登録日：2014/12/05 (金) 22:55:54
更新日：2024/02/08 Thu 14:40:10
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“1997年 50億の人間が死のウイルスにより死滅するだろう”
“生き残った者は地上の暮らしを捨てて地下にもぐる”
“地球は再び動物の支配する惑星となる”
――ある精神分裂病患者の問診記録より
1990年4月12日 ボルティモア郡病院
『12モンキーズ』（原題：Twelve Monkeys）は1996年に公開された
米映画。
監督はコメディ集団モンティ・パイソンの元メンバーで、『未来世紀ブラジル』、『フィッシャー・キング』等、独特の皮肉に満ちたストーリー展開と前衛的なセットで魅せてきた鬼才テリー・ギリアム。
ポスターやタイトルロゴの「おどろおどろしい猿のイラスト」から、サスペンスやホラー展開を連想しがちだが、本作のジャンルは「
SF」で、「
タイムトラベル」をテーマとしている。
とはいえ、『
バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような活劇ものではなく、人類の大量死滅を賭けたサスペンス要素が強く、またタイムパラドックスを考慮に入れ綿密に入り組まれた時系列により重厚な物語を作り上げている。
しかし、あまりにも
伏線が多すぎ＆綿密すぎるため、一度見ただけでは理解するのは難しい。是非二度の鑑賞をお勧めする。
キャストに関しては、当時のアクション俳優ブルース・ウィリスと若手俳優のブラッド・ピットのダブル主演として売り出された。
特に『
セブン』で美形俳優として売り出し始めたブラッド・ピットが、今作ではそのイメージを覆すほどの怪演を見せ、話題となった。
フランスの短編映画『ラ・ジュテ』にインスパイアされており、設定は大幅に変更されているが様々な面を下敷きに製作されている。
【物語】
1997年の始め、突如として出現した未知のウイルスにより人類の9割強が死滅し、人類は薄汚い地下へと追いやられた……。
そして2035年、ひとりの終身刑囚が科学者達に呼び出された。名前はジェームズ・コール。
ジェームズに課せられたのは、ウイルスの拡散する直前である1996年に時間移動し、ワクチン製造のためにウイルスの起源を探り当てること。
その鍵を握るのは、「WE DID IT」というサインを記した「12モンキーズ」なる存在―――。
だが、ジェームズが飛ばされたのは目的年代のさらに過去である1990年。
おまけにジェームズの訴えはまともに聞き入れてもらえず、精神病棟へと送られてしまう。
2035年に戻った彼は、今度こそ成功させるために、今一度1996年へと飛ぶ。
しかし、彼に待ち受けていたのは信じがたい真相。そして皮肉かつ無常な運命―――。
【登場人物】
◆ジェームズ・コール
2035年の終身刑囚。
みんな大好き
世界一運のないハゲ刑事ではない。
強靭な肉体と精神、それに優れた観察眼を認められ、減刑を条件にウイルスの源流探しのための
タイムスリップの任務を与えられる。
しかし辿り着いた1990年ではいかに主張しても精神異常者扱いされる一方で、おまけに世間一般的な犯罪ばかり犯すものだからお尋ね者に。
さらに自らの行いが知らないうちに世界の命運を左右していたと後で知り、精神を病んでいく。
そんな中、子供の頃空港で目撃した銃撃事件で現われた女性に似ているキャサリンと行動を共にするうちに、彼女に惹かれていくが……。
◆キャサリン・ライリー
ボルティモア群病院の精神科医。
1990年、精神異常（とされている）で収監されたジェームズの主治医となるが、当初の彼女は彼の言い分をまともに聞かなかった。しかしジェームズに初対面なのにどこかで会ったかのような違和感を抱く。
1996年、再び現れたジェームズに無理矢理フィラデルフィアへの同行を強要されるうちに、彼のウイルスを探る任務に付き合わされる羽目になる。
やがて、1917年のフランスの大戦時の写真に写ったものから、彼の言うことを信じるようになり……。
◆ジェフリー・ゴインズ
1990年、ボルティモア病院の精神病棟に入院していた患者。
エキセントリックな言動で暴れ回り、他の患者に迷惑をかけ医者からも札付きの問題児として扱われていた生粋の狂人。
細菌化学の権威である科学者を父に持つが、その父に反発し、（退院から1996年以前の間に）動物愛護の過激団体「12モンキーズ」を結成した。
しかし1996年では考えを一変させて父親に協力しているらしい。
その内心、ある過激な行動に出るべく暗躍を開始する。その理由は精神病棟で知り合ったある男の言葉にあった……。
◆ゴインズ博士
ジェフリー・ゴインズの父にして、ノーベル賞も受賞した細菌化学者。
息子の真意に気づかず、彼を誇りに思っている。色んな意味で息子に向き合っていない父親。
◆ピータース博士
