルージュ/2(富士通)


やるドラシリーズ(ソニー・コンピュータ・エンタテイメント)

ありすin Cyberland(グラムス)

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(elf)

ネクストキング~恋の千年王国~(バンダイ)

みつめてナイト(コナミ/レッド・エンタテイメント)

ルームメイト~井上涼子~(データムポリスター)

ファイアーウーマン纏組(徳間インターメディア)

慟哭、そして……(データイースト)

お嬢様特急(メディアワークス)

プリズムコート(富士通パソコンシステムズ)

星の丘学園物語 学園祭(メディアワークス)

久遠の絆(フォグ)



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最終更新:2023年08月18日 16:03

*1 例えば、当時高校生の水樹奈々は、ブーム期の作品『NOeL』がデビュー作である。

*2 それ以前にもあるにはあったが、あくまでも、ゲーム・アニメの付属品の意味合いが強かった。この時期から、ゲームから派生させたものの、それぞれのコンテンツの領域で発展させるという動きを見せた点で、それまでと大きく異なっている。

*3 ゲームの内容から、声優、キャラクターに至るまで、地味な拘り方を見せている。

*4 人によってはこの時期、特に91年をブーム初年に設定してたりする。

*5 一応、『ツインビー』シリーズで、既にアニメファンの取り込みは図ってはいた。

*6 それぐらい、コナミの瀕死は明らかだった

*7 というか、基本バカゲー扱いされている

*8 99年以降の売り上げ一位は『ときめきメモリアル2』の38万本。ミリオンタイトルの続編にしては、はるかに売り上げは落ちている。

*9 内容は全く異なるが、ナムコがギャルゲーを作ったこと、ジャンルや技術的に、『THE IDOL M@ATER』の前身と看做されている。

*10 メディアミックスや商品展開など、ある意味、ギャルゲーブームの集大成的である。

*11 3D表現は弱いが、2D表現の性能はPSよりも高かったことと、独自のレーティング基準を設けていたので、厳しいことで有名だった「ソニーチェック」のあるPSよりも、過激な表現がある程度認められていたことから、SSの発売タイトル数は、PSよりも多い。