ゴインズ博士の助手。
1996年、作家となったキャサリンの講演会に現れ、何やら意味深な言葉を残す。
が、当のキャサリンは慌ただしくサインを書いていたため聞き流していた。
◆ホセ
2035年、ジェームズの隣の房に収監されている囚人。唐突に現れてはジェームズに幾度も忠告する。
一度目は任務に呼び出される前、二度目はタイムスリップ先の1917年の戦場、そして三度目は……。
◆科学者集団
ウイルスの源流を突き止めるためにジェームズを指名し、過去へと送った六人組の科学者たち。
任務を命じられた囚人を「ボランティア」と呼び、任務遂行のためには酷使することを厭わない。
……にも拘わらず仕事は適当で、何度か囚人たちを過去の時代に送っているようだが失敗しかしてない。
1996年にジェームズを送るはずが行きついた先は1990年だったり1917年だったり、よくわからないタイミングで2035年に戻したり。
あまつさえ自分たちの非は認めずジェームズに向かってなじる言葉を浴びせかけたり、かと思えば褒め讃えたり、と好き勝手な連中。
しまいには精神を病み始めたジェームズから、実在しない自分の妄想だと疑惑の目を向けられるが……。
◆謎の声
最初にタイムスリップして以降、ジェームズだけに聞こえる謎めいた男の声。
ジェームズを「ボブ」と呼び、彼の任務に対する疑惑を植え付け、混乱させる。
1996年に出会った浮浪者も同じ声で「ボブ」と呼んだため、ジェームズはさらに混乱していく。
【1997年に発生したパンデミックを解き明かすヒント】
路地で発見された「12モンキーズ」のマーク、そして「WE DID IT」の文字。
さらに「ここからウイルスが？ 50億人が死ぬ？」という落書きまで残されていた……。
それらが発見されたのはフィラデルフィアにある動物愛護団体「12モンキーズ」のアジト付近。
かろうじて復元された留守番電話に女の声で
「動物愛護協会の事務局が12モンキーズの秘密本部…ことを決行するのは奴らです…私はもう限界…さようなら…メリー・クリスマス！」
と録音されていた。
犯行予告？ 事前に知らされたもの？
ジェームズがそこで唯一会話をした（というより馴れ馴れしく絡まれた）のはジェフリー・ゴインズ。
鎮静剤で意識が朦朧としていたジェームズは、ジェフリーにこれから世界がどうなるかの話をしたらしい。
そして1996年、再会した時……。
タイムスリップの前後、ジェームズは子供時代の夢を幾度も見る。
舞台はフィラデルフィア空港の搭乗口。
トランクを抱えて逃げる男を追いかける一人の長髪の男。それを警察が銃撃し、追いかけていた男は倒れる。
倒れた男に駆け寄る女。その女の顔は、キャサリンに似ていた。
戦争中、負傷した一人の兵士が、流ちょうな英語でこれから起こる災害を予見するような言葉を口走り、その後忽然と消えた。
キャサリンが研究していた「カサンドラ現象」の一つだが、その写真の中に……。
ジェームズに語りかける謎の声（というか浮浪者）は、科学者達が彼を監視するために歯に盗聴器を埋め込んだと吹聴。
錯乱しつつあるジェームズは、二度目の1996年で歯を抜く。
しかしそれを見たホセは……。
ジェームズとキャサリンが見ていた『めまい』は、
自殺した恋人に似た女に翻弄される男の物語。
彼らがジェームズに課したのは「ワクチン製造のためにウイルスの起源を探り当て、持ち帰ること」で「ウイルス拡散の阻止」や「拡散しようとする者（≒12モンキーズ）の殺害」ではない。
これは2035年ではウイルスの拡散も、それによる人類大量死滅も「すでに起きてしまったこと」で「無かったことにすること（＝回避すること）はできない」ということ。
- 最後はあの女科学者がウィルスを未来まで持ち帰ってワクチンを作るけどウィルス拡散は止められないってことか？ -- 名無しさん (2014-12-06 12:16:02)
- ラストまでズンドコベロンチョみたいな話だと思ってた -- 名無しさん (2014-12-13 17:52:56)
- 大好き。 -- 名無しさん (2016-09-02 20:01:55)
- 個人的に変なところでトラウマになってる映画だ。コールが過去に送られるシーンで変なチューブに入れられてタイムトラベルするシーンが俺の閉所恐怖症の起源。 -- 名無しさん (2017-04-30 02:04:23)
- 虚実入り乱れた展開はギリアム映画の特徴だけど、本作はそれをメインで取り上げた作品だな。 正気と狂気の境目は結局のところ第三者どころか本人にすら判別不可能。 その混沌ぶりを主人公たちのヒステリックな行動を交えてわかりやすく描写してる。 -- 名無しさん (2017-05-13 02:02:56)
- ↑5 世界自体は救われたんだと思う。だからこそコール(ブルース)の死と女先生との別れが哀しい。 -- 名無しさん (2020-04-30 13:53:59)
最終更新：2024年02月08日 14:40
